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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1128330
審判番号 不服2003-1533  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-24 
確定日 2005-12-21 
事件の表示 特願2000- 72597号「搾乳器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月25日出願公開、特開2001-259023号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年3月15日の出願であって、平成14年12月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成15年1月24日付けに拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年2月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年2月21日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「筒状のカップ部の先端にラッパ状に拡開した乳当部分を有し、該乳当部分に乳房を密着して母乳を搾乳する搾乳カップと、この搾乳カップに連通して装着され、搾乳カップで搾乳した母乳を溜めるボトルと、上記搾乳カップで母乳を搾乳するために、搾乳カップおよびボトル内の空気を吸気して外部に排気させて当該搾乳カップおよびボトル内に負圧を発生させる負圧発生手段、この負圧発生手段を駆動する駆動手段、上記搾乳カップおよびボトル内の負圧を調整させる負圧調整手段、前記搾乳カップおよびボトル内の負圧を開放させる負圧開放手段を備えた駆動部とからなる搾乳器において、上記搾乳カップの筒状のカップ部の上部に、隔壁によってカップ部の内部と隔てられ、かつ、その一端を乳当部分の根元付近上方に開口させて上記乳当部分の根元付近上方と上記負圧発生手段とを連通させる吸込側路を設け、上記搾乳カップおよびボトル内の空気を、上記乳当部分の根元付近上方から上記吸込側路を通して上記負圧発生手段に吸引させると共に、搾乳された母乳を、筒状のカップ部を伝って搾乳カップの排乳口からボトル内に流下させることを特徴とする搾乳器。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「搾乳カップ」について「筒状のカップ部の先端にラッパ状に拡開した乳当部分」を有するものであるとの限定を付加し、同じく「吸込側路」について「搾乳カップの筒状のカップ部の上部に、隔壁によってカップ部の内部と隔てられ、かつ、その一端を乳当部分の根元付近上方に開口」させるものであるとの限定を付加し、更にこれらの付加的事項により、請求項1の搾乳器が、「搾乳された母乳を、筒状のカップ部を伝って搾乳カップの排乳口からボトル内に流下させる」ものである点を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
ア.原査定の拒絶の理由に引用された実公昭48-4639号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がされている。
「1は搾乳瓶でこの口部に蓋2が螺着される。・・・10は搾乳部で下部に上記アダプタ3の導入孔6に押入される接続管11を形成し、1側に吸引用接続管12が一体に形成され他端には円錐形の搾乳子13が螺着され更に吸引用接続管12の内端14と搾乳子13の内端15との間に反転面16を形成して搾乳した乳汁が吸引用接続管2に入らず搾乳瓶1内に入るようにする。
本考案は上述した構成であるから使用に際しては、吸引用接続管12に吸引機を接続し吸引しつつ搾乳子13を乳房に当てると乳汁が吸引され、反転面16に当って下方に落ち逆止弁7を押開いて搾乳瓶1内に貯留される。」(第1ページ左欄第20行〜同ページ右欄第8行)

上記引用例1に記載された事項から、引用例1には、
「搾乳部10の筒状の部分の先端に円錐形の搾乳子13を有し、該搾乳子13に乳房を密着して母乳を搾乳する搾乳部10と、この搾乳部10に連通して装着され、搾乳部10で搾乳した母乳を溜める搾乳瓶1と、上記搾乳部10で母乳を搾乳するために、搾乳部10の空気を吸気して外部に排気させて当該搾乳部10に負圧を発生させる吸引器、を有する搾乳器において、搾乳部10の筒状の部分の上部に、反転面16によって搾乳部10の筒状の部分の内部と隔てられ、かつ、その一端を搾乳子13の根元の部分の上方に開口させて上記搾乳子13の根元の部分の上方と上記吸引器とを連通させる吸引用接続管12を設け、上記搾乳部10の空気を、上記搾乳子13の根元の部分の上方から上記吸引用接続管12を通して上記吸引器に吸引させると共に、搾乳された母乳を、搾乳部10の筒状の部分を伝って搾乳部10の接続管11から搾乳瓶1内に流下させる搾乳器。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

イ.原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-504号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、次の記載がされている。

a.「電動式の吸引部(R)は、・・・ケース(40)内に収納されるポンプ本体(43)と、ポンプ本体(43)に組込んだ圧力調整弁(44)の開度を調整するため、ケース(40)に回転自在に支持される圧力調整リング(45)と、圧力調整リング(45)内にスライド自在に支持された、ポンプ本体(43)に組込まれた開閉弁(46)の開閉動作と、ポンプ本体(43)に組込まれたモータ(47)のON、OFFとを同時に行うための押し釦スイッチ(48)とによって形成されている。」(第4ページ第【0038】欄)、

b.「押し釦スイッチ(48)が内方側に向けてスライドすると・・・吸引動作を開始する。」(第5ページ第【0056】欄)、

c.「搾乳筒(32)の第2の通路(35)を介して連通したボトル(P)内のエアは、ダイヤフラム(56)内に吸引され、ダイヤフラム(56)と排気通路(59)、排気弁(60)を介して連通した排気筒(51)から大気中に排気されるため、ボトル(P)内は負圧となる。
従って、ボトル(P)と搾乳筒(32)の第1の通路(34)を介して連通したカップ部(33)も負圧となるため、母乳の搾乳が行われ、搾乳された母乳はカップ部(33)から搾乳筒(32)の第1の通路(34)を通ってボトル(P)内に溜まる。」(第5ページ第【0057】-【0058】欄)、

d.「また、この状態に於いて、圧力調整リング(45)を回転させ、・・・搾乳力、吸引力も低下するので穏やかな搾乳を行うことができる。」(第5ページ第【0059】-【0060】欄)、

e. 「また、この搾乳状態に於いて、押し釦スイッチ(48)から指を離すと、・・・ボトル(P)内は大気圧となるため、ボトル(P)と連通しているカップ部(33)の乳房に対する吸着も自然に解除され、搾乳動作を終了できる。」(第5ページ第【0062】欄)

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「搾乳部10」の筒状の部分は本願補正発明の筒状の「カップ部」に相当し、以下同様に、「搾乳部10」は「搾乳カップ」に、円錐形の「搾乳子13」はラッパ状に拡開した「乳当部分」に、「搾乳瓶1」は「ボトル」に、「吸引器」は「負圧発生手段」に、「反転面16」は「隔壁」に、「吸込用接続管12」は「吸込側路」に、「接続管11」は「排乳口」に相当する。

したがって、両者は、
「筒状のカップ部の先端にラッパ状に拡開した乳当部分を有し、該乳当部分に乳房を密着して母乳を搾乳する搾乳カップと、この搾乳カップに連通して装着され、搾乳カップで搾乳した母乳を溜めるボトルと、上記搾乳カップで母乳を搾乳するために、搾乳カップの空気を吸気して外部に排気させて当該搾乳カップに負圧を発生させる負圧発生手段、を有する搾乳器において、搾乳カップの筒状のカップ部の上部に、隔壁によってカップ部の内部と隔てられ、かつ、その一端を乳当部分の根元部分に開口させて上記乳当部分の根元部分と上記負圧発生手段とを連通させる吸込側路を設け、上記搾乳カップの空気を、上記乳当部分の根元部分から上記吸込側路を通して上記負圧発生手段に吸引させると共に、搾乳された母乳を、筒状のカップ部を伝って搾乳カップの排乳口からボトル内に流下させる搾乳器。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願補正発明は「負圧発生手段を駆動する駆動手段、搾乳カップおよびボトル内の負圧を調整させる負圧調整手段、前記搾乳カップおよびボトル内の負圧を開放させる負圧開放手段を備えた駆動部」を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

相違点2
負圧発生手段に関し、本願補正発明は搾乳カップおよびボトル内の空気を吸引するのに対し、引用発明は搾乳部10(搾乳カップ)から空気を吸引する点。

相違点3
吸込側路の一端の開口の位置に関し、本願補正発明は「乳当部分の根元付近上方」であるのに対し、引用発明は開口の位置が搾乳子13(乳当部分)の根元の部分の上方であるが根元の部分より水平方向に離れている点。

(4)当審の判断
相違点1について
上記2.(2).イで挙げた、引用例2のa.乃至e. の記載事項を総合すると、引用例2の「カップ部(33)」および「ボトル(P)」は、それぞれ本願補正発明の「搾乳カップ」および「ボトル」に相当し、以下同様に、「モータ(47)」は「駆動手段」に、「圧力調整リング(45)」は「負圧調整手段」に、「押し釦スイッチ(48)」は「負圧開放手段」に、「吸引部(R)」は「駆動部」に相当するものである。
そうすると、引用例2には、
「負圧発生手段を駆動する駆動手段、上記搾乳カップおよびボトル内の負圧を調整させる負圧調整手段、前記搾乳カップおよびボトル内の負圧を開放させる負圧開放手段を備えた駆動部」を有する搾乳器が記載されている。
上記引用例2に記載された搾乳器の構成を、引用発明の搾乳器に付加することは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

相違点2について
負圧発生装置によって搾乳カップおよびボトル内の空気を吸引する構成は、上記相違点1についての判断で述べたとおり、引用例2(特に2.(2).イ.c.の事項参照)に記載されている。この引用例2に記載された構成を引用発明に適用し、相違点2の構成とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

相違点3について
引用発明の吸引用接続管12の一端の開口は、搾乳子13の根元の部分の上方に位置するものであるが、「乳汁が吸引用接続管12に入らず搾乳瓶1内に入るようにする」(引用例1、第1ページ右欄第2〜3行目)という目的を考慮すれば、吸引用接続管12の一端の開口を、より一層搾乳子13の根元の部分に接近させて、搾乳子13の「根元付近上方」に位置させるものとすることは、当業者が容易に想到しうることと認められる。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年2月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年7月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「先端に有するラッパ状に拡開した乳当部分を乳房に密着して母乳を搾乳する搾乳カップと、この搾乳カップに連通して装着され、搾乳カップで搾乳した母乳を溜めるボトルと、上記搾乳カップで母乳を搾乳するために、搾乳カップおよびボトル内の空気を吸気して外部に排気させて当該搾乳カップおよびボトル内に負圧を発生させる負圧発生手段、この負圧発生手段を駆動する駆動手段、上記搾乳カップおよびボトル内の負圧を調整させる負圧調整手段、前記搾乳カップおよびボトル内の負圧を開放させる負圧開放手段を備えた駆動部とからなる搾乳器において、上記搾乳カップの上部に、隔壁によって当該搾乳カップ部の内部と隔てられ、かつ、当該乳当部分の根元付近上方と上記負圧発生手段とを連通させる吸込側路を設け、上記搾乳カップおよびボトル内の空気を、上記乳当部分の根元付近上方から上記吸込側路を通して上記負圧発生手段に吸引させることを特徴とする搾乳器。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明から、「搾乳カップ」についての限定事項である、「筒状のカップ部の先端にラッパ状に拡開した乳当部分」を有するとの構成を省き、同じく「吸込側路」についての限定事項である、「搾乳カップの筒状のカップ部の上部に、隔壁によってカップ部の内部と隔てられ、かつ、その一端を乳当部分の根元付近上方に開口」させるものとの構成を省き、更に、請求項1の搾乳器が、「搾乳された母乳を、筒状のカップ部を伝って搾乳カップの排乳口からボトル内に流下させる」ものであるとの作用的記載を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用例2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-24 
結審通知日 2005-10-24 
審決日 2005-11-10 
出願番号 特願2000-72597(P2000-72597)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 智宏門前 浩一中田 誠二郎  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 稲村 正義
和泉 等
発明の名称 搾乳器  
代理人 江原 省吾  
代理人 田中 秀佳  
代理人 白石 吉之  
代理人 城村 邦彦  
代理人 熊野 剛  
代理人 山根 広昭  

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