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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1128531
審判番号 不服2002-11746  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-27 
確定日 2006-01-04 
事件の表示 平成11年特許願第278601号「通信端末装置及び送信局選択方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月13日出願公開、特開2001-103529〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年9月30日の出願であって、平成14年5月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年6月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月29日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年7月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年7月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数の基地局装置からの信号を受信する受信手段と、前記信号の品質に基づいて、通信を行う基地局装置を前記信号の選択合成単位毎に選択する基地局選択手段と、前記基地局選択手段の選択情報を前記複数の基地局装置に送信する送信手段と、を具備することを特徴とする通信端末装置。」
から、
「複数の基地局装置からの信号を受信する受信手段と、ハンドオーバ時に、前記複数の基地局装置からの信号の品質に基づいて、通信を行う基地局装置を当該通信端末装置における信号の選択合成単位であって複数の伝送単位から構成されるもの毎に選択して切り替える基地局選択手段と、前記基地局選択手段の選択情報を前記複数の基地局装置に送信する送信手段と、を具備することを特徴とする通信端末装置。」
に補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「基地局選択手段」について、「ハンドオーバ時に、複数の基地局装置からの信号の品質に基づいて、通信を行う基地局装置を当該通信端末装置における信号の選択合成単位であって複数の伝送単位から構成されるもの毎に選択して切り替える」ものであることを限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-45991号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

A.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は移動通信システムにおける同時通信方式に関する。
【0002】
【従来の技術】図5は一般的な移動通信システムの一例を示すブロック図である。図5において、5は交換制御局、61,62,〜6nは無線基地局、71,72,〜7mは移動機、51は交換制御局5内のスイッチ、A,B,Cは外部リンクである。図5では移動機71が無線基地局61を介して交換制御局5の外部リンクAと接続されている状態を示している。図4に示すように、この場合交換制御局5内のスイッチ51は現在中継している無線基地局61と外部リンクA間を接続している。
【0003】一方無線通信システムの特徴の1つに通話中の移動機の移動があり、移動機は移動に伴い通信する無線基地局を切り替えてゆく。図5において移動機71が移動して基地局62の近くにくると、移動機71は今度は無線基地局62を介して通信を行うことになる。この時、交換制御局5内のスイッチ51は切り替えられて外部リンクAと無線基地局62間が接続されることになる。このように移動通信システムでは、移動機の移動に伴い通話中に基地局を切り替える制御が必要となる。これをハンドオフと呼ぶ。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このようにハンドオフは交換制御局のスイッチの切替えを必要とするため、従来の移動通信システムでは数十ミリ秒程度の瞬断が生じ通話品質上問題となるほか、ハンドオフの回数が増すに従い交換制御局の処理負担が問題になる。これは、特に移動機が2つの基地局のカバーエリアの境界付近に存在する場合に生じ、境界付近を行ったり来たりすることにより頻繁なハンドオフが発生する。
・・・(中略)・・・
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の同時通信方式は、移動通信システムにおける携帯移動端末は通信中の無線基地局からの受信レベルが第1のいき値以下になった場合には前記無線基地局との間の通信を行いつつ他の無線基地局のうち受信レベルが最も大きい無線基地局をもう1局選択して前記2局の無線基地局に対して異なる無線チャネルを用いて同時に通信を行い、前記2局との通信中に一方の無線基地局の受信レベルが第2のいき値より大きくなった場合には他方の前記無線基地局との通信を終了して通常の1局対応の通信に戻ることを特徴とする。」(第2頁左欄第21行〜右欄第26行)
B.「【0009】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。図1,図2は本発明の同時通信方式の第1,第2の実施例を示す移動端末の動作の流れ図、図3は図1,図2に示す実施例における交換制御局の状態を説明するための図、図4は本発明の同時通信方式を適用可能な無線区間フレーム構成を示す図である。
【0010】図3(a)に示すように、外部リンクAは交換制御局1のスイッチ2を介して既に基地局a41と通信を行っているものとする。図1において、移動端末は通信中の基地局a41からの受信レベルの観測を受信フレーム毎に行う(ステップS1)。ここで受信レベルをR1と記すことにする。次に受信レベルR1をいき値H1と比較する(S2)。もし受信レベルR1がH1以下であった場合(YES)には、他の基地局から送信されている信号フレームの受信レベルの測定を行い(S3)、それらの中で受信レベルが最大であった例えば基地局b42に対して、新たなチャネルを用いて通信を開始する(S4)。以下基地局a41およびb42に対して同時通信状態となる。すなわち、移動機は基地局a41およびb42に同じ情報を発信し、また両基地局からの送信フレームを同時に受信することになる。同時通信中においては、移動機は両基地局からの受信レベルR1,R2の測定を行い(S5)、いき値H2と比較する(S6)。一方がいき値H2以上になった場合(YES)には、他方の基地局との通信を切断する(S7)。いき値H2はいき値H1より大きく設定する。
【0011】次に、第1の実施例における動作について説明する。始めに基地局a41と通信状態であった時点では、交換制御局1は基地局a41からの回線をあて先外部リンクAに接続している。この時の交換制御局1の状態を図3(a)に示す。図中ブロックT3は後述する合成/分岐トランクを示す。
【0012】移動機が基地局b42との同時通信を要求した場合には、交換制御局1はあて先外部リンクおよび基地局a41からの回線を一旦合成/分岐トランクT3に接続し、さらに基地局b42からの回線を合成/分岐トランクT3に収容して3者通話状態に入る。この時の交換制御局1の状態を図3(b)に示す。ここで合成/分岐トランクT3は通常の3者トランクのように全入力を足し合わせるのではなく、基地局a41およびb42から入力された情報を足し合わせてあて先外部リンクに出力し、またあて先外部リンクから入力された情報を基地局a41およびb42あてに出力するものである。
【0013】この同時通信状態において、移動機が一方の基地局(例えば基地局a41)との通信終了要求をした場合には、交換制御局1はついで基地局b42からの回線およびあて先外部リンクからの回線を合成/分岐トランクT3から解放して両者を直接接続し、さらに基地局a41からの回線も合成/分岐トランクT3から解放する。これにより、通常の基地局b42との1対1通信状態に戻る。この時の交換制御局の状態を図3(c)に示す。」(第2頁右欄第41行〜第3頁左欄第43行)

上記Bの記載において、移動端末は、基地局からの信号の受信レベルの観測を受信フレーム毎に行い、その結果に基づいて、今まで通信していた基地局に加え新たな基地局とも通信を行う状態、すなわち2つの基地局を同時選択して通信を行う状態になったり、新たな1つの基地局の受信レベルが設定したいき値より大きくなった場合には、新たな1つの基地局のみを選択して通信を行う状態になったりしている。
ここで、2つの基地局を同時選択する場合も、新たな1つの基地局を選択する場合も、基地局を選択していることには変わりない。したがって、移動端末は、受信フレーム毎に通信を行う基地局を選択しているものと認められる。
また、基地局と通信を行うためには、移動端末は、当然どの基地局を選択したかを示す情報、すなわち選択情報を各基地局へ送信するものと解される。
よって、上記A,Bの記載を参照すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「複数の基地局からの信号を受信する受信手段と、ハンドオフ時に、前記複数の基地局からの信号の受信レベルに基づいて、通信を行う基地局を前記信号の受信フレーム毎に選択する基地局選択手段と、前記基地局選択手段の選択情報を前記複数の基地局に送信する送信手段とを具備する移動端末。」

(3)対比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、まず、引用例記載の発明における「基地局」、「移動端末」は、それぞれ、本願補正発明における「基地局装置」、「通信端末装置」に相当する。
そして、引用例記載の発明における「ハンドオフ」は、本願補正発明における「ハンドオーバ」に相当し、引用例記載の発明における「信号の受信レベル」は、本願補正発明における「信号の品質」の一種であるものと解される。
さらに、引用例記載の発明における「受信フレーム」も、本願補正発明における「選択合成単位」も、信号を選択するための特定時間単位であることには変わりない。

よって、本願補正発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「複数の基地局装置からの信号を受信する受信手段と、ハンドオーバ時に、前記複数の基地局装置からの信号の品質に基づいて、通信を行う基地局装置を前記信号の特定時間単位毎に選択する基地局選択手段と、前記基地局選択手段の選択情報を前記複数の基地局装置に送信する送信手段と、を具備する通信端末装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:本願補正発明においては、上記特定時間単位を「複数の伝送単位から構成される選択合成単位」とし、かつ、通信を行う基地局装置を該選択合成単位毎に選択して「切り替える」(すなわち、複数の基地局を同時選択することは含まない)ものであるのに対し、引用例記載の発明は、そのようなものではない点。

(4)判断
そこで、上記相違点について検討する。
移動通信システムにおいて、ハンドオーバ時に、複数の基地局装置からの信号の品質に基づいて、通信を行う基地局装置を通信端末装置における信号の選択合成単位であって複数の伝送単位から構成されるもの毎に選択して切り替えるようにすることは、周知の技術(必要であれば、例えば、特開平9-312871号公報を参照されたい。)にすぎない。
してみれば、引用例記載の発明において、上記周知の技術を適用し、基地局装置を選択する際の特定時間単位を「複数の伝送単位から構成される選択合成単位」とし、かつ、通信を行う基地局装置を該選択合成単位毎に選択して「切り替える」ようにすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知の技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成14年7月29日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年2月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「複数の基地局装置からの信号を受信する受信手段と、前記信号の品質に基づいて、通信を行う基地局装置を前記信号の選択合成単位毎に選択する基地局選択手段と、前記基地局選択手段の選択情報を前記複数の基地局装置に送信する送信手段と、を具備することを特徴とする通信端末装置。」

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「ハンドオーバ時に、複数の基地局装置からの信号の品質に基づいて、通信を行う基地局装置を当該通信端末装置における信号の選択合成単位であって複数の伝送単位から構成されるもの毎に選択して切り替える基地局選択手段」を、上位概念であるところの「信号の品質に基づいて、通信を行う基地局装置を前記信号の選択合成単位毎に選択する基地局選択手段」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の要件を下位概念化したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-28 
結審通知日 2005-11-01 
審決日 2005-11-14 
出願番号 特願平11-278601
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大日方 和幸  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 長島 孝志
成瀬 博之
発明の名称 通信端末装置及び送信局選択方法  
代理人 鷲田 公一  

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