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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1128841
審判番号 不服2004-15682  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-28 
確定日 2006-01-04 
事件の表示 平成 9年特許願第 84208号「水処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月20日出願公開、特開平10-277558〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成9年4月2日にした特許出願であって、平成16年6月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年7月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月27日付けで手続補正がなされたものである。
2.平成16年8月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成16年8月27日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、平成16年2月23日付けで提出された手続補正書により補正された請求項3の「内部を水が流れる通路に対して直交する方向に分極させた一対の永久磁石を前記通路と対向する側の磁極を異ならせて前記通路管を挟んで対置させ、前記永久磁石の各外側には各両端部を前記通路の方向へ湾曲させたヨーク材を取り付けて、このヨーク材の各湾曲端を互いに当接させ、前記一方の永久磁石の前記通路側に対向する側より発した磁力線が前記通路内を通過して前記他方の永久磁石の前記通路側へ対向する側へ流れる磁路が形成されるように構成すると共に、前記一方の永久磁石の外側より発した磁力線は当該一方の永久磁石の外側に取り付けた前記ヨーク材を介して前記他方の永久磁石の外側に取り付けたヨーク材へ流れる磁路が形成されるように構成し、前記水の通路を挟んで対向設置した一対の永久磁石を固定部材によって固定させると共に、前記一対の各ヨーク材の外側をさらに一対のハウジングで覆い、この一対のハウジング同士を互いに固定したことを特徴とする、水処理装置。」について、「永久磁石の各外側には各両端部を前記通路の方向へ湾曲させたヨーク材」を「互いに断面略U字形状を呈し、前記永久磁石の外側に接して前記通路を囲むと共に、互いの各両端部を突き合わせることによって磁路が形成されるように配置した一対のヨーク材」とし、また、「一対の各ヨーク材の外側をさらに一対のハウジングで覆い、この一対のハウジング同士を互いに固定したこと」を「互いに断面略U字形状を呈し、前記ヨーク材の外側に取り付けられて前記ヨーク材の外側を囲むように設けた一対のハウジングと、を含み、前記ヨーク材をその両端部を突き合わせて当接させることにより前記ハウジングの両端部が突き合わされて前記一対のヨーク材の磁力吸着力で装置本体が形成されるように構成した」とすることによって、「内部を水が流れる通路に対して直交する方向に分極させると共に、前記通路と対向する側の磁極を異ならせて前記通路を挟んで対置させた永久磁石と、互いに断面略U字形状を呈し、前記永久磁石の外側に接して前記通路を囲むと共に、互いの各両端部を突き合わせることによって磁路が形成されるように配置した一対のヨーク材と、前記永久磁石の内側に設けられて当該永久磁石を前記ヨーク材へ固定させる固定部材と、同じく互いに断面略U字形状を呈し、前記ヨーク材の外側に取り付けられて前記ヨーク材の外側を囲むように設けた一対のハウジングと、を含み、前記ヨーク材をその両端部を突き合わせて当接させることにより前記ハウジングの両端部が突き合わされて前記一対のヨーク材の磁力吸着力で装置本体が形成されるように構成したことを特徴とする、水処理装置。」と補正された。
そして、上記の補正は、「ヨーク材」と「ハウジング」についてそれぞれ限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。
(i)引用文献
(ア)平成16年6月11日付け補正却下において引用文献1として提示された米国特許第4946590号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(ア-1)「According to the embodiment of FIG.2 a ferromagnetic outer housing 50 is provided, the housing providing a high permea- bility path for confining the lines of flux to the housing, which is a magnetically permeable material. Housing 50 has flat bottom sections 52, which rest against the outer pole faces of magnets 30, and hold them in place.」
「FIG.2の具体例によれば、強磁性の外ハウジング50が設けられ、ハウジングは磁気的に透過性の材料でハウジングへの磁束の線を閉じこめるための高い透過率の通路を提供する。ハウジング50は、平らな底部50を有し、そこに磁石の外側の磁極を静置し、保持する。」
(第4欄第51〜57行)(訳文)、
(ア-2)「Housing 50 is preferably steel sheet, and can be coated to reduce corrosion problems. While the housing halves will normally remain attached to one another by the magnetic attraction produced by magnets30, it is also possible to more permanently attach them using screws, rivets or the like as shown in FIG.2.」(第5欄第6〜12行)、
「ハウジング50は、好ましくは鉄板からなり、腐食問題を軽減するために覆うことができる。ハウジングの半分同士が磁石30によって作られる磁気吸引力によって、通常では引きつけられ、とどまっているが、FIG.2に示されるようなねじやリベットや類似物で固着することも可能である。」(訳文)、
(ア-3)「FIG.6 illustrates a preferred embodiment, wherein three magnets 30 are stacked, provided with a non-ferromagnetic support 26, and carried within housing 50, as shown in FIG.2. As also shown in FIG. 6, the magnets, housing and support are preferably encapsulated in a plastic material to prevent corrosion. FIG.6 is partially exploded, and shows the configuration of magnetic poles. Support 26 is preferably a wood or plastic device, but can be a magnetically- permeable material. At the radial position centrally aligned with the poles 34,36 of magnets 30,the support 26 should be of minimum thickness.」(第5欄第42〜53行)、
「FIG.6は、好ましい実施態様を示し、そこでは3つの磁石30が重ねられ、非強磁性の支持体26によってハウジング50に設けられている。FIG.6には、磁石、ハウジング、支持体が腐食を防ぐために好ましくはプラスチック材料によりカプセル化されることも示されている。FIG.6は部分的に分解されて磁極の配列が示されている。支持体26は好ましくは木材かプラスチックの装置である。しかし、磁気的透過性材料である。磁石30の磁極の中心に沿ったの半径方向で支持体は最小の厚みであるべきである。」(訳文)、
(ア-4)「A housing 50 for the magnets is relatively more magnetically permeable than the non-ferromagnetic conduit 22 and defines a magnetic flux path enclosing around the conduit and bridging between outward facing opposite poles 34,36 of the magnets.
The non-ferromagnetic conduit 22 can be a length of domestic copper pipe to which the fluid treatment device is clamped externally by attraction of the magnets30.
The housing 50 has two substantially semi-cylindrical halves, each said half being magnetically attracted to a pair of said magnets on a respective side of the conduit, and the two halves being magnetically attracted to one another at facing edges, for example flanges 56 extending radially and parallel to the flowpath. The halves are disposed alongside one another and can rest against one another at the flanges 56, avoiding air gap.
・・・
The device of the invention is more particularly characterized as clamp-on fluid treatment device for minimizing hard lime and scale deposits in water supply system」(第6欄第42〜64行)、
「磁石のハウジング50は、非強磁性の導管22よりも相対的により磁気的に透過性であり、磁石の外方に面する極34,36間を橋渡しし、導管を包囲する磁束を区画する。
非強磁性の導管22は、磁石の吸引により外方から流体処理装置が挟まれる一定長の家庭用銅パイプであり得る。ハウジング50は、2つの実質的に半円筒形からなり、それぞれの半分は導管のそれぞれの面で吸引され、流路に平行で半径方向に延びるフランジ56で例示される向かい合う端で2つの半分は磁気的に吸引される。半分は互いに横付けされ、空気の間隙なくフランジ56で互いに静置できる。
・・・
発明の装置は、水供給システムの硬い石灰とスケールの最小化のための挟み込みの流体処理装置としてより特徴化される。」(訳文)、
(ア-5)「A fluid treatment device for minimizing accumulation of hard precipitate deposition in a fluid delivery system having at least one conduit for carrying the fluid along the flow path, the conduit having at least a section along its length which is non-ferromagnetic around its circumference and characterized by a low magnetic permeability, the device comprizing:
an array of magnets disposed adjacent a surface of the conduit at the non-ferromagnetic section, the array of magnets defining at least two pairs of magnetic poles of opposite polarity across the flowpath, whereby a magnetic field is produced directly perpendicular to the flowpath and magnets in the array attract one another across the flowpath, magnets in the array also defining magnetic poles of opposite polarity proceeding downstream along the flowpath, whereby a charged particle moving along the flowpath is subjected to alternating Hall effect forces, tending to agitate the charged particle and interfere with hard scale precipitation; and, a housing enclosing the magnets and non-ferromagnetic section of conduit, the housing being of high magnetic permeability and having two subustan-tially semi- cylindrical halves, each said half being magnetically attracted to one another at facing edges thereof by magnetic flux substantially confined to the halves of the housing having flanges extending radially of the non-ferromagnetic section at said facing edges, the halves being supported against one another by contact at the flanges.」(Claim 1:第7欄第21〜54行)、
「流路に沿った流体を運ぶ少なくとも一つの導管を有する流体配給システムにおいて硬い沈殿堆積物の集積を最小限にするための流体処理装置であって、導管は長さに沿って周囲が非強磁性の少なくとも一区画を有し低い磁気的透過性によって特徴づけられ、
非強磁性区画の導管の表面に近接して配置される磁石の列で、その磁石の列は流路を横切って極性の反対な少なくとも2つの磁極の対を形成し、流路では、磁場は直角に形成され列中の磁石は互いに流路を横切って引きつけ合い、列中の磁石は流路に沿って下流の進行方向に反対の磁極を形成し、そこでは流路に沿って異動する荷電粒子が交代するホール効果力に支配され、荷電粒子を撹拌し硬い沈殿堆積物を妨害する傾向となる。そして、ハウジングは、磁石と導管の非強磁性区画を覆い、高い磁気的透過性で実質的に半円筒形の半分づつからなり、それぞれの前記半分は向かい合う端部で非強磁性区画半径方向に延びたフランジを有する半分によって実質的に閉じこめられた磁束により磁気的に互いに引きつけられ半分同士は互いにフランジの接触によって支持される、装置からなる。」(訳文)、
(ア-6)「The fluid treatment device of claim 1, further comprising a non-ferromagnetic support for said magnets, the support having a contour complementary to at least one of the magnets and the non- ferromagnetic section of the conduit.」(第8欄第10〜14行)、
「請求項1の流体処理装置は、さらに、前記の磁石の非強磁性支持体からなり、支持体は少なくとも磁石の1つと導管の非磁性部分を補う輪郭を有る。」(訳文)、
記載事項(ア-1)〜(ア-6)を総合すると、引用文献1には、
「磁石は水供給システムの流路を横切って極性の反対な磁極の対を形成し、流路では、磁場は直角に形成され磁石は互いに流路を横切って引きつけ合い、非強磁性の導管は、磁石の吸引により外方から流体処理装置が挟まれ、磁気的に透過性の材料でハウジングへの磁束の線を閉じこめるための高い透過率の通路を提供するハウジングは、磁石と、導管を覆い、磁石を保持する平らな底部を有する実質的に半円筒形の半分づつからなり、それぞれの前記半分は向かい合う端部で磁束により磁気的に互いに引きつけられ、半分同士は互いにフランジの接触によって支持され、磁石が、少なくとも磁石の1つと導管の非磁性部分を補う輪郭を有する支持体によってハウジングに設けられ、磁石、ハウジング、支持体が腐食を防ぐために好ましくはプラスチック材料によりカプセル化されている流体処理装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(イ)平成16年6月11日付け補正却下において常套手段を示す周知例として提示された特開平6-343973号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(イ-1)「中央空部を有する略U字状の外枠と、該外枠の中央空部に突出する支持片を備えて中央空部を閉環させる連結枠とからなり、
前記外枠は外側の第1枠体と内側の第2枠体とからなって内部には永久磁石及び略U字状のヨーク材が収容され、
上記外枠の中央空部に送水管が位置するように外枠を臨ませた状態で連結枠を取付けて送水管に磁気を作用させるようにしたことを特徴とする磁気式水処理装置。」(【請求項1】)、
(イ-2)「外枠の第1枠体は内側が開放する断面コ字状で、第2枠体は第1枠体の開放部分を閉塞する板状である請求項1に記載の磁気式水処理装置。」(【請求項2】)、
(イ-3)「そして、前記外枠3の中央空部2に送水管Aが位置するように外枠3を臨ませた状態で連結枠5を取付けるのであるが、図示実施例のように連結枠5に磁性材料から作製される接続材10を固定している場合には、外枠3内に収容された永久磁石8,8の磁力により上記接続材10(連結枠5)が吸着されるので、その設置作業は極めて容易なものとなる。」(段落段落【0010】)、
(イ-4)「こうして送水管Aに取付けられた本発明の磁気式水処理装置1は、外枠3に収容された永久磁石8,8の磁力がその外側に配されたヨーク材9でヨークされるので、磁力線は外側方向に形成されることがなく、中央空部2方向にのみ形成されることとなる。そして、中央空部2には送水管Aが位置しているので、送水管A内の水に磁力が作用する」(段落【0013】)、
記載事項(イ-1)〜(イ-4)を整理すると、引用文献2には、
「外枠の第1枠体は内側が開放する断面コ字状で、第2枠体は第1枠体の開放部分を閉塞する板状である請求項1に記載の磁気式水処理装置において、外枠3に収容された永久磁石8,8の磁力がその外側に配されたヨーク材9でヨークされるので、磁力線は外側方向に形成されることがなく、中央空部2方向にのみ形成され、前記外枠3の中央空部2に送水管Aが位置するように外枠3を臨ませた状態で連結枠5を取付けるのであるが、図示実施例のように連結枠5に磁性材料から作製される接続材10を固定している場合には、外枠3内に収容された永久磁石8,8の磁力により上記接続材10(連結枠5)が吸着されるので、その設置作業は極めて容易なものとなる。」こと(以下、「周知技術」という。)が記載されている。
(ii)対比・判断
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の、「磁石」、「水供給システムの流路」、「支持体」及び「流体処理装置」が、それぞれ、本願補正発明の「永久磁石」、「内部を水が流れる通路」、「固定部材」及び「水処理装置」に相当する。また、引用発明の「磁石は水供給システムの流路を横切って極性の反対な磁極の対を形成し、流路では、磁場は直角に形成され磁石は互いに流路を横切って引きつけ合」うから本願補正発明の「通路に対して直交する方向に分極させると共に、前記通路と対抗する側に磁極を異ならせて前記通路を挟んで対置させた永久磁石」であり、さらに引用発明の支持体は「磁石の1つと導管の非磁性部分を補う輪郭を有」して磁石が「ハウジングに設けられ」るから支持体が磁石の内側に設けられていることは明らかであり、引用発明のハウジングは「ハウジングへの磁束の線を閉じこめるための高い透過率の通路を提供する」ものであるから、本願補正発明の「ヨーク材」を意味するものと解され、かつ、引用発明に記載されるように「磁石を保持する平らな底部を有する実質的に半円筒形の半分づつからなり、それぞれの前記半分は向かい合う端部で磁束により磁気的に互いに引きつけられ、半分同士は互いにフランジの接触によって支持され」ていることからみて、本願補正発明の「永久磁石の外側に接して前記通路を囲むと共に、互いの各両端部を突き合わせることによって磁路が形成されるように配置した一対のヨーク材」が引用発明に記載されているといえるから、両者は、「内部を水が流れる通路に対して直交する方向に分極させると共に、前記通路と対向する側の磁極を異ならせて前記通路を挟んで対置させた永久磁石と、互いに前記永久磁石の外側に接して前記通路を囲むと共に、互いの各両端部を突き合わせることによって磁路が形成されるように配置した一対のヨーク材と、前記永久磁石の内側に設けられて当該永久磁石を前記ヨーク材へ固定させる固定部材と、を含む水処理装置。」で一致し、以下の点で相違する。
(a)本願補正発明ではヨーク材が「断面略U字形状を呈し」ているのに対して、引用発明では「平らな底部を有する実質的に半円筒形」である点。
(b)本願補正発明では「互いに断面略U字形状を呈し、前記ヨーク材の外側に取り付けられて前記ヨーク材の外側を囲むように設けた一対のハウジング」を含むものであるのに対して、引用発明ではハウジングが好ましくはプラスチック材料によりカプセル化されているというものである点
(c)本願補正発明では「ヨーク材をその両端部を突き合わせて当接させることにより前記ハウジングの両端部が突き合わされて前記一対のヨーク材の磁力吸着力で装置本体が形成されるように構成した」ものであるのに対して、引用発明では本願補正発明の「ヨーク材」に相当する「ハウジング」は「向かい合う端部で磁束により磁気的に互いに引きつけられ、半分同士は互いにフランジの接触によって支持され」るものの「ハウジング」に相当する部分の当接については明示の記載のない点
そこで、上記の相違点について検討する。
(相違点(a)について)
引用発明においても「平らな底部を有する実質的に半円筒形」で「磁石と、導管を覆」えばよいものであるから、その側部が円筒状であっても、本願補正発明のように平面であっても作用において本質的な相違は認められず、引用文献1においてもFIG.2及び6にハウジングの側壁が平面のものが示され、引用文献2の記載事項(イー1)にも「略U字状のヨーク材」が明記されているから、引用発明における半円筒形の側部を平面で形成し、本願補正発明のように断面略U字形状とすることは単なる設計変更程度のことにすぎず、当業者であれば適宜なし得る。
(相違点(b)について)
引用発明においても本願補正発明の「ヨーク」に相当する「ハウジング」を「プラスチック材料によりカプセル化」して腐食を防ぐことが記載されているから、本願補正発明のようにさらに外側を囲み形状をヨークと同じ断面略U字形状として「ハウジング」と称することは当業者であれば格別の創意なくなし得る事項である。
(相違点(c)について)
引用文献2に記載される周知技術における「磁性材料から作製される接続材10」は、本願補正発明の「ヨーク」に相当し、「連結枠5」が、本願補正発明の「ハウジング」に相当すると認められる「磁性材料から作製される接続材10」を固定している場合には、ハウジングに相当する「外枠3内」に収容された永久磁石8,8の磁力により上記接続材10(連結枠5)が吸着されるので、その設置作業は極めて容易なものとなることが周知技術であると認められるから、引用発明においても周知技術により、ハウジングの端面が磁気的に引きつけられ突き合わされると同時にカプセルの両端部もカプセル化するために突き合わされ、永久磁石、固定部材、ヨーク材、ハウジングからなる本願補正発明の装置本体を形成することは、当業者であれば容易に採用し得る事項にすぎない。
したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
そうすると、平成16年10月14日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、特許法第17条の2の第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反してなされたものであるから、同補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
(3)むすび
上記(2)の理由により、平成16年8月27日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3.本願発明について
平成16年8月27日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。」は平成16年2月23日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「内部を水が流れる通路に対して直交する方向に分極させた一対の永久
磁石を前記通路と対向する側の磁極を異ならせて前記通路管を挟んで対置させ、前記永久磁石の各外側には各両端部を前記通路の方向へ湾曲させたヨーク材を取り付けて、このヨーク材の各湾曲端を互いに当接させ、前記一方の永久磁石の前記通路側に対向する側より発した磁力線が前記通路内を通過して前記他方の永久磁石の前記通路側へ対向する側へ流れる磁路が形成されるように構成すると共に、前記一方の永久磁石の外側より発した磁力線は当該一方の永久磁石の外側に取り付けた前記ヨーク材を介して前記他方の永久磁石の外側に取り付けたヨーク材へ流れる磁路が形成されるように構成したことを特徴とする、水処理装置。」
4.引用文献
平成16年6月11日付け補正却下において提示した引用文献1、2及びその記載事項は上記「2.(2)(i)(ア)」及び「2.(2)(i)(イ)」に記載したとおりである。
5.対比・判断
本願発明は、上記「2.(2)(ii)」で検討した本願補正発明からみると、「互いに断面略U字形状を呈し、前記永久磁石の外側に接して前記通路を囲むと共に、互いの各両端部を突き合わせることによって磁路が形成されるように配置した一対のヨーク材」を「永久磁石の各外側には各両端部を前記通路の方向へ湾曲させたヨーク材」とし、また、「互いに断面略U字形状を呈し、前記ヨーク材の外側に取り付けられて前記ヨーク材の外側を囲むように設けた一対のハウジングと、を含み、前記ヨーク材をその両端部を突き合わせて当接させることにより前記ハウジングの両端部が突き合わされて前記一対のヨーク材の磁力吸着力で装置本体が形成されるように構成した」を「一対の各ヨーク材の外側をさらに一対のハウジングで覆い、この一対のハウジング同士を互いに固定したこと」とするもので、それぞれ限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものである本願補正発明が上記「2.(2)(ii)」で述べたとおり引用発明及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明も特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-21 
結審通知日 2005-11-01 
審決日 2005-11-14 
出願番号 特願平9-84208
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C02F)
P 1 8・ 575- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 野田 直人
大黒 浩之
発明の名称 水処理装置  
代理人 伊藤 捷雄  

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