• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01B
管理番号 1128895
異議申立番号 異議2002-72510  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-04-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-15 
確定日 2005-10-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3274117号「部分逆転ロ-タリ耕耘装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3274117号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3274117号の請求項1に係る発明についての出願は、平成5年9月20日に特許出願された特願平5-257660号の一部を平成11年11月19日に新たな特許出願としたものであり、平成14年2月1日にその発明について特許権の設定登録がなされた後、その特許について、平成14年10月15日に井関農機株式会社より特許異議の申立てがなされ、取り消し理由を通知したところ、平成15年9月5日に特許権者より特許異議意見書と共に訂正請求書が提出され、平成15年11月25日に特許異議申立人より回答書が提出されたものである。

2.訂正請求について
2-1.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、特許明細書を訂正請求書に添付した明細書のとおりに訂正しようとするものであり、具体的訂正事項は次のとおりである(下線部は訂正個所である)。
(1)訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「耕耘ケース(1)の内部に組成する主伝動機構(4)の出力軸(6)と、前記主伝動機構(4)の出力軸(6)に対して反対の方向に回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケース(1)に支承横設し、両出力軸(6)、(12a)(12a)の軸芯方向に並設する第1耕耘筒(30)(30)及び第2耕耘筒(13)(13)のうちの第1耕耘筒(30)(30)を主伝動機構(4)の出力軸(6)によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒(13)(13)を副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から伝達される動力で第1耕耘筒(30)(30)とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置において、前記主伝動機構(4)の出力軸(6)とそれに外嵌する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)の内径との間をダストシール(15)で軸封すると共に、副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)の外径と耕耘ケース(1)との間にシール(17)を介装して、シール(17)介装部分より外方に副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)を延出させ、この出力軸(12a)(12a)の耕耘ケース外突出部分から第2耕耘筒(13)(13)に動力伝達するようになし、副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)によって回転駆動される第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に、副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)とは反対方向に回転する主伝動機構の出力軸(6)と共に回転する保護カバー(25)の周縁部を被冠重合させてあることを特徴とする部分逆転ロータリ耕耘装置。」を、
「耕耘ケース(1)の内部に組成する主伝動機構(4)の出力軸(6)と、前記主伝動機構(4)の出力軸(6)に対して反対の方向に回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケース(1)に支承横設し、両出力軸(6)、(12a)(12a)の軸芯方向に並設する第1耕耘筒(30)(30)及び第2耕耘筒(13)(13)のうちの第1耕耘筒(30)(30)を主伝動機構(4)の出力軸(6)によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒(13)(13)を副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から伝達される動力で第1耕耘筒(30)(30)とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置において、前記同芯二重軸状の両出力軸(6)、(12a)(12a)を、耕耘ケース(1)下部の左右側壁部に開設した開口孔(2)(2)の外側を閉塞する着脱自在な蓋体(3)(3)の支持筒部(3a)(3a)に内挿して回転自在に支持させ、内軸である主伝動機構(4)の出力軸(6)を耕耘ケース(1)内で主伝動機構(4)に連動させると共に、外軸である副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)は各々の内方軸端部に設けた受動ギヤ(12)(12)を主伝動機構(4)に連動する中間回転軸(5)に設けた駆動ギヤ(11)(11)に噛合させた副伝動機構(GL)(GR)によって主伝動機構(4)の出力軸(6)とは反対方向に回転駆動するようにし、その副伝動機構(GL)(GR)のギヤ列(11)(12)、(11)(12)を前記耕耘ケース(1)側壁の開口孔(2)(2)部に各々填まり込み位置させて受動ギヤ(12)(12)よりも外側で主伝動機構(4)の出力軸(6)とそれに対して反対回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)との間にダストシール(15)を介装すると共に副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)と支持筒部(3a)(3a)との間にシール(17)を介装して、シール(17)介装部分より横側方に延出する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から第2耕耘筒(13)(13)に逆転動力を伝達し、副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)の外側軸端部より更に横外方に延出する主伝動機構(4)の出力軸(6)から第1耕耘筒(30)(30)に正転動力を伝達するようになし、正転動力によって回転される第1耕転筒(30)(30)と同方向に回転する保護カバー(25)を、第1耕転筒(30)(30)の内端と第2耕転筒(13)(13)の外端との間に介装してその保護カバー(25)の周縁部を第2耕耘筒(13)(13)側に屈曲し、第1耕耘筒(30)(30)に対して反対に回転する第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させてあることを特徴とする部分逆転ロータリ耕耘装置。」に訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書の段落【0004】の記載を、
「【課題を解決するための手段】本発明は、上記難点を解消することを目的としてなされたもので、耕耘ケ-スの内部に組成する主伝動機構の出力軸と、前記主伝動機構の出力軸に対して反対の方向に回転する副伝動機構の出力軸とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケ-スに支承横設し、両出力軸の軸芯方向に並設する第1耕耘筒及び第2耕耘筒のうちの第1耕耘筒を主伝動機構の出力軸によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒を副伝動機構の出力軸から伝達される動力で第1耕耘筒とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置において、前記同芯二重軸状の両出力軸を、耕耘ケース下部の左右側壁部に開設した開口孔の外側を閉塞する着脱自在な蓋体の支持筒部に内挿して回転自在に支持させ、内軸である主伝動機構の出力軸を耕耘ケース内で主伝動機構に連動させると共に、外軸である副伝動機構の出力軸は各々の内方軸端部に設けた受動ギヤを主伝動機構に連動する中間回転軸に設けた駆動ギヤに噛合させた副伝動機構によって主伝動機構の出力軸とは反対方向に回転駆動するようにし、その副伝動機構のギヤ列を前記耕耘ケース側壁の開口孔部に各々填まり込み位置させて受動ギヤよりも外側で主伝動機構の出力軸とそれに対して反対回転する副伝動機構の出力軸との間にダストシールを介装すると共に副伝動機構の出力軸と支持筒部との間にシールを介装して、シール介装部分より横側方に延出する副伝動機構の出力軸から第2耕耘筒に逆転動力を伝達し、副伝動機構の出力軸の外側軸端部より更に横外方に延出する主伝動機構の出力軸から第1耕耘筒に正転動力を伝達するようになし、正転動力によって回転される第1耕転筒と同方向に回転する保護カバーを、第1耕転筒の内端と第2耕転筒の外端との間に介装してその保護カバーの周縁部を第2耕耘筒側に屈曲し、第1耕耘筒に対して反対に回転する第2耕耘筒の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させてあることを特徴とする。」に訂正する。
(3)訂正事項c
特許明細書の段落【0016】の記載を、
「【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の請求項1に係る発明は、耕耘ケ-ス(1)の内部に組成する主伝動機構(4)の出力軸(6)と、主伝動機構(4)の出力軸(6)に対して反対の方向に回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケ-ス(1)に支承横設し、両出力軸(6)、(12a)(12a)の軸芯方向に並設する第1耕耘筒(30)(30)及び第2耕耘筒(13)(13)のうちの第1耕耘筒(30)(30)を主伝動機構(4)の出力軸(6)によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒(13)(13)を副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から伝達される動力で第1耕耘筒(30)(30)とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置において、前記同芯二重軸状の両出力軸(6)、(12a)(12a)を、耕耘ケース(1)下部の左右側壁部に開設した開口孔(2)(2)の外側を閉塞する着脱自在な蓋体(3)(3)の支持筒部(3a)(3a)に内挿して回転自在に支持させ、内軸である主伝動機構(4)の出力軸(6)を耕耘ケース(1)内で主伝動機構(4)に連動させると共に、外軸である副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)は各々の内方軸端部に設けた受動ギヤ(12)(12)を主伝動機構(4)に連動する中間回転軸(5)に設けた駆動ギヤ(11)(11)に噛合させた副伝動機構(GL)(GR)によって主伝動機構(4)の出力軸(6)とは反対方向に回転駆動するようにし、その副伝動機構(GL)(GR)のギヤ列(11)(12)、(11)(12)を前記耕耘ケース(1)側壁の開口孔(2)(2)部に各々填まり込み位置させて受動ギヤ(12)(12)よりも外側で主伝動機構(4)の出力軸(6)とそれに対して反対回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)との間にダストシール(15)を介装すると共に副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)と支持筒部(3a)(3a)との間にシール(17)を介装して、シール(17)介装部分より横側方に延出する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から第2耕耘筒(13)(13)に逆転動力を伝達し、副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)の外側軸端部より更に横外方に延出する主伝動機構(4)の出力軸(6)から第1耕耘筒(30)(30)に正転動力を伝達するようになし、正転動力によって回転される第1耕転筒(30)(30)と同方向に回転する保護カバー(25)を、第1耕転筒(30)(30)の内端と第2耕転筒(13)(13)の外端との間に介装してその保護カバー(25)の周縁部を第2耕耘筒(13)(13)側に屈曲し、第1耕耘筒(30)(30)に対して反対に回転する第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させているので、耕耘ケース(1)に蓋体(3)(3)を着脱することで両出力軸(6)、(12a)(12a)及び駆動ギヤ(11)(11)、受動ギヤ(12)(12)を含む副伝動機構(GL)(GR)の組付分解が行えてメンテナス等に有利であり、副伝動機構(GL)(GR)のギヤ列(11)(12)、(11)(12)が耕耘ケース(1)側壁の開口孔(2)(2)部に各々填まり込むことにより耕耘ケース(1)下部の左右幅が狭まって耕耘ケース(1)の下方の残耕処理に有利となりながら前記両出力軸(6)、(12a)(12a)は確りと支られ、両出力軸(6)、(12a)(12a)の嵌合面及び副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)と蓋体(3)(3)の支持筒部(3a)(3a)との嵌合面に対しても耕耘ケース(1)内から潤滑油が的確良好に供給されて油洩れを生ずることなく的確に潤滑される。そして、二重軸状の両出力軸(6)、(12a)(12a)及びその軸封部分は、第1耕耘筒(30)(30)と同方向に回転する保護カバ-(25)の周縁部を第2耕耘筒(13)(13)側に屈曲し第1耕耘筒(30)(30)に対して反対に回転する第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させて草藁等の締め込み状の巻き付きが防止されることによって外圧からも良好に保護され、その際には保護カバー(25)が第2耕耘筒(13)(13)に被嵌重合して背反回転するにかかわらず発熱等の不具合を生ずることがなくて軽快に作動することとなり、これらの相乗によって、第1耕耘筒(30)(30)と第2耕耘筒(13)(13)とが互いに反対方向に回転する部分逆転ロータリ耕耘装置でありながら全体として組付分解や残耕処理に有利で、作動性及び耐久性にも優れるものとなった。」に訂正する。

2-2.訂正の適否
(1)訂正事項aについて
上記訂正事項aは、「同芯二重軸状の両出力軸(6)、(12a)(12a)」が「耕耘ケース(1)下部の左右側壁部に開設した開口孔(2)(2)の外側を閉塞する着脱自在な蓋体(3)(3)の支持筒部(3a)(3a)に内挿して回転自在に支持さ」れているものに限定し、また、「副伝動機構(GL)(GR)のギヤ列(11)(12)、(11)(12)」が「耕耘ケース(1)側壁の開口孔(2)(2)部に各々填まり込み位置させて受動ギヤ(12)(12)よりも外側」に位置するものに限定し、さらに、「保護カバー(25)」が、「第1耕耘筒(30)(30)の内端と第2耕耘筒(13)(13)の外端との間に介装してその保護カバー(25)の周縁部を第2耕耘筒(13)(13)側に屈曲し、第1耕耘筒(30)(30)に対して反対に回転する第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させてある」ものに限定するものであるから、訂正事項aによる訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「同芯二重軸状の両出力軸(6)、(12a)(12a)」が「耕耘ケース(1)下部の左右側壁部に開設した開口孔(2)(2)の外側を閉塞する着脱自在な蓋体(3)(3)の支持筒部(3a)(3a)に内挿して回転自在に支持さ」れている構成については、特許明細書の段落【0006】、【0009】の記載、及び、図2の記載に基づくものである。
また、「副伝動機構(GL)(GR)のギヤ列(11)(12)、(11)(12)」が「耕耘ケース(1)側壁の開口孔(2)(2)部に各々填まり込み位置させて受動ギヤ(12)(12)よりも外側」に位置する構成については、特許明細書の段落【0008】の記載、及び、図2の記載に基づくものであり、「保護カバー(25)」が、「第1耕耘筒(30)(30)の内端と第2耕耘筒(13)(13)の外端との間に介装してその保護カバー(25)の周縁部を第2耕耘筒(13)(13)側に屈曲し、第1耕耘筒(30)(30)に対して反対に回転する第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させてある」構成については、特許明細書の段落【0013】の記載、及び、図2の記載に基づくものであるから、上記訂正事項aによる訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項b及びcについて
上記訂正事項b及びcは、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、同訂正事項b及びcによる訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものでなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
3-1.本件発明
上記「2.訂正請求について」で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正後の特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「耕耘ケース(1)の内部に組成する主伝動機構(4)の出力軸(6)と、前記主伝動機構(4)の出力軸(6)に対して反対の方向に回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケース(1)に支承横設し、両出力軸(6)、(12a)(12a)の軸芯方向に並設する第1耕耘筒(30)(30)及び第2耕耘筒(13)(13)のうちの第1耕耘筒(30)(30)を主伝動機構(4)の出力軸(6)によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒(13)(13)を副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から伝達される動力で第1耕耘筒(30)(30)とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置において、前記同芯二重軸状の両出力軸(6)、(12a)(12a)を、耕耘ケース(1)下部の左右側壁部に開設した開口孔(2)(2)の外側を閉塞する着脱自在な蓋体(3)(3)の支持筒部(3a)(3a)に内挿して回転自在に支持させ、内軸である主伝動機構(4)の出力軸(6)を耕耘ケース(1)内で主伝動機構(4)に連動させると共に、外軸である副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)は各々の内方軸端部に設けた受動ギヤ(12)(12)を主伝動機構(4)に連動する中間回転軸(5)に設けた駆動ギヤ(11)(11)に噛合させた副伝動機構(GL)(GR)によって主伝動機構(4)の出力軸(6)とは反対方向に回転駆動するようにし、その副伝動機構(GL)(GR)のギヤ列(11)(12)、(11)(12)を前記耕耘ケース(1)側壁の開口孔(2)(2)部に各々填まり込み位置させて受動ギヤ(12)(12)よりも外側で主伝動機構(4)の出力軸(6)とそれに対して反対回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)との間にダストシール(15)を介装すると共に副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)と支持筒部(3a)(3a)との間にシール(17)を介装して、シール(17)介装部分より横側方に延出する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から第2耕耘筒(13)(13)に逆転動力を伝達し、副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)の外側軸端部より更に横外方に延出する主伝動機構(4)の出力軸(6)から第1耕耘筒(30)(30)に正転動力を伝達するようになし、正転動力によって回転される第1耕耘筒(30)(30)と同方向に回転する保護カバー(25)を、第1耕耘筒(30)(30)の内端と第2耕耘筒(13)(13)の外端との間に介装してその保護カバー(25)の周縁部を第2耕耘筒(13)(13)側に屈曲し、第1耕耘筒(30)(30)に対して反対に回転する第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させてあることを特徴とする部分逆転ロータリ耕耘装置。」

3-2.引用刊行物に記載された発明
(1)取消し理由で引用した実願平4-17060号(実開平5-67204号)のCD-ROM(甲第1号証。以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1-a)「【産業上の利用分野】
本考案は、耕耘機におけるセンタードライブ形のロ-タリ耕耘装置に関するものである。」(4頁3〜5行)
(1-b)「ロータリ耕耘装置は、ミッションケ-スの動力取出部に連動連結して装着される伝動ケース本体(1)・・・等によって構成されており、伝動ケース本体(1)の下端部には進行方向に対して直交する駆動軸(2)が水平横向きに支架され、該駆動軸(2)を伝動ケース本体(1)内に収容する耕耘伝動系で駆動するようになっている。・・・伝動ケース本体(1)に近接する左右両脇部に、回転体(4)(4)を構成する逆転駆動ケースが駆動軸(2)に対し遊転状態に装備されるとともに、それぞれの回転体(4)の外方部位において駆動軸(2)に主耕耘爪軸筒(3)(3)が嵌着固定され、主耕耘爪軸筒(3)(3)には主耕耘爪(6)・・が、また、回転体(4)(4)には耕耘爪(5)・・が取り付けられて、センタードライブ形のロ-タリ耕耘軸が構成されている。」(6頁17〜29行)
(1-c)「図3は、本考案の他の実施例を示しており、該例にあっては、回転体(4)である傾斜耕耘爪軸筒を、伝動ケース本体(1)の左右両脇部に取り付けた軸受ホルダ(19)の傾斜外径部に回転自由に支承し、駆動軸(2)の水平軸心に対し一定角度傾斜した軸心の回りを傾斜耕耘爪軸筒が回転して、それに止着される耕耘爪(5)が伝動ケース本体(1)直下の土中に斜めに打ち込まれるように構成されている。」(7頁19〜23行)
(1-d)「この例における逆転駆動系は、伝動ケース本体(1)に設けられた支持軸(20)に嵌着するスプロケット(21)を、耕耘駆動系のチエンに噛合させ、スプロケット(21)に受けた動力を、支持軸(20)の他部位に嵌着するギア(22)から駆動軸(2)に遊転状に支持されたギア(23)に伝動し、そのギア(23)のボス部の外方端部に嵌着する最終ギア(24)から傾斜耕耘爪軸筒の内径部に形設される受ギア部(25)に伝えて、傾斜耕耘爪軸筒を主耕耘爪軸筒(3)に対して逆転させるように構成されている。」(7頁24行〜8頁1行)
(1-e)摘記事項(1-b)に関連して図3を参照すると、同図3には、「駆動軸(2)」と「ギア(23)のボス部」とを同芯二重軸状にして「軸受ホルダ19」を介して「伝動ケース本体(1)」に「水平横向きに支架」した構造が示されている。
以上の記載及び図面の記載によれば、引用刊行物1には次の発明(以下、「引用刊行物1の発明」という。)が記載されていると認められる。
「伝動ケース本体(1)の下端部に進行方向に対して直交する駆動軸(2)を水平横向きに支架し、該駆動軸(2)を伝動ケ-ス本体(1)内に収容する耕耘伝動系で駆動し、伝動ケース本体(1)に近接する左右両脇部に、回転体(4)(4)を構成する逆転駆動ケースを、駆動軸(2)に対し遊転状態に装備するとともに、それぞれの回転体(4)の外方部位において駆動軸(2)に主耕耘爪軸筒(3)(3)を嵌着固定し、主耕耘爪軸筒(3)(3)に主耕耘爪(6)・・を、回転体(4)(4)に耕耘爪(5)・・を取り付けて、センタードライブ形のロータリ耕耘軸を構成し、伝動ケース本体(1)の左右両脇部に取り付けた軸受ホルダ(19)の傾斜外径部に、回転体(4)である傾斜耕耘爪軸筒を回転自由に支承し、駆動軸(2)の水平軸心に対し一定角度傾斜した軸心の回りを傾斜耕耘爪軸筒が回転して、それに止着される耕耘爪(5)が伝動ケース本体(1)直下の土中に斜めに打ち込まれるように構成し、耕耘駆動系を伝動ケース本体(1)に設けた支持軸(20)に嵌着するスプロケット(21)及びチエン等で構成し、傾斜耕耘爪軸筒を駆動する逆転駆動系を、支持軸(20)に嵌着するギア(22)、駆動軸(2)に遊転状に支持されたギア(23)、そのギア(23)のボス部の外方端部に嵌着する最終ギア(24)、及び、傾斜耕耘爪軸筒の内径部に形設される受ギア部(25)で構成し、傾斜耕耘爪軸筒を主耕耘爪軸筒(3)に対して逆転させるように構成しているセンタードライブ形ロータリ耕耘装置。」

(2)取消し理由で引用した実願昭59-79165号(実開昭60-191101号)のマイクロフィルム(甲第2号証の1。以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
(2-a)「クロス爪軸20と爪軸ホルダ18との間にシール26およびベアリング28が介装され」(4頁17〜18行)
(2-b)「本考案は、以上のように、センタドライブ方式移動農機の残耕処理に用いられるクロス爪24の駆動部シール構造において、上記センタドライブに係る耕耘ケース14に固定されたクロス爪軸ホルダ18と上記耕耘ケース内から突出する耕耘軸10との間にシール45を介装し、かつクロス爪軸20と上記耕耘軸との間にたわみシール50を介装することにより、上記耕耘ケース14内の空室49を上記クロス爪軸ホルダ18内の空室51から遮断したことを特徴とするものであるから、結局シール構造が二室構造となり、耕耘ケース内の機密性を高度にし、泥土などの異物がたわみシール50側から耕耘ケース14まで侵入するのを防止することができる」(8頁1〜14行)

(3)取消し理由で引用した特公昭46-39041号公報(甲第2号証の2。以下、「引用刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
(3-a)「歯車8は耕耘駆動軸2にニードルベアリング9を介して回転自在に遊嵌した軸筒10の内端歯車11と噛み合つていて、軸筒10が耕耘駆動軸2の回転方向に対し逆回転するようになつている。」(1頁2欄35行〜2頁3欄1行)
(3-b)「耕耘部伝動ケース1の下端部両側には、耕耘駆動軸2を囲繞する筒体12がその駆動軸2に対し傾斜して、即ち筒体外端が斜め下方きになるように傾斜して固定されており、この筒体12に残耕処理のための傾斜耕耘筒13が嵌合されている。」(2頁3欄2〜7行)
(3-c)「傾斜耕耘筒13は外筒13aの外端開口部に環状の端板13bを一体に設け、更にこの端板13bより外筒13a内に向けて内筒13cを同心状に突設してなるもので」(2頁3欄7〜10行)
(3-d)「耕耘部伝動ケースの左右両側に耕耘軸を水平に軸支し、・・・残耕処理用耕耘爪を設けた耕耘機において、該残耕処理耕耘爪をその両側の耕耘軸に取付けた耕耘爪の回転方向に対し逆回転させるようにしたことを特徴とする耕耘装置。」(特許請求の範囲)
(3-e)「耕耘駆動軸2を囲繞する筒体12が・・・固定され」(摘記事項(3-b))の記載に関連して第3図をみると、上記「筒体12」から延設された鍔状の部分が「耕耘部伝動ケース1」にボルトで取り付けられていることが示されている。
(3-f)第3図には、「傾斜耕耘筒13」の「内筒13c」と「筒体12」との間にシールを設けるとともに、「傾斜耕耘筒13」の「内筒13c」と「筒軸10」との間にシールを設けた構成が示されている。

(4)取消し理由で引用した実願昭63-16059号(実開平1-121302号)のマイクロフイルム(甲第3号証。以下、「引用刊行物4」という。)には、次の事項が記載されている。
(4-a)「伝動ケース1の両側には、耕耘駆動軸2の軸心に対して伝動ケース1の下方側に傾斜する傾斜フランジ7が取付けられており、傾斜フランジ7には傾斜爪軸8がベアリング9を介して回転自在に嵌装されている。この傾斜爪軸8は、伝動ケース1の下方を耕起するための残耕処理爪(図示省略)を装着するものである。10はオイルシール・・・である。」(5頁9〜16行)
(4-b)「22は傾斜爪軸8内をシールする撓みシール、23はそのシールカバーである。」(6頁17〜19行)
(4-c)「23はそのシールカバーである。」(摘記事項(4-b))の記載に関連して第1図ないし第3図をみると、上記「シールカバー23」は、「爪軸筒15」と「傾斜爪軸8」との間に設けられており、具体的には、「爪軸筒15」の周面を一部切り欠いた軸端部から湾曲状に「傾斜爪軸8」の外端部を囲むように設けられていることが示されている。
(4-d)第1図ないし第3図には、「傾斜爪軸8が・・・回転自在に嵌装されている」、「傾斜フランジ7」(摘記事項(4-a))が、「伝動ケース1」の下方側にボルトで取り付けられていることが示されている。

3-3.対比・判断
本件発明と引用刊行物1の発明とを対比すると、
引用刊行物1の発明における「伝動ケース本体(1)」は本件発明における「耕耘ケース(1)」に対応し、以下同様に、「耕耘駆動系」は「主伝動機構(4)」に、「駆動軸(2)」は「出力軸(6)」に、「逆転駆動系」は「(主伝動機構の出力軸に対して反対の方向に回転する)副伝動機構(GL)(GR)」に、「主耕耘爪軸筒(3)(3)」は「第1耕耘筒(30)(30)」に、「回転体(4)である傾斜耕耘爪軸筒」は「第2耕耘筒(13)(13)」に、「ギア(22)」は「駆動ギヤ(11)」に、「ギア(23)」は「受動ギヤ(12)」に、「支持軸(20)」は「中間回転軸(5)」に、それぞれ対応しており、さらに引用刊行物1の発明について、次のことがいえる。
(i)引用刊行物1の発明は、「ミッションケ-スの動力取出部に連動連結して装着される伝動ケース本体(1)」に「水平横向きに支架され」た「駆動軸(2)を伝動ケース本体(1)内に収容する耕耘伝動系で駆動する」(摘記事項(1-b))ものであるから、同引用刊行物1の発明は、本件発明の構成である、「耕耘ケースの内部に組成する主伝動機構の出力軸」を「耕耘ケースに支承横設」の構成に対応する構成を備えている。
また、引用刊行物1の発明は、「回転体(4)(4)を構成する逆転駆動ケースを、駆動軸(2)に対し遊転状態に装備する」(摘記事項(1-b))ものであり、上記「駆動軸(2)」と「ギア(23)のボス部」とは同芯二重軸状にして「伝動ケース本体(1)」に「水平横向きに支架」(刊行物1の(1-e))されていることから、引用刊行物1の発明における「ギア(23)のボス部」は、その機能に照らすと、本件発明の「受動ギヤ(12)の出力軸(12a)(12a)」に対応しているとともに、「逆転駆動系」(本件発明における「副伝動機構」に対応。)の出力軸として機能するものであるといえる。そうすると、同引用刊行物1の発明は、本件発明の構成である、「主伝動機構の出力軸に対して反対の方向に回転する副伝動機構の出力軸」を「同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケースに支承横設」の構成に対応する構成を備えている。
(ii)引用刊行物1の発明は、「それぞれの回転体(4)の外方部位において駆動軸(2)に主耕耘爪軸筒(3)(3)を嵌着固定し、主耕耘爪軸筒(3)(3)に主耕耘爪(6)・・を、回転体(4)(4)に耕耘爪(5)・・を取り付けて、センタードライブ形のロータリ耕耘軸を構成」(摘記事項(1-b))するものであり、「主耕耘爪軸筒(3)(3)」と「回転体(4)(である傾斜耕耘爪軸筒)」とは「駆動軸(2)」及び「ギア(23)のボス部」の軸芯方向に並設されているとともに、上記「主耕耘爪軸筒(3)(3)」は「駆動軸(2)」により駆動され、また、「(回転体(4)である)傾斜耕耘爪軸筒)は「主耕耘爪軸筒(3)に対して逆転させるように構成されている」(摘記事項(1-d))ものであり、逆転駆動力は、「逆転駆動系」(本件発明における「副伝動機構」に対応。)の出力軸として機能する「ギア(23)のボス部」から伝達されるものである。
そうすると、同引用刊行物1の発明は、本件発明の構成である、「両出力軸の軸芯方向に並設する第1耕耘筒及び第2耕耘筒のうちの第1耕耘筒を主伝動機構の出力軸によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒を副伝動機構の出力軸から伝達される動力で第1耕耘筒とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置」の構成に対応する構成を備えているといえる。
(iii)引用刊行物1の発明は、「伝動ケース本体(1)の左右両脇部に取り付けた軸受ホルダ(19)の傾斜外径部に、回転体(4)である傾斜耕耘爪軸筒を回転自由に支承」(摘記事項(1-c))するものであり、上記「回転体(4)」に逆転駆動力を伝達する「ギア(23)のボス部」及び該「ギア(23)のボス部」と同芯二重軸状に配置される「駆動軸(2)」は、上記「軸受ホルダ19」を介して「伝動ケース本体(1)」に「水平横向きに支架」(引用刊行物1の(1-e))されるものであり、さらに図3を参酌すると、上記「軸受ホルダ19」は実質上、本件発明の「支持筒部(3a)(3a)」に相当する部材を備えているといえる。また、上記図3によれば、上記「軸受ホルダ(19)」は「伝動ケース本体(1)」とは別部材で形成されており、実質上、「伝動ケース本体(1)」の開口孔を外側より閉塞する部材であるということができる。一方本件発明における「耕耘ケース下部の左右側壁部に開設した開口孔の外側を閉塞する着脱自在な蓋体」も「耕耘ケース」の開口孔を外側より閉塞する部材であるということができる。
そうすると、本件発明と引用刊行物1の発明とは、同芯二重軸状の両出力軸を、耕耘ケース下部の左右側壁部に開設した開口孔の外側を閉塞する部材の支持筒部に内挿して回転自在に支持させた構成を備えている点で共通しているといえる。
(iv)上記(i)に記載したように、引用刊行物1の発明は、本件発明の構成である、「耕耘ケースの内部に組成する主伝動機構の出力軸と、前記主伝動機構の出力軸に対して反対の方向に回転する副伝動機構の出力軸とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケースに支承横設」の構成に対応する構成を備えており、「同芯二重軸状」とした「出力軸」のうち、内軸である「主伝動機構の出力軸」を「耕耘ケース内で主伝動機構に連動させる」構成をも実質的に備えているといえる。
また、同引用刊行物1の発明において、「逆転駆動系は、伝動ケース本体(1)に設けられた支持軸(20)に嵌着するスプロケット(21)を、耕耘駆動系のチエンに噛合させ、スプロケット(21)に受けた動力を、支持軸(20)の他部位に嵌着するギア(22)から駆動軸(2)に遊転状に支持されたギア(23)に伝動」(摘記事項(1-d))するものであり、内軸である「駆動軸(2)」に「遊転状に支持された」外軸である「ボス部」を有する「ギア(23)」は、「支持軸(20)」に「嵌着するギア(22)」により、「駆動軸(2)」とは反対方向に回転駆動されるものであり、上記「ギア(23)のボス部」は「逆転駆動系」(本件発明における「副伝動機構」に対応。)の出力軸として機能するものである。
そうすると、引用刊行物1の発明は、本件発明の構成である、「内軸である主伝動機構の出力軸を耕耘ケース内で主伝動機構に連動させると共に、外軸である副伝動機構の出力軸は各々の内方軸端部に設けた受動ギヤを主伝動機構に連動する中間回転軸に設けた駆動ギヤに噛合させた副伝動機構によって主伝動機構の出力軸とは反対方向に回転駆動するようにし」の構成に対応する構成を備えているといえる。
(v)引用刊行物1の摘記事項(1-d)に関連して図3を参照すると、同図3には、符号(20),(22)が記入されていないが、スプロット(21)が軸支されている軸が「支持軸(20)」であり、「支持軸(20)」に設けられている歯車が「ギア(22)」であることは明らかである。そして、「ギア(22)」及び「ギア(23)」は、「伝動ケース本体(1)」の開口孔部において、「伝動ケース本体(1)」の面とほぼ同一面上に位置しているから、「ギア(22)」及び「ギア(23)」は「伝動ケース本体(1)」側壁の開口孔部に各々填まり込み位置しているということができ、これらは「逆転駆動系」(本件発明における「副伝動機構」に対応。)を構成するギヤ列であるということができる。
そうすると、引用刊行物1の発明は、本件発明の構成である、「副伝動機構のギヤ列を前記耕耘ケース側壁の開口孔部に各々填まり込み位置させて」の構成に対応する構成を備えているといえる。
(vi)引用刊行物1の発明は、「伝動ケース本体(1)に近接する左右両脇部に、回転体(4)(4)を構成する逆転駆動ケースを、駆動軸(2)に対し遊転状態に装備するとともに、それぞれの回転体(4)の外方部位において駆動軸(2)に主耕耘爪軸筒(3)(3)を嵌着固定し、主耕耘爪軸筒(3)(3)に主耕耘爪(6)・・を、回転体(4)(4)に耕耘爪(5)・・を取り付けて、センタードライブ形のロータリ耕耘軸を構成」(摘記事項(1-b))するものであり、「伝動ケース本体(1)に近接する」側に設けた「回転体(4)(4)に耕耘爪(5)・・を取り付けて」、「逆転駆動系」(本件発明における「副伝動機構」に対応。)の出力軸として機能する「ギア(23)のボス部」より逆転動力を伝達し、「回転体(4)の外方部位」に設けた「主耕耘爪軸筒(3)(3)」に正転動力を伝達するように構成されている。
そうすると、引用刊行物1の発明は、本件発明の構成である、「副伝動機構の出力軸から第2耕耘筒に逆転動力を伝達し、副伝動機構の出力軸の外側軸端部より更に横外方に延出する主伝動機構の出力軸から第1耕耘筒に正転動力を伝達するようにした部分逆転ロータリ耕耘装置」の構成に対応する構成を備えているといえる。

上記(i)ないし(vi)を勘案すると、本件発明と引用刊行物1の発明とは、以下の点で一致し、また、相違していると認められる。
一致点;
耕耘ケースの内部に組成する主伝動機構の出力軸と、前記主伝動機構の出力軸に対して反対の方向に回転する副伝動機構の出力軸とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケースに支承横設し、両出力軸の軸芯方向に並設する第1耕耘筒及び第2耕耘筒のうちの第1耕耘筒を主伝動機構の出力軸によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒を副伝動機構の出力軸から伝達される動力で第1耕耘筒とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置において、前記同芯二重軸状の両出力軸を、耕耘ケース下部の左右側壁部に開設した開口孔の外側を閉塞する部材の支持筒部に内挿して回転自在に支持させ、内軸である主伝動機構の出力軸を耕耘ケース内で主伝動機構に連動させると共に、外軸である副伝動機構の出力軸は各々の内方軸端部に設けた受動ギヤを主伝動機構に連動する中間回転軸に設けた駆動ギヤに噛合させた副伝動機構によって主伝動機構の出力軸とは反対方向に回転駆動するようにし、その副伝動機構のギヤ列を前記耕耘ケース側壁の開口孔部に各々填まり込み位置させて副伝動機構の出力軸から第2耕耘筒に逆転動力を伝達し、副伝動機構の出力軸の外側軸端部より更に横外方に延出する主伝動機構の出力軸から第1耕耘筒に正転動力を伝達するようにした部分逆転ロータリ耕耘装置、である点。
相違点;
(A) 耕耘ケース下部の左右側壁部に開設した開口孔の外側を閉塞する部材が、本件発明では着脱自在な蓋体であるのに対して、引用刊行物1の発明では伝動ケース本体(耕耘ケース)とは別部材ではあるが、着脱自在な蓋体を構成しているか不明である点。
(B) 本件発明では、「受動ギヤ(12)(12)よりも外側で主伝動機構(4)の出力軸(6)とそれに対して反対回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)との間にダストシール(15)を介装すると共に副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)と支持筒部(3a)(3a)との間にシール(17)を介装」して、「第2耕耘筒(13)(13)に逆転動力を伝達」するのを、「シール(17)介装部分より横側方に延出する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から」行うこととしたのに対して、引用刊行物1の発明では、上記した「ダストシール(15)」及び「シール(17)」に相当するものが介装されているか明らかではない点。
(C)本件発明は、「正転動力によって回転される第1耕耘筒(30)(30)と同方向に回転する保護カバー(25)を、第1耕耘筒(30)(30)の内端と第2耕耘筒(13)(13)の外端との間に介装してその保護カバー(25)の周縁部を第2耕耘筒(13)(13)側に屈曲し、第1耕耘筒(30)(30)に対して反対に回転する第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させてある」のに対し、引用刊行物1の発明は、保護カバーを備えていない点。

上記の相違点(A)ないし(C)について検討する。
(1)相違点(A)について
引用刊行物3には、「残耕処理耕耘爪をその両側の耕耘軸に取付けた耕耘爪の回転方向に対し逆回転させるようにした耕耘装置」(摘記事項(3-d))、すなわち、部分逆転耕耘機において、「耕耘部伝動ケース1」の下端部両側に、「耕耘駆動軸2」及び該「耕耘駆動軸2」に「遊嵌した軸筒10」を囲繞する「筒体12」が形成されている部材を、ボルトによって取り付けることが記載されており、上記「筒体12」が形成されている部材は、本件発明における「蓋体(3)(3)」に相当するとともに、ボルトによって取り付けることにより、「耕耘部伝動ケース1」に対して着脱自在に取付けられるものである。
また、引用刊行物4には、ロータリ耕耘作業機において、「傾斜爪軸8」が回転自在に嵌装されている「傾斜フランジ7」を、「伝動ケース1」の下方側にボルトによって取り付けることが記載されており、上記「傾斜フランジ7」は本件発明における「蓋体(3)(3)」に相当するとともに、ボルトによって取り付けることにより、「伝動ケース1」に対して着脱自在に取付けられるものである。
そして、引用刊行物3及び4に記載された上記技術事項を参酌すれば、引用刊行物1の発明おいて、「軸受ホルダ(19)」が形成されている部材を、伝動ケース本体(1)に着脱自在に取り付けることにより相違点(A)に係る本件発明の構成を得ることは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
(2)相違点(B)について
引用刊行物3の第3図には、部分逆転耕耘機において、「軸筒10」(本件発明の「副伝動機構の出力軸」に対応。)と「耕耘駆動軸2」(本件発明の「主伝動機構の出力軸」に対応。)の間にシールを設ける構成が示されており、該シールは、本件発明における「ダストシール15」に相当するものである。
同じく引用刊行物3の第3図には、「傾斜耕耘筒13」の「内筒13c」と「筒体12」(本件発明の「支持筒部(3a)(3a)」に対応。)との間にシールを設けるとともに、「傾斜耕耘筒13」の「内筒13c」と「軸筒10」(本件発明の「副伝動機構の出力軸」に対応。)との間にシールを設けることが記載されている。すなわち、同引用刊行物3には、「軸筒10」(本件発明の「副伝動機構の出力軸」に対応。)と「筒体12」(本件発明の「支持筒部(3a)(3a)」に対応。)との間を2つのシールによって密封することが記載されている。
ところで、一般に回転軸と回転軸を支持する部材間にシールを設けることは慣用技術であり、例えば刊行物2には、センタドライブ方式移動農機の残耕処理に用いられる「クロス爪軸20」の駆動部シール構造において、「耕耘ケース14」に固定された「クロス爪軸ホルダ18」と上記「耕耘ケース14」内から突出する「耕耘軸10」との間に「シール45」を介装し、かつ「クロス爪軸20」と上記「耕耘軸10」との間に「たわみシール50」を介装することにより、「耕耘ケース14内の機密性を高度にし、泥土などの異物が侵入するのを防止する」(摘記事項(2-b))ことが記載されている。
そして、引用刊行物3に記載された上記の技術事項及び、刊行物2に例示される上記慣用技術を参酌すると、引用刊行物1の発明において、「耕耘駆動軸(2)」(本件発明の「主伝動機構の出力軸」に対応。)と、それに対して反対回転する「ギア(23)のボス部」(本件発明の「副伝動機構の出力軸」に対応。)との間にシール(本件発明の「ダストシール(15)」に相当するもの。)を介装するとともに、「ギア(23)のボス部」(本件発明の「副伝動機構の出力軸(12a)(12a)」に対応。)と「軸受ホルダ19」の筒状部(本件発明の支持筒部(3a)(3a)に対応。)との間にシール(本件発明の「シール(17)」に相当するもの。)を介装することは、当業者であれば容易になし得ることであり、また、「回転体(4)である傾斜耕耘爪軸筒」(本件発明の「第2耕耘筒」に対応。)に逆転動力を伝達するのを、シールを介装した部分より横側方に延出する「ギア(23)のボス部」(本件発明の「副伝動機構の出力軸」に対応。)から行うことととして、相違点(B)に係る本件発明の構成を得ることも当業者が容易に想到することができたものである。
(3)相違点(C)について
引用刊行物4には、「爪軸筒15」(本件発明の「第1耕耘筒(30)(30)」に対応。)に、「シールカバー23」を、その周縁部を「傾斜爪軸8」(本件発明の「第2耕耘筒(13)(13)」に対応。)側に屈曲して、「傾斜爪軸8」(本件発明の「第2耕耘筒(13)(13)」に対応。)の外端外周部に被嵌重合した状態で設けることが記載されており、上記「シールカバー23」は、本件発明の「保護カバー(25)」に相当するものである。そして、上記「傾斜爪軸8」(本件発明の「第2耕耘筒(13)(13)」に対応。)は、「耕耘駆動軸2の軸心に対して伝動ケース1の下方側に傾斜する傾斜フランジ7」に取付けられ(摘記事項(4-a))ていることから、「耕耘駆動軸2」の軸心に対して傾斜した状態で設けられているものであり、両軸の配置関係を考慮すると、「爪軸筒15」(本件発明の「第1耕耘筒(30)(30)」に対応。)に取り付けられた上記「シールカバー23」は、「傾斜爪軸8」(本件発明の「第2耕耘筒(13)(13)」に対応。)の外端外周部とは実質上、非接触状態にあるということができ、引用刊行物4は、相違点(C)に係る構成を開示しているといえる。そして、引用刊行物1の発明における、「主耕耘爪軸筒(3)」及び「「傾斜耕耘爪軸筒」に、引用刊行物4が開示する、ロータリ耕耘作業機における回転軸のシールカバーに関する、上記の技術事項を適用することは当業者であれば容易になし得ることである。
そして、上記の各相違点に係る構成を備えた本件発明が奏する効果は、上記引用刊行物1ないし4に記載された発明並びに慣用技術から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本件発明は上記引用刊行物1ないし4に記載された発明並びに慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
部分逆転ロ-タリ耕耘装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】耕耘ケ-ス(1)の内部に組成する主伝動機構(4)の出力軸(6)と、前記主伝動機構(4)の出力軸(6)に対して反対の方向に回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケ-ス(1)に支承横設し、両出力軸(6)、(12a)(12a)の軸芯方向に並設する第1耕耘筒(30)(30)及び第2耕耘筒(13)(13)のうちの第1耕耘筒(30)(30)を主伝動機構(4)の出力軸(6)によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒(13)(13)を副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から伝達される動力で第1耕耘筒(30)(30)とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置において、前記同芯二重軸状の両出力軸(6)、(12a)(12a)を、耕耘ケ-ス(1)下部の左右側壁部に開設した開口孔(2)(2)の外側を閉塞する着脱自在な蓋体(3)(3)の支持筒部(3a)(3a)に内挿して回転自在に支持させ、内軸である主伝動機構(4)の出力軸(6)を耕耘ケ-ス(1)内で主伝動機構(4)に連動させると共に、外軸である副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)は各々の内方軸端部に設けた受動ギヤ(12)(12)を主伝動機構(4)に連動する中間回転軸(5)に設けた駆動ギヤ(11)(11)に噛合させた副伝動機構(GL)(GR)によって主伝動機構(4)の出力軸(6)とは反対方向に回転駆動するようにし、その副伝動機構(GL)(GR)のギヤ列(11)(12)、(11)(12)を前記耕耘ケ-ス(1)側壁の開口孔(2)(2)部に各々填まり込み位置させて受動ギヤ(12)(12)よりも外側で主伝動機構(4)の出力軸(6)とそれに対して反対回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)との間にダストシ-ル(15)を介装すると共に副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)と支持筒部(3a)(3a)との間にシ-ル(17)を介装して、シ-ル(17)介装部分より横側方に延出する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から第2耕耘筒(13)(13)に逆転動力を伝達し、副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)の外側軸端部より更に横外方に延出する主伝動機構(4)の出力軸(6)から第1耕耘筒(30)(30)に正転動力を伝達するようになし、正転動力によって回転される第1耕耘筒(30)(30)と同方向に回転する保護カバ-(25)を、第1耕耘筒(30)(30)の内端と第2耕耘筒(13)(13)の外端との間に介装してその保護カバ-(25)の周縁部を第2耕耘筒(13)(13)側に屈曲し、第1耕耘筒(30)(30)に対して反対に回転する第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させてあることを特徴とする部分逆転ロ-タリ耕耘装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、所定耕耘幅のロ-タリ爪軸筒を、背反に回転する複数の耕耘筒によって構成する部分逆転ロ-タリ耕耘装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耕耘ケ-ス内に組成する主伝動機構の出力軸と、主伝動機構の出力軸に対して反対の方向に回転する副伝動機構の出力軸とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケ-スに支承横設し、両出力軸の軸芯方向に並設する第1耕耘筒及び第2耕耘筒のうちの第1耕耘筒を主伝動機構の出力軸によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒を副伝動機構の出力軸から伝達される動力でもって第1耕耘筒とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置が知られている(例えば、特公昭46-39041号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記文献にみられる従来の部分逆転ロ-タリ耕耘装置においては、第1耕耘筒に対して反対方向に回転する第2耕耘筒の内筒部を耕耘ケ-スの内部(耕耘ケ-スに連通連設した支持筒の内腔)に挿込み支持してその挿込部分に副伝動機構の出力軸との連動結合部を組成し、この連動結合部の外側部位に副伝動機構の出力軸外径と第2耕耘筒の内筒内径との間を軸封するにオイルシ-ルを介装すると共に、第2耕耘筒の内筒外径と耕耘ケ-スとの間に別のシ-ルを介装して耕耘ケ-ス内部を軸封しているので、内部構成及び軸封構成が複雑で組付分解が容易ではなくメンテナンスに苦慮する難点があり、また、メンテナンス等に際して第2耕耘筒が取り外されると耕耘ケ-ス内部の潤滑油が流出してしまうといった難点もあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記難点を解消することを目的としてなされたもので、耕耘ケ-スの内部に組成する主伝動機構の出力軸と、前記主伝動機構の出力軸に対して反対の方向に回転する副伝動機構の出力軸とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケ-スに支承横設し、両出力軸の軸芯方向に並設する第1耕耘筒及び第2耕耘筒のうちの第1耕耘筒を主伝動機構の出力軸によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒を副伝動機構の出力軸から伝達される動力で第1耕耘筒とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置において、前記同芯二重軸状の両出力軸を、耕耘ケ-ス下部の左右側壁部に開設した開口孔の外側を閉塞する着脱自在な蓋体の支持筒部に内挿して回転自在に支持させ、内軸である主伝動機構の出力軸を耕耘ケ-ス内で主伝動機構に連動させると共に、外軸である副伝動機構の出力軸は各々の内方軸端部に設けた受動ギヤを主伝動機構に連動する中間回転軸に設けた駆動ギヤに噛合させた副伝動機構によって主伝動機構の出力軸とは反対方向に回転駆動するようにし、その副伝動機構のギヤ列を前記耕耘ケ-ス側壁の開口孔部に各々填まり込み位置させて受動ギヤよりも外側で主伝動機構の出力軸とそれに対して反対回転する副伝動機構の出力軸との間にダストシ-ルを介装すると共に副伝動機構の出力軸と支持筒部との間にシ-ルを介装して、シ-ル介装部分より横側方に延出する副伝動機構の出力軸から第2耕耘筒に逆転動力を伝達し、副伝動機構の出力軸の外側軸端部より更に横外方に延出する主伝動機構の出力軸から第1耕耘筒に正転動力を伝達するようになし、正転動力によって回転される第1耕耘筒と同方向に回転する保護カバ-を、第1耕耘筒の内端と第2耕耘筒の外端との間に介装してその保護カバ-の周縁部を第2耕耘筒側に屈曲し、第1耕耘筒に対して反対に回転する第2耕耘筒の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させてあることを特徴とする。
【0005】
【実施例】
本発明の実施例について図面を参照して説明するが、図面は、第2耕耘筒が傾斜耕耘筒になったセンタ-ドライブ型の部分逆転ロ-タリ耕耘装置として構成された具体例を示しており、図1は本発明に係る部分逆転ロ-タリ耕耘装置の要部の断面図、図2はその一部分を拡大した断面図、図3はシ-ルの一部分を拡大した部分図である。
【0006】
図1および図2において、耕耘ケ-ス(1)は、その下方の左右壁部に上下方向長さ(L)の開孔部(2)(2)を開設し、各々の開孔部(2)(2)の外側を、開口孔周縁に締結取着する蓋体(3)(3)で閉塞するように構成されている。
そして、各々の蓋体(3)には、耕耘ケ-ス(1)内の主伝動機構(4)に連動する中間回転軸(5)の軸端部を軸受支持する部分が設けられており、また、別個所においては、外側方に向けて延出する支持筒部(3a)が一体に形設されている。
【0007】
耕耘ケ-ス(1)内の主伝動機構(4)は、耕耘ケ-ス(1)の下部に横設される水平軸芯(O1)の出力軸(6)を、図外の耕耘ケ-ス上部に設けられる入力軸に連動連結するチエン伝動機構に構成され、前記中間回転軸(5)は、出力軸(6)よりも伝動上位にあって出力軸(6)に平行に設けられ、前記チエン伝動機構に係り合うスプロケット(7)によって回転駆動されるようになっている。
なお、(8)は、前記出力軸(6)の中央部に嵌着される受動スプロケット、(9)はチエン、(10)はテンションスプロケットである。
【0008】
中間回転軸(5)のスプロケット(7)の左右両脇部分には駆動ギヤ(11)(11)が嵌着され、各々の駆動ギヤ(11)(11)には受動ギヤ(12)(12)がそれぞれ常時噛合されて伝動機構の副伝動機構(GL)(GR)が構成されており、常時噛合する駆動ギヤと受動ギヤ(11)(12)、(11)(12)は、上述した耕耘ケ-ス(1)の開口孔(2)(2)に填まり込む状態に配設されている。
【0009】
副伝動機構(GL)(GR)は、後述する第2耕耘筒(13)(13)を、主伝動機構(4)の出力軸(6)に対して反対方向に回転駆動するためのものであり、各々の副伝動機構(GL)(GR)における前記受動ギヤ(12)(12)は、それぞれの副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)の内端部に一体に形成されている。
そして、各々の副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)は、ニ-ドルベアリング(14)を介して主伝動機構(4)の出力軸(6)に回転自在に外嵌して主伝動機構(4)の出力軸(6)と同芯二重軸状に設けられ、前記ニ-ドルベアリング(14)の外側部位にダストシ-ル(15)をそれぞれ介装して両出力軸(6)(12a)の嵌合面間を軸封している。
【0010】
また、各々の副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)は、プレ-ンメタル(16)を介して前記蓋体(3)(3)の支持筒部(3a)(3a)の内径孔に内嵌され、支持筒部(3a)(3a)の外端部において出力軸(12a)(12a)の外径と支持筒部(3a)(3a)の内径孔との間に介装するシ-ル(17)によって両者間を軸封している。
前記シ-ル(17)は、耐油性ゴムなどの弾性材によって形成され、インボリュ-トスプライン孔に形成された内径部(17a)を、前記出力軸(12a)の外径部に刻設されたインボリュ-トスプライン部に外嵌合致させるとともに、外周のリップ部(17b)を、前記支持筒部(3a)の内周面に当接させて設けられている。
【0011】
副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)は、耕耘ケ-ス(1)の一部分である前記支持筒部(3a)(3a)の外端より外方に延出され、この延出部分にインボリュ-トスプラインがそれぞれ刻設されていて、各々のインボリュ-トスプライン部にスパ-ギヤ(18)を嵌着固定し、該スパ-ギヤ(18)を第2耕耘筒(13)(13)の内径部に形設されているインタ-ナルギヤ(19)(19)に噛合させて第2耕耘筒(13)(13)を回転駆動する最終伝動部(20)(20)が構成されている。
【0012】
各々の第2耕耘筒(13)(13)は、前記両出力軸(6)、(12a)(12a)の軸芯(O1)に対して一定角度に傾斜する軸芯(O2)の回りを回転するように、支持筒部(3a)の外径に軸受(21)を介して回転自在に支承されており、その内方端部は、支持筒部(3a)の外径との間に介装する通常のオイルシ-ル(22)によって軸封されるが、外方端部は、傾斜回転に伴う間隔変化に追従することができるように撓みシ-ル(23)によって軸封されている。
なお、撓みシ-ル(23)は、図2の拡大図にみられるように、副伝動機構の出力軸(12a)と第2耕耘筒(13)との間に介装され、両者の間隔変化に追従して屈伸する部分の動きを妨げない範囲で、その屈伸部分を保護する鍔部(24)を外側に付設したものとなっている。
【0013】
さらに、各々の第2耕耘筒(13)の外端外周部を、前記両軸芯(O1)(O2)の交点(P)を中心とする球面状部(13a)に形成する一方で、前記鍔部(24)の更に外側に位置する保護カバ-(25)を主伝動機構の出力軸(6)に嵌着固定し、その外周縁部を少なくともその内面が前記球面状部(13a)に相似する球面になった椀縁状に形成し、この球面の椀縁状部を前記球面状部(13a)に接触しない状態でそれに被冠重合させてあり、この保護カバ-(25)によって前記撓みシ-ル(23)が二重に保護されるようになっている。
【0014】
そうして、第2耕耘筒(13)には必要数の耕耘爪取付座(26)を設け、各々の耕耘爪取付座(26)に耕耘爪(27)(28)を取付けている。
また、第1耕耘筒(30)(30)は、前記保護カバ-(25)を主伝動機構の出力軸(6)に嵌着したうえで、その外方から同出力軸(6)に着脱自在に挿し込んで楔着固定されるのであり、外周には必要本数の耕耘爪取付座(31)が間配り装着され、それぞれの取付座に一般的な耕耘なた爪(32)が取り付けられている。
【0015】
なお、本発明は、一般的な耕耘機や、管理機或いはティラ-などの小型軽量機用のロ-タリ耕耘装置に適用できることは勿論のこと、乗用トラクタ用のロ-タリ耕耘装置にも適用できるのであり、また、本発明の実施は、センタ-ドライブ型のロ-タリ耕耘装置に限られるものではなく、サイドドライブ型のロ-タリ耕耘装置であっても、第2耕耘筒を第1耕耘筒の軸芯方向の両サイドに配置し換える変更によって同機能を発揮するものとして適用できるのである。
【0016】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の請求項1に係る発明は、耕耘ケ-ス(1)の内部に組成する主伝動機構(4)の出力軸(6)と、前記主伝動機構(4)の出力軸(6)に対して反対の方向に回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)とを同芯二重軸状にして各々が独立に回転するように耕耘ケ-ス(1)に支承横設し、両出力軸(6)、(12a)(12a)の軸芯方向に並設する第1耕耘筒(30)(30)及び第2耕耘筒(13)(13)のうちの第1耕耘筒(30)(30)を主伝動機構(4)の出力軸(6)によって回転駆動するとともに、第2耕耘筒(13)(13)を副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から伝達される動力で第1耕耘筒(30)(30)とは反対の方向に回転駆動するようにした部分逆転ロ-タリ耕耘装置において、前記同芯二重軸状の両出力軸(6)、(12a)(12a)を、耕耘ケ-ス(1)下部の左右側壁部に開設した開口孔(2)(2)の外側を閉塞する着脱自在な蓋体(3)(3)の支持筒部(3a)(3a)に内挿して回転自在に支持させ、内軸である主伝動機構(4)の出力軸(6)を耕耘ケ-ス(1)内で主伝動機構(4)に連動させると共に、外軸である副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)は各々の内方軸端部に設けた受動ギヤ(12)(12)を主伝動機構(4)に連動する中間回転軸(5)に設けた駆動ギヤ(11)(11)に噛合させた副伝動機構(GL)(GR)によって主伝動機構(4)の出力軸(6)とは反対方向に回転駆動するようにし、その副伝動機構(GL)(GR)のギヤ列(11)(12)、(11)(12)を前記耕耘ケ-ス(1)側壁の開口孔(2)(2)部に各々填まり込み位置させて受動ギヤ(12)(12)よりも外側で主伝動機構(4)の出力軸(6)とそれに対して反対回転する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)との間にダストシ-ル(15)を介装すると共に副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)と支持筒部(3a)(3a)との間にシ-ル(17)を介装して、シ-ル(17)介装部分より横側方に延出する副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)から第2耕耘筒(13)(13)に逆転動力を伝達し、副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)の外側軸端部より更に横外方に延出する主伝動機構(4)の出力軸(6)から第1耕耘筒(30)(30)に正転動力を伝達するようになし、正転動力によって回転される第1耕耘筒(30)(30)と同方向に回転する保護カバ-(25)を、第1耕耘筒(30)(30)の内端と第2耕耘筒(13)(13)の外端との間に介装してその保護カバ-(25)の周縁部を第2耕耘筒(13)(13)側に屈曲し、第1耕耘筒(30)(30)に対して反対に回転する第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させているので、耕耘ケ-ス(1)に蓋体(3)(3)を着脱することで両出力軸(6)、(12a)(12a)及び駆動ギヤ(11)(11)、受動ギヤ(12)(12)を含む副伝動機構(GL)(GR)の組付分解が行えてメンテナス等に有利であり、副伝動機構(GL)(GR)のギヤ列(11)(12)、(11)(12)が耕耘ケ-ス(1)側壁の開口孔(2)(2)部に各々填まり込むことにより耕耘ケ-ス(1)下部の左右幅が狭まって耕耘ケ-ス(1)の下方の残耕処理に有利となりながら前記両出力軸(6)、(12a)(12a)は確りと支られ、両出力軸(6)、(12a)(12a)の嵌合面及び副伝動機構(GL)(GR)の出力軸(12a)(12a)と蓋体(3)(3)の支持筒部(3a)(3a)との嵌合面に対しても耕耘ケ-ス(1)内から潤滑油が的確良好に供給されて油洩れを生ずることなく的確に潤滑される。そして、二重軸状の両出力軸(6)、(12a)(12a)及びその軸封部分は、第1耕耘筒(30)(30)と同方向に回転する保護カバ-(25)の周縁部を第2耕耘筒(13)(13)側に屈曲し第1耕耘筒(30)(30)に対して反対に回転する第2耕耘筒(13)(13)の外端外周部に非接触状態で被嵌重合させて草藁等の締め込み状の巻き付きが防止されることによって外圧からも良好に保護され、その際には保護カバ-(25)が第2耕耘筒(13)(13)に被嵌重合して背反回転するにかかわらず発熱等の不具合を生ずることがなくて軽快に作動することとなり、これらの相乗によって、第1耕耘筒(30)(30)と第2耕耘筒(13)(13)とが互いに反対方向に回転する部分逆転ロ-タリ耕耘装置でありながら全体として組付分解や残耕処理に有利で、作動性及び耐久性にも優れるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る部分逆転ロ-タリ耕耘装置の要部の断面図である。
【図2】
図1の一部分を拡大した断面図である。
【図3】
シ-ルの一部分を拡大した部分図である。
【符号の説明】
GL 副伝動機構
GR 副伝動機構
1 耕耘ケ-ス
4 主伝動機構
6 主伝動機構の出力軸
12a 副伝動機構の出力軸
13 第2耕耘筒
15 ダストシ-ル
17 シ-ル
30 第1耕耘筒
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-08-17 
出願番号 特願平11-329116
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A01B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 林 晴男
渡部 葉子
登録日 2002-02-01 
登録番号 特許第3274117号(P3274117)
権利者 セイレイ工業株式会社
発明の名称 部分逆転ロ-タリ耕耘装置  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ