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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B21B
管理番号 1128968
異議申立番号 異議2003-72803  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-07-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-14 
確定日 2005-10-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3438871号「圧延機の形状制御方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3438871号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許に関わる出願は平成12年3月31日に出願されたものであって、平成15年6月13日に請求項1〜3に係る発明につき特許権の設定登録がなされ、その後、平成15年11月14日に特許異議申立人 住友金属工業株式会社より、請求項1〜3に係る特許について異議の申立がなされた。そして、平成17年4月25日付けで取消理由が通知され、その後、指定期間内の平成17年7月8日付けで訂正請求がなされた。さらに、取消理由が通知され、前記平成17年7月8日付けの訂正請求は取り下げられるとともに、平成17年9月27日付けで新たな訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
以下、平成17年9月27日付けの訂正請求により訂正された内容について検討する。
訂正事項a
請求項1を以下のとおりに訂正する。
「【請求項1】圧延材形状を制御する少なくとも一つの形状制御手段の操作変化量とこれによる圧延材の形状変化量との関係を数式化した形状変更特性を設定しておき、実際の圧延時には、目標とする圧延材形状と実測された圧延材形状との偏差を形状変更特性中の形状変化量に置換し、これにより得られる操作変化量を形状制御手段へ出力する圧延材の形状制御方法において、前記形状変化量は、少なくとも2つの異なる偶数次項からなる圧延材形状を示す近似多項式の各項の係数変化量と関連づけられているとともに、前記操作変化量とこれによる前記近似多項式の少なくとも二の異なる偶数次項の係数変化量とが所定の数式で関連付けられていることを特徴とする圧延材の形状制御方法。」

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、請求項1に記載の「形状変化量」と「係数変化量」の関係について、「操作変化量」と「係数変化量」の関係とともに表現することによりそれらの関係を明確にするものであり、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
ここで、「操作変化量」と「係数変化量」の関係については、訂正前の特許明細書段落【0014】のΔλ2W=α・ΔFW,Δλ4W=β・ΔFW(ここで、ΔFW:操作変化量,Δλ2W,Δλ4W :係数変化量)及び【0015】のΔλ2I=γ・ΔFW,Δλ4I=η・ΔFI(ここで、ΔFI:操作変化量,Δλ2I,Δλ4I :係数変化量)の記載に裏付けられている。
そして、「操作変化量」と「係数変化量」の関係を明瞭にすることに伴い、「形状変化量」と「係数変化量」の関係についても、「『形状変化量』は、〜『係数変化量』と関連づけられている。」と整合された表現を用いて、明瞭な記載としている。
さらに、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新規事項の追加には当たらず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項、及び第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立について

1.本件の請求項1〜3に係る発明
上記II.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という。)は、訂正後の特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 圧延材形状を制御する少なくとも一つの形状制御手段の操作変化量とこれによる圧延材の形状変化量との関係を数式化した形状変更特性を設定しておき、実際の圧延時には、目標とする圧延材形状と実測された圧延材形状との偏差を形状変更特性中の形状変化量に置換し、これにより得られる操作変化量を形状制御手段へ出力する圧延材の形状制御方法において、前記形状変化量は、少なくとも2つの異なる偶数次項からなる圧延材形状を示す近似多項式の各項の係数変化量と関連づけられているともに、前記操作変化量とこれによる前記近似多項式の少なくとも二の異なる偶数次項の係数変化量とが所定の数式で関連づけられていることを特徴とする圧延材の形状制御方法。
【請求項2】 請求項1に記載の圧延材の形状制御方法において、前記近似多項式は低次項が2次、高次項が4次以上の偶数次項の2項からなることを特徴とする圧延材の形状制御方法。
【請求項3】 請求項1または2に記載の圧延材の形状制御方法において、前記近似多項式は低次項が2次、高次項が4次の2項からなることを特徴とする圧延材の形状制御方法。」

2.特許異議申立の概要
特許異議申立人住友金属工業株式会社は、次の甲第1号証を提示し、請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、その特許は取り消すべきであると主張している。

甲第1号証:近藤勝也、大井俊哉、小峰一晃、竹本裕、伊山彰一、「冷間圧延機の自動形状制御システムの開発」,塑性と加工(日本塑性加工学会誌),社団法人 日本塑性加工学会、平成4年3月2日発行,p.241-p.246(以下、「刊行物1」という。)

3.証拠の記載事実および開示事項
(1)刊行物1
(1-1)刊行物1の第241頁には、「冷間圧延機の自動形状制御システムの開発」と記載されている。

(1-2)刊行物1のの第241頁右欄第4行〜第9行には、「本論文では自動形状制御のために、まず、形状制御アクチュエータに要求される特性を簡単な数値計算を用いて検討し、2種類のアクチュエータの組合せが望ましいことが分かった。すなわち、アクチュエータの形状制御特性をy=xnなる関数で表し、一方は低次関数、他方は高次関数の特性の組合せである。」と記載されている。

(1-3)刊行物1の第242頁左欄第30行〜第36行には、「数値計算の方法をFig.2に示す。図はx2とx8の形状制御特性を持つアクチュエータの組合せで、形状外乱yd=x4(Fig.2(1))を修正する例である。2種類のアクチュエータを組み合わせた形状制御特性ycはyc=ax2十bx8で表されるので、ydをycで重回帰して、形状外乱の曲線に最も近い形状制御曲線を得るための各アクチュエータの操作量a及びbを決める。」と記載されている。

(1-4)刊行物1の第242頁右欄のFig.3には、x2とx8の形状制御特性を組み合わせたFig.3(1)と、x2とx4の形状制御特性を組み合わせたFig.3(2)と、x4とx6の形状制御特性を組み合わせたFig.3(3)のそれぞれに関するa、bおよびEが図示されている。

(1-5)刊行物1の第242頁右欄第21行〜第243頁左欄第2行には、「以上、2種類の形状制御アクチュエータの組合せ方法の結論をまとめると、(1)(○付き数字の意味として代用する。)広範囲の形状外乱の制御のために、y=x2のような低次関数特性を持つ形状制御大アクチュエータが必要である。(2)(○付き数字の意味として代用する。)低次関数特性と組合せるもう一方のアクチュエータは、y=x8のような高次関数特性を持つことが望ましい。」と記載されている。

(1-6)刊行物1の第243頁左欄第9行〜第11行には、「Table1はアルミ箔用圧延機、Table2は5スタンドタンデムコールドミルの最終スタンドの仕様で、両者ともVCロールとWRベンダを備えている。」と記載されている。

(1-7)刊行物1の第244頁右欄第8行〜第16行には、「(1)アルミ箔ミル(λ=6.9)では、WRベンダが、材料の板幅が1680mmと広い場合にはx10のような高次関数の形状制御特性となるが、板幅が1045mmの時はx5となって次数がやや低下した。一方、VCロールは材料の板幅に拘らずx2前後の低次の形状制御特性である。なお形状制御の感度(振幅)は板幅が変っても余り変らない。以上比較的広幅の材料に対し、VCロールは低次関数、WRベンダは高次関数の形状制御特性となって、広い範囲の形状外乱に対応出来る。」と記載されている。

(1-8)刊行物1の第245頁左欄第6行〜第8行には、「アルミ箔ミルのVCロールとWRベンダのように、異なる形状制御特性のアクチュエータを用いた自動形状制御システムを、同ミルの実施例に基づいて説明する。」と記載されている。

(1-9)刊行物1の第245頁左欄第9行〜右欄第1行には、「自動形状制御システムのブロック図をFig.8に示す。形状検出器出力を低次と高次の形状制御特性関数に分解し、それぞれの特性を持つアクチュエータを操作するが、順を追って説明する。 (1)形状検出器出力から目標形状を差し引いた形状偏差g(x)を、1次式成分(tilt成分)、2次式成分および高次式成分に分解する。このためにg(x)を次の(3)式で表わし、それぞれの係数a0、a1、a2、を回帰によって求める。この時のa0がtiltエラー、a1がVCエラーを、a2がベンダーエラーである。
g(x)=a0x+a1x2十a2xm(m=6〜10) (3)
(2)エラー信号a0〜a2に基づいて、それぞれ比例・積分演算を行って、圧下のレベリング、VCロール圧力及びWRベンド力の修正量を出力する。」と記載されている。

(1-10)刊行物1の第245頁左欄Fig.8には、アルミ箔ミルのVCロールとWRベンダのように、異なる形状制御特性のアクチュエータを用いた自動形状制御システムのブロック図が図示されている。
その図示内容は、Fig.8左上のShape sensorからShape calculationへと矢印が向かっている。Shape calculatlonからは引き続き下へと矢印が向かっており、該矢印は、Aimed shapeから右へと向かった矢印と交わっている。該交点より右へと向かった矢印は、途中で4つに分岐し、分岐した矢印のうち、2nd order componentへと向かった矢印は、VC errorとしてPIDへと向かい、その後、矢印がVCロールへと向かっている。また、分岐した矢印のうち、Higher order componentへと向かった矢印は、Bender errorとしてPIDへと向かい、その後、矢印がWRベンダへと向かっている。さらに、VCロ一ルやWRベンダにより圧延された圧延材の形状は、再びShape sensorにおいて形状が検出されている。そして上述の工程が繰り返されて、いわゆるフィードバックル一プが形成されている。

4.対比・判断
(1)本件発明1について
上記摘記事項(1-1)から(1-10)を総合すると、刊行物1には、
「圧延材形状を制御する形状制御手段としてのVCロール及びWRベンダの操作変化量とこれによる圧延材の形状変化量との関係を数式化した形状変更特性g(x)=a0x+a1x2十a2xm(m=6〜10)を設定しておき、実際の圧延時には、目標とする圧延材形状と実測された圧延材形状との偏差を形状変更特性中の形状変化量g(x)に置換し、これにより得られる操作変化量となるVCロール圧力及びWRベンド力の修正量をVCロールやWRベンダへ出力する圧延材の形状制御方法において、前記形状変化量g(x)は、少なくとも2つの異なる偶数次項からなる圧延材形状を示す近似多項式の各項の係数変化量a1,a2と関連づけられていることを特徴とする圧延材の形状制御方法。」が開示されている(以下、「刊行物1発明」)という。
刊行物1発明において、各々「VCロール及びWRベンダ」,「g(x)=a0x+a1x2十a2xm(m=6〜10)」,「VCロール圧力及びWRベンド力の修正量」は、本件発明1の「圧延材形状を制御する形状制御手段」,「形状変更特性」、「操作変化量」に対応するので、
本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、両者は
「圧延材形状を制御する少なくとも一つの形状制御手段の操作変化量とこれによる圧延材の形状変化量との関係を数式化した形状変更特性を設定しておき、実際の圧延時には、目標とする圧延材形状と実測された圧延材形状との偏差を形状変更特性中の形状変化量に置換し、これにより得られる操作変化量を形状制御手段へ出力する圧延材の形状制御方法において、前記形状変化量は、少なくとも2つの異なる偶数次項からなる圧延材形状を示す近似多項式の各項の係数変化量と関連づけられている圧延材の形状制御方法」
という点で一致し、
一方、本件発明1は、操作変化量とこれによる近似多項式の少なくとも二の異なる偶数次項の係数変化量とが所定の数式で関連づけられていることを特徴とする圧延材の形状制御方法であるのに対して、刊行物1発明は、圧延材形状を示す近似多項式の各項の係数は、それぞれの形状制御手段に対応して特定された係数a1,a2である点
で相違する。
以下、この相違点について検討する。
この相違点に基づき、本件発明1は、操作変化量により各々の係数変化量を制御することを可能とし、各形状制御手段の形状変更特性を簡潔な数式で求められるので、複数の形状制御手段に対する複合形状変更特性を算出することができ、実圧延における板形状と目標形状との偏差を零又は許容偏差内に収束させるのに、前記形状変更特性を利用して操作量の変化分を求めることができ、精度良く板形状の制御をすることができるという顕著な効果を奏する。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明とは認められない。

(2)本件発明2、3について
本件発明2は、本件発明1を引用している。そして、本件発明1が、刊行物1に記載された発明とは認められない以上、本件発明2も、刊行物1に記載された発明ではない。
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2を引用している。そして、本件発明1及び本件発明2が、刊行物1に記載された発明とは認められない以上、本件発明3も、刊行物1に記載された発明ではない。

したがって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、請求項1〜3に係る発明の特許は、特許異議申立の理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
圧延機の形状制御方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】圧延材形状を制御する少なくとも一つの形状制御手段の操作変化量とこれによる圧延材の形状変化量との関係を数式化した形状変更特性を設定しておき、実際の圧延時には、目標とする圧延材形状と実測された圧延材形状との偏差を形状変更特性中の形状変化量に置換し、これにより得られる操作変化量を形状制御手段へ出力する圧延材の形状制御方法において、前記形状変化量は、少なくとも2つの異なる偶数次項からなる圧延材形状を示す近似多項式の各項の係数変化量と関連づけられているとともに、前記操作変化量とこれによる前記近似多項式の少なくとも二の異なる偶数次項の係数変化量とが所定の数式で関連付けられていることを特徴とする圧延材の形状制御方法。
【請求項2】請求項1に記載の圧延材の形状制御方法において、前記近似多項式は低次項が2次、高次項が4次以上の偶数次項の2項からなることを特徴とする圧延材の形状制御方法。
【請求項3】請求項1または2に記載の圧延材の形状制御方法において、前記近似多項式は低次項が2次、高次項が4次の2項からなることを特徴とする圧延材の形状制御方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単一或いは複数の形状制御手段を有する圧延機を使用して圧延材の形状を制御する圧延機の形状制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧延材を所望の形状に制御するには、まず圧延材の形状を認識する必要があるが、圧延された圧延材の長手方向の伸びを圧延材の幅方向の各点毎に検出し、該幅方向における伸びの分布を板形状として表現する方法が一般的であり、通常圧延材の板幅全体の形状を一つの数式で近似している。伸びの分布は、単純な凸状あるいは凹状のみでなく、W状あるいはM状、さらに非対称の場合もあるため、近似した数式ができるだけ実際の伸び分布に近い形状を表すことができるよう、4次又は6次の高次項を含む高次式とすることが提案されている(例えば、特開昭55-42165号公報、特開昭61-132213号公報)。しかし、これらの数式は、種々の板形状を正確に表現することを優先考慮して導入されているため、圧延機が有する形状制御手段の特性との関連は全く考慮されておらず、いたずらに複雑な計算プロセスが必要であるという問題があった。
【0003】
そこで、前記問題を解決すべく、次のような形状制御方法が提案されている。
まず、特公平7-115055号公報には、圧延機が有する形状制御手段の板形状に与える影響を考慮して、圧延材の板幅中央部側と板幅端側の形状を別々の2次式で近似するとともに、前記各領域毎に対応する形状制御手段を定め、各領域の形状表現式に対して該形状制御手段の操作量を調節して圧延材の形状を制御する方法が開示されている。
また、特開平7-303910号公報には、圧延材形状を数式化せず、圧延材の板幅中央部と板幅端部の長手方向の伸びをそれぞれ測定し、中央部の伸びと端部の伸びとの差に応じて中間ロールをベンディングさせ、端部の伸びの幅方向の変化率に応じて作業ロールをベンディングさせる方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した特公平7-115055号公報、及び特開平7-303910号公報により提案されている方法でも、未だ満足する形状制御結果が得られていないのが実状である。この原因としては、圧延材の幅方向領域と形状制御手段とを単独で関連付けて制御していることがあげられる。実際に複数の形状制御手段の一つを操作すると、幅方向の一部の領域だけでなく、全領域にわたって形状に影響を与えることが経験上知られている。従って、圧延材を幅方向に分割し、簡単な論理式で、各領域に対応させた形状制御手段のみを制御する方法では、高精度の形状制御を行なうことができないという問題がある。
本発明は、精度良く圧延材の形状を制御する方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、圧延材形状を制御する少なくとも一つの形状制御手段の操作変化量とこれによる圧延材の形状変化量との関係を数式化した形状変更特性を設定しておき、実際の圧延時には、目標とする圧延材形状と実測された圧延材形状との偏差を形状変更特性中の形状変化量に置換し、これにより得られる操作変化量を形状制御手段へ出力する圧延材の形状制御方法において、前記形状変化量は、少なくとも2つの異なる偶数次項からなる圧延材形状を示す近似多項式の各項の係数変化量と関連づけられているとともに、前記操作変化量とこれによる前記近似多項式の少なくとも二の異なる偶数次項の係数変化量とが所定の数式で関連付けられていることを特徴としている。
【0006】
また本発明は、前記近似多項式は低次項が2次、高次項が4次以上偶数次項の2項からなることを特徴とすることを特徴としている。なお、前記近似多項式は低次項が2次、高次項が4次の2項からなることが好ましい。
なお、本発明は、鋼、アルミ、銅、或いはこれらの合金等、ロールで塑性加工ができるものには適用できるが、特に帯状金属に用いるとよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の形状制御方法を適用して圧延材の形状制御を行なう6段圧延機の概略図である。この圧延機は、圧延材3を圧延する上作業ロール1及び下作業ロール2と、両ロールに圧接する上中間ロール4及び下中間ロール5と、両ロールに圧接する上補強ロール6及び下補強ロール7とを備えている。各作業ロール1、2の軸端には作業ロールにベンディング力FWを作用させる作業ロールベンダ15が設けられている。上記作業ロール1、2に圧接する上中間ロール4、下中間ロール5の軸端には、両ロールにベンディング力FIを作用させる中間ロールベンダ14と、両ロールを軸方向に移動させる中間ロールシフト装置13が設けられている。圧延材3の板幅端部と中間ロール4、5の胴端部との水平距離をUCδとする。さらに6、7は上下補強ロールでその軸端に圧延荷重Pが作用する。下補強ロール7の下部には、圧延荷重を印加する圧下装置8が設置され、上補強ロール6の上部には圧延荷重を計測するロードセル10が設置されている。圧延機出側には、圧延材3の長手方向伸びの板幅方向分布を計測する形状検出器9が設置されている。形状検出器9は、板幅方向に多数配列された検出ロールで構成されており、各検出ロールには、外周に加わる張力を計測することができる圧電素子等公知の検出手段(図示せず)が組込まれている。各検出手段により検出される張力は、圧延材の長手方向の伸びに対応しており、各検出ロールからの出力の分布が伸び(板形状)と対応する。
【0008】
形状制御演算装置12は、形状検出器9から出力された形状信号tを取込み、4種類の処理を行なう。即ち、入力された形状信号tは操作量演算部により処理され、
(a)非対称成分に対してはレベリングのための操作信号ΔPが圧下駆動装置16に出力され、
(b)対称成分に対しては中間ロールベンダ駆動装置14aに操作信号ΔFIが出力され、
(c)作業ロールベンダ駆動装置15aに操作信号ΔFWが出力され、
(d)中間ロールシフト駆動装置13aに操作信号ΔUCδが出力され、
形状制御手段である圧下装置8、中間ロールベンダ14、作業ロールベンダ15、中間ロールシフト装置13が制御される。プリセットデータ17は、各形状制御手段を駆動するために予め設定したデータであり、圧延開始時に形状制御演算装置12に入力され記憶される。
【0009】
以下、本発明の形状制御方法について説明する。
本発明の制御は、圧延材の目標形状と実測された形状との偏差を零、または許容偏差内に収束させるために、各形状制御手段への操作量を演算して出力するフィードバック制御を行なうとともに、操作量を算出するために特定の形状変更特性を用いたことを特徴としている。
形状変更特性とは、形状制御手段の操作量を変えた時の操作変化量ΔFと圧延材の形状変化量ΔYの関係を数式化したもので、各形状制御手段(作業ロールベンダ、中間ロールベンダ等)毎に求める。形状変化量ΔYは操作量の変化前と変化後の圧延材形状の差であり、一般に圧延材形状と同様に多項式で表すことができるが、高次項を多く含む多項式で近似した場合には、各成分の係数は操作量によって変化するため、形状制御手段への操作量算出のための計算が複雑になる。
【0010】
そこで、本発明では形状変化量ΔYを以下の条件で多項式化する。
1)対称成分の形状偏差を演算する前の処理として、測定した形状から十分に非対称成分を除去するために、非対称成分は1次又は3次、好ましくは2つの項で表現する。
2)対称成分については、作業ロールベンダと中間ロールベンダの2つの形状制御手段の影響の違いを見るため、2項以上とする。
3)対称成分の複合形状は、低次項と高次項の組み合わせで生成できるが、十分な近似精度が得られる限り、低次項、高次項はそれぞれ1項とする。
4)前記各成分は、その係数変化が操作量の変化に対応しているものを採用し、望ましくは操作量の変化に対する各係数の変化が単純な線形式等で近似できるものを選ぶ。
以上より、各形状制御手段の形状変更特性を表現する基になる形状変化量ΔYの基本近似式を板幅方向における位置を変数Xとして下記式1のように定める。
ΔY=Δλ0+Δλ1X+Δλ2X2+Δλ3X3+ΔλNXN …(1)
ここで、非対称成分は1次、3次を採用し、対称成分については低次項には2次を採用し、高次項の次数N(4次以上の偶数成分)は得られる形状変化量との近似精度を考慮して決定する。
【0011】
形状変更特性を設定するに当たっては、まず種々の操作量に対する圧延材の形状を知る必要がある。そのためには、実際に形状制御手段の操作量を変化させながら板材を圧延し、板形状データを得る同定圧延を行なうことが望ましい。同定圧延は、形状制御手段にプリセットデータを入力して圧延を開始した後、各形状制御手段の出力を手動操作で変化させる運転モードで行なう。即ち、図2に示すように、操作量を増減させかつその変化量(ΔF)を変化させることにより、形状データを収集し、この動作を各形状制御手段について実行する。
【0012】
上記の同定圧延で得られた操作変化量とその前後の形状データを以下の手順で処理し、形状変更特性を抽出する。
1)操作量を一定に保持した部分で得られた数サンプリング分の形状データを用いて平均形状を求める。
2)操作量の変化前後で求めた前記平均形状の差をとり、操作変化量ΔFに対する形状変化量ΔYを求める。
3)形状変化量ΔYを式1に示す多項式で近似する。
4)収集した全ての形状データについて1)〜3)の処理を行う。
5)4)までの処理で得られた多項式に対して、各成分毎に操作変化量ΔFと係数変化Δλの関係を求める。
【0013】
各形状制御手段の形状変更特性は次のようにして求めることができる。
まず、作業ロールベンダに対して説明する。作業ロールベンダの操作量を変化させた場合の同定圧延の変化パターンの一例を図3(a)に示す。作業ロールベンディング操作量がFW1のときの平均形状がYW1[図3(b)]、操作量をFW1からΔFWだけ変化させFW2(=FW1+ΔFW)とした時の平均形状がYW2[図3(c)]とする。平均形状は、長手方向伸びの板厚方向分布そのままで表しておき、形状変化量は、図3(d)に示すように、長手方向伸びの操作量変化前後の差分の板厚方向分布で表し、これをもとに下記に示すような式1に基づく近似式を求めるとよい。
YW2-YW1=Δλ0W+Δλ1WX+Δλ2WX2+Δλ3WX3+ΔλNWXN
ここで、作業ロールベンダは対称成分に影響を与える形状制御手段であることから、作業ロールベンダに係わる形状変化量としては、上記式の内、2次とN次の成分だけからなる下記ΔYWSで数式表現することとする。
ΔYWS=Δλ2WX2+ΔλNWXN
【0014】
ここで、ΔYWSを最も適切に近似する高次数Nは、同定圧延時の形状変化量の分布を基に、適宜回帰式を用いたり、経験的に決定するとよく、以下の説明ではN=4とする。
各成分の係数の変化量Δλ2W、Δλ4Wと、操作変化量ΔFWの関係は次のように算出される。同定圧延時に求めた種々の操作変化量に対する形状変化量の多項式から、係数の変化量Δλ2W、Δλ4Wと操作変化量ΔFWの関係をプロットしたものを図4に示す。図4から分かるように、この関係は1次式で表すことができ、最小二乗法で一次近似することにより以下のような関係式を求めることができる。
Δλ2W=α・ΔFW
Δλ4W=β・ΔFW
以上より、作業ロールベンダの形状変更特性を下記式2で表すことができる。
ΔYWS=α・ΔFW・X2+β・ΔFW・X4 …(2)
【0015】
もう一つの対称成分に影響を与える形状制御手段である中間ロールベンダについても同様にして以下のような関係式を求めることができる。
ΔYIS=Δλ2IX2+Δλ4IX4
Δλ2I=γ・ΔFI
Δλ4I=η・ΔFI
これより、中間ロールベンダの形状変更特性を式3で表すことができる。
ΔYIS=γ・ΔFI・X2+η・ΔFI・X4 …(3)
【0016】
また、非対称成分に影響する形状制御手段である圧下装置については、1次項及び3次項を利用し、上記と同様にして形状変更特性を算出する。圧下レベリング量の変化量をΔFPとし、そのときの形状変化量の非対称成分をΔYPNSとすると、ΔYPNSは以下のように表現できる。
ΔYPNS=Δλ1PX+Δλ3PX3
各係数の変化量Δλ1P、Δλ3PはΔFPの関数で表現できる。これも同様に、実験データから最小二乗法で一次近似し、以下の関係式を求めることができる。
Δλ1P=κ・ΔFP
Δλ3P=ρ・ΔFP
よって、圧下装置の形状変更特性は次式で表すことができる。
ΔYPNS=κ・ΔFP・X+ρ・ΔFP・X3
【0017】
以上より、対称項に係わる2つの形状制御手段による複合形状変更特性は、式2、3をもとに式4で表現することができる。
ΔYs=ΔYWS+ΔYIS
=(α・ΔFW+γ・ΔFI)X2+(β・ΔFW+η・ΔFI)X4
=Δλ2X2+Δλ4X4 …(4)
各成分で表現すると式5で表すことができる。

【0018】
以上、形状制御手段の形状変更特性について説明したが、実圧延における形状制御は、目標形状と測定周期毎に形状測定器で計測される形状データとのずれ量である形状偏差Δεを演算し、これを零又は許容偏差内に収束させていくような操作量を算出し、出力する制御となる。ここで、圧延材の形状は、同定圧延により求めた形状変更特性との関連を明確にした表現で行うことが必要である。よって、目標形状はN=4の場合、以下のように同一形式で設定する。
YR=Λ0+Λ1X+Λ2X2+Λ3X3+Λ4X4
(通常、目標形状は対称形状であり、Λ0、Λ1、Λ3は0とする)
また、形状データは次の式で表すことにする。
Y=λ0+λ1X+λ2X2+λ3X3+λ4X4
【0019】
得られた形状データから、非対称成分は1次または3次の形状変更特性を利用して圧下操作量ΔFPにより除去することとし、対称成分のみに関して形状偏差を演算する。
ΔεS=(Λ2-λ2)X2+(Λ4-λ4)X4
=Δε2X2+Δε4X4
この形状偏差を零にするための操作量の変化分を、上記で求めた形状変更特性を利用して算出する。式4において、Δλ2=Δε2、Δλ4=Δε4とおくと、下記式6によりΔFW、ΔFIを算出することができる。

算出したΔFW、ΔFIを出力することにより、目標形状に収束させる形状制御が実現できる。なお、前述の説明では省略したが、中間ロールシフトについても同様にして形状変更特性を設定し、形状制御に利用しても良い。
【0020】
上述した形状制御方法の有効性をシミュレーションで検証した。
なお、実際の各操作量は、操作量の急激な変化を避け、かつ形状偏差が零又は許容偏差内に収束したときの出力Fを保持するため、前記演算で得られたΔFを適当な制御器を介して出力する。ここでは下記に示すようなPI制御器を使用して式7で出力した。

N=4の場合の制御系の構成を図5に示す。即ち、図1に示す形状制御演算装置12は、圧延材の予め設定された目標形状と入力される実測形状をもとに、各2次成分と4次成分から形状偏差Δε2とΔε4を算出し、式6により作業ロールベンダと中間ロールベンダの操作量ΔFW及びΔFIの算出を行なう。この結果を式7に示すPI制御器を介して、操作量の急激な変化や、形状偏差が零又は許容偏差内に収束させたときも操作量が零にならないような操作量ΔUW及びΔUIとし、作業ロールベンダ駆動装置15a及び中間ロールベンダ駆動装置14aに出力し、作業ロールベンディング力及び中間ロールベンディング力を制御する。その結果として変化する圧延材の実測形状を形状制御演算装置に入力し、前述の操作を繰返していく。
【0021】
なお、品質上、形状偏差が零に収束するまで操作変化を継続することが望ましいが、操作量の制約、目標形状付近でのハンチング等を防止するため、形状偏差が許容する偏差範囲内に収束したときに形状制御を完了したと考えても良い。すなわち、前述した形状偏差の演算式において、以下に示す様に形状偏差に許容偏差量dΔεSを設定し、
ΔεS=(Λ2-λ2)X2+(Λ4-λ4)X4
=Δε2X2+Δε4X4
=(Δε’2+dΔε2)X2+(Δε’4+dΔε4)X4
=Δε’2X2+Δε’4X4+dΔε2X2+dΔε4X4
=Δε’S+dΔεS
形状偏差ΔεSが、許容偏差量範囲内に収束したときに、形状制御が完了したと判断するものである。
【0022】
シミュレーションは、開始時に図6(a)に示す予め設定した目標形状と、図6(b)に示す任意の初期形状を与え、形状偏差を零に収束させる操作を繰り返しながら板形状を目標形状に近ずけていったものである。図7に示すように本実施例の場合は、目標形状にほぼ一致する板形状が、第5回の補正後に早くも得られ、第6回目の補正で収束状況にあることがわかる。本シミュレーションから、本発明の形状制御の有効性が検証できた。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の圧延機の形状制御方法によれば、予め同定圧延をし、各形状制御手段の形状変更特性を簡潔な数式で求めるので、複数の形状制御手段に対する複合形状変更特性を算出することができ、実圧延における板形状と目標形状との偏差を零又は許容偏差内に収束させるのに、前記形状変更特性を利用して操作量の変化分を求めることができ、精度良く板形状の制御をすることができる。また、形状変更特性式は、低次項及び高次項ともそれぞれ1項のみの組み合わせで表現するため、操作量の算出を極めて簡易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明を適用して形状制御を行なう6段圧延機の概略図
【図2】
同定圧延を行うときの操作量の変化パターンの例を示す図
【図3】
作業ロールベンダの操作量の変化パターンと、変化前後の板形状と形状変化量の例を示す図
【図4】
作業ロールベンディングの操作変化量と係数変化の関係を示す図
【図5】
図1の6段圧延機でシミュレーションした時の制御系の構成を示すブロック図
【図6】
シミュレーションを行う際に利用した、(a)目標形状を示す図、(b)初期板形状を示す図
【図7】
形状制御のシミュレーション結果を示す図
【符号の説明】
1、2:上下作業ロール、3:圧延材、4、5:中間ロール、6、7:補強ロール、FW:作業ロールベンディング力、FI:中間ロールベンディング力、UCδ:中間ロール位置、8:圧下装置、9:形状検出器、10:ロードセル、12:形状制御演算装置、13a:中間ロールシフト駆動装置、14:中間ロールベンダ、14a:中間ロールベンダ駆動装置、15:作業ロールベンダ、15a:作業ロールベンダ駆動装置、16:圧下駆動装置、17:プリセットデータ、
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-10-07 
出願番号 特願2000-98342(P2000-98342)
審決分類 P 1 651・ 113- YA (B21B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 川真田 秀男
大嶋 洋一
登録日 2003-06-13 
登録番号 特許第3438871号(P3438871)
権利者 日立金属株式会社
発明の名称 圧延機の形状制御方法  
代理人 星野 哲郎  

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