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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41M
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  B41M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B41M
管理番号 1128995
異議申立番号 異議2003-73642  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2006-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2006-01-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第3428021号「4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン顕色用組成物,湿式粉砕方法及び分散液」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3428021号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯・本件発明 本件は、1994年12月26日(優先権主張1993年12月27日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成15年5月16日にその発明について特許の設定登録がなされた。
本件特許第3428021号の請求項1ないし12に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された以下のとおりものものである。
「【請求項1】4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン100重量部に対して、一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体から選ばれた1種または2種以上の化合物の0.1重量部以上5重量部以下を含有することを特徴とする顕色用組成物。
【化1】

(式中、R1は水素原子またはイソプロピル基を示し、R2及びR3はそれぞれ独立にイソプロピル基を、n及びmは0,1又は2を表す。但し、n及びmが同時に0であることはない。)
【請求項2】4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン100重量部に対して、一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体から選ばれた1種または2種以上の化合物の0.1重量部以上5重量部以下を含有する分散媒体を湿式粉砕して顕色剤分散液とすることを特徴とする4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの水和化防止方法。
【化2】

(式中、R1は水素原子またはイソプロピル基を示し、R2及びR3はそれぞれ独立にイソプロピル基を、n及びmは0,1又は2を表す。但し、n及びmが同時に0であることはない。)
【請求項3】4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン100重量部に対して、一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体から選ばれた1種または2種以上の化合物の0.1重量部以上5重量部以下の存在下に4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンを湿式粉砕することを特徴とする4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの水和化が防止される湿式粉砕方法。
【化3】

(式中、R1は水素原子またはイソプロピル基を示し、R2及びR3はそれぞれ独立にイソプロピル基を、n及びmは0,1又は2を表す。但し、n及びmが同時に0であることはない。)
【請求項4】一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体から選ばれた1種または2種以上の化合物の0.1重量部以上1.0重量部以下の存在下に、湿式粉砕することを特徴とする請求項3記載の4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの水和化が防止される湿式粉砕方法。
【請求項5】 請求項1記載の顕色用組成物を湿式粉砕することを特徴とす
る4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの湿式粉砕方法。
【請求項6】請求項1記載の顕色用組成物が水に分散した顕色剤分散液。
【請求項7】4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン100重量部に対して、一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体から選ばれた1種または2種以上の化合物を添加して0.05重量部以上5重量部以下含有させることを特徴とする顕色用組成物。
【化4】

(式中、R1は水素原子またはイソプロピル基を示し、R2及びR3はそれぞれ独立にイソプロピル基を、n及びmは0,1又は2を表す。但し、n及びmが同時に0であることはない。)
【請求項8】4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン
100重量部に対して、一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体から選ばれた1種または2種以上の化合物の0.05重量部以上5重量部以下を添加して含有させた分散媒体を湿式粉砕して顕色剤分散液とすることを特徴とする4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの水和化防止方法。
【化5】

(式中、R1は水素原子またはイソプロピル基を示し、R2及びR3はそれぞれ独立にイソプロピル基を、n及びmは0,1又は2を表す。但し、n及びmが同時に0であることはない。)
【請求項9】 4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン
100重量部に対して、一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体から選ばれた1種または2種以上の化合物を添加して0.05重量部以上5重量部以下存在させ、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンを湿式粉砕することを特徴とする4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの水和化が防止される湿式粉砕方法。
【化6】

(式中、R1は水素原子またはイソプロピル基を示し、R2及びR3はそれぞれ独立にイソプロピル基を、n及びmは0,1又は2を表す。但し、n及びmが同時に0であることはない。)
【請求項10】一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体から選
ばれた1種または2種以上の化合物を添加して0.05重量部以上1.0重量部以下存在させ、湿式粉砕することを特徴とする請求項9記載の4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの水和化が防止される湿式粉砕方法。
【請求項11】請求項7記載の顕色用組成物を湿式粉砕することを特徴とする4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの湿式粉砕方法。
【請求項12】請求項7記載の顕色用組成物が水に分散した顕色剤分散液。
2.申立理由および取消理由の概要
(1)特許異議申立人は、下記甲第1号証ないし甲第6号証を提出して、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第1項第3号に該当し、また本件請求項1ないし12に係る特許は特許法第29条第2項の規定により特許を取り消すべきものである旨を主張している。
また、本件明細書の記載は特許法第36条第4項に違反していると主張し、さらに、本件の特許請求の範囲の記載が発明の構成として不要の構成を含んでいるので、特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載するという第36条第5項第2号の規定に違反し、本件特許を取り消すべき旨を主張している。

・甲第1号証;特開平5-255234号公報
・甲第2号証;特開平1-237191号公報
・甲第3号証;特開平5-162455号公報
・甲第4号証;特開平5-309949号公報
・甲第5号証;特開平2-76779号公報
・甲第6号証;特開平4-148982号公報

(2)取消理由の概要
平成17年5月31日付けで通知した取消理由は、本件請求項1に係る発明は、申立人が提出した甲第1号証(刊行物1)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、また本件請求項2ないし6は、申立人が提出した甲第1号証ないし甲第5号証(刊行物1ないし刊行物5)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3.特許異議申立人提出の証拠に記載された発明および取消理由で引用された本件の優先日前に頒布された刊行物に記載された発明
・甲第1号証(取消理由で引用された刊行物1);特開平5-255234号公報
甲第1号証には以下の事項が記載されている。
(1a)「4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンとアルキルハライド
を反応させて4-アルコキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホンを製造する方法において、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンを溶解したアルカリ性物質の水溶液及び非水混和性有機溶媒との2相溶媒系に、アルキルハライドを添加し、アルカリ性物質を添加してpHを7.5〜9.5に保持することを特徴とする4-アルコキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。(【請求項1】)
(1b)「本発明は感熱記録材料の顕色剤として有用な4-アルコキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法である。」(【0001】)
(1c)実施例1として、
「水190mlに水酸化ナトリウム12.8g(0.32モル)を溶解し、〜さらにトルエン層を冷却して結晶を析出させ、4-イソプロポキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン、融点129〜131℃の白色結晶42.5gを得た。液体液体クロマトグラフィーで純度を測定したところ、99.0%で、副生物を殆ど含まないものであり、4,4’-ジヒドロキシジフェ
ニルスルホンからの収率は72%と高いものであった。」(【0011】)
・甲第2号証(取消理由で引用された刊行物2);特開平1-237191号公報
甲第2号証には、特許請求の範囲に、感熱記録体の呈色剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースで分散されたジフェニルスルホン化合物を使用する発明が記載され、第3頁左下欄下から2行目〜右上欄第3行目、および第4頁左下欄第2行目〜第4行目に、呈色剤は、水を分散媒体としてボールミル等で湿式粉砕することが記載されている。
・甲第3号証(取消理由で引用された刊行物3);特開平5-162455号公報
甲第3号証には、特許請求の範囲に、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンをヒドロキシプロピルセルロースを含有する水溶液中で湿式粉砕することが記載されている。
・甲第4号証(取消理由で引用された刊行物4);特開平5-309949号公報
甲第4号証には、特許請求の範囲に、分散微粒子化された4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンを含有する感熱記録紙が記載され、【0031】には顕色剤分散液Bの調製において、組成物を水中でサンドグライダーで粉砕することが記載され、さらに【0009】には該刊行物4の分散微粒子化工程において水和物の生成を防止できることが記載されている。
・甲第5号証(取消理由で引用された刊行物5);特開平2-76779号公報
甲第5号証には、特許請求の範囲に、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン100重量部に対して、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン0.03重量部以上を含有する顕色用組成物が記載され、第2頁左上欄第7行〜第19行には、発明の目的として、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンを調製された分散液の状態で保存した場合、或いは、その分散液調製のための湿式粉砕中に結晶成長が生じることを防止することが記載されている。
・甲第6号証;特開平4-148982号公報
甲第6号証には、特許請求の範囲に、一般式(I)で示されるジフェニルスルホンを呈色剤として用いる感熱記録紙が記載され、第3頁左上欄第10行〜左下欄第19行には、該一般式(I)で示されるジフェニルスルホンの具体例が例示されており、該例示の中に本願の請求項1に記載の一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体が記載されている。
4.対比・判断
(4-1)甲第1号証に記載された発明(以下、「甲第1号証発明」という。)
前記3.の(1a)〜(1c)の記載からみて、甲第1号証には、純度が99.0%である4-イソプロポキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホンを含有する顕色用組成物が記載されている。
(4-2)特許法第29条第1項第3号違反について
本件請求項1に係る発明(以下、「本件請求項1発明」という。)と甲第1号証発明とを対比する。
本件明細書の【0012】には「4-4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンとイソプロピルブロマイドとを反応させて4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンを合成する場合は、一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体が副生する場合があるので、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン中に副生した一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体をそのまま存在させて使用し、又、補助的に(副生量が少なく効果が十分でない場合は新たに添加して)使用することもできる。又更に、一般式(I)で表されるジフェニルスルホン誘導体が複数種副生する場合もあり、その場合も同様に使用できる。」と記載されている。 この記載によれば、本件請求項1発明には、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン100重量部に対して、0.1重量部以上5重量部以下の範囲で含有される一般式(I)で表される化合物中には、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンを合成する際に生じる副生物として、最初から存在する化合物も含まれていると解釈される。
ここで、甲第1号証における実施例1で得られた純度99.0%の4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン(前記(1c)を参照)には、1%の不純物が含有されると認められるが、該不純物中には、副生物として生成する本件請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物以外にも、例えば原料である4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンや、他の副生物である4,4’-ジイソプロポキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3-イソプロピルジフェニルスルホンといった複数種の不純物が存在していると認められる(平成17年8月9日付け提出の特許異議意見書に添付された実験成績証明書を参照。)。
してみると、該実施例1で得られた4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンが、上記複数種存在する不純物の中の一つである本件請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物を、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン100重量部に対して0.1重量部以上1重量部以下の範囲で含有しているとすることはできない。
よって、甲第1号証には、本件請求項1発明が記載されているとは言えず、本件請求項1発明は甲第1号証発明であるとすることはできない。
(4-3)特許法第29条第2項違反について
(1)本件請求項1発明について
前記甲第1ないし第6号証刊行物には、呈色剤として4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンを用いる顕色用組成物において、水和化を防止するために、本件請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物を含有させるという課題が記載も示唆もされておらず、しかも該課題は当該技術分野において自明な事項でもないので、該一般式(I)で表される化合物を、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン100重量部に対して0.1重量部以上1重量部以下の範囲で含有することは、甲第1ないし第6号証刊行物の記載からみて、当業者が容易になし得た事項であるとは認められない。
そして、本件請求項1発明の構成をとることによって、本件明細書【0021】に記載のように、水和化を起こすことなく4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンを充分に湿式粉砕することができ、調製された分散液中でも水和化が起こらないので、微粒子の4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン分散液を容易に得ることができることにより、高感度で地肌汚れのない記録紙を製造することができるという、甲第1ないし第6号証刊行物のいずれにも記載も示唆もされていない、顕著な効果を奏するものと認められる。
よって、本件請求項1発明は、甲第1ないし第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(2)本件請求項5および請求項6に係る発明について
本件請求項5および請求項6に係る発明は前記請求項1に係る発明を更に限定する発明であるので、前記本件請求項1発明についての判断と同様の理由により、本件請求項5および請求項6に係る発明は、甲第1ないし第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(3)本件請求項2ないし4に係る発明について
本件請求項2ないし4に係る発明は、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン100重量部に対して一般式(I)で表される化合物を0.1重量部以上5重量部以下の範囲、あるいは0.1重量部以上1.0重量部以下の範囲で含有する分散媒体を使用する、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの水和化防止方法、あるいは水和化が防止される湿式粉砕方法であるところ、該一般式(I)で表される化合物を4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンに対して一定範囲の量で含有させることは、前記(4-3)の(1)で判断したとおり、甲第1ないし第6号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
したがって、本件請求項2ないし4に係る発明は、甲第1ないし第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(4)本件請求項7ないし12に係る発明について
本件請求項7ないし12に係る発明の主要な構成要件である「4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン100重量部に対して、一般式(I)で表される化合物を添加して0.05重量部以上5重量部以下含有させる」点は、甲第1ないし第6号証には記載も示唆もされていないことから、本件請求項7ないし12に係る発明は、甲第1ないし第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(4-4)特許法第36条第4項および第36条第5項第2号違反について
異議申立人が主張する本件明細書の不備は、以下のようなものである。
ア.本件明細書の実施例1で用いる4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの純度が記載されていない点は、特許法第36条第4項に違反している。
イ.本件請求項1ないし6に係る発明について、顕色用組成物の作成に用いる4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンが、一般式(I)で示される化合物を、不純物として最初からその100重量部に対して、0.1重量部以上5重量部以下の範囲で含有している場合は、公知技術と一致しており、この場合も特許請求の範囲に含めることは、特許請求の範囲の記載が発明の構成として不要の構成を含むことになるので、特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載するという第36条第5項第2号の規定に違反している。
上記ア.について、実施例において、用いる化合物の純度が記載されていない場合は、通常純品として市販されている試薬を用いているものと解釈されるので、本件明細書の実施例1に4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンの純度が記載されていなくても、本件明細書が当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されていないとはいえず、本件特許は特許法第36条第4項に違反しているとはいえない。 また、上記イ.について、異議申立書の「(7)第36条第5項2号違反」において申立人は、「99.9%の純度は、通常の試薬では純品として扱われます。従って、単に4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンと記載しただけでは、0.1重量%以下の不純物含有量を示していません。」と主張しているが、前記「(4-2)特許法第29条第1項第3号違反について」の項目で記載したように、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホンを合成した際の不純物は複数種存在しているので、通常純品として扱われる99.9%の純度の4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン中に存在している、本件請求項1の一般式(I)で表される化合物の含有量は、0.1重量%未満であると認められることから、申立人による「公知技術と一致しており」との主張は認められず、本件の特許請求の範囲の記載が、第36条第5項第2号に違反しているとはいえない。
5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明を取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-12-20 
出願番号 特願平7-517909
審決分類 P 1 651・ 531- Y (B41M)
P 1 651・ 113- Y (B41M)
P 1 651・ 121- Y (B41M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 裕美  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 前田 佳与子
秋月 美紀子
登録日 2003-05-16 
登録番号 特許第3428021号(P3428021)
権利者 日本曹達株式会社
発明の名称 4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン顕色用組成物,湿式粉砕方法及び分散液  
代理人 廣田 雅紀  

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