ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
---|---|
管理番号 | 1128778 |
審判番号 | 不服2003-15002 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-08-04 |
確定日 | 2006-01-04 |
事件の表示 | 平成11年特許願第346879号「無線通信システムにおける無線資源割当方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月28日出願公開、特開2000-209232〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年12月6日(パリ条約による優先権主張1998年12月31日、大韓民国)の出願であって、平成15年4月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年8月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明 (1)本願発明について 本願の請求項1に係る発明は、平成11年12月6日付けで出願された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】複数の無線端末とブリッジの機能をする単一のAPとからなる無線通信システムにおいて無線資源を割り当てる方法であって、 (a)前記APが、該当無線端末に無線資源を割り当て、該無線端末からデータを受け取るステップと、 (b)前記APが、前記受け取ったデータにエラーが生じたかどうかをチェックするステップと、 (c)前記ステップ(b)において、データにエラーが生じた場合、前記APは、1フレーム内において、前記無線端末に向けてエラー発生メッセージを伝送すると同時に、前記無線端末から再送されたデータを受信するための無線資源を割り当てるステップとを含むことを特徴とする無線通信システムにおける無線資源割当方法。」(以下、「本願発明」という。) (2)引用例に記載された発明 原審の拒絶の理由に引用された特開平6-232871号公報(以下、「引用例」という。)には、次のような記載がある。 イ)「【請求項1】 パケットを構成するデ-タ系列の少なくとも一部を複数のビット列に分割し、各ビット列ごとに異なるキャリア周波数を用いて、複数の無線端末間で無線伝送を行う無線通信システムにおいて、 前記各無線端末は、 受信した自己宛てのパケットの各ビット列をそれぞれ正しく受信できたか否かをチェックするチェック手段と、 前記チェック手段により正しく受信できなかったビット列が判定され、かつ該ビット列の数が予め設定された条件を満足する場合、該ビット列のうちの少なくとも一部のビット列の再送要求を、正しくビット列を受信できたキャリア周波数を用いて送信元の無線端末宛てに送出する再送要求手段と、 前記再送要求を受信した場合、再送を要求されたビット列を、正しくビット列を伝送できたキャリア周波数を用いて再送要求元の無線端末宛てに再送する再送手段とを具備することを特徴とする無線通信システム。」(第2頁第1欄第2行〜第18行) ロ)「【0036】図5は無線端末間での通常パケット、再送要求パケットおよび再送パケットの通信手順を示している。 【0037】同図に示すように、まず送信元無線端末は、伝送データ系列の一部を3つのビット列に分割し、これにパリティ検査ビット列を加えた計4つのビット列をそれぞれ周波数の異なる4つのキャリアに個々に割り当てて通常パケットの送出を行う。 【0038】通常パケットを受信した無線端末は、各受信ビット列を復調後、復号化部13のC2復号器13bにてブロック単位の誤り訂正を行う。この誤り訂正で誤りが訂正しきれないビット列を2つまたは3つ判定した場合、または復調器10a〜10dで受信信号レベルが極端に低い等の理由で通信不能となったキャリアを2つまたは3つ判定した場合、受信無線端末は正しく受信できなかったビット列のうちの一つを除いたビット列の再送を要求する内容の再送要求パケットを生成してこれを送信元無線端末宛てに送付する。このとき、受信無線端末は、正しくビット列を受信できたすべてのキャリア周波数を使って再送要求パケットを送出する。 【0039】再送要求パケットを受信した送信元無線端末は、同パケット中の再送要求キャリア情報から再送を行うべきビット列を判断して再送パケットを生成し、この再送パケットを正常受信キャリア情報から判断される通信可能なキャリア周波数を用いて受信無線端末宛てに送付する。 【0040】このとき、図6に示すように、再送するビット列が一つの場合(通信可能なキャリアが2つの場合)は、通信可能なすべてのキャリア周波数を用いて並列に再送パケットを送出する。また、図7に示すように、再送するビット列が2つの場合(通信可能なキャリアが1つの場合)は、これらのビット列を通信可能な一つのキャリア周波数を用いて2回に別けて送出する。」(第5頁第8欄第3行〜第35行) 以上の記載及び図面、技術常識を総合すれば、引用例には、「複数の無線端末からなる無線通信システムにおいて、パケットを構成するデータ列の少なくとも一部を複数のビット列に分割し、各ビット列ごとに異なるキャリア周波数を指定する複数の無線端末間の無線資源の指定方法であって、 無線端末が他の無線端末から自己宛てのパケットを受信するステップと、 前記無線端末が自己宛てのパケットの各ビット列をそれぞれ正しく受信できたか否かをチェックするステップと、 ビット列のうちの少なくとも一部のビット列の再送要求を、正しくビット列を受信できたキャリア周波数を指定して送信元の無線端末宛てに送出する再送要求を行うステップと、 前記再送要求を受信した場合、再送を要求されたビット列を、正しくビット列を伝送できたキャリア周波数を指定して、再送要求元の無線端末宛てに再送するステップを含む無線通信システムにおける無線資源の指定方法。」の発明(以下、「引用例に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3)対比・判断 本願発明と引用例に記載された発明を対比する。 a.引用例に記載された発明の「各ビット列ごとに異なるキャリア周波数を指定する複数の無線端末間の無線資源の指定方法」と本願発明の「無線資源を割り当てる方法」は、キャリア周波数は、無線資源であり、無線資源を指定することと割り当てることは、ともに、無線資源を指定することで一致するから、「無線資源の指定方法」の点で、一致する。 b.引用例に記載された発明の「他の無線端末から自己宛てのパケットを受信するステップ」は、パケットは、データであるので、本願発明の「無線端末からデータを受け取るステップ」に相当する。 c.引用例に記載された発明の「自己宛てのパケットの各ビット列をそれぞれ正しく受信できたか否かをチェックするステップ」は、パケットは、データであるので、本願発明の「前記受け取ったデータにエラーが生じたかどうかをチェックするステップ」に相当する。 d.引用例に記載された発明の「ビット列のうちの少なくとも一部のビット列の再送要求を、正しくビット列を受信できたキャリア周波数を指定して送信元の無線端末宛てに送出する再送要求を行うステップ」は、再送要求をするということは、データに誤りが生じたことを示すから、本願発明の「ステップ(b)において、データにエラーが生じた場合、前記無線端末に向けてエラー発生メッセージを伝送する」ことに相当する。 e.引用例に記載された発明の「前記再送要求を受信した場合、再送を要求されたビット列を、正しくビット列を伝送すべきキャリア周波数を指定して、再送要求元の無線端末宛てに再送するステップ」と本願発明の「前記無線端末から再送されたデータを受信するための無線資源を割り当てるステップ」は、キャリア周波数は無線資源であり、キャリア周波数を指定して、再送するステップと、無線資源を割り当てるステップは、共に、無線資源を指定するステップの点で、同じであるから、「前記無線端末から再送されたデータを受信するための無線資源を指定するステップ」の点で、一致する。 f.引用例に記載された発明の「無線資源の指定方法」と本願発明の「無線資源割当方法」は、「無線資源の指定方法」の点で、一致する。 してみれば、本願発明と引用例に記載された発明は、 「複数の無線端末からなる無線通信システムにおいて無線資源の指定方法であって、 (a)該無線端末からデータを受け取るステップと、 (b)前記受け取ったデータにエラーが生じたかどうかをチェックするステップと、 (c)前記ステップ(b)において、データにエラーが生じた場合、前記無線端末に向けてエラー発生メッセージを伝送し、前記無線端末から再送されたデータを受信するための無線資源を指定するステップとを含むことを特徴とする無線通信システムにおける無線資源の指定方法。」の点で、一致し、以下の点で、相違する。 [相違点1] 無線通信システムが、本願発明では、複数の無線端末とブリッジの機能を有する単一のAPとからなるのに対して、引用例に記載された発明では、複数の無線端末からなる点。 [相違点2] エラーが生じた場合の無線資源の指定に関し、本願発明では、同時にしているのに対して、引用例に記載された発明では、同時に行っていない点。 [相違点3] 無線資源の指定を行うのに、本願発明では、無線資源の割り当てを行っているのに対して、引用例に記載された発明では、無線資源の指定を行っている点。 [相違点4] 本願発明では、エラー発生メッセージを、1フレーム内において、伝送しているのに対して、引用例では、それについての記載がない点。 上記相違点について、検討する。 [相違点1〜3]について AP(基地局)と複数の無線端末(移動通信端末)からなる無線通信システムで、基地局が無線資源(タイムスロット)を割り当て、無線端末(移動通信端末)からの受信品質に応じて、再送するための無線資源(タイムスロット)を同時に指示して割り当てている移動通信システムは、特開平6-284062号公報【0049】に示されるように周知であり、アクセスポイントがブリッジ機能を有することは、上記周知例、特開平10-164073号公報図1に示されるように自明なことであるから、引用例に記載された発明において、複数の無線端末とブリッジの機能をする単一のAPとからなる無線通信システムにおいて、エラーが生じたら、同時に無線資源の割り当てを行うことは、当業者が容易になし得ることと認められる。 [相違点4]について エラー発生メッセージを伝送するのに、1フレーム内において行うことは、当業者が、エラーの検出単位に応じて、適宜設定する設計的事項に過ぎないものであるから、引用例に記載された発明において、1フレーム内において、行うことは、当業者が容易になし得ることと認められる。 従って、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用例に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-08-08 |
結審通知日 | 2005-08-09 |
審決日 | 2005-08-22 |
出願番号 | 特願平11-346879 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 萩原 義則、石井 研一 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
望月 章俊 小林 紀和 |
発明の名称 | 無線通信システムにおける無線資源割当方法 |
代理人 | 志賀 正武 |