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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1128701
審判番号 不服2005-7672  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-28 
確定日 2006-01-05 
事件の表示 特願2000- 49141「地下構造物の壁体に利用する鋼製部材を芯材とした地中壁」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月19日出願公開、特開2001-164563〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月25日の出願であって、平成17年3月25日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年5月30日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年5月30日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年5月30日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「所定の高さ(H)寸法のウェブ鋼板の両端にフランジ鋼板を設け、片側もしくは両側のフランジ鋼板の端部に雌継手を有する略H形断面の鋼製部材と、前記フランジ鋼板の端部に前記雌継手と嵌合余裕空隙を形成して係合できる雄継手を有する略H形断面の鋼製部材とを構成し、前記雌、雄継手を係合させて前記鋼製部材は地盤に造成されたソイルセメントからなる経時性固化材に連続して埋設され、かつ前記雌、雄継手が係合した嵌合余裕空隙には、前記ソイルセメントからなる経時性固化材が自己充填され、かつ前記雌継手は、スリットを有するパイプ形状でかつ、鋼製部材の長手方向に連続して設けられており、前記雄継手は、略T字形でフランジ端縁に直接設けられ、かつ鋼製部材の長手方向に連続して設けられ、雄継手側のフランジ鋼板が雌継手内に配置されていることを特徴とする地下構造物の本体壁体に利用する鋼製部材を芯材としたソイルセメント地中壁。」と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「地盤又は、地盤掘削溝に注入された経時性固化材」について、「地盤」という選択肢を削除するとともに、「地盤掘削溝に注入された経時性固化材」という選択肢については、「地盤に造成されたソイルセメントからなる経時性固化材」との限定を付加し、同じく、経時性固化材が充填される態様について、自己充填されるとの限定を付加し、同じく「地下構造物の壁体」について「地下構造物の本体壁体」との限定を付加し、同じく「地中壁」について、「ソイルセメント地中壁」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、即ち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-272131号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。
(イ)「【特許請求の範囲】【請求項1】 H形鋼1におけるフランジ2の巾方向端部に、多数の鋼製雄継手部材3の端部を、フランジ長手方向に間隔をおいて固着して、雄継手付き鋼矢板4を構成し、H形鋼5におけるフランジ6の巾方向端部に、スリット7を有する管状体からなる鋼製雌継手部材8を、フランジ長手方向に延長するように配置した状態で一体に設けて、雌継手付き鋼矢板9を構成し、地盤10に設けた溝孔11内に、多数の雄継手付き鋼矢板4と多数の雌継手付き鋼矢板9とを、雌継手部材8内に雄継手部材3を挿入した状態で建込み、隣り合う鋼矢板の間に挿入したトレミー管12から経時硬化性材料13を、隣り合う鋼矢板の間および鋼矢板と溝孔11との間に注入充填する地中連続壁施工方法。」
(ロ)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、地下構造物の土留め壁等の地中連続壁を施工する方法に関するものである。」
(ハ)「【0005】【実施例】図1ないし図7は本発明の実施例を示すものであって、H形鋼1における各フランジ2の巾方向の両端部に、多数のT字状断面の鋼製雄継手部材3におけるウエブ14の先端部が、フランジ長手方向に間隔をおいて溶接により固着されて、雄継手付き鋼矢板4が構成され、またH形鋼5における各フランジ6の巾方向の両端部に、管軸方向に延長するスリット7を有する一部切欠円形断面の鋼製雌継手部材8におけるスリット7と反対側の部分が当接され、その雌継手部材8が前記フランジ6に溶接により固着されて、雌継手付き鋼矢板9が構成されている。【0006】前記雄継手付き鋼矢板4および雌継手付き鋼矢板9を使用して地中連続壁を施工する場合は、図1および図2に示すように、地盤10に設けた溝孔11内に、多数の雄継手付き鋼矢板4と多数の雌継手付き鋼矢板9とを交互に直列に並べて配置すると共に、雄継手部材3におけるフランジ15とウエブ14の基端側部分とを雌継手部材8内に挿入した状態で建込む。【0007】次に鋼矢板と溝孔11の両側壁との間に仕切板16を介在させ、かつ隣り合う雄継手付き鋼矢板4と雌継手付き鋼矢板9との間にトレミー管12を挿入し、そのトレミー管12からコンクリート等の経時硬化性材料13を注入しながら、そのトレミー管12を引抜き、隣り合う鋼矢板4,9の間に経時硬化性材料13を充填すると共に、その経時硬化性材料13を、上下方向に隣り合う雄継手部材3におけるウエブ14の先端側部分の間から、鋼矢板4,9と溝孔11の両側壁との間に充填し、かつ雌継手部材8内にも経時硬化性材料13を充填する。【0008】次に仕切板16を取外して移設し、かつトレミー管12を他の位置に挿入し、前述の場合と同様にして、トレミー管12から経時硬化性材料13を、隣り合う鋼矢板4,9の間と、各鋼矢板4,9および溝孔11の両側壁の間と、雌継手部材8内とに充填し、以下同様の工程を反復して行なう。」
(二)図1及び図2の記載から、引用例には、「鋼製雄継手部材3が鋼製雌継手部材8と嵌合余裕空隙を形成して係合した鋼矢板が芯材とされた地中壁」が記載されていると認められる。
(ホ)図6及び図8の記載から、引用例には、「所定の高さ寸法のH形鋼において、フランジ6の巾方向の両端もしくは片側に鋼製雌継手部材8が連続して設けられた態様」が記載されていると認められる。

これらの記載によれば、引用例には、
「所定の高さ寸法のH形鋼において、片側もしくは両側のフランジの端部に鋼製雌継手部材を有する雌継手付き鋼矢板と、フランジの端部に前記鋼製雌継手部材と嵌合余裕空隙を形成して係合できる鋼製雄継手部材を有する雄継手付き鋼矢板とを構成し、前記鋼製雌、雄継手部材を係合させて前記鋼矢板は地盤に設けた溝孔内に連続して建込まれ、かつ前記鋼製雌、雄継手部材が係合した嵌合余裕空隙には、コンクリート等の経時硬化性材料が充填され、かつ前記鋼製雌継手部材は、スリットを有する一部切欠円形断面形状でかつ、鋼矢板の長手方向に連続して設けられており、前記鋼製雄継手部材は、略T字形でフランジ端縁に直接設けられ、鋼製雄継手部材側のフランジが鋼製雌継手部材内に配置された地下構造物の壁体に利用する鋼矢板を芯材とした地中壁。」の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
引用発明の「H形鋼」は、本願補正発明の「ウェブ鋼板の両端にフランジ鋼板を設け」たものに相当し、以下同様に、「鋼製雌継手部材」は「雌継手」に、「鋼製雄継手部材」は「雄継手」に、「雌継手付き鋼矢板」は「雌継手を有する略H形断面の鋼製部材」に、「雄継手付き鋼矢板」は「雄継手を有する略H形断面の鋼製部材」に、「経時硬化性材料」は「経時性固化材」に、「スリットを有する一部切欠円形断面形状」は「スリットを有するパイプ形状」にそれぞれ相当する。また、引用発明において、鋼矢板が建込まれるという事項と、本願補正発明において、鋼製部材が埋設されるという事項は、鋼矢板若しくは鋼製部材が地盤に造成された溝孔内に連続して建込まれる点で、共通する。

そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「所定の高さ寸法のウェブ鋼板の両端にフランジ鋼板を設け、片側もしくは両側のフランジ鋼板の端部に雌継手を有する略H形断面の鋼製部材と、前記フランジ鋼板の端部に前記雌継手と嵌合余裕空隙を形成して係合できる雄継手を有する略H形断面の鋼製部材とを構成し、前記雌、雄継手を係合させて前記鋼製部材は地盤に造成された溝孔内に連続して建て込まれ、かつ前記雌、雄継手が係合した嵌合余裕空隙には、経時性固化材が充填され、かつ前記雌継手は、スリットを有するパイプ形状でかつ、鋼製部材の長手方向に連続して設けられており、前記雄継手は、略T字形でフランジ端縁に直接設けられ、雄継手側のフランジ鋼板が雌継手内に配置されていることを特徴とする地下構造物の壁体に利用する鋼製部材を芯材とした地中壁。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

[相違点1]本願補正発明では、地盤に造成されたソイルセメントからなる経時性固化材、換言すれば、地盤に造成された溝孔内に注入されたソイルセメントからなる経時性固化材に鋼製部材が埋設されることで、雌、雄継手が係合した嵌合余裕空隙に経時性固化材が自己充填されるのに対して、引用発明では、地盤に造成された溝孔内に鋼製部材が建込まれ、その後、雌、雄継手が係合した嵌合余裕空隙に経時性固化材が充填される点。

[相違点2]本願補正発明では、雄継手が鋼製部材の長手方向に連続して設けられているのに対して、引用発明では、多数の雄継手が間隔をおいて鋼製部材に設けられている点。

[相違点3]地中壁が、本願補正発明では、地下構造物の本体壁体に利用されるソイルセメント地中壁であるのに対して、引用発明では、そのような限定がされていない点。

(4)判断
[相違点1]について
地盤に造成されたソイルセメントからなる経時性固化材に鋼製部材を埋設することは、例えば、特開平11-140866号公報にみられるように周知技術である。
したがって、引用発明において、当該周知技術を採用し、地盤に造成されたソイルセメントからなる経時性固化材に鋼製部材を埋設するように構成することは、当業者であれば容易に想起し得ることである。その際、雌、雄継手が係合した嵌合余裕空隙に、経時性固化材は、当然、自己充填されることになる。

[相違点2]について
雄継手が長手方向に連続して設けられた鋼製部材は、特開平5-331854号公報(特に、段落【0011】、【0014】参照)、特開昭55-68921号公報(特に、1ページ右下欄載参照)、及び、実願昭61-138647号(実開昭63-45847号)のマイクロフィルム(特に、明細書6ページ参照)にみられるように周知技術である。
したがって、引用発明において、当該周知技術を採用し、雄継手を鋼製部材の長手方向に連続して設けるように構成することは、当業者であれば容易に想起し得ることである。

[相違点3]について
上記[相違点1]で検討したように、地盤に造成されたソイルセメントからなる経時性固化材に鋼製部材を埋設するという方法によって得られるソイルセメント地中壁は、周知技術である。そして、当該方法によれば、止水性が高まるため、地下構造物の本体壁体に利用できることは、当業者にとって自明の事項である。
したがって、引用発明において、当該周知技術を採用し、地下構造物の本体壁体に利用されるソイルセメント地中壁となすことは、当業者であれば容易に想起し得ることである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年5月30日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年2月21日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「所定の高さ(H)寸法のウェブ鋼板の両端にフランジ鋼板を設け、片側もしくは両側のフランジ鋼板の端部に雌継手を有する略H形断面の鋼製部材と、前記フランジ鋼板の端部に前記雌継手と嵌合余裕空隙を形成して係合できる雄継手を有する略H形断面の鋼製部材とを構成し、前記雌、雄継手を係合させて前記鋼製部材は地盤又は、地盤掘削溝に注入された経時性固化材に連続して埋設され、前記雌、雄継手が係合した嵌合余裕空隙には、土砂、あるいはソイルセメント、セメントミルク等の経時性固化材を充填し、かつ前記雌継手は、スリットを有するパイプ形状でかつ、鋼製部材の長手方向に連続して設けられており、前記雄継手は、略T字形でフランジ端縁に直接設けられ、かつ鋼製部材の長手方向に連続して設けられ、雄継手側のフランジ鋼板が雌継手内に配置されていることを特徴とする地下構造物の壁体に利用する鋼製部材を芯材とした地中壁。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「地盤掘削溝に注入された経時性固化材」という事項の限定事項である「地盤に造成されたソイルセメントからなる経時性固化材」との構成を省くとともに、この構成を省いた後の事項に対して、並列の関係にある選択肢を与えるべく「地盤又は、」との択一的記載を加え、また、経時性固化材が充填される態様の限定事項である「自己充填される」との構成を省き、「地下構造物の壁体」の限定事項である「地下構造物の本体壁体」との構成を省き、「地中壁」の限定事項である「ソイルセメント地中壁」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-02 
結審通知日 2005-11-08 
審決日 2005-11-22 
出願番号 特願2000-49141(P2000-49141)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E02D)
P 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 草野 顕子  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 佐藤 昭喜
柴田 和雄
発明の名称 地下構造物の壁体に利用する鋼製部材を芯材とした地中壁  
代理人 林 信之  
代理人 安彦 元  
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