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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1128241 |
審判番号 | 不服2003-20302 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-03-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-16 |
確定日 | 2005-12-22 |
事件の表示 | 平成10年特許願第243377号「印刷方法および装置、パターン読取方法および装置並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月14日出願公開、特開2000- 78387〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年8月28日の出願であって、平成15年9月8日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年10月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成15年1月23日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項1】 カラー印刷用データに所定のパターンからなるパターンデータを埋め込んで、前記パターンが埋め込まれた画像を印刷する印刷方法であって、 前記カラー印刷用データにおける前記パターンが埋め込まれるパターン部分のデータを、条件等色の関係にある前記カラー印刷用データの色成分の組み合わせとCIE測色値との関係を表すテーブルを参照して、他の部分のデータと略条件等色させて変調して変調印刷用データを得、 該変調印刷用データに基づいて前記印刷を行うことを特徴とする印刷方法。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭54-159004号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (ア) 「すなわち、分光反射率の異なった色でも照明条件によっては等色になり、又ある照明光源下では等色である色同士でも分光エネルギー分布の異なった他の光源下では全く違った色に見えてしまう様な現象をメタメリズムと言い、この様な現象を生じる色料同士をメタメリックな色料と言う。 本発明はこの様なメタメリズムの原理を応用したものであり、メタメリックな色料群を用いてパターンを形成し、照明する光源を適当に選択することにより、該色料群が同色に見えたり、異なった色に見えることを利用した画像形成体の偽造を防止する方法及び偽造防止策を施した画像形成体に関するものである。」(2頁左上欄下から5行目〜右上欄8行目) (イ) 「ここで、メタメリックな色料は特に限定することはなく、1種あるいは2種以上の顔料から1つの分光反射曲線を有する色を作り、この色とメタメリックな分光反射率曲線を有する別の色料を別の顔料から作ってもよい。」(3頁右上欄3〜7行目) (ウ) 「第8図に示す様な分光反射率曲線を有する淡口コバルト線にて第4図のパターンを印刷し、次に第9図に示す様な分光反射率曲線を有するフタロシアニンブルーとベンジジンイエローの1重量部:4重量部の混合物にて第5図のパターンを見当を合わせて印刷した。」(3頁左下欄2〜7行目) 上記(ア)ないし(ウ)の記載及び図面から、引用例には 「1種あるいは2種以上の顔料から1つの分光反射曲線を有する色を作り、この色とメタメリックな分光反射率曲線を有する別の色料を別の顔料から作り、これらメタメリックな色料群を用いてメタメリズムなパターンを形成し、印刷を行うことを特徴とする印刷方法。」の発明が記載されている。(以下、「引用発明」という。) 4.対比 引用発明の「メタメリズム」と本願発明の「条件等色」は同じ意味である。 したがって、本願発明と引用発明を比較すると、 「カラー印刷用データに所定のパターンからなるパターンデータを埋め込んで、前記パターンが埋め込まれた画像を印刷する印刷方法であって、前記カラー印刷用データにおける前記パターンが埋め込まれるパターン部分のデータを、他の部分のデータと略条件等色させて変調して変調印刷用データを得、該変調印刷用データに基づいて前記印刷を行うことを特徴とする印刷方法。」で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本願発明は、条件等色の判断に「CIE測色値」を採用しているのに対し、引用発明では「分光反射率曲線」を採用している点。 (相違点2) 本願発明は、「条件等色の関係にあるカラー印刷用データの色成分の組み合わせとCIE測色値との関係を表すテーブルを参照して」いるのに対し、引用発明には「テーブル」を参照することが記載されていない点。 5.判断 上記相違点について検討する。 (相違点1)について 「CIE測色値」とは、発明の詳細な説明中に明確な定義が見当たらないが、国際照明委員会(Commission International de l'Eclairage、略称:CIE)で制定された表色系(例えば「L*a*b*表色系」)における数値を意味すると認められる。 一般に、色を測る際、CIEで制定された表色系における測色値による表現と、分光反射率曲線による表現のいずれも公知であり、どちらを採用するかは設計事項にすぎないので、この点は実質的な相違点といえない。 (相違点2)について 引用発明の「顔料」は、本願発明の「カラー印刷用データの色成分」に相当する。 引用発明には、「3.(ウ)」で引用したように「メタメリックな色料(メタメリズムを生じる色料同士)」の例として、「淡口コバルト」と「フタロシアニンブルーとベンジジンイエローの1重量部:4重量部の混合物」が記載されているが、このような「メタメリックな色料」を作るために、その都度、分光測色計で測定しながら顔料を混合するのではなく、必要な色について、「メタメリックな色料」の顔料の混合比を、あらかじめ「テーブル」に記録しておき、適宜参照することは、当業者が容易に実施できる技術事項である。 さらに、カラー印刷用データの色成分の組み合わせとCIE測色値との関係を表すテーブルは周知であり、例えば、原審で引用された特開平4-70163号公報には「L*a*b*変換部102bからの出力L*a*b*は、各々、ルックアップテーブル(LUT)104に入力され、後述する方法に従って書き込まれたプリンタ出力値Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(ブラック)信号を出力する。」(4頁左上欄下から8〜4行目)と記載されている。 したがって、引用発明に「条件等色の関係にあるカラー印刷用データの色成分の組み合わせとCIE測色値との関係を表すテーブル」を備えて、これを参照するように構成することは、当業者が容易に想到できたものである。 また、本願発明の効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものにすぎない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-10-19 |
結審通知日 | 2005-10-25 |
審決日 | 2005-11-07 |
出願番号 | 特願平10-243377 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋爪 正樹 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
岡本 俊威 鈴木 明 |
発明の名称 | 印刷方法および装置、パターン読取方法および装置並びに記録媒体 |
代理人 | 佐久間 剛 |
代理人 | 柳田 征史 |