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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1128734
審判番号 不服2003-2810  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-06-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-20 
確定日 2006-01-04 
事件の表示 平成 9年特許願第320170号「電話装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月 8日出願公開、特開平11-155013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年11月20日の出願であって、平成15年1月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月20日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年2月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年2月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成14年2月25日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項2は、
「【請求項2】文字コードを含む発呼者番号を検出する発呼者番号検出手段と、数字を入力する入力手段と、該入力手段により入力された所定の番号を記憶する記憶手段と、前記発呼者番号検出手段によって検出された発呼者番号と前記記憶手段に記憶された所定の番号とを比較し一致するか否かにより異なった処理を実行する制御手段とを備えた電話装置において、前記制御手段は、前記文字コードに数字の番号を対応させ前記入力手段によって入力された数字が前記文字コードに対応した数字である場合、この数字をこれに対応する文字コードに変換して前記記憶手段に記憶させ、前記比較を行うことを特徴とする電話装置。」(以下、「本願発明」という。)であるが、本件補正により、
「【請求項2】文字コードを含む発呼者番号を検出する発呼者番号検出手段と、数字を入力する入力手段と、該入力手段により入力された所定の番号を記憶する記憶手段と、前記発呼者番号検出手段によって検出された発呼者番号と前記記憶手段に記憶された所定の番号とを比較し一致するか否かにより異なった処理を実行する制御手段とを備えた電話装置において、前記制御手段は、前記文字コードに数字のみの番号を対応させ前記入力手段によって入力された数字が前記文字コードに対応した数字である場合、この数字をこれに対応する文字コードに変換して前記記憶手段に記憶させ、前記比較を行うことを特徴とする電話装置。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。
したがって、本件補正により、本願発明を特定するために必要な事項である「文字コードに数字の番号を対応させ」の構成を、「文字コードに数字のみの番号を対応させ」としたものであって、「のみ」との限定を付加したものということができるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用発明
原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願の日前である平成9年10月3日に頒布された特開平9-261335号公報(以下、「刊行物」という。)には、「通信装置」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電話機等の通信装置に関する。」(2頁左欄37行ないし39行)、
b)「【0016】
【発明が解決しようとする課題】・・・(中略)・・・
【0022】本発明は上述した従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その第1の目的とするところは、信用できる相手からの呼び出しであると確信できる場合にのみ通常の応答動作を行い、それ以外の場合には自動応答を行うことができる通信装置を提供しようとするものである。」(3頁右欄5行ないし36行)、
c)「【0030】(第1の実施の形態)まず、本発明の第1の実施の形態を図1及び図2に基づき説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る通信装置の構成を示すブロック図であり、同図中、100は通信装置で、表示部101と、CPU(中央処理装置)102と、入力部103と、記憶部104と、回線制御部105と、応答メッセージ蓄積部106とからなる。
【0031】表示部101は、相手から通知された発信者番号等の各種情報を表示するものである。CPU102は、通信装置100全体を制御するものである。入力部103は、通信相手の電話番号等の入力を行うものである。記憶部104は、通信装置100全体を制御するプログラムや通信相手の電話番号等を記憶するものである。回線制御部105は、通信回線を制御するものである。応答メッセージ蓄積部106は、自動応答する際に通信相手に送信する音声メッセージを蓄積しておくものである。
【0032】なお、通信装置100は、回線制御部105を介して外部の通信回線107に接続されている。また、記憶部104には、発信者が良く知っている信用できる相手の電話番号が、電話帳データベースとして記憶されているものとする。更に、以下の説明において、判断と実行は、CPU102が行う。」(4頁左欄36行ないし右欄8行)、
d)「【0033】次に、上記構成の通信装置100の動作を図1及び図2に基づき説明する。図2は、本実施の形態に係る通信装置100における着信動作の制御手順を示すフローチャートである。
【0034】着信の際には、図9に示すフォーマットに従って発信者番号、その他の情報が送られてくるので、まず、ステップS201で回線制御部105を介して発信者先の電話番号を取得する。次に、ステップS202で前記ステップS201において取得した情報に発信者番号が含まれているか否か、即ちパラメータ種別として発信者電話番号が含まれているか否かを判断する。そして、発信者番号が含まれていると判断された場合は、次のステップS203で発信者番号をキーとして記憶部104に格納されている電話帳データベースを検索する。次に、ステップS204で前記ステップS203における検索の結果を基に、発信者が信頼できる相手であるか否かを判断する。発信番号が電話帳データベースに登録されていれば信頼できる相手であると判断してステップS205に進み、呼び出し音を鳴動させてユーザーに着信を知らせた後、本処理動作を終了する。
【0035】一方、前記ステップS202において発信者番号が含まれていないと判断された場合並びに、次のステップS203で相手先の電話番号が電話帳データベースに入っていなければ前記ステップS204において発信者が信頼できる相手でないと判断して、いずれもステップS206に進む。このステップS206では、回線制御部105を操作して電話線に電流ループを形成して着信を行うと共に、応答メッセージ蓄積部106を操作して通信相手に対して「着信を拒否します。電話番号を付与して再度発信して下さい。」等の音声メッセージを再生して相手側に送った後、本処理動作を終了する。」(4頁右欄9行ないし39行)、
e)「【0037】(第2の実施の形態)次に、本発明の第2の実施の形態を図3に基づき説明する。なお、本実施の形態に係る通信装置の基本的な構成は、上述した第1の実施の形態における図1と同一であるから、同図を流用して説明する。但し、本実施の形態に係る通信装置における応答メッセージ蓄積部106は、通信相手に送信する音声メッセージを蓄積するのみならず、通信相手からの音声メッセージを蓄積する機能を持つものとする。
【0038】図3は、本発明の第2の実施の形態に係る通信装置における着信動作の制御手順を示すフローチャートである。同図におけるステップS301〜ステップS305は、上述した第1の実施の形態における図2のステップS201〜ステップS205と同一であるから、その説明は省略し、本実施の形態特有の処理ステップについてのみ説明する。
【0039】図3のステップS304において信用できる相手からの着信でないと判断された場合は、ステップS306に進み、応答メッセージ蓄積部106を操作して、相手端末に「ただいま外出しております。メッセージをどうぞ。」等の音声メセージを送出し、その後、相手からの音声メッセージを蓄積するような動作、即ち、留守番電話としての動作を行った後、本処理動作を終了する。
【0040】また、ステップS302において発信者番号が含まれていないと判断された場合は、ステップS307に進み、ステップS301において取得した発信者情報の中のパラメータ913(図9参照)の部分を見て、発信者番号が付与されていない理由について調べる。次に、ステップS308に進み、発信者番号が付与されていない理由が、発信者が番号通知を拒否したからか否か、即ち、P通知であるか否かを判断する。そして、発信者番号が付与されていない理由が、発信者が番号通知を拒否したからである場合は、ステップS309に進み、回線制御部105を操作して電話線に電流ループを形成して着信を行うと共に、応答メッセージ蓄積部106を操作して、通信相手に対して「着信を拒否します。電話番号を付与して再度発信して下さい。」等の音声メッセージを相手側に送った後、本処理動作を終了する。」(4頁右欄46行ないし5頁左欄34行)、
f)「【0056】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の通信装置によれば、信用できる通信相手からの呼び出しであると確信できる場合にのみ通常の応答動作を行い、それ以外の場合には自動応答を行うことができるので、繁雑な操作を行うことなく、着信者のプライバシーを高めることができるという効果を奏する。」(6頁右欄16行ないし22行)。
上記記載、及び技術常識を考慮すると、刊行物には、
「通信相手の電話番号等の入力を行う入力部103と、該入力部により入力された所定の番号を記憶する記憶部104と、回線から送られてくる発信者番号を回線制御部105を介して取得し、取得した発信者番号と前記記憶部に記憶された所定の番号とを比較し、一致する場合には、呼び出し音を鳴動させてユーザに着信を知らせ、一致しない場合には、着信拒否の応答メッセージを発信者に送出すると共に、発信者が番号通知を拒否したか否か、即ちP通知(文字コード)であるか否かを判断するCPU102とを備えた電話機等の通信装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較する。
a)引用発明は、「通信相手の電話番号等の入力を行う入力部103」を備えており、入力部103が数字を入力するキーを有することは技術常識であるから、「数字を入力する入力手段」を備える点で、本願補正発明と一致することは明らかである。
b)引用発明は、「該入力部により入力された所定の番号を記憶する記憶部104」を備えているから、「該入力手段により入力された所定の番号を記憶する記憶手段」を備える点で、本願補正発明と一致することは明らかである。
c)引用発明は、「発信者番号を検出し、検出した発信者番号と前記記憶部に記憶された所定の番号とを比較し、一致する場合には、呼び出し音を鳴動させてユーザに着信を知らせ、一致しない場合には、着信拒否の応答メッセージを送出する処理を実行するCPU102」を備えているから、「文字コードを含む発信者番号を検出する発信者番号検出手段」を制御手段(CPU102)とは別個に備える点、及び「前記文字コードに数字のみの番号を対応させ前記入力手段によって入力された数字が前記文字コードに対応した数字である場合、この数字をこれに対応する文字コードに変換して前記記憶手段に記憶させ、前記比較を行う」点を除き、「検出された発呼者番号と前記記憶手段に記憶された所定の番号とを比較し、一致するか否かにより異なった処理を実行する制御手段」を備える点で、本願補正発明と一致することは明らかである。
d)引用発明は、「電話機等の通信装置」の発明であるから、「電話装置」である点で、本願補正発明と一致することは明らかである。
したがって、本願補正発明と引用発明は、次の点で一致し、相違する。

(一致点)
数字を入力する入力手段と、該入力手段により入力された所定の番号を記憶する記憶手段と、検出された発呼者番号と前記記憶手段に記憶された所定の番号とを比較し、一致するか否かにより異なった処理を実行する制御手段とを備えた電話装置。

(相違点1)
本願補正発明は、文字コードを含む発呼者番号の検出を制御手段とは別個の発呼者番号検出手段で行うのに対して、引用発明は、前記検出をどこで(回線制御部105、またはCPU102)行うのか明示しない点。

(相違点2)
本願補正発明は、制御手段が、「前記文字コードに数字のみの番号を対応させ、前記入力手段によって入力された数字が前記文字コードに対応した数字である場合、この数字をこれに対応する文字コードに変換して前記記憶手段に記憶させ」、「前記比較」、即ち、発呼者番号検出手段により検出された文字コードを含む発呼者番号の有無を判定するために、記憶手段に文字コード、及び所定の番号を記憶し、この記憶された文字コード、及び所定の番号と前記検出された文字コードを含む発呼者番号との比較、「を行う」のに対して、引用発明は、記憶手段(記憶部)に所定の番号を記憶し、回線から送られてくる発呼者番号(発信者番号)と前記記憶手段に記憶された所定の番号とを比較するものである点。

(4)判断
そこで、まず、相違点1について検討する。
発呼者番号の検出を制御手段とは別個の発呼者番号検出手段により行うことは、例えば特開平7-235979号公報、特開平8-251639号公報に示されているように、周知であり、この別個の発呼者番号検出手段により文字コードを検出することは設計的事項にすぎないから、引用発明において、文字コードを含む発呼者番号の検出を制御手段とは別個の発呼者番号検出手段により行うことは、当業者が容易になし得ることである。
次に、相違点2について検討する。
まず、「前記比較を行う」点、即ち、発呼者番号検出手段により検出された文字コードを含む発呼者番号の有無を判定するために、記憶手段に文字コード、及び所定の番号を記憶し、この記憶された文字コード、及び所定の番号と前記検出された文字コードを含む発呼者番号との比較を行う点について検討すると、回線から文字コードを含む発呼者番号が送られてくる場合、その文字コード含む発呼者番号の有無を判定するためには、記憶手段にその文字コード、及び所定の番号を記憶して比較を行えばよいことが当業者に自明であるから、文字コードを含む発呼者番号の有無を判定するために、記憶手段に前記文字コード、及び所定の番号を記憶し、この記憶された文字コード、及び所定の番号と前記検出された文字コードを含む発呼者番号との比較を行うことは、当業者が容易になし得ることである。
次に、「前記文字コードに数字のみの番号を対応させ、前記入力手段によって入力された数字が前記文字コードに対応した数字である場合、この数字をこれに対応する文字コードに変換して前記記憶手段に記憶させ」る点について検討すると、入力手段によって入力された数字を、これに対応する文字(文字コード)に変換し、入力を行うことは周知(実開昭57-80245号(実開昭58-183549号)のマイクロフィルム)であり、そして、文字コード(例えば、「P」)と数字のみの番号(例えば「184」)が対応関係にあることも周知であるから、これらの周知技術によれば、入力手段によって入力する数字を前記文字コードに対応する数字とし、この数字を対応する前記文字コードに変換し、記憶手段に記憶させることは、当業者が適宜なし得ることである。
以上総合すると、制御手段が、「前記文字コードに数字のみの番号を対応させ、前記入力手段によって入力された数字が前記文字コードに対応した数字である場合、この数字をこれに対応する文字コードに変換して前記記憶手段に記憶させ、前記比較を行う」ものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1) 平成15年2月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明は、平成14年2月25日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、上記「2.(1)」の冒頭に記載した本願発明のとおりのものである。

(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明中の「文字コードに数字のみの番号を対応させ」から、「のみ」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件にさらに限定要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本願発明に関する作用・効果も、引用発明、及び、周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項2に係る発明について特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-28 
結審通知日 2005-11-01 
審決日 2005-11-18 
出願番号 特願平9-320170
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山中 実  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 小林 紀和
有泉 良三
発明の名称 電話装置  
代理人 芝野 正雅  
代理人 芝野 正雅  

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