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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1128957
異議申立番号 異議2003-73074  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-03-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-17 
確定日 2005-09-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3421877号「非水電解液二次電池」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3421877号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3421877号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成6年8月31日に出願され、平成15年4月25日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、熊崎勝子より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成16年11月25日に訂正請求がなされ、その後、特許異議申立人に対し審尋がなされ、平成17年3月4日に回答書が提出されたものである。

2.訂正の適否
(2-1)訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち訂正事項a〜cに訂正するものである。
(1)訂正事項a:【請求項1】の「上記負極活物質となる炭素質材料は、真比重が2.10g/cm3以上、X線回折法による002面の面間隔が0.335〜0.34nm、嵩比重が0.3g/cm3以上である黒鉛材料単独あるいはこの黒鉛材料を主体とする黒鉛混合炭素質材料である」を、
「上記負極活物質となる炭素質材料は、真比重が2.10g/cm3以上、X線回折法による002面の面間隔が0.335〜0.34nm、嵩比重が0.3g/cm3以上である人造黒鉛材料単独あるいはこの人造黒鉛材料を主体とする黒鉛混合炭素質材料である」に訂正する。
(2)訂正事項b:段落【0016】の「負極活物質となる炭素質材料は、真比重が2.10g/cm3以上、X線回折法による002面の面間隔が0.335〜0.34nm、嵩比重が0.3g/cm3以上である黒鉛材料単独あるいはこの黒鉛材料を主体とする黒鉛混合炭素質材料である」を、
「負極活物質となる炭素質材料は、真比重が2.10g/cm3以上、X線回折法による002面の面間隔が0.335〜0.34nm、嵩比重が0.3g/cm3以上である人造黒鉛材料単独あるいはこの人造黒鉛材料を主体とする黒鉛混合炭素質材料である」に訂正する。
(3)訂正事項c:段落【0027】の「以上のような黒鉛材料としては、天然黒鉛であっても、有機材料を炭素化し、高温処理することで得られる人造黒鉛であってもいずれでも良い。」を、
「以上のような黒鉛材料としては、有機材料を炭素化し、高温処理することで得られる人造黒鉛が用いられる。」に訂正する。

(2-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項(a)について
請求項1に係る訂正は、訂正前の「黒鉛材料」を、例えば特許明細書の段落【0027】の「黒鉛材料としては、天然黒鉛であっても、有機材料を炭素化し、高温処理することで得られる人造黒鉛であってもいずれでも良い。」の記載をもとに、「人造黒鉛材料」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。そして、この訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるから新規事項の追加に該当せず、また当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2)上記訂正事項(b)及び(c)について
上記の訂正は、特許請求の範囲が訂正されるのに伴い、これに整合するように、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものに該当する。そして、この訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるから新規事項の追加に該当せず、また当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2-3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
本件請求項1〜3に係る発明は、上記訂正を認容することができるから、訂正後の請求項1〜3に記載された次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明3」という)。
「【請求項1】リチウム含有化合物を正極活物質とする正極と、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素質材料を負極活物質とする負極と、非水電解液を有してなる非水電解液二次電池において、上記正極活物質となるリチウム含有化合物は、比表面積が0.05〜5.0m2/gのリチウム・マンガン複合酸化物の粉末であり、上記負極活物質となる炭素質材料は、真比重が2.10g/cm3以上、X線回折法による002面の面間隔が0.335〜0.34nm、嵩比重が0.3g/cm3以上である人造黒鉛材料単独あるいはこの人造黒鉛材料を主体とする黒鉛混合炭素質材料であることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】上記非水電解液の非水溶媒は、エチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルの混合溶媒であることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】上記エチレンカーボネートと上記鎖状炭酸エステルの混合体積比(エチレンカーボネート:鎖状炭酸エステル)が、3:7〜7:3であることを特徴とする請求項2記載の非水電解液二次電池。」

4.特許異議申立てについて
(4-1)取消理由の概要
当審が平成16年9月16日付けで通知した取消理由のうち、特許法第29条違反についての理由の概要は、本件請求項1〜3に係る発明は、刊行物1(特許異議申立人 熊崎 勝子の提出した甲第2号証)、刊行物2(同第1号証)及び刊行物3(同第5号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるというものである。

(4-2)引用刊行物の記載内容
(a)刊行物1:特開平6-168725号公報
(a1)「【請求項1】正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物からなる負極と、非水電解液とを備えたリチウム二次電池において、前記炭素質物は示差熱分析で700℃以上に発熱ピ―クを有し、X線回折による黒鉛構造の(101)回折ピ―ク(P101)と(100)回折ピ―ク(P100)の強度比がP101/P100が0.7〜2.2であることを特徴するリチウム二次電池。
【請求項2】正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物からなる負極と、非水電解液とを具備したリチウム二次電池において、前記炭素質物はX線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔(d002)が0.336〜0.338nmであり、かつa軸方向の長さ(La)とc軸方向の長さ(Lc)の比La/Lcが1.3〜2.5であり、a軸方向の長さ(La)は100nm以下であることを特徴する請求項1記載のリチウム二次電池。」(【特許請求の範囲】)
(a2)「本発明に係る負極の炭素質物は、好ましくはX線回折により得られる(002)面の平均面間隔(d002)が0.370nm以下・・・であるものが好ましい。以上の範囲である炭素質物は六角網面層の層間の間隔が、リチウムイオンのスム―ズな六角網面層の層間への吸蔵・放出反応に適しており、以上の範囲を逸脱すると、容量が低下し、また充放電時の過電圧が大きくなり急速充放電性能が低下する傾向がある。また電池の放電時の電圧の平坦性が低くなる等電池性能が低下する傾向がある。・・・さらに好ましい範囲は0.3360nm以上0.338nm以下である。」(段落【0025】)
(a3)「また、本発明に係る負極の炭素質物の真密度は、2.15g/cm3以上が好ましい。真密度は、黒鉛化度の高さを示す尺度となる。・・・以上の範囲の炭素質物は、負極の充填密度が高くなると同時に、非水溶媒に対し活性な、黒鉛結晶構造の崩れた炭素質物、あるいは無定型炭素の含有が少なくなり、非水溶媒の還元分解を抑えられる。」(段落【0030】)
(a4)「本発明に係るリチウム二次電池の正極は、種々の酸化物、例えば、二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有コバルト化合物、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物、リチウムを含むバナジウム酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などを挙げることができる。中でも、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4,LiMnO2)を用いると、高電圧となり好ましい。」(段落【0048】)
(a5)「本発明に係る非水電解液の溶媒としては、リチウム二次電池の溶媒として公知の非水溶媒を用いることができ、特に限定はされないが、エチレンカ―ボネ―ト(EC)と、前記エチレンカ―ボネ―トより低融点であり且つドナ―数が18以下である1種以上の非水溶媒(以下第2の溶媒と記載する)との混合溶媒を主体とする非水溶媒を用いることが好ましい。この構成の非水溶媒は、黒鉛構造の発達した炭素質物に対して安定で、電解液の還元分解または酸化分解が起き難く、さらに導電性が高いという利点がある。」(段落【0049】)
(a6)「本発明の負極の炭素質物としては、とくに硫黄の含有量の少ない高純度な原料から黒鉛化したグラファイト、また、硫黄の含有量の少ない高純度な石油ピッチ、コ―ルタ―ル、重質油、合成ピッチ、合成高分子、有機樹脂などを原料として、黒鉛化あるいは炭素化したコ―クス、炭素繊維、球状炭素体、樹脂焼成体、気相成長炭素体などが挙げられる。」(段落【0066】)
(a7)「前記正極4は、リチウムコバルト酸化物(LixCoO2(0.8≦x≦1))粉末80重量%をアセチレンブラック15重量%及びポリテトラフルオロエチレン粉末5重量%と共に混合し、シ―ト化し、エキスパンドメタル集電体に圧着した形状になっている。」(段落【0076】)
(a8)「前記容器1内には、六フッ化りん酸リチウム(LiPF6)をエチレンカ―ボネ―ト(EC)とジエチルカ―ボネ―ト(DEC)の混合溶媒(混合体積比率50:50)に1.0モル/l溶解した組成の非水電解液が収容されている。」(段落【0078】)

(b)刊行物2:特開平4-249073号公報
(b1)「粉末状のリチウム複合酸化物を正極活物質とする非水電解液二次電池において、前記リチウム複合酸化物の比表面積を0.01〜3.0m2/gとすることを特徴とする非水電解液二次電池。」(【請求項1】)
(b2)「前記リチウム複合酸化物としては、一般式がLixMO2(Mは1種類以上の遷移金属であり、かつ、xは0.05≦x≦1.10である)で表されるリチウムと遷移金属との複合酸化物が好ましい。例えば、LiNiO2、或いはLiNiyCo(1-y)O2(ただし0<y<1)などを挙げることができる。」(段落【0010】)
(b3)「本発明によれば、リチウム複合酸化物を正極活物質とする非水電解液において前記リチウム複合酸化物の比表面積を0.01〜3.0m2/gとすることによって、容量を大きくできるとともに充放電サイクルに伴う容量劣化を防止することができる。従って、従来から知られているエネルギー密度が高く自己放電が少なくかつ軽量化が図れるといった優れた電池特性に加えて、高容量でかつ容量保持率の高い非水電解液二次電池を提供できる。」(段落【0038】)

(c)刊行物3:特開平4-47679号公報
(c1)「リチウムを、充電時に吸蔵し放電時に放出する負極を有する非水二次電池においてリチウムイオンを吸蔵・放出する物質が直径0.1μm〜1.0μmの繊維状炭素材料を少なくとも20重量%以上含む負極からなることを特徴とする二次電池。」(請求項1)
(c2)「電池の負極に黒鉛質炭素繊維を用いる場合は、エネルギー密度を上げるためにも電極の嵩密度をある程度高くすることが重要で、上記に示した炭素繊維は、長すぎるせいか、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3程度であり、その点やや小さすぎる。そのため、この炭素繊維をカッターミキサー等で切断し、1μm〜30μm程度まで短くしたものが、電極に成型後の嵩密度を大きくできるので適している。」(第2頁右下欄第16行〜第3頁左上欄第4行)

(4-3)当審の判断
(i)本件発明1について
上記刊行物1には、上記(a1)の請求項2の記載によれば、「正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物からなる負極と、非水電解液とを具備したリチウム二次電池において、前記炭素質物はX線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔(d002)が0.336〜0.338nmであるリチウム二次電池」が記載されていることは明らかである。そして、この「負極」は、「炭素質物」を「負極活物質」とするものであり、この「炭素質物」は、上記(a6)の「本発明の負極の炭素質物としては、とくに硫黄の含有量の少ない高純度な原料から黒鉛化したグラファイト、また、硫黄の含有量の少ない高純度な石油ピッチ・・・などを原料として、黒鉛化あるいは炭素化したコ―クス、炭素繊維、球状炭素体、樹脂焼成体、気相成長炭素体などが挙げられる」の記載によれば、原料を黒鉛化し製造されるものであるから、「人造黒鉛材料」と云えるし、上記(a3)の「本発明に係る負極の炭素質物の真密度は、2.15g/cm3以上が好ましい」の記載によれば、「真密度」が「2.15g/cm3以上」であると云える。また、上記「正極」は、上記(a4)の「本発明に係るリチウム二次電池の正極は、種々の酸化物、例えば、二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有コバルト化合物、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物、リチウムを含むバナジウム酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などを挙げることができる。中でも、・・・リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4,LiMnO2)を用いると、高電圧となり好ましい。」の記載によれば、「リチウム含有化合物を正極活物質」とするものであり、特に、「リチウムマンガン複合酸化物」を活物質とし得るものである。さらに、上記(a7)の「前記正極4は、リチウムコバルト酸化物(LixCoO2(0.8≦x≦1))粉末80重量%をアセチレンブラック15重量%及びポリテトラフルオロエチレン粉末5重量%と共に混合し、シ―ト化し、エキスパンドメタル集電体に圧着した形状になっている。」の記載によれば、正極活物質である「リチウム含有化合物」は、「粉末」として用いられるものである。
以上の記載を、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、「リチウム含有化合物を正極活物質とする正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な炭素質物を負極活物質とする負極と、非水電解液を有してなるリチウム二次電池において、上記正極活物質となるリチウム含有化合物は、リチウム・マンガン複合酸化物の粉末であり、上記負極活物質となる炭素質物は、真密度が、2.15g/cm3以上、X線回折法による002面の面間隔が0.336〜0.338nmである人造黒鉛材料単独であるリチウム二次電池。」(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると云える。
そこで、本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「リチウムイオンを吸蔵・放出する」は、本件発明1の「リチウムをドープ・脱ドープする」に相当し、刊行物1発明の「炭素質物」は、本件発明1の「炭素質材料」に相当し、また、刊行物1発明の「リチウム二次電池」は、本件発明1の「非水電解液二次電池」に相当するから、両者は、「リチウム含有化合物を正極活物質とする正極と、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素質材料を負極活物質とする負極と、非水電解液を有してなる非水電解液二次電池において、上記正極活物質となるリチウム含有化合物は、リチウム・マンガン複合酸化物の粉末であり、上記負極活物質となる炭素質材料は、X線回折法による002面の面間隔が0.336〜0.338nmである人造黒鉛材料単独である非水電解液二次電池」という点で一致し、次の3点で相違していると云える。
(イ)相違点1:本件発明1は、リチウム・マンガン複合酸化物の「比表面積が0.05〜5.0m2/g」であるのに対し、刊行物1発明は、リチウム・マンガン複合酸化物の比表面積が明らかでない点。
(ロ)相違点2:本件発明1は、炭素質材料の「真比重」が2.10g/cm3以上であるのに対し、刊行物1発明は、炭素質材料の「真密度」が2.15g/cm3以上である点。
(ハ)相違点3:本件発明1は、炭素質材料の「嵩比重が0.3g/cm3以上」であるのに対し、刊行物1発明では、黒鉛材料の嵩比重が明らかでない点。
次に、各相違点について検討する。
(a)相違点1について
本件発明1において、リチウム・マンガン複合酸化物の比表面積を0.05〜5.0m2/gとしているのは、充放電による電極活物質の微細化に伴うサイクル低下の防止と、電池容量の確保のためである(段落【0021】、【0022】参照)。一方、刊行物2の上記(b1)の「粉末状のリチウム複合酸化物を正極活物質とする非水電解液二次電池において、前記リチウム複合酸化物の比表面積を0.01〜3.0m2/gとすることを特徴とする非水電解液二次電池。」、上記(b2)の「前記リチウム複合酸化物としては、一般式がLixMO2(Mは1種類以上の遷移金属であり、かつ、xは0.05≦x≦1.10である)で表されるリチウムと遷移金属との複合酸化物が好ましい。」及び上記(b3)の「本発明によれば、リチウム複合酸化物を正極活物質とする非水電解液において前記リチウム複合酸化物の比表面積を0.01〜3.0m2/gとすることによって、容量を大きくできるとともに充放電サイクルに伴う容量劣化を防止することができる。」の記載に照らせば、「比表面積が0.01〜3.0m2/g」の「遷移金属を含むリチウム複合酸化物」が容量を大きくし充放電サイクルに伴う容量劣化を防止するのに適していると教示され、さらに、「遷移金属を含むリチウム複合酸化物」として、「リチウム・マンガン複合酸化物」は周知である((a4)参照)。
してみると、刊行物2には、本件発明1の「0.05〜5.0m2/g」という範囲の0.05〜3.0m2/gという範囲で一致する比表面積のリチウム・マンガン複合酸化物が容量を大きくし充放電サイクルに伴う容量劣化を防止するのに適すると教示されているのであるから、この比表面積の「リチウム・マンガン複合酸化物」を刊行物1発明に用いることは、上記教示に基づいて当業者であれば容易に想到し得たことと云うべきである。

(b)相違点2について
本件発明1は、「真比重」で規定しているのに対し、引用例1発明は、「真密度」で規定しているから、両者は、その規定の仕方が異なるが、「比重」とは、物質の質量を同体積の標準物質(ふつう4℃の水、密度は0.99997g・cm3)の質量との比で表したものであり、一方、「密度」は単位体積当たりの質量であるから、「密度」で規定された数値と、「比重」で規定された数値とは実質的に同じ内容を意味するものであると云える。
してみると、上記相違点2は、その規定振りに関する表現上の差異だけであって、その数値範囲も重複するから、両者は、上記相違点2の点で実質的に相違はないと云える。

(c)相違点3について
本件発明1において、人造黒鉛材料の嵩比重を0.3g/cm3以上としているのは、より高い負極合剤充填性を得るためであるが(段落【0025】参照)、負極合剤充填性を得るとは、すなわち、エネルギー密度を上げるためと云える。一方、引用刊行物3の上記(c2)の「電池の負極に黒鉛質炭素繊維を用いる場合は、エネルギー密度を上げるためにも電極の嵩密度をある程度高くすることが重要で、上記に示した炭素繊維は、長すぎるせいか、嵩密度が0.05〜0.5g/cm3程度であり、その点やや小さすぎる。そのため、この炭素繊維をカッターミキサー等で切断し、1μm〜30μm程度まで短くしたものが、電極に成型後の嵩密度を大きくできるので適している。」の記載に照らせば、嵩密度が「0.05〜0.5g/cm3程度」の炭素繊維よりも、成型後の嵩密度がこれより大きい炭素繊維、すなわち「0.5g/cm3程度以上」の炭素繊維の方が電池のエネルギー密度を上げるためには適していると教示されている。
してみると、刊行物3には、本件発明1の「0.3g/cm3以上」という範囲の0.5g/cm3以上という範囲で一致する嵩密度の炭素繊維が電池のエネルギー密度を上げるために適すると教示されているのであるから、この嵩密度の人造黒鉛材料を刊行物1発明に用いることは、上記教示に基づいて当業者であれば容易に想到し得たことと云うべきである。

(d)小括
以上のとおり、本件発明1の上記相違点1〜3は、当業者が容易に想到することができたものであるから、本件発明1は、刊行物1発明と刊行物2及び3に記載の公知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。

(ii)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の「非水電解液」という事項を、「非水電解液の非水溶媒は、エチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルの混合溶媒である」と限定するものであるが、刊行物1の上記(a8)の「前記容器1内には、六フッ化りん酸リチウム(LiPF6)をエチレンカ―ボネ―ト(EC)とジエチルカ―ボネ―ト(DEC)の混合溶媒(混合体積比率50:50)に1.0モル/l溶解した組成の非水電解液が収容されている。」の記載によれば、非水電解液の溶媒として、エチレンカ―ボネ―トとジエチルカ―ボネ―トの混合溶媒を用いることが記載され、このジエチルカ―ボネ―トは、鎖状炭酸エステルであるから、刊行物1には、刊行物1発明の「非水電解液」の非水溶媒がエチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルの混合溶媒である発明(以下、「刊行物1-1発明」という)も記載されていると云える。
してみると、本件発明2と刊行物1-1発明と対比しても、前記相違点1〜3以外の新たな相違点を生じるものではないから、本件発明2も、(i)「本件発明1について」で記載した同様の理由によって刊行物1発明と刊行物2及び3に記載の公知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。

(iii)本件発明3について
本件発明3は、本件発明2の「エチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルの混合溶媒」という事項を、さらに、「混合体積比(エチレンカーボネート:鎖状炭酸エステル)が、3:7〜7:3である」と限定するものであるが、刊行物1の上記(a8)の記載によれば、エチレンカ―ボネ―トとジエチルカ―ボネ―トの混合体積比率が50:50であることが記載されているから、刊行物1には、刊行物1発明の「非水電解液」の非水溶媒がエチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルの混合体積比が、5:5の混合溶媒である発明(以下、「刊行物1-2発明」という)も記載されていると云える。
してみると、本件発明3と刊行物1-2発明と対比しても、前記相違点1〜3以外の新たな相違点を生じるものではないから、本件発明3も、(i)「本件発明1について」で記載した同様の理由によって刊行物1発明と刊行物2及び3に記載の公知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1〜3についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
非水電解液二次電池
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】リチウム含有化合物を正極活物質とする正極と、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素質材料を負極活物質とする負極と、非水電解液を有してなる非水電解液二次電池において、
上記正極活物質となるリチウム含有化合物は、比表面積が0.05〜5.0m2/gのリチウム・マンガン複合酸化物の粉末であり、
上記負極活物質となる炭素質材料は、真比重が2.10g/cm3以上、X線回折法による002面の面間隔が0.335〜0.34nm、嵩比重が0.3g/cm3以上である人造黒鉛材料単独あるいはこの人造黒鉛材料を主体とする黒鉛混合炭素質材料であることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】上記非水電解液の非水溶媒は、エチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルの混合溶媒であることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】上記エチレンカーボネートと上記鎖状炭酸エステルの混合体積比(エチレンカーボネート:鎖状炭酸エステル)が、3:7〜7:3であることを特徴とする請求項2記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、非水電解液二次電池に関し、特に正極活物質の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子技術の進歩により電子機器の高性能化、小型化、ポータブル化が進み、これら電子機器に使用される二次電池に対しても高エネルギー密度化への要求が強まっている。従来よりこれらの電子機器に使用されている二次電池としては、ニッケル・カドミウム電池や鉛電池等が挙げられる。しかし、これらの電池は放電電位が低く、上述の高エネルギー密度化への要求に十分に応えるものとは言えない。
【0003】
一方、最近、金属リチウムやリチウム合金を負極活物質とし、リチウム含有化合物を正極活物質とするリチウム二次電池が、これらの要求を満たす電池システムとして注目され、盛んに研究が行われている。しかし、このリチウム二次電池では、金属リチウムを負極に用いた場合には、充放電サイクルの進行に伴って負極からリチウムがデンドライト状に結晶成長し、正極に到達して内部短絡を誘発する可能性があり、またリチウム合金を負極に用いた場合には、充放電サイクルを繰り返していくと負極が微細化して性能が劣化するといった問題があり、サイクル寿命,安全性,急速充電性能等の問題点が認識されるようになっている。このため、このリチウム二次電池は、一部コイン型で実用化されているにすぎない。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、金属リチウムやリチウム合金の代わりに炭素質材料のようなリチウムイオンをドープ且つ脱ドープすることが可能な物質を負極活物質とするリチウムイオン二次電池(非水電解液二次電池)が提案されている。このリチウムイオン二次電池は、リチウムが金属状態で存在しないような電池反応であるため、リチウムの結晶成長等に起因するサイクル劣化や安全性に関する問題はない。そして、正極に酸化還元電位の高いリチウム含有化合物を用いることにより、電池電圧が高くなり、高エネルギー密度を発揮するようになる。また、自己放電もニッケル・カドミウム電池と比較して少なく、二次電池として非常に優れた長所を有している。このため、8m/mVTR、CDプレーヤ、ラップトップ・コンピュータ、セルラーテレフォン等のポータブル用電子機器の供給電源として既に商品化が開始され、今後、大いに期待されている二次電池である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、商品化されているリチウムイオン二次電池で用いられている正極,負極,非水電解液の材料は以下の通りである。すなわち、負極活物質に使用可能な炭素質材料は種々報告されているが、実際に用いられているのはコークスやガラス状炭素等の比較的低温で処理された結晶性の低い炭素質材料である。
【0006】
また、正極活物質としては、リチウムを含有した複合酸化物が多数報告されているが、商品レベルではリチウム・コバルト酸化物(LiCoO2)が使用されているに過ぎない。さらに、非水電解液の非水溶媒には、コイン型や円筒型のリチウム一次電池等で一般的に用いられてきたPC(炭酸プロピレン)を主体とする有機溶媒が使用されている。
【0007】
しかし、このような材料構成では、十分満足のいく高容量化を果たすことができず、さらなる検討が進められている。先ず、正極活物質としては、リチウム・コバルト複合酸化物の他、リチウム・ニッケル複合酸化物、リチウム・マンガン複合酸化物が酸化還元電位の高いリチウム含有化合物として提案されており、中でも原料の価格および原料の安定供給の観点からリチウム・マンガン酸化物が有望とされている。
【0008】
しかし、リチウム・マンガン複合酸化物には、二つの欠点が明らかになっている。一つは、電池のサイクル劣化が大きくなること、もう一つは比較的電池容量が小さくなることである。このため、これら欠点に対する改善策も講じられている。例えば、J.M.Tarasconらは、J.Electrochem.Soc.,Vol138,No.10,P2859(1991)において、正極活物質としてLiMn2O4を用いると、電池のサイクル劣化が大きくなるが、このLiMn2O4に異種金属としてTi,Ge,Ni,Zn,Feを添加すると電池のサイクル特性が改善されることを報告している。しかし、LiMn2O4に異種金属を添加すると確かにサイクル劣化は改善されるものの、今度は電池容量が小さくなるといった不都合が生じ、電池全体の性能から見たときに十分な対策になっていない。
【0009】
また、電池容量に関しては、特開平4-147573号公報において、リチウム・マンガン複合酸化物に予め電気化学的あるいは化学的にリチウムをドープし、Li1+xMn2O4(但し、x>0である)なる組成としたものを正極活物質に用いることを報告している。しかし、この場合、電池容量は高められるが、サイクル劣化に関しては従来と比べて大きく変わらず、この手法のみでは電池性能を十分に高めることができない。
【0010】
次に、負極活物質としては、2000℃以下の比較的低い温度で焼成して得られる上述の低結晶性炭素質材料の他、結晶化しやすい原料を3000℃近くの高温で処理した人造黒鉛や、天然黒鉛等の黒鉛材料も提案されている。このうち黒鉛材料は、物理化学的特性や電気化学的特性が低温で処理して得られる炭素質材料に比べてかなり安定しており、また真密度が高いため負極合剤中での充填性が高くなる。このため、電池のエネルギー密度をより高くしうる負極材料として注目される。
【0011】
しかし、黒鉛材料は低結晶性炭素質材料に比べて充放電時の分極が大きく、黒鉛材料を負極活物質とする電池では、低結晶性炭素質材料を負極活物質とする電池に比べて電池の充電上限電圧を同じに設定した場合、正極がより貴な電位になる。このため、正極活物質単位重量あたりに引き抜かれるリチウムイオン量がより多く、正極活物質の結晶構造の安定性が若干低い方向にシフトする。このことによるサイクル特性等の電池特性への悪影響が見られる。また、この影響は充電電圧がより高い場合に顕著になる傾向がある。
【0012】
また、負極活物質に黒鉛材料を用いる場合には、非水溶媒に混合する高誘電率溶媒としてエチレンカーボネート(EC)を用いることが前提となる。というのは、一般的に高誘電率溶媒としてよく使用されるプロピレンカーボネート(PC)は黒鉛材料と共存させると分解され、負極活物質に黒鉛材料を用いる場合には不適当だからである。しかし、ECは常温で固体であるため、低温での導電率が小さく低温特性が悪い欠点がみられる。
【0013】
このように、非水電解液二次電池の材料構成については、各種提案がなされているが、いずれも長所とともに短所を有しており、電池の電池容量およびサイクル特性の両者を十分に向上させることができないのが実情である。そこで、本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、高エネルギー密度で且つサイクル特性に優れた非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、正極活物質としてリチウム・マンガン複合酸化物を用い、その比表面積を規制することにより、高エネルギー密度であるとともにサイクル特性に優れた非水電解液二次電池が得られるとの知見を得るに至った。
【0015】
本発明は、このような知見に基づいて提案されたものであり、リチウム含有化合物を正極活物質とする正極と、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素質材料を負極活物質とする負極と、非水電解液を有してなる非水電解液二次電池において、正極活物質となるリチウム含有化合物は、比表面積が0.05〜5.0m2/gのリチウム・マンガン複合酸化物の粉末であることを特徴とするものである。
【0016】
また、負極活物質となる炭素質材料は、真比重が2.10g/cm3以上、X線回折法による002面の面間隔が0.335〜0.34nm、嵩比重が0.3g/cm3以上である人造黒鉛材料単独あるいはこの人造黒鉛材料を主体とする黒鉛混合炭素質材料であることを特徴とするものである。さらに、非水電解液の非水溶媒は、エチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルの混合溶媒であることを特徴とするものである。
【0017】
また、さらに、エチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルの混合容量比(エチレンカーボネート:鎖状炭酸エステル)が、3:7〜7:3であることを特徴とするものである。本発明は、リチウム含有化合物を正極活物質とする正極と、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素質材料を負極活物質とする負極と、非水電解液を有してなる非水電解液二次電池に適用される。
【0018】
本発明では、このような非水電解液二次電池において、正極活物質としてリチウム・マンガン複合酸化物を用い、その比表面積を規制することにより、高エネルギー密度であるとともにサイクル特性に優れた二次電池を得ることとする。すなわち、従来、リチウム・マンガン複合酸化物を正極活物質として使用する場合に問題とされていた点は電池のサイクル劣化である。
【0019】
本発明者等が、このサイクル劣化について詳細に調査した結果、リチウム・マンガン複合酸化物を正極活物質として使用する電池では、充放電サイクル前に比べて充放電サイクル後に正極活物質の微細化がかなり進行していることが確認され、この正極活物質の微細化がサイクル劣化の原因となっているものと考えられた。この正極活物質の微細化のメカニズムは以下のように考えられる。
【0020】
つまり、正極活物質であるリチウム・マンガン複合酸化物からリチウムが脱ドープされる充電時には、リチウム・マンガン複合酸化物の結晶構造を構成する立方晶格子が収縮する。一方、正極活物質へリチウムがドープされる放電時においては、リチウム・マンガン複合酸化物の立方晶格子が膨張する。このリチウムのドープ・脱ドープに伴う正極活物質の収縮,膨張による体積変化が、正極活物質自身にストレスを与え微細化を促進しているものと推測される。正極活物質が微細化すると例えば導電剤との接触性が悪くなり、結果的に電池のサイクル劣化が引き起こされることになる。
【0021】
そこで、本発明では、このように電池のサイクル劣化を引き起こすリチウム・マンガン複合酸化物の微細化を抑えるために、当該リチウム・マンガン複合酸化物の比表面積を0.05〜5.0m2/gの範囲に規制することとする。まず、リチウム・マンガン複合酸化物の微細化を抑えるためには、その比表面積が5.0m2/g以下であることが必要である。リチウム・マンガン複合酸化物において、比表面積が5m2/gを越えると粒子径が小さくなり、充放電に伴った微細化が進行しやすくなる。その結果、大きなサイクル低下を招いてしまう。
【0022】
一方、リチウム・マンガン複合酸化物の比表面積の下限は0.05m2/gである。これは、正極活物質の比表面積が0.05m2/g未満になると、当該正極活物質の微細化は抑制されるものの、粒子径が大きくなりすぎるために重負荷特性が悪くなり、電池容量が小さくなるといった不都合が生じるからである。このように、活物質の微細化および利用効率を考慮すると、リチウム・マンガン酸化物の比表面積は0.05〜5.0m2/gとする必要がある。
【0023】
なお、リチウム・マンガン酸化物としては、各種組成比が選択可能である。例えば、マンガン1原子当たりリチウムを0.5原子含む、高温焼成によって生成されるスピネル型LiMn2O4の他に、特開昭63-274059号公報で開示されている低温焼成によって生成されるLiMn2O4等が挙げられる。また、J.Electrochem.Soc.,Vol140,No.12,P3396(1993)で記載されている、マンガン1原子当たりリチウムを1原子含むLiMnO2であってもよい。さらに、特開平2-37665号公報で開示されているLixMnOyや、これにリチウムをドープすることでLi1+xMn2O4(但し、x>0である)なる組成としたものであってもよい。
【0024】
これらリチウム・マンガン酸化物は、たとえばリチウム、マンガンの水酸化物、酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を出発原料とし、酸素存在雰囲気下、600〜1000℃の温度範囲で焼成し、粉砕することにより生成される。出発原料は目的生成物の組成に応じた混合比で混合するが、混合方法としては固体状の出発原料を直接混合する乾式混合法や、水溶液を媒介して混合する湿式混合法が挙げられ、特に限定されるものではない。
【0025】
一方、本発明で用いる負極活物質は、充放電反応に伴ってリチウムイオンをドープ且つ脱ドープすることが可能な炭素質材料である。炭素質材料としては、物理化学的特性,電気化学的特性が安定しており、真密度が高いことから黒鉛材料が適当である。黒鉛材料としては、より高い負極合剤充填性を得るために、真比重が2.10g/cm3以上、より好ましくは2.18g/cm3以上であることが望ましい。黒鉛材料において、このような真比重を有するには、X線回折法で求められる002面の面間隔が0.335〜0.34nmであることが必要であり、より好ましくは0.335nm〜0.337nmである。また、C軸方向の結晶子厚みは16.0nm以上であることが好ましく、24.0nm以上であることがより好ましい。さらに、嵩比重は0.3g/cm3以上であることが必要である。そして、黒鉛材料粒子形状において、最も厚みの薄い部分の厚さをT、最も長さの長い部分の長さをL、Lに対して垂直方向の長さ(奥行き)をWとしたときに、(L/T)×(W/T)で求められる値の平均値xave,すなわち平均形状パラメータxave、がXave ≦125であることが望ましい。
【0026】
また、レーザー・ラマン分光法によって求められるG値も黒鉛材料を選択するのに重要なパラメータである。すなわち、レーザー・ラマン分光法は炭素質材料の結晶構造の振動に関する情報が高感度に反映される測定法であり、このレーザ・ラマン分光法で観測されるラマンスペクトルから求められるG値はミクロな構造欠陥を評価するのに有効な指標の一つである。このG値は、炭素質材料中の非晶質構造に由来するラマンバンドの面積強度に対する、完全な黒鉛構造に由来するラマンバンドの面積強度の比で表される。負極活物質として用いる黒鉛材料としては、このG値が2.5以上であることが好ましい。G値が2.5未満である場合には2.1g/cm2以上の真比重が得られない場合がある。
【0027】
さらに、本発明では電池の高エネルギー密度化を目的としていることから、黒鉛材料は断続充放電法によって測定される1サイクルめの放電容量が、材料1gあたり250mAh以上であることが望ましく、270mAh以上であることがより好ましい。以上のような黒鉛材料としては、有機材料を炭素化し、高温処理することで得られる人造黒鉛が用いられる。
【0028】
人造黒鉛を生成する出発原料としては、石炭やピッチ等の有機材料が代表的である。ピッチとしては、コールタール、エチレンボトム油、原油等の高温熱分解で得られるタール類、アスファルト等の蒸留(真空蒸留、常圧蒸留、スチーム蒸留)、熱重縮合、抽出、化学重縮合等の操作によって得られるものや、木材乾留時に生成するものなどが挙げられる。さらに、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、3,5-ジメチルフェノール樹脂等の高分子化合物をピッチの出発原料とすることも可能である。
【0029】
これら出発原料となる石炭、ピッチ、高分子化合物は、炭素化の途中400℃付近まで液状で存在し、その温度で保持することにより芳香環同士が縮合、多環化して積層配向した状態となる。その後、500℃付近より高い温度になると、固体の炭素前駆体(セミコークス)を形成する。このような過程を液相炭素化過程と呼ぶが、易黒鉛化炭素の典型的な生成過程である。
【0030】
また、人造黒鉛の出発原料としては、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン等の縮合多環炭化水素化合物、その他誘導体(例えばこれらのカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸イミド等)、あるいは混合物、アセナフチレン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、フタラジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェナントリジン等の縮合複素環化合物、さらにはその誘導体を用いるようにしても良い。
【0031】
これら有機材料を、例えば、窒素等の不活性ガス気流中にて、300〜700℃で炭化した後、1〜100℃/分の速度で900〜1500℃まで昇温して到達温度にて0〜30時間保持(仮焼)し、さらに2000℃以上、好ましくは2500℃以上で熱処理することによって人造黒鉛は生成される。なお、場合によっては炭化、仮焼操作を省略しても良い。
【0032】
また、この生成過程では、特開平6-089721号公報で示されているように、焼成時に発生する種々の揮発成分を効率良く除去するようにすると、リチウムドープ能力の高い黒鉛材料を得ることが可能である。揮発成分を効率良く除去するには、焼成雰囲気条件が重要である。焼成雰囲気は不活性ガス雰囲気であることが好ましく、原料1g当たり0.1cm3/分以上の不活性ガス気流中で行うことがより好ましい。さらに、真空排気を行いながら焼成を行うと、揮発成分の影響をほとんど受けず、良好な特性の黒鉛材料が得られる。
【0033】
なお、以上のような黒鉛材料はそれ単独を負極活物質として使用するようにしても良いが、特願平6-33434号明細書で示されているように、黒鉛材料と結晶性の低い炭素質材料(低結晶性炭素質材料)の共存体を負極活物質とすることも可能である。ここで、炭素共存体における低結晶性炭素の割合は、炭素共存体全重量に対して10〜90%に限定され、20〜80%であることがより好ましい。
【0034】
このとき、黒鉛材料に共存させる低結晶性炭素質材料は、断続充放電法によって測定される1サイクルめの放電容量が、黒鉛材料の80%以上の容量性能を持つものに限定される。特に、サイクル特性の点から、低結晶性炭素質材料は黒鉛材料の90%以上の容量性能を持つものであることが望ましい。さらに、低結晶性炭素質材料は、断続充放電法によって測定される1サイクルめの放電容量において、リチウム電位基準で1.5Vまでの放電容量に対する0.3Vまでの放電容量の比が0.5以上であることが最も好ましい。
【0035】
また、本発明の非水電解液二次電池において、電解液としては非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液が用いられる。非水溶媒としては、負極活物質に黒鉛材料を用いる場合には、黒鉛材料によって分解されないECを主構成成分の一つとした溶媒が用いられることが前提となる。このECを主構成成分とする溶媒には、ECの他にさらに複数成分を混合すると良い。それは、充電過程における溶媒の分解を抑制するとともに、導電率を向上させて電流特性を改善し、さらに電解液の凝固点を低下させて低温特性を向上させ、また、リチウム金属との反応性を低下させて安全性を改善する目的からである。
【0036】
ECに混合する成分としては、鎖状エステル類が耐電圧性が高く適切であり、炭酸、カルボン酸、リン酸等のエステル類、中でも鎖状炭酸エステル類が好適である。具体的には、MEC(メチルエチルカーボネート)やMPC(メチルプロピルカーボネート)等の非対称鎖状炭酸エステルが好適である。さらに、MECとDMC(ジメチルカーボネート)との混合系やMECとDEC(ジエチルカーボネート)との混合系等、非対称鎖状炭酸エステルを含む混合溶媒等を加えても良好な結果が得られる。また、DMCとDECとの混合系のような対称鎖状炭酸エステルからなる溶媒も比較的良い特性を示す。
【0037】
ECとEC以外の溶媒の混合比率(EC:EC以外の溶媒)は、体積比で7:3〜3:7とするのが好ましい。EC以外の溶媒が複数種の溶媒から構成される場合には、MEC-DMC混合系溶媒、MEC-DEC混合系溶媒で、MEC:(DMCまたはDEC)が体積比で2:8〜9:1であることが好ましい。また、DMC-DEC混合系溶媒で、DMC:DECが体積比で1:9〜9:1であることが好ましい。
【0038】
電解質としてはLiPF6が好適であるが、この種の電池に用いられるものであればいずれも使用可能である。例えばLiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr、LiSO3CH3、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3等が挙げられる。
【0039】
電池は、以上のような正極活物質よりなる正極、負極活物質よりなる負極及び非水電解液を、例えば鉄製の電池缶内に収納し、当該電池缶と電池蓋をかしめ密閉して構成される。上記正極、負極はリード部材によってそれぞれ電池蓋、電池缶に接続され、この電池蓋あるいは電池缶とリード部材を介して外部から通電されるようになされる。なお、このような電池では、過充電等の異常時に、電池の内圧上昇に応じて電池系内での電流を遮断する、電流遮断機構を設け、安全性の向上を図るようにしても良い。
【0040】
【作用】
リチウム・マンガン複合酸化物を正極活物質とする正極と、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素質材料を負極活物質とする負極と、非水電解液を有してなる非水電解液二次電池において、正極活物質となるリチウム・マンガン複合酸化物の比表面積を0.05〜5.0m2/gの範囲に規制すると、サイクル特性が改善され、エネルギー密度が高く且つサイクル特性に優れたものになる。これは以下の理由によるものと考えられる。
【0041】
すなわち、リチウム・マンガン複合酸化物を正極活物質とする非水電解液二次電池では、リチウム・マンガン複合酸化物からリチウムが脱ドープされる充電時には、リチウム・マンガン複合酸化物の結晶構造を構成する立方晶格子が収縮する。一方、正極活物質へリチウムがドープされる放電時においては、リチウム・マンガン複合酸化物の立方晶格子が膨張する。このリチウムのドープ・脱ドープに伴う正極活物質の収縮,膨張による体積変化が、正極活物質自身にストレスを与え微細化を促進しているものと推測される。正極活物質が微細化すると例えば導電剤との接触性が悪くなり、結果的に電池のサイクル劣化が引き起こされることになる。
【0042】
このような非水電解液二次電池において、リチウム・マンガン複合酸化物の比表面積を0.05m2/g以上の範囲に設定すると、充放電に伴ったリチウム・マンガン複合酸化物の微細化が抑えられる。したがって、常にリチウム・マンガン複合酸化物と導電剤とが良好な状態で接触し、優れたサイクル特性が得られる。
【0043】
一方、リチウム・マンガン複合酸化物の比表面積の下限を0.05m2/gにしたのは、この比表面積が0.05m2/g未満になると、当該正極活物質の微細化は抑制されるものの、その粒子径が大きくなりすぎるために負荷特性が悪くなり、電池容量が小さくなるといった不都合が生じるからである。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について実験結果に基づいて説明する。
実施例1
本実施例で作製した非水電解液二次電池の構成を図1に示す。この非水電解液二次電池は以下のようにして作製した。
【0045】
先ず、次のようにして正極活物質となるリチウム・マンガン複合酸化物を生成した。二酸化マンガン1モルと炭酸リチウム0.25モルとからなる混合物を、空気中、温度850℃で5時間焼成し、塊状のLiMn2O4を生成した。そして、この塊状のLiMn2O4をボールミルにより粉砕,分級することにより比表面積が0.05m2/gの粉末状LiMn2O4を得た。なお、LiMn2O4の比表面積は、BET1点法に基づいてカンタクロム社製のカンタソーブを用いて測定した。
【0046】
以上のようにして生成された粉末状LiMn2O4を86重量%、導電材としてグラファイトを10重量%、結着材としてポリフッ化ビニリデン4重量%を混合して正極合剤を調製し、N-メチル-2-ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーにした。そして、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥後、ローラプレス機で圧縮成型することで帯状正極2を作製した。
【0047】
次に、負極活物質となる人造黒鉛材料を以下のようにして生成した。石油ピッチを温度1200℃で仮焼した後、不活性ガス雰囲気中、温度3000℃で熱処理して人造黒鉛材料を生成し、粉砕することで粉末状にした。なお、この黒鉛材料について、粉末X線回折測定を行った結果、(002)面の面間隔は0.337nm、C軸方向の結晶子厚みは30nmであった。また、レーザー・ラマン法によるG値は13.6、ピクノメータ法による真比重は2.20であった。そして、レーザ回折式粒度分布測定による平均粒径は33μm、嵩比重は1.18、平均形状パラメータxaveは3.6であった。
【0048】
このようにして生成された粉末状の黒鉛材料粉末を90重量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10重量%混合し、負極合剤を調製し、溶剤であるN-メチル-2-ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーにした。そして、この負極合剤スラリーを、厚さ10μmの帯状の銅箔の両面に均一に塗布し、乾燥後にローラプレス機で圧縮成型することで帯状負極1を作製した。
【0049】
この作製された帯状負極1、帯状正極2を微多孔性ポリオレフィンフィルムよりなるセパレータ3を介して、負極1、セパレータ3、正極2、セパレータ3の順に積層してから多数回巻回し、最外周の巻き終わり部を粘着テープで固定し、渦巻式電極体を作製した。そして、この渦巻式電極体をニッケルめっきを施した鉄製電池缶5に収納し、当該渦巻式電極体の上下両面に絶縁板4を配設した。次いで、アルミニウム製正極リード13を正極集電体11から導出して、電池蓋7と電気的な導通が確保された安全弁装置8の突起部に溶接し、ニッケル製負極リード12を負極集電体10から導出して、電池缶5の底部に溶接した。
【0050】
一方、電解液は、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートを5:5なる容量比で混合した有機溶媒中に、支持電解質LiPF6を1モル/リットルの濃度で溶解することで調製した。そして、上述のようにして渦巻式電極体が組み込まれた電池缶5内に電解液を注入した後、アスファルトで表面を塗布した絶縁封口ガスケット6を介して電池缶5をかしめることにより電流遮断機構を有する安全弁装置8、PTC素子9並びに電池蓋7を固定し、外径が18mmで高さが65mmの円筒型電池を作成した。
実施例2〜実施例5
正極活物質を生成する際の粉砕,分級工程を制御することで、表1に示す比表面積のLiMn2O4粉末を生成し、これを正極活物質とすること以外は実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製した。
比較例1,比較例2
正極活物質を生成する際の粉砕,分級工程を制御することで、表1に示すように比表面積が0.05〜5.0m2/gから外れたLiMn2O4粉末を生成し、これを正極活物質とすること以外は実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製した。
【0051】
以上のようにして作製された非水電解液二次電池について、充電電圧4.20V、充電電流1000mA、充電時間2.5時間の条件で充電を行った後、放電電流1500mAh、終止電圧2.75Vの条件で放電を行うといった充放電サイクルを繰り返し行い、放電1サイクル目の放電容量(初期容量)と、充放電2サイクル目の放電容量に対する300サイクル目の放電容量の比(容量維持率)を求めた。
【0052】
その結果を、LiMn2O4粉末の比表面積とともに表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1からわかるように、比表面積が0.05〜5.0m2/gであるLiMn2O4粉末を正極活物質として用いた実施例1〜実施例5の電池は、初期容量が1000mAh以上、容量維持率が85%以上といずれもが高い値になっている。これに対して、LiMn2O4粉末の比表面積が0.05m2/gより小さい比較例1の電池は、初期容量が890mAhと低く、LiMn2O4粉末の比表面積が5.0m2/gを越える比較例2の電池は、容量維持率が72.0%と低い値になっている。比較例2の電池で容量維持率が低い値になっているのは、比表面積が5.0m2/gを越えるLiMn2O4粉末は粒子径が小さく、このため充放電に伴って微細化が進行したからと考えられる。一方、比較例1の電池で初期容量が低い値になっているのは、比表面積が0.05m2/gより小さいLiMn2O4粉末は粒子径が非常に大きいため、活物質としての利用効率が悪く、重負荷特性に劣るからである。
【0055】
以上のことから、非水電解液二次電池において、正極活物質としてLiMn2O4を用い、これの比表面積を0.05〜5.0m2/gとすることは、初期容量を低下させることなくサイクル劣化を抑え、エネルギー密度が高く且つサイクル特性に優れた電池を得る上で有効であることがわかった。
負極活物質の検討
次に、比表面積を所定範囲に規制したリチウム・マンガン複合酸化物を正極活物質として使用する場合について、適当な負極活物質の種類及び電解液の組成について検討した。
【0056】
負極活物質として、黒鉛材料の代わりに、黒鉛材料50重量%と低結晶性炭素材料であるピッチコークス50重量%とを混合した混合炭素材料あるいはピッチコークス単独を用い、実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製した(実験例1,実験例2)。そして、上述と同様にして初期容量及び容量維持率を調べた。その結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2からわかるように、負極活物質としてピッチコークス単独を用いた実験例2の電池に比べて、黒鉛材料とピッチコークスの混合炭素材料を用いた実験例1の電池および前述の黒鉛材料単独を用いた実施例1の電池の方が、初期容量,容量維持率のいずれについても優れている。このことから、負極活物質としては、低結晶性炭素質材料よりも、黒鉛材料単独あるいは黒鉛材料を含有する混合炭素質材料の方が適していることがわかった。
電解液の非水溶媒の検討
電解液の非水溶媒として、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートを5:5なる容量比で混合した混合溶媒の代わりに、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートを表3に示す混合比で混合した混合溶媒を用いること以外は実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製した(実験例3〜実験例6)。そして、上述と同様にして初期容量及び容量維持率を調べた。その結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
表3から、エチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルであるメチルエチルカーボネートの混合比が3:7〜7:3の範囲にある実験例4,実験例5の電池は、初期容量,容量維持率のいずれについても優れている。これに対して、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの比が2:8である実験例3の電池では、初期容量は問題ないものの容量維持率が比較的低い値になっている。一方、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの比が8:2である実験例6の電池では、容量維持率には優れているが、初期容量が他に比べて小さい。
【0061】
このことから、エチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルの混合溶媒を電解液の非水溶媒として用いる場合、エチレンカーボネートと鎖状炭酸エステルの混合比は3:7〜7:3とするのが適当であることがわかる。以上、本発明の具体的な実施例を円筒型の非水電解液二次電池を例にして説明したが、電池の形状は円筒型に限らず角型,偏平型,コイン型,ボタン型であっても良く、いずれの場合にも同様の効果が得られる。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の非水電解液二次電池では、正極活物質としてリチウム・マンガン複合酸化物の粉末を用い、その比表面積を0.05〜5.0m2/gの範囲に規制するので、高エネルギー密度で且つサイクル寿命に優れた二次電池が低い価格で安定供給することができ、工業的および商業的価値が極めて大きいと言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明を適用した非水電解液二次電池の1構成例を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
1 負極
2 正極
3 セパレータ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-08-12 
出願番号 特願平6-206954
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 天野 斉  
特許庁審判長 中村 朝幸
特許庁審判官 原 賢一
吉水 純子
登録日 2003-04-25 
登録番号 特許第3421877号(P3421877)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 非水電解液二次電池  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 小池 晃  
代理人 小池 晃  
代理人 田村 榮一  
代理人 田村 榮一  

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