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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1128700
審判番号 不服2005-2714  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-01-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-17 
確定日 2006-01-05 
事件の表示 特願2001-194655「補強土構造物」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 8日出願公開、特開2003- 3474〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年6月27日の出願であって、平成17年1月14日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年2月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月22日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年3月22日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年3月22日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数の補強土ブロックを上下方向および横方向に互いに隣接して積層するとともにその背部に盛土を充填し、かつ前記盛土内に盛土補強材を複数層に埋設してなる補強土構造物であって、前記補強土ブロックは各段の横方向に隣接する補強土ブロック間の目地部が左右に交互にずれるように積層されているとともに、各補強土ブロックに設けられた連結キーとキー孔とが互いに係合することにより上下方向および横方向に互いに連結され、前記複数の補強土ブロックからなる壁体の背部に砂利や礫類が一定の厚さに充填され、かつ前記盛土補強材は同じ位置に積層された上下方向に隣接する複数の各補強土ブロックに鉛直に形成された貫通孔に連続して挿通された縦連結棒に定着金具を介して連結されてなることを特徴とする補強土構造物。」と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である盛土の充填の態様について、「複数の補強土ブロックからなる壁体の背部に砂利や礫類が一定の厚さに充填され」との限定を付加し、同じく、盛土補強材の縦連結棒への連結の態様について、「盛土補強材は同じ位置に積層された上下方向に隣接する複数の各補強土ブロックに鉛直に形成された貫通孔に連続して挿通された縦連結棒に定着金具を介して連結されてなる」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、即ち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-59223号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。
(イ)「【請求項1】複数の擁壁ブロックを積み重ねて壁体を構成し、この壁体の背面側に盛り土を充填し、かつ盛り土内に複数の補強部材を埋設するとともに擁壁ブロックに連結してなる補強土擁壁構造において、擁壁ブロックは表面フランジとその背面側にある背面フランジと表面フランジと背面フランジの間にあって両者を連結するウェブとを有することを特徴とする補強土擁壁構造。」
(ロ)「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、擁壁ブロックを複数積み重ねて壁体を構築し、この壁体の背面に盛り土を充填するととともに、この盛り土内に鉄筋グリット等からなる複数の補強部材を埋設し、かつ擁壁ブロックに連結してなる補強土擁壁構造に関する。」
(ハ)「【0016】こうして形成された擁壁ブロック1は、盛り土2の先端に壁体Aの横方向に互いに隣接し、かつ壁体Aの上方に複数段に積み重ねて設置されている。その際特に、擁壁ブロック1は横方向に隣接する表面フランジ1a,1a間の目地部が上下方向に連続しないで左右に交互にずれる、いわゆるやぶれ目地になるように積み重ねられている。」
(ニ)「【0017】また、例えば図2(b)に図示するように、各擁壁ブロック1の表面フランジ1aと背面フランジ1bの下面に下側に位置する擁壁ブロック1の連結溝1dと1eにそれぞれ係合する凸部1hが形成され、またウェブ1cの下面には下側に位置する擁壁ブロック1の突起1gが係合する凹部1iが形成され、さらに上下の擁壁ブロック1,1間の、例えば表面フランジ1a,1a間の当接面に互いに係合し合う係合キー1jと係合穴1kが形成されている。【0018】複数の擁壁ブロック1がこのように形成されていることで、上下の擁壁ブロック1どうしを強固に連結することができ、これにより擁壁ブロック1どうしが互いに拘束され合って壁体Aの一体化が図られている。」
これらの記載によれば、引用例1には、
「複数の擁壁ブロックを上下方向および横方向に互いに隣接して積み重ねるとともにその背面側に盛り土を充填し、かつ前記盛り土内に鉄筋グリット等からなる複数の補強部材を埋設してなる補強土擁壁構造であって、前記擁壁ブロックは各段の横方向に隣接する擁壁ブロック間の目地部が左右に交互にずれるように積み重ねられているとともに、各擁壁ブロックに設けられた係合キーと係合穴とが互いに係合することにより上下方向および横方向に互いに連結されてなることを特徴とする補強土擁壁構造。」の発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭55-7147号(実開昭56-110147号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下,「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。
(ホ)「1.背面に抗張材の取付部を有し、この取付部に抗張材が取付けられた土留用壁面構造体において、前記取付部は抗張材を上下に移動せしめる連結装置であり、この連結装置に前記抗張材が水平方向に連結されてなり、これによって前記抗張材が土砂中に埋め込まれた際に、土砂層が圧縮しても前記抗張材は壁面構造体との連結部において破壊することなく挙動するようにした土留構造体。」(昭和55年2月21日付の手続補正により浄書された明細書1ページ4〜11行)
(へ)「本考案は抗張材の連結された土留用壁面構造体に係り、詳細には前記抗張材が土砂中に埋め込まれた際に土砂層が圧縮しても前記抗張材は壁面構造体との連結部において破壊することなく挙動しえ、すなわち前記抗張材は不同沈下に対して破壊することなく順応しえ、かつ、圧縮性の大きな軟弱な裏込材料を用いてもその不同変位に対して充分な安定性を保ちうる土留用壁面構造体に関する。」(同1ページ16行〜2ページ5行)
(ト)「第4図(a)もまた、本考案にかかる構造体の他の具体例であって、互いに連結するための連結部として貫通された孔12''および12'''を有するものである。この構造体もまた、前述と同様に複数個積み重ねることによって使用される。第4図(b)は積み重ねた状態の断面図を示し、第4図(c)は正面図を示す。これらの積み重ねに際してまず、第4図(b)および(c)から明らかなように、捨てコンクリートによる基盤13に連結用棒状体16を一定間隔をあけて埋めて直立固定し、この連結用棒状体16に孔12''を通して本考案にかかる前記構造体を差し込んで積み重ねて突片4,4' 間に棒状体6を形成し、さらに互いに隣接する構造体同志を孔12'''を通じてボルトによって連結する。この場合、各構造体の突片4,4' 間にはあらかじめ棒状体6を通じて連結プレート14を連結しておくことが好ましい。このような連結プレート14を連結することによって、抗張材7は第3図と同様、抗張材7の一端と連結プレート14の一端とをボルト15でとめて棒状体6に連結される。」(同9ページ18行〜10ページ17行)
これらの記載によれば、引用例2には、
「複数の土留用壁面構造体を積み重ねるとともにその背部に土砂を充填し、かつ前記土砂内に抗張材を複数層に埋設してなる土留構造体であって、前記抗張材は同じ位置に積層された上下方向に隣接する複数の各土留用壁面構造体に鉛直に形成された貫通孔に連続して挿通された連結用棒状体に連結プレートを介して連結されてなることを特徴とする土留構造体。」の発明(以下、「引用例2発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
引用例1発明の「擁壁ブロック」は、本願補正発明の「補強土ブロック」に相当し、以下同様に、「積み重ねる」は「積層する」に、「盛り土」は「盛土」に、「鉄筋グリット等からなる補強部材」は「盛土補強材」に、「補強土擁壁構造」は「補強土構造物」に、「係合キー」は「連結キー」に、「係合穴」は「キー孔」にそれぞれ相当する。

そこで、本願補正発明と引用例1発明とを対比すると、両者は、
「複数の補強土ブロックを上下方向および横方向に互いに隣接して積層するとともにその背部に盛土を充填し、かつ前記盛土内に盛土補強材を複数層に埋設してなる補強土構造物であって、前記補強土ブロックは各段の横方向に隣接する補強土ブロック間の目地部が左右に交互にずれるように積層されているとともに、各補強土ブロックに設けられた連結キーとキー孔とが互いに係合することにより上下方向および横方向に互いに連結された補強土構造物。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

[相違点1]盛土を形成する材料が、本願補正発明では、砂利や礫類であるのに対して、引用例1発明では、その詳細が明らかでない点。

[相違点2]本願補正発明では、盛土補強材は同じ位置に積層された上下方向に隣接する複数の各補強土ブロックに鉛直に形成された貫通孔に連続して挿通された縦連結棒に定着金具を介して連結されるのに対して、引用例1発明では、そのような構成を具備しない点。

(4)判断
[相違点1]について
擁壁(補強土構造物)において、擁壁背部に砂利、採石、栗石などの透水性材料を一定の厚さに設置することは、周知技術である。
したがって、引用例1発明においても該周知技術を適用し、「補強土ブロックからなる壁体の背部に砂利や礫類を一定の厚さに設置する」ことは、当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2]について
引用例2発明の「土留壁面用構造体」、「土砂」、「抗張材」、「土留構造体」、「連結用棒状体」、及び、「連結プレート」はそれぞれ、本願補正発明における「補強土ブロック」、「盛土」、「盛土補強材」、「補強土構造物」、「縦連結棒」、及び、「定着金具」に相当するから、結局、引用例2発明は、「複数の補強土ブロックを積層するとともにその背部に盛土を充填し、かつ前記盛土内に盛土補強材を複数層に埋設してなる補強土構造物であって、前記盛土補強材は同じ位置に積層された上下方向に隣接する複数の各補強土ブロックに鉛直に形成された貫通孔に連続して挿通された縦連結棒に定着金具を介して連結されてなることを特徴とする補強土構造物。」の発明である。そして、引用例1発明と、引用例2発明はともに擁壁(補強土構造物)という同一の技術分野に属するものである。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用例1発明に引用例2発明を適用して、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願補正発明の作用効果は、引用例1発明、引用例2発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1発明、引用例2発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年3月22日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は,平成16年4月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数の補強土ブロックを上下方向および横方向に互いに隣接して積層するとともにその背部に盛土を充填し、かつ前記盛土内に盛土補強材を複数層に埋設してなる補強土構造物であって、前記補強土ブロックは各段の横方向に隣接する補強土ブロック間の目地部が左右に交互にずれるように積層されているとともに、各補強土ブロックに設けられた連結キーとキー孔とが互いに係合することにより上下方向および横方向に互いに連結され、かつ前記盛土補強材は上下方向に隣接する複数の補強土ブロック間に連続して挿通された縦連結棒に連結されてなることを特徴とする補強土構造物。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から盛土の充填の態様の限定事項である「複数の補強土ブロックからなる壁体の背部に砂利や礫類が一定の厚さに充填され」との構成と、盛土補強材の縦連結棒への連結の態様の限定事項である「盛土補強材は同じ位置に積層された上下方向に隣接する複数の各補強土ブロックに鉛直に形成された貫通孔に連続して挿通された縦連結棒に定着金具を介して連結されてなる」との構成を省いたものである。
ところで、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例1発明、引用例2発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該構成を省いた本願発明は、結局のところ、引用例1発明、及び、引用例2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、及び、引用例2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-26 
結審通知日 2005-11-08 
審決日 2005-11-21 
出願番号 特願2001-194655(P2001-194655)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02D)
P 1 8・ 575- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 志摩 美裕貴苗村 康造岡田 宏之河本 明彦  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 柴田 和雄
木原 裕
発明の名称 補強土構造物  
代理人 久門 知  
代理人 久門 享  

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