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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1128344
審判番号 不服2003-5588  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-03 
確定日 2005-12-22 
事件の表示 平成 5年特許願第286934号「インクジェットプリンタおよび印字ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 5月30日出願公開、特開平 7-137298〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年11月16日に出願したものであって、平成15年2月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年4月3日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成17年6月23日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は同年9月5日付けで意見書及び手続補正書を提出した。

2.本願発明
本願は、請求項の数3から成り、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項3】に記載されたとおりの次のものと認める。
「複数のインクタンクと各インクタンクに連通するインク吐出ノズル列とから一体的に形成された印字ヘッドにおいて、
前記複数のインクタンク同士を一体に形成した構造とし、
前記インクタンク全体の幅よりインク吐出ノズルの面の幅を前記インク吐出ノズル列方向と直交する方向に小さくし、
前記各インク吐出ノズル列に連通する前記各インクタンクのうち黒色インクを収納するインクタンクの容量を他色インクを収納する他のいずれのインクタンクの容量よりも大きく形成したことを特徴とする印字ヘッド。」

3.引用刊行物
当審の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平01-242256号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
イ.「少なくとも2種類のインクを使用し、それぞれのインクに応じた液滴吐出ヘッドと、該ヘッドに前記インクを供給するためのインク供給手段とを有するカラー液体噴射記録ヘッドにおいて、前記インク供給手段は、一体構造で形成されており、かつ、少なくとも2種類のインクを独立して収容できるよう内部に独立したインク収容室もしくはインク収容袋を有し、該インク収容室もしくはインク収容袋は、そのインク収容容積が必ずしもすべて等しくないことを特徴とするカラー液体噴射記録ヘッド。」(特許請求の範囲、請求項1)
ロ.「第1図は、本発明の一実施例を説明するための構成図で、図中、10は一体型インクカートリッジ、11はインク1用インク収容室、11aはインク1用のインク吐出ヘッド、12はインク2用のインク収容室、12aはインク2用のインク吐出ヘッド、同様に、13、13a及び14、14aはそれぞれインク3用及びインク4用のインク収容室及びインク吐出ヘッドで、同図には、4種類のインクの例を示す。インクカートリッジ10は、一体的に形成され、各インク収容室11〜14は独立して異なるインクが収容できるようになっており、その容積は必ずしもすべて等しくはない。その容積は、使用されるインクの量に応じて決められており、多量に使用するインクのインク収容室の容積は大きく、又、少量しか使用しないインクのインク収容室の容積は小さく設計されている。この目的は、各色のインクがほぼ同時期に空になるようにし、一体型インクカートリッジをすてる隙に、インクが無駄にならないようにするためである。」(第4頁右下欄第11行〜第5頁左上欄第10行)
ハ.「第2図は、本発明の他の実施例を説明するための構成図で、図中、第1図に示した実施例と同様の作用をする部分には第1図の場合と同一の参照番号が付してある。(第5頁左上欄第15〜18行)
ニ.「この第2図に示した実施例においても、第1図の場合と同じように、各インク(色が違っていたり、あるいは濃度が違っていたりする)のインク収容室の容積は必ずしも等しくはない。」(第5頁右上欄第4〜8行)
ホ.「インクがなくなれば、吐出ヘッドも含めてすてられてしまうので、吐出ヘッドの寿命もインクがなくなるまでもつだけでよく、従って、ライフタイムが短かいようなプロセスの吐出原理を採用することができる。」(第5頁右上欄第11〜15行)
ヘ.「第2図に示したようなカートリッジ・ヘッド一体型のヘッドにバブルジェット型記録装置のヘッドに用いると、インクがなくなったらヘッドもいっしょにすててしまういわゆるディスポーザブルヘッドとして好適に使用することができる。」(第5頁左下欄第5〜10行)
ト.「第3図は、本発明が適用されるインクジェットヘッドの一例としてのバブルジェット記録ヘッドの動作説明をするための図で、図中、1は蓋基板、
2は発熱体基板、3はオリフィス、4は流路、5は個別(独立)電極、6は共通電極、7は発熱体(ヒータ)、8は記録液(インク)、9は気泡、10は飛翔インク滴で、本発明は、斯様なバブルジェット式の液体噴射記録ヘッドに適用されるもので、」(第5頁左下欄第11〜18行)
チ.第5図には、液体吐出口1aが列をなしていることが看取できる。

上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載、そして、上記チ.の記載から、オリフィス5が列をなしていることが明らかであるから、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「独立したインク収容室11〜14と各インク収容室に連通するオリフィス5列を有するインク吐出ヘッド11a〜14aとから形成された一体型インクカートリッジ10において、
前記各オリフィス5列を有するインク吐出ヘッドに連通する前記各インク収容室11〜14のうち多量に使用するインクを収納するインク収容室の容量を他色インクを収納する他のいずれのインク収容室の容量よりも大きく形成したインクカートリッジ。」

4.対比
そこで、本願発明と刊行物記載の発明とを比較すると、刊行物記載の発明の「オリフィス5列」、「一体型」、及び、「インクカートリッジ10」は、それぞれ本願発明の「インク吐出ノズル列」、「一体的に形成された」、及び、「印字ヘッド」に相当する。また、刊行物記載の発明の独立したインク収容室11〜14間には、室間を仕切る壁が存在することは明らかであるから、刊行物記載の発明の「インク収容室11〜14」が、本願発明の「インクタンク」に相当し、該インク収容室は、複数のインクタンク同士を一体に形成した構造ということができる。よって、両者は、
「複数のインクタンクと各インクタンクに連通するインク吐出ノズル列とから一体的に形成された印字ヘッドにおいて、
前記複数のインクタンク同士を一体に形成した構造とし、
前記各インク吐出ノズル列に連通する前記各インクタンクのうち特定のインクを収納するインクタンクの容量を他色インクを収納する他のいずれのインクタンクの容量よりも大きく形成した印字ヘッド。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願発明は、インクタンク全体の幅よりインク吐出ノズルの面の幅を前記インク吐出ノズル列方向と直交する方向に小さくしているのに対し、刊行物記載の発明は、その点が記載されていない点。
[相違点2]容量を大きく形成するインクタンクに関し、本願発明は、黒色インクを収納するインクタンクの容量を大きく形成するのに対し、刊行物記載の発明は、多量に使用するインクを収納するインクタンクの容量を大きく形成する点。

5.判断
(1)上記相違点1について検討する。
インクタンク全体の幅よりインク吐出ノズルの面の幅を前記インク吐出ノズル列方向と直交する方向に小さくすることは、特開平03-218851号公報に記載されているように、本願出願前に周知技術であるから、該周知技術を上記刊行物記載の発明に適用し、上記相違点1のような構成とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

(2)上記相違点2について検討する。
一般に、印字に際しては、黒色インクが他色インクに比べ多量に使用されるから、黒色インクを収納するインクタンクを大きく形成し、上記相違点2のような構成とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物記載及び周知技術の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-18 
結審通知日 2005-10-25 
審決日 2005-11-08 
出願番号 特願平5-286934
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤本 義仁  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 津田 俊明
長島 和子
発明の名称 インクジェットプリンタおよび印字ヘッド  
代理人 波多野 久  

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