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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C11D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C11D
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C11D
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C11D
管理番号 1128913
異議申立番号 異議2003-72524  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-14 
確定日 2005-10-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3396885号「液体洗浄剤組成物」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3396885号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第3396885号の請求項1ないし8に係る発明は、平成7年3月30日に特許出願され、平成15年2月14日にその特許権の設定登録がされ、その後、忽那哲也より特許異議申立てがされ、取消理由が通知され,その指定期間内である平成16年9月21日に訂正請求がされた後、再度取消理由が通知され,その指定期間内である平成17年3月29日に、先の平成16年9月21日付け訂正請求が取り下げられるとともに、新たな訂正請求がされたものである。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求は,訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり,その訂正の内容は次のとおりである。
ア 訂正事項a
本件特許明細書の特許請求の範囲の記載即ち;
「【請求項1】(A)動的光散乱法による平均粒径10〜5000nm、電気泳動光散乱法によるζ電位の絶対値30mV以上及び粉末X線回折法による純度90%以上の粘土鉱物0.01〜2.9重量%と、(B)陰イオン性及び非イオン性界面活性剤の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤6.0〜90重量%と、(C)分散剤0.001〜5重量%とを含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項2】(A)成分の粘土鉱物がLi型、Na型又はK型粘土鉱物である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】(A)成分の粘土鉱物が多価金属イオン置換粘土鉱物である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】多価金属イオンがアルカリ土類金属イオンである請求項3記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】多価金属イオン置換粘土鉱物が、粘土鉱物中の交換性陽イオンの少なくとも40当量%が多価金属イオンで置換されたものである請求項3又は4記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項6】(C)成分の分散剤が水溶性高分子化合物である請求項1ないし5のいずれかに記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項7】水溶性高分子化合物が、一般式
【化1】

(式中のR1は水素原子、アルカリ金属、無置換若しくはアルカノール基置換アンモニウム基又は炭素数1〜4のアルキル基である)
で表わされる繰り返し単位少なくとも1種と、一般式
【化2】

(式中のR2は水素原子、アルカリ金属、無置換若しくはアルカノール基置換アンモニウム基又は炭素数1〜4のアルキル基である)
で表わされる繰り返し単位少なくとも1種とから成る重量平均分子量1万以上の共重合体である請求項6記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項8】共重合体が、化1で表わされる繰り返し単位と化2で表わされる繰り返し単位とのモル比が2:8ないし7:3のものであるである、請求項7記載の液体洗浄剤組成物。」
を、
「【請求項1】(A)動的光散乱法による平均粒径10〜5000nm、電気泳動光散乱法によるζ電位の絶対値30mV以上及び粉末X線回折法による純度90%以上の粘土鉱物0.01〜2.9重量%と、(B)陰イオン性及び非イオン性界面活性剤の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤6.0〜90重量%と、(C)一般式
【化1】

(式中のR1は水素原子又はアルカリ金属である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種と、一般式
【化2】

(式中のR2は炭素数1〜4のアルキル基である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種とから成り、化1で表わされる繰り返し単位と化2で表わされる繰り返し単位とのモル比が2:8ないし5:5である、重量平均分子量30万以上の共重合体からなる水溶性高分子化合物である分散剤0.001〜5重量%とを含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項2】(A)成分の粘土鉱物がLi型、Na型又はK型粘土鉱物である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】(A)成分の粘土鉱物が多価金属イオン置換粘土鉱物である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】多価金属イオンがアルカリ土類金属イオンである請求項3記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】多価金属イオン置換粘土鉱物が、粘土鉱物中の交換性陽イオンの少なくとも40当量%が多価金属イオンで置換されたものである請求項3又は4記載の液体洗浄剤組成物。」と訂正する。
イ 訂正事項b
本件特許明細書段落【0010】の記載において、
「少なくとも1種の界面活性剤と、分散剤とを、」とあるのを、
「少なくとも1種の界面活性剤と、特定の分散剤とを、」と訂正する。
ウ 訂正事項c
同段落【0011】の記載において、
「(C)分散剤0.001〜5重量%とを含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物を提供するものである。」とあるのを、
「(C)一般式
【化3】

(I)
(式中のR1は水素原子又はアルカリ金属である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種と、一般式
【化4】

(II)
(式中のR2は炭素数1〜4のアルキル基である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種とから成り、化3で表わされる繰り返し単位と化4で表わされる繰り返し単位とのモル比が2:8ないし5:5である、重量平均分子量30万以上の共重合体からなる水溶性高分子化合物である分散剤0.001〜5重量%とを含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物を提供するものである。」と訂正する。
エ 訂正事項d
同段落【0033】の記載において、
「(C)成分として分散剤が用いられる。この分散剤としては、例えばヘキサメタリン酸塩、メタリン酸塩、ケイ酸塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シュウ酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、アルギン酸、デンプン、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースアルキルエステルなど)ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩などの一般的な分散剤を用いることができる。このような分散剤の中で、分散性に優れる液体洗浄剤組成物を与える点から、水溶性高分子化合物が好適である。」とあるのを、
「(C)成分の分散剤として、分散性に優れる液体洗浄剤組成物を与える点から、一般式
【化5】

(I)
(式中のR1は水素原子又はアルカリ金属である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種と、一般式
【化6】

(II)
(式中のR2は炭素数1〜4のアルキル基である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種とから成り、化5で表わされる繰り返し単位と化6で表わされる繰り返し単位とのモル比が2:8ないし5:5である、重量平均分子量30万以上の共重合体からなる水溶性高分子化合物が用いられる。」と訂正する。
オ 訂正事項e
同段落【0034】の記載すべてを削除する。
カ 訂正事項f
同段落【0035】の記載すべてを削除する。
キ 訂正事項g
同段落【0036】の記載において、
「このような共重合体の例としては、メタクリル酸‐アクリル酸共重合体、メタ-クリル酸アルキルエステル‐アクリル酸共重合体、メタクリル酸‐アクリル酸アルキルエステル共重合体、メタクリル酸アルキルエステル‐アクリル酸アルキルエステル共重合体、さらにはこれらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、炭素数1〜4のアルカノールアミン塩)などが挙げられる。」とあるのを、
「このような共重合体の例としては、メタクリル酸‐アクリル酸アルキルエステル共重合体、さらにはそのアルカリ金属塩が挙げられる。」と訂正する。
ク 訂正事項h
同段落【0037】の記載すべてを削除する。

(2)訂正の目的の適否,新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記訂正事項aは、請求項1に記載の(C)成分である分散剤を、請求項6〜8に記載されていた特定の化合物をさらに限定した特定共重合体の水溶性高分子化合物に限定し、請求項6〜8を削除するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また,訂正事項b〜hは,上記訂正事項aと整合を図るものであるから,それらは,明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当ものである。しかも、上記訂正事項aでの限定事項即ち、一般式化1、化2で表わされる繰り返し単位に関する化学構造、及び化1で表わされる繰り返し単位と化2で表わされる繰り返し単位とのモル比が2:8ないし5:5である、重量平均分子量30万以上の共重合体からなる水溶性高分子化合物については、願書に添付された明細書の発明の詳細な説明(特許明細書段落【0033】、【0034】、【0036】、【0037】、【0060】、【0062】参照)に記載されているものであるから、訂正事項a〜hはいずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって,上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3 特許異議申立てについて
(1)本件発明
上記2で示したように上記訂正が認められるから、本件特許第3396885号の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1ないし5」といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記2(1)アの訂正事項aにより訂正された特許請求の範囲の記載参照)。

(2)特許異議申立ての理由の概要、及び、当審の取消理由の概要
ア 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠として,本件の出願日前に日本国内または外国において頒布された刊行物である下記の甲第1〜7及び9〜10号証と、本件の出願後に頒布された刊行物である下記の甲第8号証を提出し,
(ア)訂正前の本件請求項1に係る発明((以下、「訂正前発明1」という。他の請求項に係る発明についても同様に略記する。)及び訂正前発明2は、甲第1〜4号証に記載されており、訂正前発明3ないし5は甲第1号証に記載されており、訂正前発明6は甲第3〜4号証に記載されており、訂正前発明7ないし8は甲第3号証に記載されており、いずれも新規性を欠如するものであり、その特許は,特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであるから、
(イ)訂正前発明1ないし8は、甲第1〜7及び9〜10号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、また、
(ウ)訂正前の本件は、明細書の記載がに不備があり、特許法第36条第4項、同条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていないから、その特許は取り消されるべきものである旨主張している。

「特許異議申立ての証拠」
(i)甲第1号証:特開平2-103299号公報
(ii)甲第2号証:特開平6-56650号公報
(iii)甲第3号証:特開平1-215897号公報
(iv)甲第4号証:特開昭60-184599号公報
(v)甲第5号証:鬼形正伸、“ベントナイトの特性と化粧品への応用”、フレグランス ジャーナル、1994年6月号、第21〜28頁
(vi)甲第6号証:小林紘冶他、“最近のベントナイトの製造工程について”、粘土科学、1992年、第31巻,第4号、第222〜230頁
(vii)甲第7号証:鈴木啓三他、“スクメタイトの特性と応用”、フレグランス ジャーナル、1994年6月号、第29〜37頁
(viii)甲第8号証:関根茂他、「化粧品ハンドブック」、日光ケミカルズ株式会社他、平成8年11月1日発行、第518〜526頁
(ix)甲第9号証:北原文雄他著、「ゼータ電位-微粒子界面の物理化学」、初版第一刷、株式会社サイエンティスト社、1995年1月31日発行、第105頁
(x)甲第10号証:特開平7-3630号公報

イ 取消理由の概要
当審における最初の取消理由の概要は、上記異議申立の理由と同様な理由に加え、訂正前発明6は甲第1〜2号証にも記載された発明であるとするものあり、2度目の取消理由の概要は、明細書の記載不備に関するものである。

(3)各甲号証及び引用文献に記載された事項
(i)甲第1号証(特開平2-103299号公報)
甲第1号証は、安定な液体洗濯洗剤に係る発明であり、その液体洗濯洗剤は、「スメクタイト型粘土1%〜25%」を含むことが記載されている(請求項1)。このスメクタイト粘土については、「安定な製品を与えるために、粘土の粒径は、最長寸法が約1μm未満であってコロイド懸濁液を生ずるようなものでなければならない」ことが記載されており(第5頁左下欄下から2行〜右下欄1行)、しかも、そのようなスメクタイト粘土は、「既知であり且つ多くは市販されている」(第5頁左上欄第7行〜8行)と記載され、実施例では、カルシウムベントナイト(実施例1、2及び4)、ナトリウムヘクトライト(実施例3、5及び6)、ナトリウムベントナイト(実施例7)が使用されている。また、甲第1号証に係る液体洗濯洗剤には、「陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤…およびそれらの混合物からなる群から選ばれる洗濯界面活性剤1%〜40%を更に」含み得ること(請求項10)、や「高分子粘土凝集剤0.001%〜10%を更に」含み得ること、凝集剤は「…アクリル酸、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルアルコール…などの単量体に由来するかなり長鎖の重合体および共重合体である。・・・アクリルアミド、および/またはアクリル酸の重合体が好ましい。これらの重合体は、分子量(重量平均)が約300,000以上」であること(請求項3、第7頁右上欄第3〜18行)が記載されている。そして、凝集剤は、その性質上「分散凝集剤」とも記載されている(第6頁左上欄2行)。また、「洗浄性ビルダー」を含み得ることも記載されており、例示としては、「エチレンジアミン四酢酸…およびクエン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩」が挙げられている(第13頁右上欄1行〜最終行)。加えて、「汚れ放出剤」を含み得ることが記載され、例示としては「セルロース誘導体が挙げられている(第15頁右下欄下から2行〜第16頁左上欄2行)。
そして、典型的な安定な柔軟化スルー・ザ・ウオッシュ液体洗剤の配合例として、「陰イオン界面活性剤10〜30%、非イオン界面活性剤2〜10%、・・・トリエタノールアミン0〜7%(好ましくは3〜7%)、水酸化ナトリウム0〜7%(好ましくは3〜7%)、布帛柔軟化スメクタイト粘土2〜7%、沈降防止剤0.5〜2%、水25〜45%、高分子凝集剤0〜1%(好ましくは0.01〜0.3%)、雑成分残部(100%とする)」(第17頁左下欄1行〜末行)が記載されており、「水がおよびポリオールが上記の大部分の凝集剤に良好な溶媒である」(第7頁左下欄5〜6行)ことも記載されている。
また、効果に関係して「得られる液体洗剤系のレオロジー特性は、商業上許容可能な製品に非常に重要である。糸ひき性(即ち、弾性)、増粘または塊状であると記載できる液体洗剤は、望ましくない。」(第6頁左下欄5〜8行)と記載され、その液体洗濯洗剤の安定性について、実施例では、剤中の粘土沈降量が測定されている(第20頁右下欄1〜15行)。
(ii)甲第2号証(特開平6-56650号公報)
甲第2号証は、粘性液体皮膚洗浄組成物に係る発明であり、「水、少なくとも1種の界面活性剤、研磨粒子及び粘化剤を含有する」ことが記載されている(請求項1)。その粘化剤は、「好ましくは膨潤化粘土、さらに好ましくは合成ヘクトライト(ラポナイト粘土)」であり、「粘土の好ましいレベルは1〜2重量%」であり(段落【0023】、【0025】)、実施例では、Laporte製のLAPONITE XLS:RTMが使用されている(段落【0037】)。界面活性剤は、「陰イオン性界面活性剤」及び「非イオン性界面活性剤」が挙げられ、その量については、「好ましいレベルは10〜30重量%の範囲」であることが記載されている(段落【0031】、【0033】)。さらに、該組成物には、「増粘ポリマーを単独で、又は膨潤化粘土のような他の粘化剤と組み合わせて用い得る」ことが記載され(段落【0028】)、「好ましいポリマーは、アルジネート…を含めた天然ゴム、並びにカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルグアーを含めた多糖類誘導体である」ことが記載されている(段落【0028】)。さらに、「ラポナイト粘土を含む懸濁剤を含有する」(請求項5)こと、及び調整法として「7.5重量%ヘクトライトゾルのストック溶液は、925部の水に75部のラポナイト XLS(Laporte製)を除々に添加して40℃で激しく混合して調整した。1時間撹拌し続けて、粘土を完全に分散及び水和させ・・・」(段落【0037】)が記載されている。そして、実施例では、粘度、安定性が測定され(段落【0051】の表2)、「十分に安定した物質を調整し得たことがわかる」と記載されている(段落【0052】)。
(iii)甲第3号証(特開平1-215897号公報)
甲第3号証は、ゲル形態の洗浄組成物に係る発明であり(第2頁左下欄13〜14号)、この甲第3号証に係る組成物は、「有効量のクレーを含有している」ことが記載され(請求項7)、「クレーが天然又は合成ヘクトライトであり、その含有量が約0.005〜約0.1重量%である」ことが記載されている(請求項8)。クレーの具体例としては、「天然クレーを使用する場合、好ましくはN.L.Industriesから市販されているMaca1oidR(登録商標)のような精製ヘクトライトが使用される」ことが記載され、その鉱物組成も開示されている(第7頁左上欄最終行〜右上欄6行)。また、「Laporte Industr1es,Ltd.から商品名“Laponite(登録商標)“で市販されているような合成ヘクトライトが特に好適である」ことも記載され、その鉱物組成も開示されている(第7頁右上欄7〜15行)。そして、組成物には、「更に約0.1〜約25重量%の界面活性剤を含有」し得ることが記載され(請求項11)、「非イオン性、アニオン性界面活性剤」が例示され(第8頁右上欄6〜第9頁左下欄9行)、さらに、「架橋ポリカルボキシルポリマーである増粘剤を0.1〜10%含有する」ことが記載され(第3項)、「アリルスクロースで修飾されたポリアクリル酸をベースとする市販の架橋ポリマー」が例示されている(第6頁右上欄下から2行〜左下欄上から7行)。
また、組成物には、「活性材料に対して非反応性であり、保存中に活性材料とゲル成分との不利な相互作用が生じないようにする物質」である「保護物質」を含み得ることが記載され(第11頁右上欄13行〜最終行)、例示としては、「無機塩」、「ポリアクリレート、ポリメタクリレート…ポリビニルアルコール」といったホモポリマー、「スチレン、アクリル酸、メタクリル酸…から形成される」コポリマーが挙げられ、具体例は、「ポリ(ブチルメタクリレート)・・・ポリ(メタクリル酸/C1-C20アルキルアクリレート)」が記載されている(第11頁右上欄最終行〜第12頁左上欄6行)。 そして、目的、効果に関して、「通常の液体と同様に容器から注入可能でありながら、組成物が液だれしないように反跳弾性(recoi1 e1asticity)を有するゲル洗浄用組成物を提供することである。」(第4頁右下欄12〜15行)と記載されている。
(iv)甲第4号証(特開昭60-184599号公報)
甲第4号証は、研磨材含有液体洗浄剤組成物に係る発明であり、「(A)少なくとも1種の界面活性剤5〜60重量%、(B)平均粒径が1〜50μである非晶質の無水ケイ酸及びケイ酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の水不溶性研磨剤5〜60重量%及び(C)粘土鉱物及び水溶性高分子物質の中から選ばれた少なくとも1種の安定化剤0.1〜10重量%を含有する」組成物が記載されている(請求項1)。
該粘土鉱物としては、「モンモリロナイト、ノントロナイト…及びこれらの混合物を主成分とする粘土など」が記載されており(第3頁右上欄11〜17行)、実施例には、ナショナルリード社のマカロイド、クニミネ社のクニピアGが記載され、界面活性剤としては、「アニオン性界面活性剤」、「ノニオン性界面活性剤」が例示され(第2頁第5〜6行)、さらに、水溶性高分子としては、「カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、部分架橋ポリアクリル酸及びその塩、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマー及びその塩など」が例示されている(第3頁右上欄下から4行〜左下欄3行)。
また、比較例13には、陰イオン性界面活性剤(AES-Na(2)、AOS-Na)及び非イオン性界面活性剤(アミンオキシド、脂肪酸アマイド)23重量%、粘土(マカロイド、ナショナルリード社)0.5重量%、ポリアクリル酸ソーダ0.5重量%を配合した液体洗浄剤組成物が記載されており、安定性に優れていることが示されている。
(v)甲第5号証(鬼形正伸、“ベントナイトの特性と化粧品への応用”、フレグランス ジャーナル、1994年6月号、第21〜28頁)
甲第5号証は、化粧品用粘土類に関する学術文献であり、精製ペントナイトの製法が記載されている(第21頁左欄下から13〜7行)。特に市販の精製ベントナイトが「2μ以下の粒子」(第21頁左欄下から11行)であること、および「モンモリナイトは・・・水系におけるレオロジー調整剤として利用されている。」(第21頁左欄下から6行〜末行)が記載されている。また、「・・・O/Wエマルジョン系において、ベントナイトとキサンタンガムなどの水溶性高分子と油性物質と水を配合することにより、1.乳化安定性、経時安定性が向上・・・などの効果が得られるといわれている。水溶性高分子のみでも・・・エマルジョンを形成することができるが、水の分離(離水)が生じ易く、ベントナイトを添加すると、それを防ぐことができ乳化が安定する。」(第27頁左欄6行〜21行)が記載されている。
(vi)甲第6号証(小林紘治他、“最近のベントナイトの製造工程について”、粘土科学、1992年、第31巻,第4号、第222〜230頁 ) 甲第6号証は、ベントナイトに関する学術文献であり、高純度Naモンモリロナイトの製造の工程が記載されている(第228頁右欄下から22〜13行、図9)。
(vii)甲第7号証(鈴木啓三他、“スクメタイトの特性と応用”、フレグランス ジャーナル、1994年6月号、第29〜37頁)
甲第7号証は、化粧品用粘土類に関する学術文献であり、「天然スメクタイトの粒子サイズは、成因・産状・鉱物種などにより異なるが、単一粒子の層面の広がりは0.1〜2μm程度であり、一方、合成スメクタイト(水熱合成法)のそれは20〜50nmと極めて微細である。スメクタイト粒子の厚さは、いずれも5〜10nmである」と記載されている(第30頁左欄下から18〜12行)。表1にはスメクタイト及び膨潤性雲母一覧表が、表2には、天然スメクタイトとしてクニピア、合成スメクタイトとしてスメクトン-SAを例として、スメクタイト類の特性が示されている。さらに、クニピアと有機増粘剤との併用効果が検討され、クニピアとポリアクリル酸ナトリウムの流動特性と経時変化が図10及び11に示されている。さらに、クニピア、スクメトンの水系分散液の特性(第32頁右欄下から5行〜第37頁左欄第下から13行)や、「スメクタイトは、膨潤性、懸濁性、増粘性・・・などにすぐれている・・・」(第37頁左欄第下から11行〜12行)が記載されている。
(viii)甲第8号証(関根茂他、「化粧品ハンドブック」、日光ケミカルズ株式会社他、平成8年11月1日発行、第518〜526頁)
甲第8号証は、本件の出願後に発行された、化粧品に関する文献であるが、ゼータ電位測定法について、「粉体分散物の分散安定性を容易に推定できる方法である。比重や粒子径によって少し異なるが、ゼータ電位がおおよそ30mv以上あれば良好な分散安定性を示す」ことが記載されている(第525頁左欄7〜11行)。
(ix)甲第9号証(北原文雄他著、「ゼータ電位-微粒子界面の物理化学」、初版第一刷、株式会社サイエンティスト社、1995年1月31日発行、第105頁)
甲第9号証は、ゼータ電位に関する文献であり、「我々は経験的にゼータ電位の大きいコロイド分散系は安定で、放置しておいても凝集しにくいことを知っている」ことが記載され、さらに「特に凝集をおこしやすい系では多くの場合ζ≦50mvの値を取る」ことが記載されている(第105頁4〜18行)。
(x)甲第10号証(特開平7-3630号公報)
甲第10号証は、繊維柔軟化剤の製造方法であり、イオン交換性陽イオン量の少なくとも70当量%が多価金属イオンで置換されたスメクタイトが記載されている(請求項1)。さらに、「本発明の繊維柔軟化剤には、・・・ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤などを少量含有させてもよい。・・・本発明の繊維柔軟化剤は、・・・洗剤に配合して洗濯液中で使用することもできる。」(段落【0030】)が記載されている。

(4)対比.判断
ア 特許法第29条第1項違反について
(i)本件発明1について
(i-1)本件発明1と甲第1号証に記載された発明について
本件発明1は、上記3(1)で示したように、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、要約すれば、「(A)動的光散乱法による平均粒径10〜5000nm、電気泳動光散乱法によるζ電位の絶対値30mV以上及び粉末X線回折法による純度90%以上の粘土鉱物0.01〜2.9重量%と、(B)陰イオン性及び非イオン性界面活性剤の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤6.0〜90重量%と、(C)一般式化1で示される繰り返し単位(メタクリル酸系)の少なくとも1種と一般式化2で示される繰り返し単位(アクリル酸アルキルエステル系)の少なくとも1種とから成り、化1で表わされる繰り返し単位と化2で表わされる繰り返し単位とのモル比が2:8ないし5:5である、重量平均分子量30万以上の共重合体からなる水溶性高分子化合物である分散剤0.001〜5重量%とを含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。」である。
一方、甲第号1証には、上記3(3)(i)に摘記したように、液体洗剤として、「陰イオン界面活性剤10〜30%、非イオン界面活性剤2〜10%、・・・トリエタノールアミン0〜7%(好ましくは3〜7%)、水酸化ナトリウム0〜7%(好ましくは3〜7%)、布帛柔軟化スメクタイト粘土2〜7%、沈降防止剤0.5〜2%、水25〜45%、高分子凝集剤0〜1%(好ましくは0.01〜0.3%)、雑成分残部(100%とする)」(第17頁左下欄1行〜末行)の組成のもの、及び「水がおよびポリオールが上記の大部分の凝集剤に良好な溶媒である」(第7頁左下欄5行〜6行)ことが記載されている。また、用いられるスメクタイト粘土は「既知であり且つ多くは市販されている」(第5頁左上欄第7行〜8行)ものであり、安定な製品を与えるために、粘土の粒径は、最長寸法が約1μm未満であってコロイド懸濁液を生ずるようなものでなければならない」ことも記載されており(第5頁左下欄下から2行〜右下欄上から1行)、これらの記載と、甲第5号証〜甲第7号証に記載されている市販の粘土鉱物の粒径、純度、物性や甲第9号証に記載されているゼータ電位(ζ電位)とコロイド分散系に係る技術常識からみて、甲第号1証には、「(A)本件発明1と同一の粘土鉱物2〜2.9%と、(B)陰イオン性、非イオン性界面活性剤の界面活性剤12〜40%と、(C’)高分子凝集剤0〜1%(好ましくは0.01〜0.3%)とを含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
そして、本件発明1と引用発明1を対比すると、両者は、(A)成分である粘土鉱物、(B)成分である界面活性剤及びそれら成分の配合量において一致(重複)するものであるが、本件発明1の(C)成分が特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物である分散剤であるのに対し、引用発明1の(C’)成分は高分子凝集剤である点で相違している。
この相違点について検討する。
甲第1号証には、上記3(3)(i)に摘記したように、高分子凝集剤としての例示として、アクリル酸、ジメチルエチルメタクリレート、ビニルアルコールなどの単量体に由来するかなり長鎖の重合体および共重合体、アクリルアミド、および/またはアクリル酸の重合体が好ましいこと、これらの重合体は、分子量(重量平均)が約300,000以上であることが記載されている(請求項3、第7頁右上欄第3〜18行)ものの、甲第1号証には、本件発明1の(C)成分として記載される特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物に関しては記載されていないうえ、その水溶性高分子化合物が記載されているに等しいとする事項の記載もない。
したがって、本件発明1と引用発明1は、発明を特定する事項において異なっており、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
(i-2)本件発明1と甲第2号証に記載された発明について
甲第2号証には、本件発明1の(C)成分に対応する成分として、上記(3)(ii)に摘記したように、「アルジネート…を含めた天然ゴム、並びにカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルグアーを含めた多糖類誘導体」が記載されている(段落【0028】)が、甲第2号証には、本件発明1の(C)成分として記載される特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物に関しては記載されていないうえ、その水溶性高分子化合物が記載されているに等しいとする事項の記載もない。
したがって、他の配合成分(発明を特定する事項)について検討するまでもなく、本件発明1は甲第2号証に記載された発明ではない。
(i-3)本件発明1と甲第3号証に記載された発明について
甲第3号証には、上記(3)(iii)に摘記したように、「活性材料に対して非反応性であり、保存中に活性材料とゲル成分との不利な相互作用が生じないようにする物質」である「保護物質」として、多数の共重合体の例示のなかに、ポリ(メタクリル酸/C1-C20アルキルアクリレート)なる記載がある(第11頁右上欄最終行〜第12頁左上欄6行)が、その具体的分子量、繰り返し単位(両モノマー)のモル比などは何ら記載されていないので、甲第3号証には、本件発明1の(C)成分として記載される特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物に関しては記載されているとは認められないうえ、その水溶性高分子化合物が記載されているに等しいとする事項の記載もない。
したがって、他の配合成分(発明を特定する事項)について検討するまでもなく、本件発明1は甲第3号証に記載された発明ではない。
(i-4)本件発明1と甲第4号証に記載された発明について
甲第4号証には、本件発明1の(C)成分に対応する成分として、上記(3)(iv)に摘記したように、水溶性高分子として、「カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、部分架橋ポリアクリル酸及びその塩、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマー及びその塩など」が例示されている(第3頁右上欄下から4行〜左下欄3行)が、本件発明1の(C)成分として記載される特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物に関しては記載されていないうえ、その水溶性高分子化合物が記載されているに等しいとする事項の記載もない。
したがって、他の配合成分(発明を特定する事項)について検討するまでもなく、本件発明1は甲第4号証に記載された発明ではない。
(ii)本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5は、いずれも、本件発明1を更に限定する発明である。 したがって、本件発明2ないし5は、いずれも上記3(4)ア(i-1)〜(i-4)に記載したのと同様の理由により、甲第1〜4号証に記載された発明ではない。

以上のとおりであるから、本件発明に係る特許は,特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものではない。

イ 特許法第29条第2項違反について
(i)本件発明1について
上記3(4)ア(i-1)〜(i-4)に示したように,甲第1〜4号証には、本件発明1を特定する事項の一つである、本件発明1の(C)成分として記載される特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物に関しては記載されていないうえ、その水溶性高分子化合物が記載されているに等しいとする事項の記載も、その水溶性高分子化合物を示唆する記載もない。また、甲第5〜7号及び甲第9〜10号証にも該特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物に関しては記載されていないうえ、その水溶性高分子化合物が記載されているに等しいとする事項の記載も、その水溶性高分子化合物を示唆する記載もない。
そして、本件発明1で用いられる如き粒径、純度の粘土鉱物は、甲第1号証に「既知であり且つ多くは市販されている」(第5頁左上欄第7行〜8行)と記載されていること、及び甲第2〜4号証における実施例に市販品が記載されていることからも明かなように、さらには、甲第5〜7、10号証に記載されているように周知の物質であって、液体洗剤など水系における、粘化(粘度改質)や分散、懸濁の安定化、レオロジ-調整などの特性を有することも当業者に知られている(例えば、甲第2号証の段落【0023】、甲第3号証の第3頁左上欄15行〜17行、甲第4号証の第2頁左上欄9行〜12行、甲第5号証の第21頁左欄下から6行〜末行、甲第7号証の第29頁左欄第下から14行〜8行など参照)ところであり、さらに、水溶性高分子化合物との併用も知られている(例えば、甲第1号証の請求項3、第7頁右上欄第3〜18行、甲第2号証の段落【0028】、甲第3号証の第7頁左上欄7行〜8行や同特許請求の範囲の請求項8、16及び第11頁右上欄最終行〜第12頁左上欄6行、甲第4号証の特許請求の範囲の請求項1、甲第5号証の第27頁左欄6行〜21行、甲第7号証の第37頁左欄6行〜22行、同欄第下から11行〜12行など参照)ところであるが、上記したように、そこで用いられる水溶性高分子化合物として、本件発明1の(C)成分として記載される特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物に関しては記載も示唆もされていない。
一方、本件発明1は、液体洗浄剤組成物の成分として、(A)特定の粘土鉱物及び(B)界面活性剤とともに、(C)特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物である分散剤を併用することにより、本件特許明細書の実施例により裏付けられる効果(段落【0060】の表1や段落【0061】の表2参照)、即ち、その使用に供するに際して好ましい粘度と容器取り出し時の糸引きなどがない良好な液性を備えている上、種々の条件下においても良好な分散状態を維持することがでるという効果を奏するものと認められる。さらに、本件特許権者の提出した実験成績証明書(疎第1〜3号証)からみて、上記したような、甲第1〜5、7号証に記載されている如き公知の水溶性高分子化合物(カルボキシメチルセルロース、架橋型カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、キサンタンガム)を併用した場合や、本件発明1の(C)成分である共重合体と類似だが、その分子量や繰り返し単位のモル比が本願発明1での特定範囲に該当しないものを併用した場合は、本件発明1の(C)成分である特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物を併用した場合のような分散安定性は得られないということも認められるところである。
したがって,甲第1〜7、9〜10号証、それぞれから本件発明1を導き出すことができないばかりか,それら各甲号証を組み合わせても本願発明1を容易に発明することはできない。
(ii)本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5は、いずれも、本件発明1を更に限定する発明である。 したがって、本件発明2ないし5は、いずれも上記3(4)イ(i)に記載したのと同様の理由により、甲第1〜7、9〜10号証、それぞれから導き出すことができないばかりか,それら各甲号証を組み合わせても本件発明2ないし5を容易に発明することはできない。

以上のとおりであるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

ウ 特許法第36条第4項、同条第5項第2号及び第6項規定違反について
異議申立人は、実施例でその効果が確認されている分散剤は、特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物だけであるから、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されている分散剤は広範であり、訂正前の本件は、明細書の記載に不備があり、特許法第36条第4項、同条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない旨主張しているが、訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5、及び明細書の記載では、用いる分散剤は、実施例の記載に対応する特定の共重合体からなる水溶性高分子化合物であるとされているから、本件明細書の記載は、特許法第36条第4項、同条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たすものと認められる。

(5)むすび
以上のとおりであるから,特許異議申立ての理由及び提出した証拠方法によっては,本件発明の特許を取り消すことはできない。
また,他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液体洗浄剤組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)動的光散乱法による平均粒径10〜5000nm、電気泳動光散乱法によるζ電位の絶対値30mV以上及び粉末X線回折法による純度90%以上の粘土鉱物0.01〜2.9重量%と、(B)陰イオン性及び非イオン性界面活性剤の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤6.0〜90重量%と、(C)一般式
【化1】

(式中のR1は水素原子又はアルカリ金属である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種と、一般式
【化2】

(式中のR2は炭素数1〜4のアルキル基である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種とから成り、化1で表わされる繰り返し単位と化2で表わされる繰り返し単位とのモル比が2:8ないし5:5である、重量平均分子量30万以上の共重合体からなる水溶性高分子化合物である分散剤0.001〜5重量%とを含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項2】(A)成分の粘土鉱物がLi型、Na型又はK型粘土鉱物である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】(A)成分の粘土鉱物が多価金属イオン置換粘土鉱物である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】多価金属イオンがアルカリ土類金属イオンである請求項3記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】多価金属イオン置換粘土鉱物が、粘土鉱物中の交換性陽イオンの少なくとも40当量%が多価金属イオンで置換されたものである請求項3又は4記載の液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は新規な液体洗浄剤組成物、さらに詳しくは、特定の粘土鉱物を配合したものであって、使用感に優れた液性を有するとともに、種々の条件下においても良好な分散状態を維持しうる液体洗浄剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで、衣料洗浄用、台所洗浄用、窓ガラス洗浄用、浴室洗浄用、浴槽洗浄用、全身洗浄用、洗顔用、洗髪用、便器用、住居用などの液体洗浄剤に対し、好ましい液性を付与するために、粘度調整剤として、有機系、高分子系あるいは無機粘土鉱物などを配合することが行われている。ここで、好ましい液性とは、使いやすい粘度を有し、容器からの取り出し時に糸引きなどが生じない、すなわち、液切れが良いなどの性状をもつことを示す。
【0003】
しかしながら、これらの増粘剤の中で、有機系増粘剤は増粘効果が小さいという欠点があるし、また高分子系増粘剤は、それを配合した液体洗浄剤を容器から取り出す際に糸引きが生じたり、該洗浄剤に電解質を添加した場合に著しく増粘効果が低下するなどの欠点を有している。
【0004】
一方、粘土鉱物系の増粘剤は、高分子系増粘剤と同等の増粘効果を示すとともに、安価で、しかもそれを配合した液体洗浄剤を容器から取り出す際の液切れが良いなどの利点を有している。
【0005】
粘土鉱物の増粘作用は、一般に、次のような機構で生じるものと考えられている。増粘剤として用いられる粘土鉱物は、層状の結晶が重なって粒子を形成しており、その層間には交換性をもつ種々の陽イオン、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオンなどがあり、粘土鉱物を水中に分散すると、この層間イオンが水和することにより、層間が拡大して粒子が膨張する。その結果、粘土鉱物の粒子は薄片状に分離する。この薄片の表面の電荷は負で、端面の電荷は正となる。この電荷の違いにより、水中に分散した薄片は、たがいに表面と端部を接するような構造、いわゆる「カードハウス構造」を形成して粘土鉱物分散系を増粘する。
【0006】
しかしながら、液体洗浄剤組成物では、多くの場合、電解質が共存することにより、薄片状粒子表面の負電荷が中和され凝集を起こしやすくなり、分散安定性が低下するとともに増粘効果が低下する傾向がある。さらに、より安価な天然産出の粘土鉱物を用いた場合には、増粘効果や分散安定性が産出地、あるいは同一産出地にあっても採取場所の違いにより変動したりするので、液体洗浄剤組成物への使用が限定されている。
【0007】
したがって、電解質共存下でも、少量の添加で高い増粘効果を示し、しかも容器からの取り出し時に糸引きなどが生じない液切れの良い、粘土鉱物を配合した液体洗浄剤組成物を得ることは、これまで困難であった。
【0008】
他方、粘土鉱物の改質について、先に本発明者らは、(1)膨潤力が10ml/2g以上の水膨潤性三層粘土を含む懸濁液を50000sec-1以上の剪断速度下で処理する方法(特開平5-97500号公報)、(2)さらに剪断処理された懸濁液を4000G以上の遠心加速度で遠心分離したのち、上澄み液を回収する方法(特開平5-263359号公報)、(3)平均粒径100〜5000nm、イオン交換性陽イオン量の少なくとも70当量%に相当する量のアルカリ金属イオン量及びスメクタイト95重量%を含む粘土鉱物含有水性懸濁液に、多価金属イオン含有水溶液を加えてイオン交換処理し、イオン交換性陽イオン量の少なくとも70当量%が多価金属イオンで置換されたスメクタイトを形成させたのち、これを分離回収し、所望により水洗する方法(特開平7-3630号公報、特開平7-189115号公報)を提案した。さらに、この粘土鉱物処理物を、高い増粘効果を有し、分散安定性に優れた粘土鉱物として配合して成る、粘度のばらつきがなく、かつ容器からの取り出し時の液切れがよい液体洗浄剤組成物を提案した(特開平8-151597号公報)。しかしながら、この液体洗浄剤組成物は、例えば商品の流通過程で留め置かれた倉庫内では、氷点下以下から数十度までもの広範な温度条件にさらされ、時として、分散状態の予想外の劣化が生じる場合があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、高い増粘効果を有し、分散安定性に優れた粘土鉱物を配合し、粘度のばらつきがなく、使用感に優れ、かつ容器から取り出し時に液切れがよい上、種々の条件下においても良好な分散状態を維持しうる液体洗浄剤組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の好ましい特性を有する液体洗浄剤組成物を開発すべく種々の検討を重ねた結果、特定の平均粒径、特定のζ電位、特定の純度を有する粘土鉱物と、陰イオン性及び非イオン性界面活性剤の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤と、特定の分散剤とを、それぞれ所定の割合で含有する液体洗浄剤組成物が、その目的に適合しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、(A)動的光散乱法による平均粒径10〜5000nm、電気泳動光散乱法によるζ電位の絶対値30mV以上及び粉末X線回折法による純度90%以上の粘土鉱物0.01〜2.9重量%と、(B)陰イオン性及び非イオン性界面活性剤の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤6.0〜90重量%と、(C)一般式
【化3】

(式中のR1は水素原子又はアルカリ金属である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種と、一般式
【化4】

(式中のR2は炭素数1〜4のアルキル基である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種とから成り、化3で表わされる繰り返し単位と化4で表わされる繰り返し単位とのモル比が2:8ないし5:5である、重量平均分子量30万以上の共重合体からなる水溶性高分子化合物である分散剤0.001〜5重量%とを含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物を提供するものである。
【0012】
本発明の液体洗浄剤組成物において、(A)成分として用いられる粘土鉱物の原料としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト及び膨潤性の雲母などがある。これらの粘土鉱物は層間に水分子を伴った交換性のイオンを有しており、有機複合体を形成する、膨潤能を有するなど、他の粘土鉱物とは異なった性質を示す。このようなスメクタイトには、天然産出品と合成品があり、天然産出のスメクタイトとしては、例えばモンモリロナイトを含有するものとして、クニミネ工業(株)社から、クニピアG及びクニピアF、アメリカンコロイド社からウエスタンボンド、ドレッサーミネラルズ社からのイエローストーンなどが、サポナイトを含有するものとして、バンダービルド社からビーガムT、ビーガムHV、ビーガムF及びビーガムKなどが、また、ヘクトライトを含有するものとして、アメリカンコロイド社からヘクタブライトAW、ヘクタブライト200及びベントンEW、ナショナルリード社からマカロイドなどが市販されている。また、合成スメクタイトとしては、例えば水澤化学工業(株)社からイオナイトH、コープケミカル(株)社からSWN、SAN、ラポルテインダストリー社からラポナイトなどが市販されている。
【0013】
膨潤性の雲母としては、コープケミカル(株)社製の膨潤性合成雲母MEシリーズ、トピー工業(株)社製のナトリウム四ケイ素雲母(商品名、DP-DM及びDMクリーン)などが挙げられる。
【0014】
また、(A)成分の粘土鉱物の原料として、酸性白土のアルカリ処理物も用いることができる。この酸性白土は、通常1重量%分散液のpHが5〜6以下、膨潤度が10ml/2g以下、SiO2とAl2O3の含有量がモル比でSiO2/Al2O3=6〜10のものである。このようなものとしては、例えば中条、小戸、上赤谷、糸魚川、水澤、川崎、松根、三川、青梅、上砂見産の酸性白土や、これらの酸性白土と類似の性質を示す英国産のフラーズ・アース(Fuller’s earth)、米国産のフロライド・アース(Floride earth)、ドイツ産のワルケル・エルデ(Warkel erde)などが挙げられる。酸性白土中に存在する交換性の陽イオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオンなどがある。これらの酸性白土はアルカリ処理することにより、上記の粘土鉱物と同様に扱うことができる。
【0015】
これらの粘土鉱物を本発明組成物の(A)成分として用いるには、動的光散乱法により測定した平均粒径が10〜5000nm、電気泳動光散乱法により測定したζ電位の絶対値が30mV以上、粉末X線回折法により求めた純度が90%以上であることが必要である。
【0016】
この平均粒径及びζ電位は、試料を約60ppmの濃度で蒸留水に加えて60分間超音波分散させたものについて、平均粒径は温度20℃、屈折率1.331、粘度0.951cP、角度90度の条件下で光散乱法により粘土鉱物の膨潤性ゲル粒子の粒径を測定したもの、ζ電位は電気泳動光散乱光度計を用い、散乱角20度、室温で測定したものを示す。また、純度は粉末法によりX線回折を行い、得られたX線回折図において、粘土鉱物に帰属するピーク面積の総和Scとその他の結晶に帰属するピーク面積の総和Sxとを求め、式
粘土鉱物の純度(%)=Sc/(Sc+Sx)×100
によって求めた値である。
【0017】
この粘土鉱物の平均粒径が10nm未満では液体洗浄剤組成物を増粘するのに多量の粘土鉱物が必要であり、また5000nmを超えると安定した分散状態が得られない上、液体洗浄剤組成物の使用時に被洗浄面を傷付けたりする。増粘効果、分散安定性及び被洗浄面に対する傷付け防止性などの面から、好ましい平均粒径は200〜2000nmの範囲である。
【0018】
また、ζ電位の絶対値が30mV未満では粘土粒子が凝縮しやすくなり、液体洗浄剤組成物において、凝集物の沈降が生じたりして分散安定性が低下する。さらに、粘土鉱物、特に天然から採取したものには、カルサイト、トリジマイト、クリストバライト、石英などの各種無機物の非膨潤性のきょう雑物が含まれており、これらは液体洗浄剤組成物中で、沈降したり、溶解して電解質を放出したりして、商品の外観や粘土鉱物の分散性を損なう原因となる。したがって、粘土鉱物の純度は90%以上であることが必要であり、特に95%以上が好ましい。
【0019】
本発明において、(A)成分として用いられる前記性状を有する粘土鉱物は、例えば単に原料粘土鉱物を水中に懸濁し、その上澄み液を分離することによっても得ることができるが、原料の粘土鉱物を水中に懸濁し、これを50000sec-1以上の剪断速度でかき混ぜながら膨潤させたのち、その上澄み液を分離することによって調製するのが有利である。
【0020】
この膨潤処理は、原料粘土鉱物を水で膨潤させるとともに増粘効果の優れた成分を上澄み液として、前記のきょう雑物、例えば、カルサイト、トリジマイト、クリストバライト、石英などから分離するための処理であり、したがって、湿式法で行うことが必要であって、空気分級などの乾式法を用いることはできない。
【0021】
前記したように、懸濁処理におけるかき混ぜは、50000sec-1以上、好ましくは70000sec-1以上の超高速剪断速度下で行うのが有利であるが、この際の所要時間は、剪断速度が高ければ短くなり、剪断速度が低ければ長くなるが、通常1秒ないし24時間、好ましくは1分〜5時間である。これが短すぎると十分な剪断が行われないばかりか、上澄み液中の粘土鉱物の含有量が減り経済的でなく、またあまり長すぎると粘土鉱物の非晶質化を生じ増粘効果を低下させる。
【0022】
この際の剪断手段としては、狭い間隙を通して、剪断、破壊、分散作用を与えるホモジナイザー、コロイドミル、ジェット粉砕器などが好適である。また、この際の間隙の幅は0.5mm以下にするのが望ましい。
【0023】
また、この際に効果的な剪断を得るためには、粘土鉱物の懸濁液の、B型粘度計による25℃での粘度を50000cP以下、好ましくは1000cP以下にすることが望ましい。この粘度が50000cPを超えると、ずり応力が著しく上昇するため、50000sec-1以上の剪断速度を得ることができにくくなるし、場合によっては懸濁液の降伏値を超え、かき混ぜ部分に空回りを生じ、懸濁液に十分な剪断力を加えられなくなる。
【0024】
次に、上澄み液の分離は遠心分離により行うのが有利である。この場合、目的とする粘土鉱物を得るためには、通常4000G以上、好ましくは6000G以上の加速度で遠心分離したのち、上澄み液を回収する。この加速度が4000G未満では増粘効果が低い大きな粘土粒子や、微細な不純物あるいは非晶質の粘土成分などが十分に除去できず、優れた増粘効果をもち、分散安定性に優れた粘土鉱物が得られにくい。この遠心分離による処理時間は5秒ないし100時間程度、好ましくは1分ないし24時間である。このかきまぜ処理や上澄み液を取得する処理は、温度0〜105℃の範囲で行うことができるが、20〜90℃の範囲で行うのが好ましい。
【0025】
このようにして得た上澄み液中の粘土鉱物は、通常、Li型、Na型、K型などのアルカリ金属イオン型で、動的光散乱法により測定した平均粒径が10〜5000nm、電気泳動光散乱法によって測定したζ電位の絶対値が30mV以上、及び粉末X線回折法によって測定した純度が90%以上である。この上澄み液をそのまま液体洗浄剤組成物に配合してもよいし、また、場合によっては、濃縮、あるいは、乾燥して粉体状、フレーク状にして液体洗浄剤組成物に配合してもよい。
【0026】
さらに、本発明においては、場合により、この粘土鉱物のイオン交換反応を行い、多価金属イオン置換粘土鉱物としても用いることができる。このものは、液体洗浄剤組成物中での増粘効果を一層高めるのに適している。また、この一層高い増粘効果を得るためには、多価金属イオンの置換率が40当量%以上であることが望ましい。
【0027】
この際に用いられる多価金属イオンとしてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンや、亜鉛イオン、ジルコニウムイオン、チタニウムイオン、アルミニウムイオンなどがあるが、特に好ましいのはアルカリ土類金属イオンである。
【0028】
このイオン交換は、前記の上澄み液に該多価金属イオンを含む水溶液を添加して行うのが有利である。多価金属イオンを含む水溶液は、対応する多価金属の水溶性塩を、水に溶解することによって調製される。この水溶液は多価金属イオンを飽和濃度まで含むものであればよいが、あまり高濃度になると、陽イオンの交換が不均一になるので、通常は20重量%以下のものを用いるのが好ましい。イオン交換後、生成した多価金属イオン置換粘土鉱物はゲル状となるが、沈降分離、遠心分離などにより回収し、必要に応じて水洗して過剰の多価金属イオンを除去する。このゲルをそのまま液体洗浄剤組成物に配合してもよいし、また、場合によっては、濃縮、あるいは、乾燥して粉体状、フレーク状にして液体洗浄剤組成物に配合してもよい。
【0029】
本発明の液体洗浄剤組成物においては、(A)成分として、前記の性状を有する粘土鉱物を0.01〜2.9重量%の範囲で含有することが必要である。この含有量が0.01重量%未満では増粘効果が十分に発揮されないし、2.9重量%を超えると凝集粒子の沈降が生じるなど分散安定性が低下する。増粘効果及び分散安定性の面から、該粘土鉱物の好ましい含有量は0.1〜1.0重量%の範囲である。
【0030】
次に、本発明の液体洗浄剤組成物においては、(B)成分として、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の中から選ばれた少なくとも1種が用いられる。該陰イオン性界面活性剤としては、通常の石ケン、スルホネート系、サルフェート系、ホスフェート系などのものが使用される。ここで、石ケンとしては、例えば飽和あるいは不飽和(C6〜C30)脂肪酸塩が挙げられる。スルホネート系陰イオン性界面活性剤としては、例えば直鎖又は分枝鎖アルキル(C8〜C23)ベンゼンスルホン酸塩、長鎖アルキル(C8〜C22)スルホン酸塩、長鎖オレフィン(C8〜C22)スルホン酸塩などが挙げられる。またサルフェート系陰イオン性界面活性剤としては、例えば長鎖モノアルキル(C8〜C22)硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(1〜6モル)長鎖エステル(C8〜C22)エーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(1〜6モル)アルキル(C8〜C18)フェニルエーテル硫酸エステル塩などが挙げられ、また、ホスフェート系陰イオン界面活性剤としては、例えば、長鎖モノアルキル、ジアルキル又はセスキ(各アルキル基の炭素数は8〜22である)リン酸塩、ポリオキシエチレン(1〜6モル)モノアルキル、ジアルキル又はセスキアルキル(各アルキル基の炭素数は8〜22である)リン酸塩などが挙げられる。これらの陰イオン性界面活性剤の対イオンとしての陽イオンは、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンイオンなどである。
【0031】
一方、非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン(1〜20モル)長鎖アルキル(第一級又は第二級C8〜C22)エーテル、ポリオキシエチレン(1〜20モル)アルキル(C8〜C18)フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのオキシアルキレン付加化合物、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキシド付加物、長鎖型第三級アミンオキシド(C12〜C14)などが挙げられる。
【0032】
本発明においては、これらの界面活性剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は6.0〜90重量%、好ましくは6.0〜50重量%の範囲で選ばれる。
【0033】
さらに、本発明の液体洗浄剤組成物においては、(C)成分の分散剤として、分散性に優れる液体洗浄剤組成物を与える点から、一般式
【化5】

(式中のR1は水素原子又はアルカリ金属である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種と、一般式
【化6】

(式中のR2は炭素数1〜4のアルキル基である)で表わされる繰り返し単位少なくとも1種とから成り、化5で表わされる繰り返し単位と化6で表わされる繰り返し単位とのモル比が2:8ないし5:5である、重量平均分子量30万以上の共重合体である水溶性高分子化合物が用いられる。
【0034】削除
【0035】削除
【0036】
このような共重合体の例としては、メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、さらにはそのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0037】削除
【0038】
本発明の液体洗浄剤組成物においては、この(C)成分として、前記分散剤を1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、この分散剤を0.001〜5重量%の範囲で含有することが必要である。この含有量が0.001重量%未満では分散安定性の改善効果が十分に発揮されず、本発明の目的が達せられないし、5重量%を超えるとその量の割には効果の向上がみられず、むしろ経済的に不利となる。分散安定性の改善効果及び経済性の面から、分散剤の好ましい含有量は0.01〜4重量%の範囲である。
【0039】
また、本発明の液体洗浄剤組成物には、前記の必須成分に加えて、必要に応じ本発明の効果を損なわない範囲内で、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、キシレンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩などのアリールスルホン酸塩やエタノールなどの可溶化剤、香料、色素、酵素、粘結剤、キレート剤、薬効成分などを添加することができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明の液体洗浄剤組成物は、特定な性状を有する粘土鉱物を含有する液体洗浄剤組成物であり、その使用に供するに際して好ましい粘度と容器取り出し時の糸引きなどがない良好な液性を備えている上、種々の条件下においても良好な分散状態を維持することができ、安定した品質を保つことができる商品価値の高いものである。
【0041】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
なお、例中の物性の測定と評価は以下の方法で行った。
【0042】
(1)動的光散乱法による平均粒径
純水中に粘土鉱物を分散し60ppmの濃度としたものについて、動的光散乱光度計DLS-800型(商品名、大塚電子工業社製)を用い、温度20℃、屈折率1.331、粘度0.951cP、角度90度の条件で粒径測定を行った。
【0043】
(2)電気泳動光散乱法によるζ電位
純水中に粘土鉱物を分散し60ppmの濃度としたものについて、電気泳動光散乱光度計DLS-800型(商品名、大塚電子工業社製)を用い、散乱角20度、温度20℃でζ電位を求めた。
【0044】
(3)純度
粘土鉱物の純度は粉末法によりX線回折を行い、得られたX線回折図において、粘土鉱物に帰属するピーク面積の総和Scとその他の結晶に帰属するピーク面積の総和Sxとを求め、式
粘土鉱物の純度(%)=Sc/(Sc+Sx)×100
によって求めた。なお、X線回折の測定に際しては、定量の標準的な測定条件を用い、最も強いピークがほぼ100%となるフルスケールで行った。
【0045】
(4)粘度の測定
B型粘度計を用いて測定した。
【0046】
(5)増粘効果
液体洗浄剤組成物の粘度と、その組成物より粘土鉱物を除いたものの粘度を測定し、前者より後者を差し引いたものを増粘効果とする。
【0047】
(6)粘土鉱物の液体洗浄剤組成物中での分散安定性
所定の組成で配合した液体洗浄剤組成物について、以下の試験を行い分散安定性を調べた。
【0048】
(イ)室温保存試験
液体洗浄剤組成物をガラス製密閉容器に入れ、25℃恒温槽中にて保存し、100日目に目視観察して、濁り、離水、沈殿物などが生じたり、粘度の変化があったものを×、外観上変化がなく、しかも粘度変化がなかったものを○とした。
(ロ)高温保存試験
液体洗浄剤組成物をガラス製密閉容器に入れ、50℃恒温槽中にて保存し、1カ月間経過後に目視観察して、濁り、離水、沈殿物などが生じたり、粘度の変化があったものを×、外観上変化がなく、しかも粘度変化がなかったものを○とした。
(ハ)凍結復元性試験
液体洗浄剤組成物をガラス製密閉容器に入れ、-20℃冷凍槽に16時間保存後取り出し、室温にて融解、この操作を5回繰り返し、融解後の液体洗浄剤組成物の状態を目視観察して、濁り、離水、沈殿物などが生じたり、粘度の変化があったものを×、外観上変化がなく、しかも粘度変化がなかったものを○とした。
【0049】
実施例1
粘土鉱物の原料として山形県産のモンモリロナイト(灼熱残分85重量%)を用い、この3.0kgを、純水50kgに加え、6日間かけて十分に膨潤させたのち、デカンテーションにより上層を全体の1/3容量回収する、いわゆる水簸により精製を行った。
【0050】
得られた粘土鉱物を含む懸濁液を乾燥し、粘土鉱物の純度をX線回折法で測定したところ、98重量%以上であった。また粘土鉱物の組成分析を行った結果、イオン交換性陽イオンの95重量%がNaイオンであった。
【0051】
次いで、この懸濁液を日立工機(株)製日立高速冷却遠心機SCR20B型(ローター:RPR9-2型、回転半径:170mm)を用いて、回転数8000rpmで15分間遠心分離を行い、上澄み液を回収した。この上澄み液、すなわち、粘土分散液に含まれる粘土鉱物の平均粒径は280nm、ζ電位は-60mV、純度は98%であった。
【0052】
この粘土鉱物分散液を粘土鉱物濃度が15重量%となるまで加熱濃縮したのち、表1に示す分散剤を添加して粘土鉱物分散濃縮液を調製した。
【0053】
これとは別にAOS-Na(炭素数14)2.9重量%、LES-Na(炭素数13、エチレンオキシド平均付加モル数3)29.3重量%、アミンオキシド4.4重量%を含む界面活性剤水溶液1400重量部を調製し、これに上記の粘土鉱物分散濃縮液100重量部を撹拌しながら徐々に加えた。得られた液体洗浄剤組成物の組成、増粘効果及び分散安定性を表1に示す。
【0054】
実施例2、3
実施例1で調製した粘土鉱物分散液を用い、実施例1と同様にして、表1に示す組成の液体洗浄剤組成物を調製した。増粘効果及び分散安定性を表1に示す。
【0055】
実施例4、5
粘土鉱物としてバンダービルト社製サポナイト(商品名:ビーガムT、灼熱残分85.3重量%)118gを、純水4882gにかき混ぜながら加え、さらにホモジナイザー(キネマテカ社製、ポリトロンPT-350D型)を用いて、回転数16000sec-1で10分間剪断処理した。
【0056】
次いで、日立工機(株)製日立高速冷却遠心機SCR20B型(ローター:RPR9-2型、回転半径:170mm)を用いて、回転数8000rpmで60分間遠心分離を行い、上澄み液を回収した。
【0057】
この粘土鉱物の乾燥物における純度、ζ電位及び粒径を表2に示す。また、この粘土鉱物を実施例1と同様な方法で配合して調製した液体洗浄剤組成物の組成、増粘効果及び分散安定性を表2に示す。
【0058】
比較例1
実施例1〜3で用いた山形県産のモンモリロナイトを用い、液体洗浄剤組成物を調製した。調製に際しては、この粘土鉱物5重量部を水95重量部に分散撹拌したのち、これとは別にAOS-Na(炭素数14)2.5重量%、LES-Na(炭素数13、エチレンオキシド平均付加モル数3)25.0重量%、アミンオキシド3.8重量%を含む界面活性剤水溶液400重量部を調製し、これに上記の粘土鉱物分散液を撹拌しながら徐々に加えた。得られた液体洗浄剤組成物の組成、増粘効果、分散安定性を、この粘土鉱物の純度、ζ電位、粒径とともに表2に示す。
【0059】
比較例2
実施例1において、分散剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして液体洗浄剤組成物を調製した。増粘効果、分散安定性を表2に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
(注)
AOS-Na(R=14):炭素数14のα-オレフィンスルホン酸ナトリウム
LAS-Na(R=12):炭素数12の直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
LES-Na(R=13、p=3):エチレンオキシド平均付加モル数3のポリオキシエチレンアルキル(C13)エーテル硫酸ナトリウム
アミンオキシド:ラウリルジメチルアミンオキシド
MAA/EA/BuA:メタクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル三元共重合体、数値は共重合比(モル比)
Mw:重量平均分子量
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-30 
出願番号 特願平7-74101
審決分類 P 1 651・ 534- YA (C11D)
P 1 651・ 121- YA (C11D)
P 1 651・ 113- YA (C11D)
P 1 651・ 531- YA (C11D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 佐藤 修
岩瀬 眞紀子
登録日 2003-02-14 
登録番号 特許第3396885号(P3396885)
権利者 ライオン株式会社
発明の名称 液体洗浄剤組成物  
代理人 阿形 明  
代理人 阿形 明  

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