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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1128084
審判番号 不服2005-14064  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-06-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-21 
確定日 2005-12-15 
事件の表示 特願2004- 64812「バッテリーパック、アダプター、カメラ付属品」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月 3日出願公開、特開2004-159375〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯
(1)手続
本願は、特願平5-307077号(出願日 平成5年11月15日)の分割出願である特願2003―63579号の一部を平成16年3月8日にさらに分割出願したものであって、平成17年6月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

(2)査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

記(査定の理由)

本願の請求項1から3までに係る発明は、下記刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用例1:実願昭56-134889号(実開昭58-039794号)のマイクロフィルム
引用例2:特開平02-197066号公報
引用例3:特開平04-326872号公報
引用例4:実願昭59-183061号(実開昭61-097271号)のマイクロフィルム
引用例5:実願平02-050808号(実開平04-010957号)のマイクロフィルム
引用例6:特開平05-236305号公報
引用例7:特開平03-205758号公報

2.本願発明
本願の請求項1から3までに係る各発明は、本願明細書及び図面(平成17年2月7日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から請求項3までに記載したとおりの「バッテリーパック」、「アダプター」、「カメラ付属品」であると認められるところ、そのうち、請求項2に係る発明(以下、本願発明という)は次のとおりである。

「【請求項2】ビデオカメラとの結合面を有するアダプターにおいて、
上記結合面の下部に設けられた電気的結合部と、
上記電気的結合部をセンターリングするテーパー状ガイドを有する機械的結合部と、
上記結合面に設けられた凹所と
を備え、
上記機械的結合部は、上記結合面が偏平となるように上記凹所に埋め込まれ、かつ、上記凹所の上端に設けられたことを特徴とするアダプター。」

3.当審の判断
(1) 刊行物の記載
原査定において引用された上記引用例6及び上記引用例1には、それぞれ図面とともに以下の記載がある。

(a)引用例6(特開平05-236305号公報)(以下、刊行物1という)
(ア)「【請求項10】 請求項9において、前記第1筐体の一側端面下方部に第1コネクタを設け、この第1コネクタに電気的に接続可能な第2コネクタを前記第2筐体に設けたことを特徴とする筐体の着脱装置。
【請求項11】請求項1において、前記第1筐体がカメラアダプターであり、かつ前記第2筐体がカメラヘッドであることを特徴とする筐体の着脱装置。」(【特許請求の範囲】における【請求項10】及び【請求項11】)

(イ)「【産業上の利用分野】
本発明は、例えば業務用のポータブルビデオカメラに使用して好適な筐体の着脱装置に関するものである。
【従来の技術】
例えば放送局用のポータブルビデオカメラ等には、用途に応じてアダプターを交換する必要からカメラヘッド用筐体とアダプター用筐体が結合・分離してなるものが多用されている。
このため、この種のビデオカメラには、カメラヘッド用筐体とアダプター用筐体を結合・分離するための着脱装置が備えられている。」(段落【0001】〜段落【0003】)

(ウ)「同図において、符号21で示すものは複数の固体撮像素子(図示せず)を内蔵するカメラヘッド用筐体で、(中略)さらに前記角形窓24の下方に位置し後方に開口する2つのピン挿入孔29およびこれらピン挿入孔29の開口方向と同一の方向に開口するコネクタ収納用の凹部30が設けられている。」(段落【0021】)

(エ)「33は左右方向に延在するウェッジで、前記第2凹部26の上方に位置し前記カメラヘッド用筐体21に固定されており、上端面には上方に開口するU字状の位置決め用溝34が形成されている。このウェッジ33の上方端部裏側には、前方(撮影レンズ側)から後方(アダプター側)に向かって上る勾配をもつ傾斜面33aが形成されている。」(段落【0023】)

(オ)「54は信号入出力プラグ55を着脱するソケット56を有するアダプター用筐体で、前記カメラヘッド用筐体21に着脱自在に設けられており、前面部には前方に開口する上下2つの凹部57,58が設けられている。
このアダプター用筐体53の両凹部57,58のうち凹部57内には、前記ウェッジ33の傾斜面33aに嵌合可能な傾斜面59aおよび下方に開口する切欠き59bを各々下方端部裏側と下方端縁中央部に有するウェッジ59が固定されている。また、この凹部57内には、前記位置決め用溝34に嵌合可能な係止ピン60が取り付けられている。
一方、他の凹部58内には、前記ウェッジ46の傾斜面46aに嵌合可能な傾斜面61aをその上方端部裏側に有するウェッジ61が固定されている。また、この凹部58内には、前記ウェッジ61の下方に位置し前記凹部30に対して挿抜可能なコネクタ62およびこのコネクタ62の両側方に位置し前記ピン挿入孔29に挿抜可能な位置決めピン63が設けられている。」(段落【0030】〜段落【0032】)

(カ)「すなわち、図3に示すように位置決め用溝34内に係止ピン60を臨ませ、次に図4に示すように各ピン挿入孔29内に位置決めピン63を臨ませた後、操作レバー64に各ウェッジ46,61が互いに嵌合するまで図5に矢印Aで示す方向の回動力を付与する。このとき、操作レバー64がロック操作回動方向にストッパ32を乗り越えて停止する。また、操作レバー64の回動方向と同一の方向に第4リンク53が回動するため、第4リンク53の回動動作に追随して第3リンク52が揺動し、第1リンク48が図5に矢印Cで示す方向(反時計方向)に回動すると共に、この回動動作に追随して第2リンク51が揺動し、同図に矢印Eで示す方向にウェッジ46がウェッジ33から離間する方向に下降して傾斜面46aがウェッジ61の傾斜面61aに対接する。」(段落【0041】)

(b)引用例1(実願昭56-134889号(実開昭58-039794号)のマイクロフィルム)(以下、刊行物2という)
(キ)「本考案はビデオカメラとVTRとを前後方向から着脱自在に結合させて一体型として使用する装置の結合装置に関するものである。
この種結合装置は、ビデオカメラとVTRとの機械的結合と合せて電気的接続を行う必要がある。」(第2ページ第2行〜第6行)

(ク)「先ず第3図に示されるように、VTR(2)の前端面である垂直状をなす結合面(11)の上端部のほゞ中央部には係止板(12)が複数本の止ネジ(13)によって垂直状にネジ止めされている。
次に第2図に示されるように、ビデオカメラ(1)の後端面である垂直状をなす結合面(14)の上端部のほゞ中央部には係止板(12)が上方から垂直状に挿入される凹部(15)を有する係止板受け(16)が複数本の止ネジ(17)によって垂直状にネジ止めされている。
そして第6図に示されるように、これら係止板(12)と凹部(15)とはあり差し方式の嵌(旧漢字)合(以下、「嵌合」という。)構造におけるあり形状とありみぞ形状とに構成されている。つまり係止板(12)はその水平断面がほゞ台形状をなしていてあり形状を構成し、また凹部(15)もその水平断面がほゞ台形状をなしていてありみぞ形状を構成し、これらはその左右両側面に形成された斜面(19)(20)によってあり差し方式に嵌合される。また、第7図に示されるように、これら係止板(12)と凹部(15)とはその下端側に至る程次第に小巾となるほゞV字状に形成されている。」(第3ページ第15行〜第4ページ第14行)

(ケ)「次に、第2図、第3図、第5図及び第8図に示されるように、ビデオカメラ(1)とVTR(2)とを電気的に接続する為の相互に抜き差し自在のコネクタ(43)が上記係止板(12)と係止板受け(16)との嵌合部の下部に配置されている。(中略)そのレセプタクル(44)はビデオカメラ(1)の結合面(14)の下端に設けられた上向きで水平状をなす段部(45)に上向きにネジ止めされている。また、プラグ(46)はVTR(2)の結合面(11)の下端に設けられた下向きで水平状をなす段部(47)に下向きにネジ止めされていて、これらレセプタクル(44)とプラグ(46)とは上下から相対向されるようになされている。」(第6ページ第7行〜第19行)

(コ)「なお第3図、第6図及び第7図に示されるようにVTR(2)の結合面(11)の上端側には、係止板(12)と係止板受け(16)との嵌合部の上部及び左右両端部を覆うカバー(52)が設けられていて、そのカバー(52)の内側には係止板受け(16)の垂直状をなす左右両端面(53)に密着して案内される垂直状をなす一対の案内板(54)が設けられている。
以上の如く構成された結合装置(3)によれば、係止板(12)を係止板受け(16)の凹部(15)内に上方から挿入して嵌合させるのであるが、この際係止板(12)及び凹部(15)がほゞV字状をなしていることから、(中略)係止板(12)を凹部(15)の上下方向のほゞ中間位置に後方から挿入した後、係止板(12)を垂直状に下降させれば良い。」(第7ページ第5行〜第19行)

(サ)「一方上記結合時において、第8図に実線で示される如くビデオカメラ(1)にVTR(2)が後方から挿入された時にコネクタ(43)のプラグ(46)がレセプタクル(44)の真上位置に対向される。そしてVTR(2)が垂直状に下降されることによって第5図に示す如くプラグ(46)がレセプタクル(44)に差し込まれてコネクタ(43)の接続がなされて、ビデオカメラ(1)とVTR(2)とが電気的に接続される。
なお上記結合時において、両案内板(54)が両側面(53)に密着されて、これらによる案内作用にて上記結合作用が円滑に行われる。」(第8ページ第13行〜第9ページ第3行)

(2)本願発明と刊行物1に記載された発明(以下、刊行物1発明という)との対比
(a)上記記載(ア)、(イ)、(ウ)、(オ)及び図1によれば、刊行物1にはカメラヘッド用筐体とアダプター用筐体を結合・分離するための着脱装置を備えたビデオカメラが開示されており、上記カメラヘッド用筐体側には角形窓24の下方に位置し後方に開口するコネクタ収納用の凹部30が設けられており、上記アダプター用筐体側には一側端面下方部かつウェッジ61の下方に位置し前記凹部30に対して挿抜可能であって電気的接続を行うコネクタ62が設けられている。
したがって、刊行物1発明の「カメラヘッド用筐体」、「アダプター用筐体」、「コネクタ62」は、それぞれ本願発明の「ビデオカメラ」、「アダプター」、「結合面の下部に設けられた電気的結合部」に相当する。

(b)上記記載(エ)、(オ)、(カ)、図1及び図4によれば、アダプター用筐体側の凹部57内には、カメラヘッド用筐体側のウェッジ33の傾斜面33aに嵌合可能な傾斜面59a及び下方に開口する切欠き59bを各々下方端部裏側と下方端縁中央部に有するウェッジ59と、カメラヘッド用筐体側のU字状の位置決め用溝34に嵌合可能な係止ピン60とが設けられており、上記係止ピン60を位置決め用溝34に臨ませてウェッジ33とウェッジ59を嵌合させつつ、さらに各ピン挿入孔29内に位置決めピン63を臨ませることによってコネクタ62が凹部30に対向するようセンターリングがなされる。そして、上記ウェッジ33とウェッジ59が嵌合した状態で結合面は扁平となる。
したがって、刊行物1発明の「アダプター用筐体側の凹部57」は本願発明の「結合面に設けられた凹所」に相当し、刊行物1発明の「ウェッジ59」及び「係止ピン60」は本願発明の「上記結合面が扁平となるように上記凹所に埋め込まれ、かつ、上記凹所に設けられた」「電気的結合部をセンターリングする機械的結合部」に相当する。
もっとも、本願発明の機械的結合部は「テーパー状ガイドを有する」とともに「凹所の上端に設けられ」ているのに対し、刊行物1発明の機械的結合部は「ウェッジ59」及び「係止ピン60」からなり、いずれも凹所の上端には設けられていない。

(3)一致点、相違点
本願発明と刊行物1発明との一致点および相違点は下記のとおりである。

記(一致点)

「ビデオカメラとの結合面を有するアダプターにおいて、
上記結合面の下部に設けられた電気的結合部と、
上記電気的結合部をセンターリングする機械的結合部と、
上記結合面に設けられた凹所と
を備え、
上記機械的結合部は、上記結合面が扁平となるように上記凹所に埋め込まれ、かつ、上記凹所に設けられたことを特徴とするアダプター。」

記(相違点)

本願発明の機械的結合部は「テーパー状ガイドを有する」とともに「凹所の上端に設けられ」ているのに対し、刊行物1発明の機械的結合部は「ウェッジ59」及び「係止ピン60」からなり、いずれも凹所の上端には設けられていない点

(4)相違点の判断
(4-1)相違点
上記記載(キ)によれば、刊行物2には、ビデオカメラとVTRとを機械的及び電気的に結合するための結合装置が開示されており、刊行物1発明と刊行物2に記載された発明(以下、刊行物2発明)とは、同一の技術分野に属するものといえる。

上記記載(ク)、(ケ)、(コ)、(サ)によれば、VTR(2)の前端面である垂直状をなす結合面(11)の上端部のほぼ中央部には係止板(12)が複数本の止ネジ(13)によって垂直状にネジ止めされ、ビデオカメラ(1)の後端面である垂直状をなす結合面(14)の上端部のほぼ中央部には係止板(12)が上方から垂直状に挿入される凹部(15)を有する係止板受け(16)が複数本の止ネジ(17)によって垂直状にネジ止めされている。また、上記係止板(12)と凹部(15)とはあり差し方式の嵌合構造におけるあり形状とありみぞ形状とに構成されており、かつ、これら係止板(12)と凹部(15)とはその下端側に至る程次第に小巾となるほぼV字状に形成されている。
そして、係止板(12)を凹部(15)の上下方向のほぼ中間位置に後方から挿入してコネクタ(43)のプラグ(46)をレセプタクル(44)の真上位置に対向させた後、垂直状に下降して、係止板受け(16)の凹部(15)内に嵌合させることにより、プラグ(46)がレセプタクル(44)に差し込まれてビデオカメラ(1)とVTR(2)とが電気的に接続される。
したがって、上記係止板(12)は、そのV字形状によりプラグ(46)がレセプタクル(44)の真上位置に対向するようガイドする機能を有するから、「テーパー状ガイド」であるといえる。

また、上記記載(コ)、第2図、第3図及び第5図によれば、VTR(2)の結合面(11)の上端面には、係止板(12)と係止板受け(16)との嵌合部の上部及び左右両端部を覆うカバー(52)が設けられており、上記カバー(52)は、ビデオカメラとVTRが結合した状態で、係止板(12)と係止板受け(16)との嵌合部を収容する空間を形成している。
したがって、上記嵌合部を収容する空間は刊行物1発明の凹所に相当し、係止板(12)はその上端に設けられているといえる。

してみると、刊行物1発明と刊行物2発明とは同一の技術分野に属するものであって、刊行物1発明の「凹所に埋め込まれた電気的結合部をセンターリングする機械的結合部」と刊行物2発明の「テーパー状ガイド」は、ともに電気的結合部の位置あわせ機能及び機械的に結合する機能を有するものであるから、刊行物1発明において、刊行物2発明のテーパー状ガイドを刊行物1発明の凹所の上端に設けて機械的結合部とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

(4-2)効果等
請求人は、平成17年8月22日付けで補正された審判請求書において、引用例6(刊行物1)との対比に基づいて、「機械的結合部が凹部の上端に設けられていることによって、装着される際の衝撃を凹部の上部で吸収する」という作用効果を主張する。
しかしながら、本願明細書(特に、平成16年4月6日付け手続補正書により補正された明細書の段落【0018】参照)及び図面には、機械的結合部を凹部の上側の中央部だけでなく凹部の底部(アダプターの垂直な前面11aの上下、左右のほぼ中央部)とも一体に形成した実施例が記載されていることから、本願発明において、アダプターが上下に装着される際の衝撃は、凹部の上部だけでなく凹部の底部によっても吸収されることは明らかであり、上記作用効果を「装着される際の衝撃を凹部の上部」のみ「で吸収する」と解することはできない。
そうすると、本願発明の「機械的結合部」が「凹所の上端に設けられた」ことによる効果は、刊行物2発明のテーパー状ガイドを凹所の上端に設けた場合の効果に比べて格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明の効果は、刊行物1及び2の記載から予測することができる範囲を超えるものではない。

(5)小括
以上のとおり、請求項2に係る発明は、上記各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上、請求項2に係る発明は、上記各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る理由(請求項1及び請求項3)について特に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-18 
結審通知日 2005-10-18 
審決日 2005-10-31 
出願番号 特願2004-64812(P2004-64812)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清田 健一益戸 宏  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 堀井 啓明
北岡 浩
発明の名称 バッテリーパック、アダプター、カメラ付属品  
代理人 鈴木 伸夫  
代理人 脇 篤夫  

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