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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1128782
審判番号 不服2003-16249  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-09-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-22 
確定日 2006-01-04 
事件の表示 特願2001-107789「畜肉・鶏肉等の食肉処理環境および食品加工環境用殺菌剤。」拒絶査定不服審判事件〔平成14年9月10日出願公開、特開2002-253188〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本件出願は、平成13年3月2日の特許出願であって、平成15年7月10日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対して同年8月22日付で本件審判の請求がされるとともに、同年9月22日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年9月22日付け手続補正(以下、「本件補正という」。)について

[補正却下の決定の結論]

平成15年9月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]

本件補正は、特許請求の範囲を下記のように補正し、同時に請求項の記載と整合性をとるために、発明の詳細な説明欄の記載を補正しようとするものである。

「【請求項1】エタノールとグリセリン脂肪酸エステルの配合物に、クエン酸とその塩および乳酸とその塩を組合わせてなる、家畜の腸管保菌である腸管出血性大腸菌、サルモネラ、および黄色ブドウ球菌を完全に殺菌する作用のある、畜肉・鳥肉の殺菌用および食肉製品の殺菌用ならびに食肉加工環境の微生物制御用の殺菌剤。」

上記補正は、補正前の請求項1「エタノールとモノグリ配合物にポリリジンおよびアミノ酸、有機酸と有機酸塩を組合わせてなる、畜肉・鳥肉の殺菌および食肉製品の殺菌ならびに食肉加工環境の微生物制御を目的とした殺菌剤。」から「ポリリジンおよびアミノ酸」を削除し、「有機酸と有機酸塩」を「クエン酸とその塩および乳酸とその塩」に限定し、「畜肉・鳥肉の殺菌および食肉製品の殺菌ならびに食肉加工環境の微生物制御を目的とした殺菌剤」を「家畜の腸管保菌である腸管出血性大腸菌、サルモネラ、および黄色ブドウ球菌を完全に殺菌する作用のある、畜肉・鳥肉の殺菌および食肉製品の殺菌ならびに食肉加工環境の微生物制御を目的とした殺菌剤」に限定するものである。
「ポリリジンおよびアミノ酸」を削除する補正については、請求項の記載では、「ポリリジン」及び「アミノ酸」が必須の成分であるとは一義的に明確とはいえない。そこで、発明の詳細な説明を参酌すると、本件明細書の、段落【0015】には、「本発明を実施するにあたり、(1)変性エタノールを59.22W/w%以下にグリセリン脂肪酸エステル0.3〜0.8%以下を配合し溶解する。(2)次にクエン酸0.1〜1.5%とクエン酸塩0.1〜1.5%と乳酸0.2〜2.0%と乳酸塩0.2〜2.0%のすべてを水分中に溶解させたのち(1)と混合し、全量が100となるように配合して基本剤とし、塩基性アミノ酸、同タンパク質およびアミノ酸のうち1種もしくは2種を混合するときはその分だけ水分量を減ずる。」と記載されているから、「ポリリジン」及び「アミノ酸」は選択的な成分であると解される。そうすると、当該補正は、「エタノールとモノグリ配合物にポリリジンおよびアミノ酸、有機酸と有機酸塩を組合わせてなる」という発明特定事項から、「ポリリジンおよびアミノ酸」という択一的記載の要素を削除する補正であるものと認められるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「有機酸と有機酸塩」という発明特定事項を「クエン酸とその塩および乳酸とその塩」に限定し、「畜肉・鳥肉の殺菌および食肉製品の殺菌ならびに食肉加工環境の微生物制御を目的とした殺菌剤」という発明特定事項を「家畜の腸管保菌である腸管出血性大腸菌、サルモネラ、および黄色ブドウ球菌を完全に殺菌する作用のある、畜肉・鳥肉の殺菌および食肉製品の殺菌ならびに食肉加工環境の微生物制御を目的とした殺菌剤」に限定する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記補正は、補正前と補正後の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、本件「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであって、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するかについて以下に検討する。

3.本件発明について

1)引用例記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された特開平2-20271号公報(以下、「引用例」という。)には、(a)「(1)無水エタノールもしくはエタノール濃度30重量%以上の含水エタノールにポリリシンを添加してなる食品保存用エタノール製剤。・・・(5)グリシン、低級脂肪酸モノグリセライド、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸もしくはこれらのナトリウム塩及び酢酸ナトリウムの中から選ばれた1以上をさらに添加してなる請求項1もしくは請求項2記載の食品保存用エタノール製剤。」(特許請求の範囲)が記載され、(b)「エタノールが微生物の増殖を抑制することは経験的に古くから知られており、食品工場の衛生管理、食品の保存対策にエタノールが広く使われている。また、エタノールに保存性向上剤たとえば天然もしくは合成の食品添加物であるフマル酸、リンゴ酸、クエン酸などの有機酸およびそのナトリウム塩、食塩、酸化カルシウム、グリシン、低級脂肪酸エステル(グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)などを添加した食品保存用エタノール製剤が使用されている。」(公報第1頁右下欄第12行〜公報第2頁左上欄第2行)こと、(c)「以上の記述から明らかなように、本発明の目的は、各種細菌類、かびだけでなく、酵母菌に対しても優れた防腐効果を有する食品保存用エタノール製剤を提供することである。」(公報第2頁左上欄第20行〜右上欄第3行)こと、(d)「本発明のエタノール製剤にあっては、食品の保存効果を一層高めるために、ポリリシンもしくはその塩のほかにリンゴ酸、クエン酸、フマル酸といった有機酸もしくはそのナトリウム塩、低級脂肪酸モノグリセライド、酢酸ソーダなどを併用することができる。」(公報第3頁左上欄第1〜6行)こと、(e)「本発明のエタノール製剤は、ハム、ソーセージなどの畜産製品、ちくわ、かまぼこなどの水産練製品、菓子、麺などの小麦粉製品に添加してもしくは噴霧して用いられるほか、食器、食品製造装置、人の手指などの殺菌にも用いることができる。」(公報第3頁左上欄第16〜20行)こと、(f)「本発明のエタノール製剤は、ハム、ソーセージ、ホイップクリームなどの畜産製品、ちくわ、かまぼこなどの水産練製品、フルーツケーキ、麺類などの小麦粉製品、めんつゆなどの各種食品の保存に優れた効果を示し、かつ酵母菌に対する防腐効果にも優れているので各種食品の保存剤として好適に使用することができる。」(公報第6頁左下欄第2〜8行)ことが記載されている。
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された特開平4-18003号公報(以下、「周知例」という。)には、(g)「本発明の食品製造環境用除菌剤においては、更に除菌効果を高める為に、上記ポリリシンもしくはその塩及びグリセリン或いはソルビタンの低級脂肪酸エステルと共にリンゴ酸、クエン酸、乳酸、アジピン酸等の有機酸或いはその塩を併用することが出来る。その他食品保存剤に用いられる公知の成分、例えばグリシン等のアミノ酸も併用することが出来る。」(公報第3頁右下欄第12〜19行)ことが記載されている。

2) 対比・判断

本件補正発明は、エタノールとグリセリン脂肪酸エステルの配合物に、クエン酸とその塩および乳酸とその塩を組合わせてなる殺菌剤であって、家畜の腸管保菌である腸管出血性大腸菌、サルモネラ、および黄色ブドウ球菌を完全に殺菌する作用のある、畜肉・鳥肉の殺菌用および食肉製品の殺菌用ならびに食肉加工環境の微生物制御用に供するもので、希釈しても殺菌力を保持するものである。
これに対して、食品保存用のエタノール製剤の食品保存・除菌効果を高めるために低級脂肪酸モノグリセライドや有機酸もしくはこれらのナトリウム塩を添加することは周知のことであるから、上記記載事項(a)乃至(f)等によれば、引用例には、「エタノールにポリリシン、低級脂肪酸モノグリセライド、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸等の有機酸もしくはこれらのナトリウム塩を添加してなる食品用殺菌剤。」が記載されているといえる。
本件補正発明と引用例に記載された発明(以下、「引用例発明」という。)とを対比すると、後者の「低級脂肪酸モノグリセライド」は、前者の「グリセリン脂肪酸エステル」に相当し、クエン酸も乳酸も有機酸であるから、両者は、「エタノールとグリセリン脂肪酸エステルの配合物に、有機酸とその塩を組合わせてなる食品用殺菌剤」である点で一致し、(1)「有機酸とその塩」について、前者が「クエン酸とその塩および乳酸とその塩」であるのに対して、後者が「クエン酸とその塩」である点、(2)後者がポリリシンを配合するのに対して、前者にその点が特定されない点(3)「食品用殺菌剤」について、前者が、家畜の腸管保菌である腸管出血性大腸菌、サルモネラ、および黄色ブドウ球菌を完全に殺菌する作用のある、畜肉・鳥肉の殺菌用および食肉製品の殺菌用ならびに食肉加工環境の微生物制御用と特定しているのに対して、後者にそのような特定がない点で相違している。
そこで、上記相違点について検討する。

相違点(1)について
食品用保存剤、除菌剤用のエタノール製剤の除菌効果を高めるために配合する有機酸として、上記載事項(g)のとおり、クエン酸と同様に乳酸は周知のものであるから、食品用殺菌剤用のエタノール製剤の除菌効果をより高めるために、有機酸としてクエン酸と共に乳酸を併用して、引用例発明において、クエン酸とその塩および乳酸とその塩を組合わせて配合することは当業者が容易になし得るところであり、それにより当業者が予期し得ない格別の効果を奏するものでもない。

相違点(2)について
本件補正発明においては、配合成分として「ポリリシン」を排除するものではないから、この点は相違点ではない。(なお、本件出願の発明の詳細な説明には、本件発明の殺菌剤に、リシン等の塩基性アミノ酸、同蛋白質を添加してもよいことが記載されている。)
また、仮に相違点であるとしたとしても、上記記載事項(d)或いは(g)のとおり、ポリリシンは食品用保存剤、除菌剤用のエタノール製剤の配合成分として周知のものであるから、ポリリシンを食品用保存剤、除菌剤用のエタノール製剤を配合するかしないかは当業者が適宜選定し得る事項にすぎないし、ポリリシンを配合しないことにより、当業者が予期し得ない格別の効果を奏するものでもない。

相違点(3)について
引用例には、上記記載事項(e)のとおり、エタノール製剤がハム、ソーセージなどの畜産製品に用いられ、また、食品製造装置などの殺菌に用いられることが記載されているから、引用例発明のエタノール製剤を、同様の畜肉・鳥肉の殺菌および食肉製品の殺菌ならびに食肉加工環境の微生物制御用に供することは当業者が容易に想到し得るところであり、それを妨げる特段の理由も見出せない。
その際に、殺菌剤をどの種類の菌に作用させるかは、配合成分の配合量等を調整することにより当業者が適宜選定し得るものであり、引用例にも上記記載事項(c)のとおり各種細菌に作用させることが記載されているから、各種細菌として、周知の家畜の腸管保菌である腸管出血性大腸菌、サルモネラ、および黄色ブドウ球菌を対象とすることは当業者が適宜なし得ることである。
そして、本件補正発明に係る明細書記載の効果は、上記記載事項(c)、(e)、(f)等から当業者が予期し得るものであって、格別のものとすることはできない。

審判請求人は、審判請求書において、「本件補正発明は簡単な成分構成で、家畜の腸管保菌である腸管出血性大腸菌、サルモネラ、および黄色ブドウ球菌を完全に殺菌する作用があるという格別の効果を奏する。」旨主張しているので検討する。
本件明細書の、段落【0015】には、「本発明を実施するにあたり、(1)変性エタノールを59.22W/w%以下にグリセリン脂肪酸エステル0.3〜0.8%以下を配合し溶解する。(2)次にクエン酸0.1〜1.5%とクエン酸塩0.1〜1.5%と乳酸0.2〜2.0%と乳酸塩0.2〜2.0%のすべてを水分中に溶解させたのち(1)と混合し、全量が100となるように配合して基本剤とし、塩基性アミノ酸、同タンパク質およびアミノ酸のうち1種もしくは2種を混合するときはその分だけ水分量を減ずる。」と記載されている。そして、段落【0018】の実施例1によれば、試作製剤A1及びA2については、大腸菌及びサルモネラ菌では、濃度50.0%、25.0%、12.5%、6.3%において、菌数が0となっており、黄色ブドウ球菌では、濃度50.0%において、菌数が0、濃度12.5%、濃度6.3%においては、菌数は1.001以上となっているのに対して、参考他社製剤については、大腸菌では、濃度6.3%において、菌数が230、黄色ブドウ球菌では、濃度12.5%、濃度6.3%において、菌数は1.001以上、サルモネラ菌では、濃度6.3%において、菌数は1.001以上となっている。また、実施例2によれば、アルタノールOS-12効力試験として、Escherichia coli O157、SalmonellaEnteritidis、Campylobacter jejuniに対し、殺菌剤(アルタノールOS-12と解される。)を濃度50%、25%、12.5%、6.25%に希釈し1分間接触させた結果、濃度6.25%でも菌数が少ないことが見て取れる。
このように、本件明細書においては、実施例1で使用した試作製剤A1及びA2、並びに実際例2で使用したアルタノールOS-12は、段落【0015】に記載された組成範囲のものであろうことは想像できるが、それらの具体的配合成分(塩基性アミノ酸、同タンパク質の存否等)及び具体的配合量は不明であり、参考他社製剤の組成も不明である。
ところで、食品殺菌剤は、その配合成分及び配合成分の配合量により殺菌作用が異なるものである。そうすると、実施例1、2で使用した食品用殺菌剤が、腸管出血性大腸菌、サルモネラ等を殺菌する作用があったとしても、実施例の1及び2の具体的配合成分及び配合割合が不明なのであるから、それにより、本件補正発明の食品用殺菌剤が当業者が予期し得ない格別の効果を奏するものとは到底認めることはできない。
よって、本件補正発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである

また、上記のとおり、食品殺菌剤は、その配合成分及び配合成分の配合量により殺菌作用が異なるものであるが、実施例1で使用した試作製剤A1及びA2、並びに実施例2で使用したアルタノールOS-12の具体的組成が記載されていないから、本件特許明細書は当業者が発明を実施し得る程度に記載されているものとはいえないし、更に、実施例1の試作製剤A1及びA2の黄色ブドウ球菌の殺菌力に関して、濃度12.5%、濃度6.3%において、菌数は1001以上となっており、実施例1の試作製剤A1及びA2が、黄色ブドウ球菌を完全に殺菌する作用があるとは到底いえないから、本件補正発明に関して本件出願は特許法第36条第4項に規定する要件も満たしていない。

したがって、本件補正発明は、その出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、また、特許法第36条の規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3)むすび

以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本件発明について

1)本件発明

平成15年9月22日付けの補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成15年4月24日付け手続き補正書により補正された明細書の記載からみて特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(以下、「本件発明」という。)
「【請求項1】エタノールとモノグリの配合物にポリリジンおよびアミノ酸、有機酸と有機酸塩を組合わせてなる、畜肉・鳥肉の殺菌および食肉製品の殺菌ならびに食肉加工環境の微生物制御を目的とした殺菌剤。」

2)引用例記載事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記2の1) 引用例記載の発明に示したとおりである。

3)対比・判断

食品保存用のエタノール製剤の食品保存・除菌効果を高めるために低級脂肪酸モノグリセライドや有機酸もしくはこれらのナトリウム塩を添加することは周知のことであるから、上記記載事項(a)乃至(f)等によれば、引用例には、「エタノールにポリリシン、グリシン、低級脂肪酸モノグリセライド、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸等の有機酸もしくはこれらのナトリウム塩に添加してなる食品用殺菌剤。」が記載されているといえる。
本件発明と引用例に記載された発明(以下、「引用例発明」という。)とを対比すると、後者の「ポリリシン」、「グリシン」、「低級脂肪酸モノグリセライド」、「リンゴ酸、クエン酸、フマル酸」、「リンゴ酸、クエン酸、フマル酸のナトリウム塩」は、夫々、前者の「ポリリジン」、「アミノ酸」「モノグリの配合物」、「有機酸」、「有機酸塩」に相当するから、両者は、「エタノールとモノグリの配合物にポリリジンおよびアミノ酸、有機酸と有機酸塩を組合わせてなる食品用殺菌剤」である点で一致し、前者が、畜肉・鳥肉の殺菌および食肉製品の殺菌ならびに食肉加工環境の微生物制御を目的すると特定しているのに対して、後者にそのような特定がない点で相違している。
しかしながら、引用例には、上記記載事項(a)のとおり、エタノール製剤がハム、ソーセージなどの畜産製品に用いられ、また、食品製造装置などの殺菌に用いられることが記載されているから、引用例発明のエタノール製剤を、同様の畜肉・鳥肉の殺菌および食肉製品の殺菌ならびに食肉加工環境の微生物制御用に供することは当業者が容易に想到し得るところであり、それを妨げる特段の理由も見出せない。
そして、本件発明に係る明細書記載の効果は、上記記載事項(c)、(e)、(f)等から当業者が予期し得るものであって、格別な効果とは認められない。

したがって、本件発明は、その出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

4) むすび

以上のとおり、本件発明は、その出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-26 
結審通知日 2005-10-27 
審決日 2005-11-16 
出願番号 特願2001-107789(P2001-107789)
審決分類 P 1 8・ 56- Z (A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
阪野 誠司
発明の名称 畜肉・鶏肉等の食肉処理環境および食品加工環境用殺菌剤。  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 晃伸  

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