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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1128925
異議申立番号 異議2003-72458  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-03-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-03 
確定日 2005-10-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3411013号「風味調味液が添付された蒸煮麺」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3411013号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3411013号の請求項1ないし4に係る発明についての出願は、平成12年9月1日に特願2000-308431号として出願され、平成15年3月20日にその特許の設定登録がなされ、その後、一番食品株式会社より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年8月30日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正請求
1.訂正の内容
(a)特許請求の範囲の請求項1に係る「該風味調味液をかけてほぐした蒸煮麺をつけて喫食するつゆとを備えた」との記載を、「該風味調味液をかけてほぐした蒸煮麺をつけて喫食するつゆとを備え、前記風味調味液が食材又はその加工品を熱湯で調理加熱して得られる、蒸煮麺をほぐすとともにおいしさを引き立たせるものである」と訂正する。
(b)本件明細書の段落【0007】中の「分解」(特許公報第2頁第3欄45行)、「圧搾、醗酵」(特許公報第2頁第3欄45〜46行)、「、又はこれらに含まれる旨み成分を合成した化学調味料」(特許公報第2頁第3欄47行〜48行)、「が、化学調味料としては、こんぶの旨み成分であるグルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸、貝類の旨み成分であるコハク酸ナトリウム塩等の有機酸、かつお節等の旨み成分であるイノシン酸ナトリウム、又は椎茸の旨み成分であるグアニル酸ナトリウム」(特許公報第2頁第4欄4行〜9行)、「基本的には」(特許公報第2頁第4欄11行)及び「又、上記の風味成分のみを溶解させたものでも本発明の風味調味液として使用可能である。」(特許公報第2頁第4欄13行〜14行)との記載を削除する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(a)は、「風味調味液」を「前記風味調味液が食材又はその加工品を熱湯で調理加熱して得られる、蒸煮麺をほぐすとともにおいしさを引き立たせるものである」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当し、訂正事項(b)は、訂正事項(a)に伴い、発明の詳細な説明中の風味調味液についての記載を特許請求の範囲の記載に整合させるため、化学調味料等に関するを削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、これらの訂正は新規事項に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の4、2項及び同条3項で準用する126条2項及び3項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。

III.特許異議申立
1.本件の請求項1ないし4に係る発明
上記「II.」で示したように、上記訂正は認められるから、本件の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1ないし4」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】加熱調理せずに喫食する蒸煮麺と、該蒸煮麺にかけてほぐすための風味調味液と、該風味調味液をかけてほぐした蒸煮麺をつけて喫食するつゆとを備え、前記風味調味液が食材又はその加工品を熱湯で調理加熱して得られる、蒸煮麺をほぐすとともにおいしさを引き立たせるものであることを特徴とする風味調味液が添付された蒸煮麺。
【請求項2】蒸煮麺に、澱粉加水分解物の水溶液が被覆されていることを特徴とする請求項1記載の風味調味液が添付された蒸煮麺。
【請求項3】蒸煮麺、風味調味液及びつゆが、包装又は容器に充填されていることを特徴とする請求項1又は2記載の風味調味液が添付された蒸煮麺。
【請求項4】風味調味液が袋に充填されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の風味調味液が添付された蒸煮麺。」

2.当審の判断
(1)本件発明1について
(i)引用刊行物1の記載内容
当審で通知した取消理由で引用した刊行物1(特開平11-130041号公報)には、「隔壁によって分離された麺収納凹所とつけ汁収納凹所を有する容器において、前記麺収納凹所の底壁に上げ底部を形成し、この上げ底部に縦横の溝を連通して設け、この溝内に多数のディンプルを設けたことを特徴とする麺類の包装容器。」(請求項1)、「めん類の収納部、つけ汁の収納部、薬味類の収納部を分離して設けた合成樹脂成形容器に、それぞれゆがいた麺、つけ汁、薬味類を収納して包装した即席冷しそばや冷しうどんなどが販売されている。このような即席麺は、ゆがいた後流通している間に、互いに表面が付着してからまったまま塊状に集合してしまうため、箸でほぐすのがほとんど不可能になって非常に扱い難く、食するのに不便であるばかりか、・・・問題がある。」(段落【0002】〜【0003】)、「上記のような容器10を使用する場合には、図5に示すように、ゆがき麺Aを好ましくは1口大から2口大に小分けして、麺収納凹所11のリブ11hによって区別された区画に収納し、凹所12にはつけ汁、凹所13と14には海苔、ごま、わさび、刻みねぎ等の適当な薬味類を収納する。これらのつけ汁及び薬味類は小袋に包装した状態で収納してもよい。さらに、図6に示すような、平袋に水Wを20〜40cc程度を封入した小袋Bも収納しておく。この小袋Bは、蓋(・・)に設けた凹所に収納してもよい。また、水Wに調味料、アルコール等の添加物を加えておいてもよい。そして蓋を容器10に嵌合するか、容器10を収納袋やラップフィルムで被覆して販売する。食卓に供する場合には、小袋Bを開封して水Wを麺Aにふりかける。そして箸で麺Aを凹所11の底壁に押し付けながら麺Aをさばく。・・・(略)・・・麺Aをさばいた後、薬味をつけ汁に混ぜる(・・)。・・・(略)・・・刻みねぎのような薬味を凹所14からつけ汁収納凹所12に箸で押し出すだけでつゆ汁に混入することができる。」(段落【0016】〜【0018】)、及び「この発明によれば、以上のように、・・・(略)・・・麺にわずかの水をふりかけて箸で麺を揺するだけで容易に麺がほぐれ、」(段落【0019】)と記載されている。
上記記載によると、ゆがき麺は喫食する間際に加熱調理されておらず、また、「ゆがき麺」とは「蒸煮麺」と同義であることは明らかであり、刊行物1において、蒸煮麺にかけてほぐすための水に調味料を加えるということは、おいしさを引き立たせることに他ならないから、刊行物1には、加熱調理せずに喫食する蒸煮麺と、蒸煮麺にかけてほぐすとともにおいしさを引き立たせるための調味料を加えた水と、該水をかけてほぐした蒸煮麺をつけて喫食するつゆとを備えたものが記載されているといえる。

(ii)対比・判断
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、「加熱調理せずに喫食する蒸煮麺と、該蒸煮麺にかけてほぐすための風味調味液と、該風味調味液をかけてほぐした蒸煮麺をつけて喫食するつゆとを備え、前記風味調味液が、蒸煮麺をほぐすとともにおいしさを引き立たせるものであることを特徴とする風味調味液が添付された蒸煮麺」である点で一致し、ただ、蒸煮麺にかけてほぐすための風味調味液が、前者では、「食材又はその加工品を熱湯で調理加熱して得られるもの」であるのに対し、後者では、「調味料を加えた水」である点で相違する。
上記相違点について検討すると、本件発明1に係る風味調味液は、食材又はその加工品を熱湯で調理加熱して得られるものであるところ、これは、一般的な料理法である「ダシ」の調製法と変わるところはない。しかるに、「ダシ」の調製法としては、この他に、水に調味料を添加することにより得ることも簡便な方法として周知であるから、水に調味料を添加した刊行物1に記載の風味調味料に代えて、食材又はその加工品を熱湯で調理加熱して得られる風味調味料を用いることは、当業者にとって格別困難なことではない。
この点について、特許権者は、平成16年8月12日付の実験報告書を提出し、本発明に係る「風味調味液」は、刊行物1に係る「調味料入りの水」に比べ、ほぐれ持続性、食味及び外観・食感の点で顕著な効果を奏すると主張している。
しかし、そばの「つけつゆ」は、かつお節風味のものが望ましいことは周知であるから、昆布の旨味成分であるグルタミン酸ソーダを主体としたものを使用している「調味料入りの水」よりも、かつお抽出だしを使用している本件発明1に係る「風味調味料」の方が「食味」で優れているのは当然のことである。
一方、「かつおエキス」及び「粉末かつおだしの素」は、本件発明1に係る「風味調味料」というよりも、刊行物1に係る「調味料」の範疇に入るものと解されるが、上記実験報告書によると、これらを使用した場合の「外観・食感」は、「かつお抽出だし」を使用した場合と顕著な差違があるとはいえないので、本件発明1に係る「風味調味料」が、「外観・食感」の点で刊行物1に記載の発明に比べて、顕著な効果を奏するとはいえない。
また、本件発明1に係る「蒸煮麺」にあっては、麺をほぐして時間を置かずに食べるのが普通であるから、麺のほぐれは、風味調味液等を麺にかけてほぐし喫食するまでの短時間の状態を問題にすべきところ、実験報告書の「5-3結果」によると、「風味調味料」及び「調味料入り水」をそれぞれ麺にかけてほぐした直後のほぐれ性については、各試験区とも特に差はなかったのであるから、ほぐれ性の点で本件発明1に係る「蒸煮麺」が格別優れているということはできない。
なお、表1ー1には、本件発明1に係る「蒸煮麺」は、ほぐしてから8分放置したときのほぐれ持続性に優れていることが示されているが、上記したようにほぐしてから8分間放置してから喫食することは通常の喫食方法とはいえないから、「ほぐれ持続性」に関する「表1-1」の結果をもって、直ちに本件発明1に係る「蒸煮麺」が格別に優れているということはできない。
したがって、特許権者の上記主張は採用しない。
以上のとおり、本件発明1は、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に係る「蒸煮麺」に「澱粉加水分解物の水溶液が被覆されている」ものであるから、刊行物1に記載された発明と対比すると、上記(1)で検討した相違点の他に、本件発明2では「蒸煮麺に、澱粉加水分解物の水溶液が被覆されている」のに対し、刊行物1に記載された発明ではそうでない、という相違点が挙げられる。
この相違点について検討するに、当審で通知した取消理由で引用した刊行物2(特開平9-75022号公報)には、「【請求項1】難消化性デキストリンおよびペクチンを含有することを特徴とする穀類加工食品用ほぐれ改良剤。 【請求項2】請求項1記載のほぐれ改良剤が穀類加工食品中に添加され、もしくは表面に付着されていることを特徴とするほぐれ性が改良された穀類加工食品。」(特許請求の範囲)、「本発明が解決しようとする課題は、米飯類、茹で麺または生タイプ麺のうどん、そば、中華麺等の穀類加工食品の食味を変化させることなく結着を防止する穀類加工食品用ほぐれ改良剤およびそのほぐれ改良剤を用いた穀類加工食品を提供することにある。」(段落【0006】)と記載され、さらに表1ないし3の比較例2,7,11,及び15の欄には、難消化性デキストリンを含む澱粉分解物の水溶液に麺を浸漬すると基準品よりもほぐれ性が改良されることが示されている。
刊行物1も刊行物2も共に蒸煮麺に関するものであるから、刊行物1に係る蒸煮麺に澱粉加水分解物の水溶液を被覆して、ほぐれ性の更なる改善を図ることは、刊行物2の上記記載に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件発明2に係る効果も、刊行物1及び刊行物2に記載の発明から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
したがって、本件発明2は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明並びに周知の事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3及び4について
本件発明3は、本件発明1係る「蒸煮麺、風味調味液及びつゆ」が、「包装又は容器に充填されていること」、また、本件発明4は、本件発明1に係る「風味調味液」が「袋に充填されていること」を特徴とするものである。
しかるに、刊行物1には、「容器10を使用する場合には、図5に示すように、ゆがき麺Aを好ましくは1口大から2口大に小分けして、麺収納凹所11のリブ11hによって区別された区画に収納し」、「これらのつけ汁及び薬味類は小袋に包装した状態で収納してもよい。」及び「平袋に水Wを20〜40cc程度を封入した小袋Bも収納しておく。」という記載があり、また、刊行物1には、蒸煮麺を「包装」する記載はないが、蒸煮麺は普通包装した形態で販売されていることに照らし、蒸煮麺を「包装」することは、刊行物1に記載されているに等しい事項であるといえるから、本件発明3及び4の両発明と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、結局は、上記(1)で検討した相違点があるだけである。
そうすると、本件発明3及び4は、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
風味調味液が添付された蒸煮麺
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】加熱調理せずに喫食する蒸煮麺と、該蒸煮麺にかけてほぐすための風味調味液と、該風味調味液をかけてほぐした蒸煮麺をつけて喫食するつゆとを備え、前記風味調味液が食材又はその加工品を熱湯で調理加熱して得られる、蒸煮麺をほぐすとともにおいしさを引き立たせるものであることを特徴とする風味調味液が添付された蒸煮麺。
【請求項2】蒸煮麺に、澱粉加水分解物の水溶液が被覆されていることを特徴とする請求項1記載の風味調味液が添付された蒸煮麺。
【請求項3】蒸煮麺、風味調味液及びつゆが、包装又は容器に充填されていることを特徴とする請求項1又は2記載の風味調味液が添付された蒸煮麺。
【請求項4】風味調味液が袋に充填されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の風味調味液が添付された蒸煮麺
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱調理することなく、そのまま喫食する風味調味液が添付された蒸煮麺に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンビニエンスストアの発展とともに、蒸煮麺、つゆ、具材等が容器に収容されており、加熱調理せずにそのまま喫食する弁当タイプの調理麺(以下調理麺)の需要が急増している。加熱調理せずに喫食する蒸煮麺において、問題になるのが麺のほぐれである。蒸煮によって糊化された麺が時間の経過とともに麺線同志が接着し、併せて硬直化が進行することでほぐれが悪くなる。従来、蒸煮麺のほぐれを改善する方法として、食用油を麺線にコーティングする方法が行われている。この方法は有効であるが、つゆに食用油が浮いてしまうという問題があり、例えば、ざるそばのように、麺をつゆにつけて食べるタイプ(以下つけタイプ)では不適である。
【0003】
油に替わり乳化剤を利用する方法とし、例えば、蒸煮麺を乳化剤分散液中に浸漬する、もしくは分散液を麺表面に噴霧する方法(特開昭58-141757号)、卵白0.5〜3%とモノグリセリド、レシチン各0.1〜0.3%を併用する方法(特開昭54-76846号)、小麦粉にモノグリセリドかシュガーエステルを0.2〜0.3%添加してその吸水性を利用し、麺を蒸煮した後、温水と共に密閉包装して2〜3時間放置し、230%以上吸水させる方法(特開昭54-44053号)、重合度が2以上のポリグリセリンにヨウ素価40以上の脂肪酸をエステル化し、そのエステル化率が30〜80%のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する乳化剤を使用する方法(特開平7-39332号)等様々提案されている。これらの方法は、例えば冷やし中華のように麺にスープをかけて食べるタイプでは有効であるが、時間経過後に一つの麺塊になった蒸煮麺につゆ等の液物をかけることなく、一口量を箸でとって喫食するつけタイプでは効果がない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、加熱調理せずにつけタイプで喫食する蒸煮済麺がもつ問題点を解決するためになされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記現状に鑑み様々に視点を変えて検討した結果、加熱調理せずに喫食する蒸煮麺において、麺に風味調味液をかけてほぐした後、つゆにつけて喫食する従来にない喫食方法を見出し本発明に至った。また、麺に、澱粉加水分解物の水溶液をコーティングしておくと、容易に麺がほぐれるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。本発明でいう蒸煮麺とは、常法通り製麺したうどん、そば、中華麺、マカロニ、スパゲッティ、冷麺、ビーフン、春雨等の生麺又は乾麺を蒸すか、茹でるか、又はこれらを組み合わせることで糊化(以下蒸煮)したものをいう。加熱調理せずに、そのまま喫食することで、蒸煮の際には充分に糊化させておくことが望ましい。
【0007】
風味調味液とは、食材である魚介類、海藻、畜肉、卵、骨、野菜、果実、穀類、豆類、酵母、きのこ等又はこれらの加工品を、調理加熱、抽出等することで取り出したエキス類、天然調味料類等の風味成分を含むものであり、蒸煮麺をほぐすとともにおいしさを引き立たせるものである。エキス類としては、肉、骨、魚介等の動物性、又はたまねぎ、にんにく、椎茸等の植物性が、天然調味料類としては、脱脂大豆等の蛋白質を加水分解して得られた植物蛋白分解物、又は魚肉、畜肉、鳥肉や骨、皮等を酸や酵素で加水分解して得られた動物蛋白分解物等が、主な風味成分となるが食材又はこれらの加工品由来であればいずれも使用できる。風味調味液は、食材又はその加工品を熱湯で調理加熱して得るが、この際に上記の風味成分を添加・配合することも可能である。つゆとは、特殊のものではなく、一般的な麺用のつゆ、たれ、スープ等を含めたものである。風味調味液とのバランスを考慮し、適宜、味等を決定することが望ましい。
【0008】
澱粉加水分解物とは、澱粉を加水分解したデキストリンをいう。澱粉としては小麦澱粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の食用の澱粉であればいずれのものも使用できる。蒸煮麺のほぐれ効果を得るためには、ヨウ素反応を示さなくなる程度の分解度、すなわち、直鎖部分のグルコース重合度が10未満であるデキストリンを用いることが望ましい。前記デキストリンを水に溶解し略3〜20重量%の水溶液を調製するが、この際グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化性物質を混合することで、更にほぐれ効果が助長される。蒸煮麺への澱粉加水分解物の水溶液の被覆は、一定量まぶすか、又は水溶液中に浸漬する等によって行う。本発明は、加熱調理せずにつけタイプで喫食する新規蒸煮麺であり、商品として流通させるには、蒸煮麺、風味調味液、つゆ等を適宜包装又は容器に充填する必要がある。
【0009】
【実施例】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の開示に基づいて限定的に解釈されるべきではない。
【0010】
【実施例1】
枯宗田鰹厚削り(以下節)120gを2Lの沸騰湯中に投入し35分間抽出後、節を引きあげた。冷水にて速やかに冷却後、20mlをポリエチレン製袋に充填して本発明に係る風味調味液を得た。次に、常法通り製出したなまそばを茹でて水洗・冷却した後、ポリエチレン製袋に170gを封入して包装茹でそばを得た。以上で得た、風味調味液、包装茹でそばを10℃で1晩冷蔵したものにつき評価を行った。喫食の際のつゆは、濃口醤油、みりん、上白糖を混合、加熱攪拌して得たかえしに、上記で製出した風味調味液の残りを混合して作ったものを使用した。茹そばを開封し皿に開けたところ1枚の板状の麺塊となっており、箸ではとうていほぐれる状態ではなかった。
【0011】
麺塊に風味調味液をかけて箸でほぐしてから、適量を取りあげつゆにつけて食べたところ、単につゆだけをつけて食べたものに比べて、だし風味を強く感じる従来にない趣を持った好ましいものであった。また、ポリエチレン製袋に封入する前の蒸煮麺に、小麦澱粉加水分解物(直鎖部分のグルコース重合度5)10gを79mlの水に溶解した水溶液5mlを、コーティングした包装茹でそばのほぐれ性について併せて評価を行ったが、コーティングしていないものに比べて良好であった。
【0012】
【実施例2】
そば粉200gを2Lの沸騰湯中で10分間加熱処理後、そば粉をろ過してから20mlをポリエチレン製袋に充填して本発明に係る風味調味液を得た。実施例1と同様の条件で得た包装茹でそば(小麦澱粉加水分解物の水溶液をコーティングしていないもの)を用いて実施例1と同様の条件で評価を行った。1枚の板状となった茹でそばの麺塊に風味調味液をかけて箸でほぐしてから、適量を取りあげつゆにつけて食べたところ、単につゆだけをつけて食べたものに比べて、そばの風味を強く感じる従来にない趣を持った好ましいものであった。
【0013】
【実施例3】
鍋に豚もも挽肉250gと同量の水を入れ馴染ませた後、水2Lを入れ長葱2本、生姜3片、グルタミン酸ナトリウム20g、イノシン酸ナトリウム1gを加え40分間煮込んだ。布を用いて漉したものから20mlを取り出し冷却後ポリエチレン製袋に充填し本発明に係る風味調味液を得た。次いで、上白糖、醤油、酒を混ぜ、これに上記で製出した風味調味液の残りを混合し、更にラー油、胡麻油を適量加え、つけ麺のたれ(以下、たれとする。)を得た。このたれについても50mlをポリエチレン製袋に充填した。
【0014】
また、常法通りに製出した茹中華麺200gを3つに仕切られたポリスチレン製弁当容器に、麺、風味調味液及びたれ、具材(茹オクラ、トマト、錦糸玉子、白髪ねぎ)をそれぞれに収容した後閉蓋し10℃で1晩冷蔵した後、評価を行った。茹中華麺は1つの麺塊となっており、箸ではとうていほぐれる状態ではなかった。麺塊に風味調味液をかけ箸でほぐしてから一口分を取りあげ、仕切り容器の1ケ所にあけたたれをつけて食べたところ、単にたれだけをつけて食べたものに比べて風味を強く感じる従来にない趣を持った好ましいものであった。
【0015】
【実施例4】
すりおろしたにんにく20gを1Lの湯(90℃)中に投入し攪拌後、25mlをポリエチレン製袋に充填して本発明に係る風味調味液を得た。風味調味液以外は実施例3と同様の条件にて評価したところ、にんにくの風味とたれがからみあった従来にない趣を持った好ましいものであった。
【0016】
【発明の効果】
本発明は、時間経過後に塊となってほぐれが悪くなった蒸煮麺を、加熱調理せずにつけタイプで食べることを可能にした新規蒸煮麺であり、新しいタイプの商品化に繋がる。本発明によれば、一口量を予め小割けしておく方法しかなかった加熱調理せずに喫食するつけタイプの調理麺が、小割けのための特殊な生産設備や複雑な工程を要せずに生産できる。本発明では、蒸煮麺に予め風味調味液が被覆されていることで、喫食した際に、つゆと相まって従来にないおいしさが味わえるとともに、つけつゆにおいて食塩量又はつける量を低減しても、おいしく味わえる効果があり、食塩摂取量を減量することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-12-01 
出願番号 特願2000-308431(P2000-308431)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 柿沢 恵子
長井 啓子
登録日 2003-03-20 
登録番号 特許第3411013号(P3411013)
権利者 シマダヤ株式会社
発明の名称 風味調味液が添付された蒸煮麺  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 岡 晴子  
代理人 小澤 誠次  
代理人 小澤 誠次  
代理人 廣田 雅紀  
代理人 岡 晴子  
代理人 廣田 雅紀  

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