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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1128236 |
審判番号 | 不服2003-16115 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-12-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-08-21 |
確定日 | 2005-12-22 |
事件の表示 | 平成11年特許願第159329号「消臭剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月12日出願公開、特開2000-344636〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年6月7日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成15年6月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである(以下、「本願発明」という)。 「ジメトール、パラクレジルアセテート、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イルカルボキシレート及びフェニルエチルイソアミルエーテルから選ばれる1種以上を含有するパーマネントウエーブ用消臭剤組成物。」 2.引用刊行物の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用した本出願前に頒布された刊行物である特開昭56-128735号公報(以下、「刊行物1」という。)及び岡田 功,パーマネントウェーブ液と香料,FRAGRANCE JOURNAL,日本,フレグランス ジャーナル社,昭和52年5月25日,No.24(Vol.5,No.3),74-75頁(以下、「刊行物2」という。)には、それぞれ、次の事項が記載されている(摘示した各記載事項を、以下「記載(a)」などという)。 <刊行物1:特開昭56-128735号公報(原査定の引用文献5)> (a)「一般式(I)で表わされるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-カルボン酸エステル類を含有することを特徴とする香料又はフレーバー組成物。 (式中Rは炭素数2〜3のアルキル基である)」 (特許請求の範囲第5項) (b)「式(I)中のRがエチル基である特許請求の範囲第5項記載の香料又はフレーバー組成物。」 (特許請求の範囲第6項) (c)「その結果次の式(I)で表わされるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-カルボン酸エステル類が優れた香気を有し、かつ熱安定性が良く長期にわたって着色、変質等の変化を受けず、さらに酸、アルカリに対する安定性も非常に高いことを見出し、本発明に至った。」 (1頁右下欄下から3行〜2頁左上欄3行) (d)「式(I)中のRで示されるアルキル基としては、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基が含まれるが、エチル基のものが最も香りが強く好ましい。」 (2頁右上欄15〜18行) (e)「本発明の三環式カルボン酸エステルは、酸性洗剤、アルカリ洗剤等の他に、単独で又は他の香料成分と調合して通例香料の添加が求められる製品、例えば香水、石鹸、シャンプー、ヘアリンス、洗剤、化粧品、ワックス、スプレー、芳香剤等に使用できることは勿論である。」 (2頁左下欄11〜16行) <刊行物2:岡田 功,パーマネントウェーブ液と香料,FRAGRANCE JOURNAL,日本,フレグランス ジャーナル社,昭和52年5月25日,No.24(Vol.5,No.3),74-75頁(原査定の引用文献3)> (f)「一般のチオグリコレート塩とアルカリを主体としたコールドウェーブ液は第一にはその商品価値を高めるという目的と,第二には使用時のチオグリコレート塩とアンモニアの強い臭い,又セット後髪の毛に残るチオグリコレート塩とケラチンの反応により遊離され,又毛髪のジサルファイドの連鎖が破壊されることによって出る強い硫黄臭。これらの臭いを柔らげ,マスキングする目的で香料の添加は必要かつ不可欠なものと考えられます。」 (74頁左欄12〜19行) (g)「ではコールドウェーブ液用香料のもつべき条件としてはどの様なものがあるでしょうか。 第一に,先きにも述べましたが,強烈なチオグリコレート溶液の臭いを出来るだけ低い添加量でマスキング可能であること。 第二に,反応性に富むチオグリコレート溶液の中にあって反応を起こさず,長期の保存にも安定で,その効果が落ちないこと。又,pH9〜10程度のアルカリ性に対して安定であること。 第三に銅,鉄,マンガンといったチオグリコレート塩の酸化を促進させ,ジチオグリコール酸に変化させる様な金属イオンを含まないこと。 第四に,製品の色変化,退色,ヤケ及び濁り等の外観の変化の原因とならないこと。」 (74頁左欄31行〜右欄9行) (h)チオグリコレート塩を成分としたコールドウェーブ液に対する単品香料を試験した結果、「大変にマスキング効果も良く,50℃,2ヶ月の保存テストでも香気上又外観上からも安定性のよかったもの」として、「Veronate」、「Narcidol」他多数の合成香料と、8種の天然香料の例が挙げられている。 (74頁右欄25行〜75頁左欄29行) (i)「ところでここで興味あるのはVeronate,Narcidolといったいわゆるニューケミカルズのマスキング及び安定性が大変に良いということでこれらに限らず,匂いが強くアルカリに対しても安定なニューケミカルズの応用は大変に期待のもてるところで,石鹸,洗剤用のニューケミカルズは当然アルカリ性である石鹸ベース中においても安定で,賦香をしても匂いが強く立ち又白地である石鹸ベースに変色,その他の反応,変化の原因とならないものが多く,コールドウェーブ液への応用も可能なものが多くあります。これらのニューケミカルズには充分に注目しテストする必要があります。」 (75頁右欄26行〜最下行) 3.対比・判断 刊行物1には、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-カルボン酸エチルを含有する香料又はフレーバー組成物が記載されている(記載(a)(b)(d))。 刊行物1に記載された発明の「トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-カルボン酸エチル」は本願発明の「エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イルカルボキシレート」の別名であって、これらは同じ物質を指すから、本願発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 両者とも、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イルカルボキシレートを含有する組成物である点。 <相違点> 本願発明の用途がパーマネントウエーブ用消臭剤であるのに対し、刊行物1に記載された発明の用途が香料又はフレーバーであり、同刊行物にはパーマネントウエーブ用消臭剤に用いることが記載されていない点。 <相違点の検討>(組成物の用途について) 上記相違点について以下に検討する。 刊行物1には、アルカリに対する安定性が非常に高い上記のエチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イルカルボキシレートという化合物を含有する香料組成物が、アルカリ洗剤の他に、通例香料の添加が求められる製品、例えば石鹸、シャンプー、ヘアリンス、化粧品等に使用できることが記載されているから(記載(c)(e))、上記化合物を含有する香料組成物を、同刊行物に例示されたシャンプー、ヘアリンスという製品のみならず、これらと同様に髪に適用され、且つ臭いを柔らげマスキングする目的で香料の添加が求められることが刊行物2(記載(f))から明らかなコールドウェーブ液(パーマ剤)という製品に対しても配合しようと試みることは、隣接用途への転用であり、当業者がまず検討すべき事項である。 そこで、刊行物2を参照すると、コールドウェーブ液に添加する香料は、反応性に富むチオグリコレート溶液の中にあって反応を起こさず、長期の保存にも安定でその効果が落ちず、pH9〜10程度のアルカリ性に対して安定であるという条件を満たす必要があること(記載(g))、及び石鹸や洗剤用の香料化合物はアルカリに対して安定なのでコールドウェーブ液への応用が可能なものが多数あること(記載(i))が知られているところ、刊行物1に記載の上記化合物は、アルカリに対する安定性が非常に高いことが判明しているだけでなく(記載(c))、アルカリ洗剤用又は石鹸用香料としても使用可能であって(記載(e))上記のようにコールドウェーブ液への応用が期待されるものでもあるから、刊行物1に記載の上記化合物は、コールドウェーブ液用香料の有力な候補であると言うことができる。 そして、コールドウェーブ液に配合したときにマスキング効果及び保存安定性が高い合成香料は、上記刊行物2(記載(h))や特開平3-24198号公報(実施例3)にみられるように本出願前に既に多数の例が知られている。 そうすると、刊行物1に記載の上記香料化合物をコールドウェーブ液に適用することには、当業者にとって単なる用途の転換を超えた強い動機付けが存在すると言うべきであるから、刊行物1に記載の上記化合物を含有する香料組成物をコールドウェーブ液(パーマ剤)に配合してみてそのマスキング効果や保存安定性を具体的に確認しパーマネントウエーブ用の消臭剤組成物とすることは、刊行物2の記載を参考にしつつ当業者が通常有する創作力を発揮してなし得る程度のことであると言わざるを得ない。また、明細書の記載を参照しても、本願発明の奏する効果が格別顕著なものであるとすることはできない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-10-19 |
結審通知日 | 2005-10-25 |
審決日 | 2005-11-08 |
出願番号 | 特願平11-159329 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福井 美穂 |
特許庁審判長 |
塚中 哲雄 |
特許庁審判官 |
横尾 俊一 中野 孝一 |
発明の名称 | 消臭剤組成物 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 山本 博人 |