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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1128751
審判番号 不服2003-6835  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-03-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-22 
確定日 2006-01-04 
事件の表示 特願2000-254377「インターネットを利用した入力管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月12日出願公開、特開2002- 73786〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年8月24日の出願であって、平成15年3月17日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年4月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

2.平成15年4月22日付手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年4月22日付手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本補正により、特許請求の範囲を、
「【請求項1】 作業対象となるデータを格納したファイルを収納する第1のフォルダと、作業中のファイルを収納する第2のフォルダと、作業終了後のデータを格納したファイルを収納する第3のフォルダと、を具備した作業管理用サーバーと、インターネットを経由して前記作業管理用サーバーにアクセスし、前記第1のフォルダから所定のファイルに格納された作業対象となるデータをダウンロードするとともに、作業終了後のデータを前記第3のフォルダにアップロードする作業者用クライアントと、前記作業管理用サーバーにアクセスし、前記第1乃至第3のフォルダに収納されたファイルの状態を監視する管理者用クライアントと、から構成され、前記作業者用クライアントが、前記作業対象となるデータをダウンロードすると、前記作業対象となるデータを格納したファイルは前記第1のフォルダから前記第2のフォルダに移動し、前記作業者用クライアントが、前記作業終了後のデータをアップロードすると、前記第3のフォルダは、前記作業終了後のデータを格納したファイルを収納し、前記作業対象となるデータを格納したファイルは前記第2のフォルダから前記第3のフォルダに移動する、ことを特徴とするインターネットを利用した入力管理システム。
【請求項2】 請求項1に記載の入力管理システムにおいて、前記第2のフォルダに移動した前記作業対象となるデータを格納したファイルは、所定時間内に前記作業後のデータがアップロードされなかったときには前記第1のフォルダに戻ることを特徴とする入力管理システム。」、
「【請求項4】 請求項1に記載の入力管理システムにおいて、前記第1のフォルダ内にある同一のフォルダから、同一の作業対象となるデータを複数の作業者用クライアントへダウンロードを許可し、各作業者用クライアントからの前記同一の作業対象となるデータに基づく作業終了後のデータの複数のアップロードを許可し、アップロードされた複数の作業終了後のデータ間の比較処理を行う手段を設けたことを特徴とするインターネットを利用した入力管理システム。
【請求項5】 請求項1に記載の入力管理システムにおいて、前記作業終了後のデータのアップロードは所定の入力フォーマットに従って行われることを特徴とする入力管理システム。」と補正しようとするものである。

上記補正は、補正前の請求項1、4、5に記載した発明を特定するために必要な事項(以下「特定事項」という。)である「作業後」について「終了」を付加し、「作業終了後」とし、補正前の請求項1、2に記載した特定事項である「所定のファイル」を「作業対象となるデータを格納したファイル」とし、補正前の請求項1に記載した特定事項である「前記作業後のデータをアップロードする」を「前記作業者用クライアントが、前記作業終了後のデータをアップロードする」とし、同特定事項である「所定のファイルは前記第2のフォルダから前記第3のフォルダに移動する」を「前記第3のフォルダは、前記作業終了後のデータを格納したファイルを収納し、前記作業対象となるデータを格納したファイルは前記第2のフォルダから前記第3のフォルダに移動する」とするもので、限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するかについて以下に検討する。

(2)引用例
原審の拒絶の理由に引用された、特開平11-259566号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.
「【0008】本発明は、上記の問題点に鑑み、インターネット等の外部に開かれたネットワーク環境の下において、不特定の発注元と不特定の請負先との間で、煩雑な交渉を行うことなく仕事の仲介を行うことを可能とする仕事仲介装置及びそれを実現するプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。」(3頁4欄26〜31行)

イ.
「【0045】請負先選定部320により請負先の選定が終了すると、情報送信部330は、請負先選定の結果を電子メール等の通信手段を利用して、選定された請負先、他の請負先、及び発注元に通知する。以下、請負先が決定した旨の通知を「請負先決定通知」という。この通知により、他の請負先は自己が請負先として選定されなかったことを知ることができ、また、発注元は請負先が決定したことを知ることができる。」(7頁11欄16〜23行)

ウ.
「(実施の形態5)次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態では、仕事の発注にあたり、自動的に仕事に必要な電子化された情報を請負先に転送することにより、さらに効率的な仕事の仲介を行う方法について説明する。
【0103】図26は、本実施の形態におけるブローカー300の構成を示すブロック図である。同図に示されるように、本実施の形態のブローカー300は、冒頭に説明した構成に加えてデジタル情報格納部360を備える。特許請求の範囲に記載した電子化情報記憶手段に対応する部分である。
【0104】デジタル情報格納部360には、例えば、翻訳の場合であれば、仕事の仲介が成立した際に請負先が用いる原文や、翻訳後の原稿等が格納される。ブローカー300への不正アクセスにより原文や原稿の内容を知られてしまうことを防ぐために、ブローカー300は、自らの秘密鍵で上記電子化情報を暗号化してからデジタル情報格納部360に保存し、秘密鍵はより安全性の高い記憶装置に格納しておくことが望ましい。また、本実施の形態の発注元クライアント100及び請負先クライアント200は、必要に応じて上記電子化情報をブローカー300に送信する機能と、必要に応じて上記電子化情報をブローカー300から受信する機能を備える。当該送受信の方法としては、例えばHTTP等の通信プロトコルに備えられたファイルのアップロード機能やダウンロード機能を用いる方法等が考えられる。
【0105】本実施の形態のブローカープログラムの処理内容は、例えば、図8で説明した内容と基本的に同一であるが、仕事の発注にあたっては、発注元クライアント100からブローカー300に対して仕事に必要な上記電子化情報を送信し、選定結果通知(S805)にあたっては、ブローカー300から請負先クライアント200に対して、上記電子化情報を送信するようにする。・・・(中略)・・・
【0107】なお、本実施の形態の構成において、請負先において仕事が終了した場合に、仕事終了時の電子化情報をブローカー300に送信するようにすることも可能である。・・・(中略)・・・
【0110】以上のような処理は、発注元から見れば、最初にブローカー300に対して仕事の発注を行う際に、仕事の実行に必要な電子化情報を予め転送しておくだけで、完成した仕事を受け取ることができることを意味する。即ち、例えば退社時に発注した場合に、ブローカー300により請負先が決定され、発注元が翌日に出社した際に既に請負先により仕事が完了しているといったことも可能となり、極めて効率的な仕事が実現することとなる。」(11頁19欄34行〜12頁21欄19行)

エ.
「(実施の形態6)次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。本実施の形態では、発注元が請負先の仕事の進捗状況を管理できるようにする方法について説明する。
【0111】本実施の形態のブローカー300の構成は、第5の実施の形態で説明したものと同一である。ただし、本実施の形態では、請負先クライアント200に必要に応じて仕事途中の電子化情報をブローカー300に送信する機能を備え、発注元クライアント100の側には、当該機能を用いてブローカー300に送信された電子化情報を取り出す機能を備える。
【0112】具体的には、請負先は翻訳を行いながら、随時(例えば一つの章の翻訳が完了するごとに)ブローカーサイトにアクセスする。図28は、仕事途中結果をブローカー300にアップロードする場合に請負先クライアント200に表示される画面の一例を模式的に示す図である。同図に示されるような画面で、ファイル名を指定することにより、当該ファイルを必要に応じて暗号化等した上でブローカー300にアップロードすることができる。この際に起動するブローカープログラムによりファイルのアップロードと同時に発注元クライアント100に対して仕事の途中結果がアップロードされたことを電子メール等の通知手段を用いて通知するようにしておけば、発注元は容易に仕事の進捗状況を確認することができる。発注元からファイルにアクセスする方法としては、例えば、仕事途中結果を確認する旨のダウンロードページと当該ファイルとの間にリンクを張っておくことが考えられる。
【0113】かかる機能を備えておくことにより、請負先に発注した仕事の進捗を、随時発注元の側で管理できるようになる。」(12頁21欄20〜50行)
引用例1には、上記ア.から
a.「インターネット等の外部に開かれたネットワーク環境の下において、不特定の発注元と不特定の請負先との間で、煩雑な交渉を行うことなく仕事の仲介を行うことを可能とする仕事仲介装置」、
上記a.と、上記ウ.の「本実施の形態では、仕事の発注にあたり、自動的に仕事に必要な電子化された情報を請負先に転送することにより、さらに効率的な仕事の仲介を行う方法」、「デジタル情報格納部360には、例えば、翻訳の場合であれば、仕事の仲介が成立した際に請負先が用いる原文や、翻訳後の原稿等が格納される」、「本実施の形態の発注元クライアント100及び請負先クライアント200は、必要に応じて上記電子化情報をブローカー300に送信する機能と、必要に応じて上記電子化情報をブローカー300から受信する機能を備える。当該送受信の方法としては、例えばHTTP等の通信プロトコルに備えられたファイルのアップロード機能やダウンロード機能を用いる方法等が考えられる」、「仕事の発注にあたっては、発注元クライアント100からブローカー300に対して仕事に必要な上記電子化情報を送信し、選定結果通知(S805)にあたっては、ブローカー300から請負先クライアント200に対して、上記電子化情報を送信するようにする」、「本実施の形態の構成において、請負先において仕事が終了した場合に、仕事終了時の電子化情報をブローカー300に送信するようにすることも可能である」から、
b.「インターネット等の外部に開かれたネットワーク環境の下において、デジタル情報格納部360から翻訳の場合に請負先が用いる原文の電子化情報のファイルをダウンロード機能を用いて受信し、翻訳後の原稿等の電子化情報のファイルをアップロード機能を用いて送信する請負先クライアント200」、
上記イ.と、上記ウ.の「仕事の発注にあたっては、発注元クライアント100からブローカー300に対して仕事に必要な上記電子化情報を送信し、選定結果通知(S805)にあたっては、ブローカー300から請負先クライアント200に対して、上記電子化情報を送信するようにする」、「請負先において仕事が終了した場合に、仕事終了時の電子化情報をブローカー300に送信するようにすることも可能である。さらにブローカー300は、発注元に電子メール等の通知手段で仕事の終了を通知し、その通知を受け発注元がブローカー300のサイトにアクセスした際に、ブローカー300が上記仕事終了時の電子化情報を発注元クライアント100へと転送する構成としてもよい」から、
c.「ブローカー300に対して仕事に必要な電子化情報を送信し、ブローカー300から請負先クライアント200に対して上記電子化情報が送信されると共に電子メール等の通信手段を利用して発注元に選定結果通知が通知され、請負先において仕事が終了した場合に、仕事終了時の電子化情報が送信されたブローカー300から発注元に電子メール等の通知手段で仕事の終了を通知される発注元クライアント100」が記載されている。

これらの記載より引用例1には次のことが記載されている。
「翻訳の場合に請負先が用いる原文や、翻訳後の原稿等の電子化情報のファイルが格納されるデジタル情報格納部360を備えたブローカ300と、
インターネット等の外部に開かれたネットワーク環境の下において、デジタル情報格納部360から翻訳の場合に請負先が用いる原文の電子化情報のファイルをダウンロード機能を用いて受信し、翻訳後の原稿等の電子化情報のファイルをアップロード機能を用いて送信する請負先クライアント200と、ブローカー300に対して仕事に必要な上記電子化情報を送信し、ブローカー300から請負先クライアント200に対して上記電子化情報が送信されると共に電子メール等の通信手段を利用して発注元に選定結果通知が通知され、請負先において仕事が終了した場合に、仕事終了時の電子化情報が送信されたブローカー300から発注元に電子メール等の通知手段で仕事の終了を通知される発注元クライアント100とを設けたインターネット等の外部に開かれたネットワーク環境の下にある仕事仲介装置」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

原審の拒絶の理由に引用された、特開平9-81637号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
オ.
「【0049】また、立上げ処理部7は、本システム立ち上げ時に、ワークフローを指定されることにより、そのワークフロー名に対応する各工程サインを読み出し、データ格納エリア設定部8に、各工程サインに対応したそれぞれのデータ格納エリアを設定する。すなわち、データ格納エリアは、対応する工程に用いるデータファイルを貯蔵する記憶領域である。ただし、ここで対応する工程には、データ格納エリアに格納されたのちに実行される処理のみでなく、格納前に行われる前処理も含む場合がある。
【0050】このデータ格納エリア設定部8は、サーバ計算機2の例えばハードディスク、メモリ等の記憶資源に確保されており、データ格納エリアは、例えばハードディスク内にその対応するディレクトリを作成する形で設定される。また、メモリ内には、そのディレクトリにどのようなデータファイルが格納されているかのデータ識別子を保存するキューも設けられ、これもデータ格納エリアの一部をなしている。
【0051】したがって、例えば工程A0に対応するデータ格納エリアDA0として、ディレクトリA0が設けられ、当該ワークフローシステムでの処理対象となる各データは、例えばデータファイルとして、そのディレクトリ内に保存される。」(第5頁7欄3〜26行)

上記オ.から、データ格納エリアは、工程に対応するデータファイルを格納するものであるといえる。
したがって、引用例2には、「サーバ計算機2のデータ格納エリア設定部8に工程に対応するデータファイルを格納するデータ格納エリアを設けたワークフローシステム」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを比較する。
引用発明1の「翻訳の場合に請負先が用いる原文の電子化情報のファイル」、「翻訳後の原稿等の電子化情報のファイル」は、本願補正発明の「作業対象となるデータを格納したファイル」、「作業終了後のデータを格納したファイル」に相当する。
引用発明1の「ブローカー300」は翻訳の場合に請負先が用いる原文の電子化情報のファイル、及び、翻訳後の原稿等の電子化情報のファイルを格納するデジタル情報格納部360を備えたものであり、後述する相違点1を除いて、本願補正発明の「作業用管理サーバ」に相当する。
引用発明1の「請負先クライアント200」が「インターネット等の外部に開かれたネットワーク環境の下において、デジタル情報格納部360から翻訳の場合に請負先が用いる原文の電子化情報のファイルをダウンロード機能を用いて受信し、翻訳後の原稿等の電子化情報のファイルをアップロード機能を用いて送信する」ことは、本願発明の「作業用クライアント」がインターネットを経由して前記作業管理用サーバーにアクセスし、所定のファイルに格納された作業対象となるデータをダウンロードするとともに、作業終了後のデータをアップロードすることに一致する。
引用発明1の「発注元クライアント100」が「ブローカー300に対して仕事に必要な上記電子化情報を送信し、ブローカー300から請負先クライアント200に対して上記電子化情報が送信されると共に電子メール等の通信手段を利用して発注元に選定結果通知が通知され、請負先において仕事が終了した場合に、仕事終了時の電子化情報が送信されたブローカー300から発注元に電子メール等の通知手段で仕事の終了を通知される」ことは、電子化情報のファイルのブローカーと請負先クライアントとの間の移動により生じる作業状態の作業前、作業中、作業終了の変化と共に発注元クライアントに電子化情報の移動が通知されることから、発注元クライアントが電子化情報のファイルの作業前、作業中、作業終了の作業状態を認知することであり、本願発明の「管理者用クライアント」がファイルの状態を認知することに相当する。

したがって、両者は、「作業対象となるデータを格納したファイルと、作業終了後のデータを格納したファイルを収納する作業管理用サーバーと、インターネットを経由して前記作業管理用サーバーにアクセスし、所定のファイルに格納された作業対象となるデータをダウンロードするとともに、作業終了後のデータをアップロードする作業者用クライアントと、前記作業管理用サーバーにアクセスし、ファイルの状態を認知する管理者用クライアントと、から構成されるインターネットを利用したシステム」で一致し、以下の点において相違する。

(相違点1)
本願補正発明は、作業管理用サーバーは第1のフォルダ、第2のフォルダ、第3のフォルダを具備し、作業状態を管理するのに管理者用クライアントが作業管理用サーバーを監視するのに対し、引用発明1のブローカのデジタル情報格納部はファイルを管理するフォルダを具備しているのか不明であり、また、引用発明1の上記(2)エ.に記載の仕事の進捗状況を管理するのに通知手段で通知されることから、上記(2)c.の通知手段で通知されることは、認知するだけでなく管理する側面があり、すなわち、管理手段として発注元クライアント100が仕事の進捗状況をブローカーから通知手段を用いて通知される点。

(相違点2)
本願補正発明は、作業対象となるデータを格納したファイルを第1のフォルダからダウンロードすると第2のフォルダに移動し、作業終了後のデータをアップロードすると作業対象となるデータを格納したファイルは第2のフォルダから第3のフォルダに移動するのに対し、引用発明1の請負先クライアント200に対してダウンロードされた原文ファイルは請負先が仕事途中の間にデジタル情報格納部360でどのような状態であるのか、また、請負先クライアント200が仕事終了後の電子化情報をアップロードする際に、原文ファイルはデジタル情報格納部360でどのように処理されるのか不明である点。

(相違点3)
本願補正発明は、「入力管理システム」であるのに対し、引用発明1は、「仕事仲介装置」である点。

(4)当審の判断
相違点1について
引用発明2には、サーバ計算機2のデータ格納エリア設定部8に工程に対応するデータファイルを格納するデータ格納エリアがあり、引用発明1,2は共に入力作業を管理する装置の技術分野では同一であるから、引用発明1のブローカーのデジタル情報格納部のファイル管理として引用発明2のデータ格納エリアを作業前、作業中、作業終了の作業工程を識別する3つのデータ格納エリアとして設け、請負先クライアントがブローカーからの通知手段により作業を管理する代わりにブローカーのデジタル情報格納部のファイルの状態を監視することにより作業を管理することは当業者が容易に実施し得るものと認められる。

相違点2について
ファイル管理において、出力前のファイルの作業状態が示されているフォルダ内のファイルを外部に出力する場合に、出力前のファイルの作業状態が示されているフォルダ内のファイルを、バックアップファイルとしてファイルが外部に出力されている作業状態が示されたフォルダ内に移動して格納すること、及び、特定のファイルの作業状態が示されているフォルダ内のファイルを別のファイルの作業状態が示されているフォルダ内に移動することでファイルの作業状態が変更したことを示すことは周知である。このことは、例えばMicrosoft Outlook 97 オフィシャルマニュアル,株式会社アスキー,1997年12月31日発行,18ないし23頁には、送信トレイフォルダは、送信メールをサーバーに渡すためにメッセージを一時的に保存しておくフォルダで、送信済みアイテムフォルダは、送信したメッセージのコピーを保存し、このフォルダは、後で参照する必要があったり、もう一度メッセージを送信する必要がある場合のためにメッセージを格納しておく場所として利用でき、削除済みアイテムフォルダからアイテムを削除を実行すると、そのアイテムは削除済みアイテムフォルダに移動することが示され、また、INTERNET Surfer,エーアイ出版社,1996年11月1日発行,第1巻第6号,77〜81頁には、送信箱は、送信するメールを一時保管するフォルダで、複数のメールを一括して送信したいとき利用し、送信済みは、送信したメールのコピーを保管しておくフォルダで、草稿は、書きかけのメールを一時保管しておくフォルダであることが示されている。
引用発明1のブローカーのデジタル情報格納部から請負先クライアント200に対してダウンロードする場合に、ファイル管理としてデジタル情報格納部に引用発明2のデータ格納エリアを作業前、作業中、作業終了の作業工程を識別する3つのデータ格納エリアとして設け、原文ファイルをバックアップファイルとして作業前のデータ格納エリアから作業中のデータ格納エリアに移動して格納し、さらに、請負先クライアント200からの仕事終了の電子化情報(ファイル)のアップロードの場合に、作業中のデータ格納エリアの前記原文ファイルを作業終了のデータ格納エリアに移動することは当業者が容易に想到し得るものと認められる。

相違点3について
引用発明1の仕事仲介装置は仕事を仲介するとともに入力作業の一つである翻訳作業の管理を行うものであり、その入力作業の管理の側面からこの装置を入力管理システムと称することに何ら阻害する要因はない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1,2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)平成15年4月22日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】作業対象となるデータを格納したファイルを収納する第1のフォルダと、
作業中のファイルを収納する第2のフォルダと、作業終了後のデータを格納したファイルを収納する第3のフォルダと、を具備した作業管理用サーバーと、インターネットを経由して前記作業管理用サーバーにアクセスし、前記第1のフォルダから所定のファイルに格納された作業対象となるデータをダウンロードするとともに、作業後のデータを前記第3のフォルダにアップロードする作業者用クライアントと、前記作業管理用サーバーにアクセスし、前記第1乃至第3のフォルダに収納されたファイルの状態を監視する管理者用クライアントとから構成され、前記作業者用クライアントが、前記作業対象となるデータをダウンロードすると、前記所定のファイルは前記第1のフォルダから前記第2のフォルダに移動し、前記作業後のデータをアップロードすると、前記所定のファイルは前記第2のフォルダから前記第3のフォルダに移動することを特徴とするインターネットを利用した入力管理システム。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2及びその記載事項は、前記「2.(2)」 に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明1,2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1,2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1,2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-14 
結審通知日 2005-10-25 
審決日 2005-11-07 
出願番号 特願2000-254377(P2000-254377)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 岡本 俊威
大野 弘
発明の名称 インターネットを利用した入力管理システム  
代理人 萩原 誠  

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