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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1128781
審判番号 不服2003-16179  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-21 
確定日 2006-01-04 
事件の表示 平成10年特許願第351913号「山伏茸を配合した健康食品」拒絶査定不服審判事件〔平成12年6月20日出願公開、特開2000-166499〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本件発明

本件出願は、平成10年12月10日の特許出願であって、その請求項1乃至3に係る発明は、平成15年5月23日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項1】小麦粉を主原料とする食品であって、山伏茸(Hericium erinaceum)の粉末(但し、加熱処理したもの及びプロテアーゼ不活化処理したものを除く。)とカワリハラタケ(Agaricus blazai Murill)とが必須原料として配合されてなり、麺に加工されてなることを特徴とする健康食品。」

2.引用例記載事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された刊行物である(1)特開平9-19269号公報、(2)特開昭61-212251号公報、(3)特開平2-211848号公報(以下、「引用例1乃至3」という。)の記載内容を検討する。
引用例1には、(a)「【請求項1】サンゴハリタケ(Hericium)属のきのこ子実体又はその処理物を添加することを特徴とする飲食品の製造方法。【請求項2】サンゴハリタケ(Hericium)属のきのこがヤマブシタケである請求項1記載の飲食品の製造方法。【請求項3】処理物がエタノール抽出物である請求項1又は2記載の飲食品の製造方法。【請求項4】処理物が磨砕物である請求項1又は2記載の飲食品の製造方法。【請求項5】処理物が乾燥粉体である請求項1又は2記載の飲食品の製造方法。」(特許請求の範囲)が記載され、(b)「本発明において対象となる飲食品は、その種類に特に制限はなく、ベイク品、発酵品、練り製品、乳製品、油脂製品、調味料、菓子、これらの中間製品等の食品、及びコーヒー、ココア、茶、果実ジュース、野菜ジュース、発酵飲料、清涼飲料、これらの中間製品等の飲料である。」(段落【0005】)こと、(c)「本発明において添加するサンゴハリタケ属のきのこ子実体はサンゴハリタケ、ヤマブシタケであるが、なかでも合目的的にヤマブシタケが好ましい。」(段落【0006】)こと、(d)「・実施例3(クッキーの製造) 薄力粉200g 、及びヤマブシタケ子実体の乾燥粉末20g を充分に混合した。別に無塩バター100g 、粉砂糖80g 、及び卵1個を充分に混合した。双方を充分に混合し、冷蔵庫で40分間静置した後、裁断して、170℃のオーブンで12分間焼き、クッキーを製造した。【発明の効果】既に明らかなように、以上説明した本発明には、神経成長因子産生誘導作用を有する新規飲食品を製造できるという効果がある。」(段落【0014】〜【0015】)ことが記載されている。
引用例2には、(e)「そば、うどん等の麺類の種類に応じた原料穀粉にえのきだけの粉末を加えて均一に混合し、常法により、麺類に成形することを特徴とする麺類の製造方法。」(特許請求の範囲)が記載され、(f)「・・・又、舌触りが実に滑らかで、口あたりに優れており、これは、えのきだけのぬめり成分(多糖体)が原料澱粉に作用して発現するものと一応推定される。更に又、本願麺類は、えのきだけ特有のほのかなエステル様の香りが、そば、うどんの、本来の香りとまじりあって、飽きのこない独自の風味を有しており、新しい麺類の味を提供するものである。」(公報第2頁左下欄第14行〜右下欄第2行)こと、(g)「・・・又、えのきだけ粉末は、精白小麦粉に欠乏する食物繊維を補強する効果があり、・・・健康食品としても優れている。」(公報第2頁右下欄第10〜14行)ことが記載され、引用例3には、(h)「(1)カワリハラタケの子実体、子実体の乾燥品を小片状に切断あるいは細粉化して、カワリハラタケ特有の蛋白多糖体成分を含有する機能性食品」(特許請求の範囲第1項)が記載され、(i)「カワリハラタケは普通の食用キノコとしても美味で栄養的にもすぐれたものもあるが、さらにこのキノコの水性溶媒抽出液が極めて顕著な抗腫瘍性を有することがわかった。・・・カワリハラタケは人体の免疫活性を賦活する作用を有し、・・・抗糖尿病作用・・・など興味ある薬理作用が蓄積され既に公表されている。」(公報第2頁左上欄第4行〜右上欄第17行)ことが記載されている。

3.対比・判断

本件発明1は、小麦粉を主原料とし、加熱処理もプロテアーゼ不活化処理もされていない、山伏茸(Hericium erinaceum)の粉末とカワリハラタケ(Agaricus blazai Murill)とが必須原料として配合され、麺に加工されてなる健康食品であって、栄養成分や生理活性成分の変質や失活を招く心配がなく、しかも栄養成分がバランス良く含まれており、優れた血糖値降下作用や免疫促進作用などの生体調節機能を有し、味においても優れており、飽きることなく連用することができるものである。
これに対して、上記引用例1には、「山伏茸の粉末を配合した神経成長因子産生誘導作用を有するクッキー。」が記載されている。
本件発明1と上記引用例1に記載された発明(以下、「引用例発明」という。)とを対比すると、後者の山伏茸が、加熱処理もプロテアーゼ不活化処理もされていないことは明らかであり、後者の「神経成長因子産生誘導作用を有するクッキー」は「小麦粉健康食品」であるといえ、前者の「麺に加工されてなる健康食品」も「小麦粉健康食品」であるといえるから、両者は、「加熱処理してないあるいはプロテアーゼ不活化処理もしていない山伏茸の粉末を配合した小麦粉健康食品。」である点で一致し、(A)小麦粉健康食品に関して、前者が「麺」であるのに対して、後者が「クッキー」である点、(B)前者がカワリハラタケを必須原料として配合しているのに対して、後者がそのような特定がない点で相違する。
そこで、これら相違点について検討する。

相違点(A)について
引用例2には、麺類の種類に応じた原料穀粉にえのきだけの粉末を加えて均一に混合し、麺類に成形することにより得られた麺類は、えのきだけのぬめり成分(多糖体)が原料澱粉に作用すること、えのきだけ特有のほのかなエステル様の香りが、そば、うどんの、本来の香りとまじりあって、飽きのこない独自の風味を有すること、蛋白小麦粉に欠乏する食物繊維を補強する効果があり、健康食品としても優れていることが記載されている。
引用例2の麺類は、引用例発明と同様の、キノコを配合した小麦粉健康食品であり、また、引用例1には飲食品の種類は特に制限されないことが記載されているから、引用例発明に引用例2記載の技術を適用して、小麦粉健康食品として、麺類を選択し、加熱処理してないあるいはプロテアーゼ不活化処理もしていない山伏茸の粉末を配合した麺に加工されてなる小麦粉健康食品とすることは当業者が容易に想到し得るところであり、それを妨げる特段の理由も見出せない。

相違点(B)について
引用例3に記載されているとおり、カワリハラタケを含有する機能性食品や、カワリハラタケは人体の免疫活性を賦活する作用を有し、抗糖尿病作用を有することは周知の事項である。
ここで、機能性食品或いは健康食品を製造する際に、有用物質を含有する食品素材を複数同時に用いることは、広く行われていることであるから、引用例発明において、山伏茸に加えて、引用例3に記載された免疫活性賦活作用、抗糖尿病作用を有するカワリハラタケを更に添加することは、当業者が適宜なし得ることである。

そして、本件発明1の、栄養成分や生理活性成分の変質や失活を招く心配がなく、しかも栄養成分がバランス良く含まれており、優れた血糖値降下作用や免疫促進作用などの生体調節機能を有し、味においても優れており、飽きることなく連用することができるという効果も、上記記載事項(d)(f)(g)(i)等から当業者が予期しうる効果にすぎない。
したがって、本件発明1は、本件の出願日前に頒布された引用例1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

審判請求人は、審判請求書において「(1)呈味性に劣ることが周知であったカワリハラタケを山伏茸に配合することによって、呈味性に優れた健康食品が得られることを見出した(出願時明細書の段落番号段落【0005】及び後述する試験例参照)、(2)カワリハラタケと山伏茸を共に含有した場合、栄養成分のバランスに優れた健康食品とすることができるとともに、血糖値降下作用や免疫促進作用などの生体調節機能を相乗的に高めることができる」旨主張しているので検討する。

主張(1)について
審判請求人は、カワリハラタケの呈味性に劣ることは周知であると主張するが、上記記載事項(i)のとおり、カワリハラタケにも美味なものもあるから、カワリハラタケを山伏茸に配合することによって、呈味性に優れた健康食品が得られることは、引用例3に接した当業者が、当然に期待するところである。
そして、健康食品において、異なる成分を含むものを併用して味や効果を高めることは通常のことであり、麺の味は、配合成分と、配合成分の配合量、調理法等を工夫することにより、当業者が適宜調整し得るものであるから、本件発明1の麺の味が多少良かったとして、これを以て格別な効果とすることはできない。

主張(2)について
血糖降下作用や免疫促進作用について、上記記載事項(i)のとおり、カワリハラタケに該作用があることが周知であり、健康食品において、異なる成分を含むものを併用して栄養成分のバランスをとり、効果を高めることは通常行うことであるから、山伏茸とカワリハラタケを組み合わせて、血糖降下作用や免疫促進作用を得ることは、適宜なし得るところである
そして、山伏茸とカワリハラタケを組み合わせたことによる相乗効果は特に認められない。

4. むすび

以上のとおり、本件発明1は、その出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2乃至3に係る発明について判断するもでもなく本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-26 
結審通知日 2005-10-31 
審決日 2005-11-16 
出願番号 特願平10-351913
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深草 亜子六笠 紀子  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鈴木 恵理子
鵜飼 健
発明の名称 山伏茸を配合した健康食品  
代理人 清原 義博  

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