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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G03G
管理番号 1129499
審判番号 無効2005-80078  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-20 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-03-16 
確定日 2005-11-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3472043号発明「像加熱装置および画像形成装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3472043号の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
出願 平成 8年8月 1日
(特願平8-203654号)
設定登録 平成15年9月12日
(特許第3472043号)
審判請求 審判請求人:井上 潤 平成17年3月16日
(無効2005-80078号)
答弁書、訂正請求書 平成17年6月 3日
弁駁書 平成17年7月 8日
口頭審理 平成17年8月 5日
(審理において訂正拒絶理由を通知)
手続補正書 平成17年8月 8日
無効理由通知書、職権審理通知書 平成17年8月 9日
訂正取下書、訂正請求書、意見書 平成17年8月26日
弁駁書 平成17年9月 5日

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
平成17年8月26日付けの訂正請求書による訂正請求は、明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。

(1)【請求項1】に「硫黄の含有率0.04wt%以下のニッケル金属層」とあるのを、「硫黄の含有率0.04wt%以下の、電鋳法によるニッケルフィルムと、」と訂正する。

(2)【請求項2】に「一層は導電性樹脂層であることを」とあるのを、「一層は導電性樹脂層であり、誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを」と訂正する。

(3)【請求項3】に「樹脂層が導電性樹脂層と、」とあるのを「樹脂層がニッケルフィルム側の導電性樹脂層と、」と訂正する。

(4)【請求項3】に「絶縁層とからなることを」とあるのを「絶縁層とからなり、誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを」と訂正する。

(5)【請求項6】に「以上のニッケル金属層と、」とあるのを「以上の、電鋳法によるニツケルフィルムと、」と訂正する。

(6)【0013】に「【課題を解決するための手段】
本出願に係る第1の発明は、トナー像を担持した記録材を、回転加圧部材と曲率可変の円筒フィルムとで形成される像加熱ニップを通過させることにより永久画像ならしめる画像形成装置において、該円筒フィルムが、硫黄の含有率0.04wt%以下のニッケル金属層と、これを被覆する樹脂層とを有し、曲率半径が12mm以下の部分が存在するように懸架されていることを特徴とする像加熱装置である。」とあるのを、
「【課題を解決するための手段】
本出願に係る第1の発明は、トナー像を担持した記録材を、回転加圧部材と曲率可変の円筒フィルムとで形成される像加熱ニップを通過させることにより永久画像ならしめる画像形成装置において、該円筒フィルムが、硫黄の含有率0.04wt%以下の、電鋳法によるニッケルフィルムと、これを被覆する樹脂層とを有し、曲率半径が12mm以下の部分が存在するように懸架されていることを特徴とする像加熱装置である。」と訂正する。

(7)【0015】に「本出願に係る第2の発明は、回転加圧部材とともに像加熱ニップを形成する曲率可変の円筒フィルムを用いる像加熱装置であって、上記円筒フィルムはマンガンの含有率が0.2wt%以上のニッケルからなる金属層と、これを被覆する樹脂層とを有することを特徴とするものである。」とあるのを、「本出願に係る第2の発明は、回転加圧部材とともに像加熱ニップを形成する曲率可変の円筒フィルムを用いる像加熱装置であって、上記円筒フィルムはマンガンの含有率が0.2wt%以上の、電鋳法によるニッケルフィルムと、これを被覆する樹脂層とを有することを特徴とするものである。」と訂正する。

(8)【0017】に「本出願に係る第3の発明は、像加熱装置に用いる、円筒フィルムは磁性金属層と、これを被覆する単層又は、複数層の樹脂層とを有し、樹脂層のうち少なくとも一層は導電性樹脂層であることを特徴とするものである。」とあるのを、「本出願に係る第3の発明は、像加熱装置に用いる、円筒フィルムは磁性金属層と、これを被覆する単層又は、複数層の樹脂層とを有し、樹脂層のうち少なくとも一層は導電性樹脂層であり、誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを特徴とするものである。」
と訂正する。

(9)【0021】に「また、本出願に係る第6の発明は、第3の発明において、樹脂層は導電性樹脂層と、これを被覆する絶縁層とからなることを特徴とするものである。」とあるのを、「また、本出願に係る第6の発明は、第3の発明において、樹脂層はニッケルフィルム側の導電性樹脂層と、これを被覆する絶縁層とからなり、誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを特徴とするものである。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(1)の訂正は、請求項1における「ニッケル金属層」を「電鋳法によるニッケルフィルム」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。上記(2)の訂正は、請求項2における円筒フィルムの発熱方法を「誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させる」ことに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。上記(3)の訂正は、請求項3における樹脂層内の導電性樹脂層の配置を「ニッケルフィルム側」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。上記(4)の訂正は、請求項3における円筒フィルムの発熱方法を「誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させる」ことに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。上記(5)の訂正は、請求項6における「ニッケル金属層」を「電鋳法によるニッケルフィルム」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして、上記(1)及び(5)の訂正は特許明細書の【0034】に記載されている事項に基づくものである。上記(2)及び(4)の訂正は特許明細書の【0033】に記載されている事項に基づくものである。上記(3)の訂正は特許明細書の【0043】及び【0058】に記載されている事項に基づくものである。したがって、これらの訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正である。
さらに、(1)ないし(5)の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

また、上記(6)ないし(9)の訂正は、(1)ないし(5)の訂正による特許請求の範囲の訂正によって生じる、特許明細書の発明の詳細な説明と特許請求の範囲との齟齬を解消しようとするもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、上記(1)ないし(5)の訂正と同じく願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.訂正請求の適否についての結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き各号に列挙された事項を目的としており、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、訂正を認める。

第3 本件発明
特許第3472043号の請求項1ないし7に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】トナー像を担持した記録材を、回転加圧部材と曲率可変の円筒フィルムとで形成される像加熱ニップを通過させることにより永久画像ならしめる画像形成装置において、該円筒フィルムが、硫黄の含有率0.04wt%以下の、電鋳法によるニッケルフィルムと、これを被覆する樹脂層とを有し、曲率半径が12mm以下の部分が存在するように懸架されていることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】上記円筒フィルムの樹脂層が単層又は、複数層の樹脂層であり、樹脂層のうち少なくとも一層は導電性樹脂層であり、誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを特徴とする請求項1記載の像加熱装置。
【請求項3】上記円筒フィルムの樹脂層がニッケルフィルム側の導電性樹脂層と、これを被覆する絶縁層とからなり、誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを特徴とする請求項2記載の像加熱装置。
【請求項4】導電性樹脂層が磁性体を分散含有することを特徴とする請求項2記載の像加熱装置。
【請求項5】誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを特徴とする請求項1記載の像加熱装置。
【請求項6】回転加圧部材とともに像加熱ニップを形成する曲率可変の円筒フィルムであって、マンガンの含有率が0.2wt%以上の、電鋳法によるニツケルフィルムと、これを被覆する樹脂層とを有する円筒フィルムを、誘導加熱により発熱させることを特徴とする像加熱装置。
【請求項7】記録材上にトナー像を形成し、このトナー像を担持した記録材を定着装置を通過させることにより永久画像ならしめる画像形成装置であって、上記定着装置として請求項6記載の像加熱装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。」

第4 審判請求人の主張
審判請求人は、本件特許の請求項1ないし7に係る発明を無効にする、との審決を求め、その理由として、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、これらの特許は無効にされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証(特開平3-35277号公報)、甲第2号証(特開平8-137308号公報)及び甲第3号証(丸山 清、毛利秀明「機能めっき」、初版第3刷、日刊工業新聞社、昭和62年6月30日、P.28-31)を提出している。

第5 被請求人の主張
一方、被請求人は、本件発明1ないし7は、いずれも甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明からは容易に着想することができない特異な構成を有し、しかも、それに基づく顕著な作用効果を奏するものであるから、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める旨主張している。

第6 当審で通知した無効理由の概要
当審において通知した平成17年8月9日付けの職権審理による無効理由の概要は、以下のとおりである。

本件の請求項1ないし7に係る発明は、本件出願の前に頒布された下記の刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1ないし7に係る発明は、同条同項の規定に違反して特許されたものであり、よって、本件の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号により無効にすべきものである。


刊行物1:特開平3-35277号公報(甲第1号証)
刊行物2:丸山 清、毛利秀明「機能めっき」、初版第3刷、
日刊工業新聞社、昭和62年6月30日、
P.28-31(甲第3号証)
刊行物3:特開平7-48691号公報
刊行物4:特開平8-137308号公報(甲第2号証)
刊行物5:特開平8-76620号公報
刊行物6:特開平7-210019号公報
刊行物7:特開平4-120433号公報

第7 刊行物の記載事項
1.刊行物1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)公報第1頁左下欄第5ないし13行目
「加熱体と、この加熱体と接しトナー像を支持する支持材と共に移動するフイルムと、を有し、このフイルムを介してトナー像を溶融する定着装置において、
上記フイルムと上記支持材の分離で、フイルムの屈曲時の曲率半径が8mm以下であり、かつ、フイルムの屈曲方向が分離点までのフイルムの進行方向に対し、角度で15度以上であることを特徴とする定着装置。」

(2)公報第1頁左下欄第16及び17行目
「本発明はフイルムを介してトナー像を溶融して定着を行う定着装置に関する。」

(3)公報第1頁左下欄第19及び20行目
「複写機、光プリンタ等の画像形成装置に用いられる定着装置としては、」

(4)公報第2頁右下欄第10ないし16行目
「(2)定着装置11(第1図,第2図)
24はエンドレスベルト状の定着フイルムであり、左側の駆動ローラ25と、右側の従動ローラ26と、駆動ローラ25と従動ローラ26間の下方に配置した加熱体としての低熱容量線状加熱体20の互いに並行な該4部材25・26・27・20間に懸回張設してある。」

(5)公報第3頁左上欄第6ないし11行
「28は加圧部材としての、シリコンゴム等の離型性の良いゴム弾性層を有する加圧ローラであり、前記エンドレスベルト状定着フイルム24の下行側フイルム部分を挟ませて前記加熱体20の下面に対し不図示の付勢手段により例えば総圧4〜7Kgの当圧接をもって対向圧接させてあり」

(6)公報第3頁左下欄10行目ないし右下欄3行目
「未定着のトナー画像Taを上面に担持した転写材シートPは…加熱体20と加圧ローラ28との圧接部Nの定着フイルム24と加圧ローラ28との間に進入して、…挟圧力を受けつつ通過していく。
…、トナー画像Taは圧接部Nにおいて加熱を受けて軟化・溶融像Tbとなる。」

(7)公報第4頁左上欄第10行目ないし右上欄第3行目
「定着フイルム24は…単層或いは複合層フイルムを使用できる。
第4図は複合層フイルムの一例の層構成断面模式図であり、24aは定着フイルムの基層(ベースフイルム)としての耐熱層、24bは該耐熱層24aの外面(トナー画像に対面する側の面)に積層した離型層である。
耐熱層24aは…、Ni,…など、強度・耐熱性に優れたものが使用できる。」

(8)公報第4頁右上欄第4ないし6行目
「離型層24bは例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)・PFA・FEP等のフッ素樹脂や、シリコン樹脂などが好ましい。」

(9)公報第4頁右上欄第12行目ないし左下欄1行目
「離型層24bにカーボンブラツク,グラフアイト、導電性ウイスカ等の導電剤を混入する等の方法により、定着フイルム24の表面の抵抗値を下げてもよい。その場合、定着フイルム24のトナー当接面の帯電を防止でき…いわゆる帯電オフセット…が回避できる。」

以上の記載からみて、刊行物1には以下に示す発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「トナー像を担持した転写材シートを、発熱体により加熱されたエンドレスベルト状の定着フィルムと加圧ローラとで形成される圧接部を通過させることにより定着を行う画像形成装置において、該定着フィルムが、ニッケルフィルムと、これを被覆し、導電剤を混入した樹脂からなることでオフセットを回避する離型層とを有し、定着フイルムの屈曲時の曲率半径が8mm以下である部分が存在するように懸回張設してある定着装置及び前記定着装置を用いた画像形成装置。」

2.刊行物2には、以下の事項が記載されている。

(1)第28頁第7行目ないし第29頁第8行目
「Niメッキの一次光沢剤や、応力減少剤として、Niメッキ液に添加される有機物は、サッカリンやナフタリンスルフォン酸ソーダを代表として、硫黄を含んでいる。このような添加剤を使うと、Niメッキ皮膜にSが0.0n%程度共析することはよく知られている。…。ところが、約200℃以上に加熱すると、このような皮膜が脆くなって、曲げると割れたり、ひびが入ったりする現象が起こる。
この現象は硫黄ぜい性といわれる」

(2)第30頁第7行目ないし第31頁第4行目
「これを防ぐには、めっき液にスルファミン酸マンガンをMnとして20g/L程度添加して、Mnとの合金めっきをすると、Ni内に0.0n〜0.2%程度のMnが共析する。0.2%程度のMnとNiは…固溶体をつくって溶け合うので、加熱してもSのようにNiの結晶中から追い出されることはない。このMnとSとは結合しやすい性質があるので、Sは加熱しても追い出されないで、Niの結晶中にMnと結合して存在するようになり、硫黄ぜい性を防げる」(文献中、リットルの単位表示を「L」に置き換えた。)

3.刊行物3には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)【0005】ないし【0008】
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の電鋳スリーブ等の無端状部材にあっては、電鋳スリーブを電鋳マスターから抜き易くするためにサッカリンナトリウム等の光沢剤を加えていたため、スリーブの変形を伴う使用を繰り返したときにその耐久性が非常に悪化してしまうという問題があった。
【0006】すなわち、サッカリンナトリウム等の光沢剤を加えた場合には、スリーブを電鋳マスターから容易に抜き取ることができるが、その反面で光沢剤の影響を受けて電鋳マスター表面粗さを平滑化しようとする作用が同時に起こり、スリーブ表面に必要な粗さよりも電鋳マスター表面を粗くしなければならない。具体的には、スリーブの裏面よりも表面の方向が表面粗さRz0、1〜0、5μm程度細かく、光沢および平滑性を有したものとなる。
【0007】そして、この傾向は電鋳マスターの径がφ40mm以下となる場合には、電鋳マスターからスリーブを容易に引き抜くためにマスターとスリーブの間のクリアランスをマスターの真直度を0とした場合に10μm以上確保する必要があるため、より圧縮応力を強くする方向になり、光沢剤の添加量をより一層増加させなければならない。
【0008】このため、電析する膜中にはイオウが多く含まれるようになり、スリーブとしての膜硬度が高くなってしまい、全体的に脆くなってしまう。この結果、スリーブの変形を伴う使用を繰り返した場合に、その耐久性が非常に悪化してしまい、有機感光体の基体やトナー搬送用のベルト等に用いられた場合にその機能を充分に発揮することができないという問題があった。」

4.刊行物4には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)【0001】及び【0002】
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、磁気(電磁)誘導加熱方式の加熱装置、より詳しくは、コア側周にコイルを設けた励磁コイル(交番磁場発生手段)のコアの一方側の磁極面と対向部材とを直接もしくは介在部材を挟ませて圧接させてニップ部を形成させ、励磁コイルに交番磁場を生じさせ、ニップ部に被加熱材を導入して挟持搬送させることで磁気誘導加熱方式で被加熱材を加熱する構成の加熱装置に関するものである。
【0002】また該加熱装置を画像加熱定着装置として用いた画像形成装置(画像記録装置)に関するものである。」

(2)【0045】及び【0046】
「【0045】本実施例における加熱装置としての画像加熱定着装置13は図2に概略構成模型図(装置側面図)を示したように、導電層(発熱層)1を具備させた円筒状(エンドレスベルト状)の定着フィルム15を用いたフィルム加熱方式・磁気誘導加熱方式の装置である。
【0046】円筒状の定着フィルム15は、フィルム内面ガイド部材を兼ねる前後一対の並行ステー30・30と、そのステー30・30間に配設した交番磁場発生手段としての、高透磁率コア(磁束発生コア)17とその側周に巻つけたコイル18からなる励磁コイル31と、この励磁コイル31のコア17の下面側(一方側の磁極面)に配置したフィルム加圧板19と、励磁コイル31のコア17の上面側(他方側の磁極面)に配置した剛性押え部材25とからなるアセンブリにルーズに外嵌させてある。32はコイル18に接続した励磁回路(磁気回路)である。ステー30・30は励磁コイル31を支持する働きも持つ。ステー30・30、剛性押え部材25、フィルム加圧板19は、磁場の作用で磁気誘導発熱を生じない材質材、例えば非磁性金属材や非金属材料、あるいは構造体で構成してある。」

(3)【0052】
「【0052】上記円筒状の定着フィルム15は本例のものは、基層となる金属フィルム等でできた導電層1と、その外周面と内周面とを被覆させた樹脂層2a・2bからなる。導電層1は、より好ましくはニッケル、鉄、ステンレスといった強磁性体の金属を用いるとよい。外周面被覆層(離型層)2aは、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性かつ耐熱性の良い耐熱樹脂層である。内周面被覆層2bは、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、PPS樹脂、PEEK樹脂、液晶ポリマー、フェノール樹脂等の耐熱樹脂層である。」

(4)【0078】
「【0078】この具体例として、定着フィルム15の導電層1として、内径24mm・肉厚30ミクロン・長さ230mmのニッケル電鋳スリーブを使用した。」

5.刊行物5には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)【請求項1】及び【請求項3】
「【請求項1】磁場発生手段により導電発熱部材に磁場を作用させて該導電発熱部材の導電発熱層に発生する渦電流による発熱で該導電発熱部材に密着させた被加熱材を加熱する電磁加熱方式の加熱装置であり、導電発熱部材が弾性層を有することを特徴とする加熱装置。

【請求項3】 導電発熱部材の弾性層中や表層中に導電性・高透磁率な粒子やウイスカーを分散させることにより該弾性層や表層を導電発熱層として機能させたことを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。」

(2)【0033】ないし【0037】
「【0033】而して、発熱ベルト1が回転駆動され、後述するように磁場発生アセンブリ4から磁場が発生することで、その磁場が定着ニップ部Nにおいて回転発熱ベルト1に作用して後述するように発熱ベルト1の導電発熱層部分が電磁誘導発熱する。この状態において定着ニップ部Nの回転発熱ベルト1と加圧ローラ5との間に被加熱材としての被記録材Pが導入され発熱ベルト1の外面に密着して回転発熱ベルト1と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されることにより、発熱ベルト1の導電発熱層の熱が被記録材Pに付与され被記録材P上の未定着トナー像Tが被記録材P面に加熱定着されるものである。定着ニップ部Nを通った被記録材Pは発熱ベルト1の外面から曲率分離されて搬送される。
【0034】(2)発熱ベルト1(導電発熱部材)
本例の導電発熱部材としての発熱ベルト1は図2にその層構成模型図を示したように、エンドレスベルトの内側から外側の順に、基層6、弾性層7、導電発熱層8、表層(最外層、離形層)9の4層構成からなる。
【0035】基層6は、発熱ベルト1の駆動・搬送の安定性を確保するために柔軟性はあるが伸縮しない耐熱性材料層であり、例えば、厚さ10μm〜60μmのポリイミド・ポリアミドイミド・PEEK・PES・PPS・PFA・PTFE・FEP等のフィルム材料である。
【0036】弾性層7は、例えば、シリコーンゴム等の弾性・耐熱性・断熱性のよいゴム材料等の厚さ0.1〜3mmの層である。
【0037】導電発熱層8は、Fe,Coや、例えばNi,Cu,Cr等の金属を1μm〜50μmの厚みでメッキ等の処理によって形成した層である。本発明をより有効にするためにはNi等をメッキ処理により数μmの厚さで形成するのが発熱能力、発熱ベルト1の硬度の点から最適である。」

(3)【0055】
「【0055】また表層に、粒子を分散させると離形性が悪くなることが有るので、弾性層と離形層を接着する際の接着剤に上記の粒子やウィスカー分散させることもできる。」

6.刊行物6には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)【0052】ないし【0055】
「【0052】フィルム7の構成を図3に示す。フィルム7は4層構成をとっている。
【0053】フィルム7の記録材24上の未定着トナー画像と接する面には、離型層35が設けてあり、本実施例では、約20μm厚のPTEE、PFA等のフッ素樹脂を弾性層32上にコートしている。弾性層32は約100〜200μm厚のシリコンゴムを使用している。33は導電層であり、本実施例では、約50μm厚のNiの電鋳ベルトを用いている。
【0054】34は絶縁層であり、ローラ19等から電荷が逃げるのを防止している。
【0055】図1において、16は変調磁場発生手段であり、変調磁場発生手段により発生した変調磁場により、導電層33にうず電流が発生し、このうず電流によるジュール熱で、導電層が発熱する。発生した熱は離型層を通して、記録材24及び未定着トナー画像に伝わり、ニップ部において熱と圧力を受けることにより、記録材24上に定着される。」

7.刊行物7には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)公報第2頁左上欄第14行目ないし左下欄4行目
「上記の歪み検出器は、磁歪層にニッケルを主成分とするメッキ膜を用いているが、メッキ膜はメッキ工程において不純物を取り込み易く、特に電着応力緩和剤などから硫黄が微量混入する。…、例えば技術文献の川崎製鉄、14巻4号、12頁(1982年発行)に示されているように、熱処理により不純物の硫黄がニッケルと硫化物を形成し、さらに結晶粒界に硫化物が偏析してメッキ膜が脆化するので、受動部材にトルクが印加されると磁歪糟に微小クラックが発生し、第5図に示すような検出コイルの出力特性にヒステリシスが生じるという問題点があった。
この発明は上記のような問題を解決するために成されたもので機械的及び熱的に安定で…を得ることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
この発明にかかつ歪み検出器は、外力を受ける受動部材と、上記受動部材の表面に形成され、ニッケル及びニッケルより硫黄と反応し易い金属と不純物の硫黄が反応してできた1種類以上の金属磁化物を含む磁性材料からなる磁歪層と、…を備えたものである。ここでニッケルより硫黄と反応し易い金属としては、マンガン…が、単独あるいは混合して用いられる。」

(2)公報第2頁右下欄第6ないし14行目
「受動部材(1)上に…メッキ膜を得る。…。このようにして形成されたメッキ膜は、ニッケル約89重量%、鉄約9重量%、マンガン約2重量%さらに微量不純物として硫黄を約0.06%含んでいる。このメッキ膜を、真空中400℃1時間熱処理して磁歪層(2)を得た。」

(3)公報第3頁左上欄第3ないし8行目
「受動部材上に…メッキ膜を得る。このメッキ層の組成は、ニッケル約90重量%、鉄約10重量%さらに微量不純物として硫黄を約0.06%含んでいる。このメッキ膜を、真空中400℃1時間熱処理して比較用磁歪層を得た。」

(4)公報第3頁左上欄第17行目ないし右上欄第2行目
「比較用のメッキ膜は200℃以上の熱処理で脆化し、降上応力が極めて小さいが、この発明によるメッキ膜は熱処理温度に依存せず熱的に安定で、降上応力も…非常に高く安定した機械的特性を示している。」

第8 当審の判断
1.本件発明1に対して
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「転写材シート」、「加圧ローラ」、「圧接部」及び「定着装置」は、本件発明1における「記録材」、「回転加圧部材」、「像加熱ニップ」及び「像加熱装置」に相当する。
引用発明における「離型層」は、ニッケルフィルムを被覆する樹脂層であるから、本件発明1における「樹脂層」に相当する。
引用発明における「定着フィルム」は、エンドレスベルト状すなわち円筒状の形状であり、かつ、曲率可変なものであるから、本件発明1における「円筒フィルム」に相当する。

したがって、両者は
「トナー像を担持した記録材を、回転加圧部材と曲率可変の円筒フィルムとで形成される像加熱ニップを通過させることにより永久画像ならしめる画像形成装置において、該円筒フィルムが、ニッケルフィルムと、これを被覆する樹脂層とを有し、曲率半径が12mm以下の部分が存在するように懸架されている像加熱装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:本件発明1におけるニッケルフィルムは電鋳法によるものであるのに対して、引用発明ではニッケルフィルムの製造方法については規定していない点。
相違点2:本件発明1におけるニッケルフィルムは硫黄の含有率が0.04wt%以下と規定されているのに対して、引用発明ではニッケルフィルムにおける硫黄の含有率については規定していない点。

(2)相違点についての判断
ア.相違点1について
刊行物4(摘記事項(4)の【0078】)、刊行物5(摘記事項(2)の【0037】)及び刊行物6(摘記事項(1)の【0053】)に記載されているように、画像形成装置の定着に用いられる誘導加熱方式の像加熱装置に使用されるニッケルフィルムにおいて、電鋳法で製造することは、本件の出願前に当業者に周知の技術事項にすぎない。
してみれば、刊行物1に明記されていなくても、引用発明におけるニッケルフィルムも当然に電鋳法により製造されたものであるといえ、また、仮にそうでないとしても、当業者であれば、引用発明に記載された画像形成装置の像加熱装置において、そのニッケルフィルムを電鋳法で製造されたものと特定することは、格別な創意を要することなく容易になし得ることである。

この点について、被請求人は、平成17年8月26日意見書において「刊行物2及び刊行物3に示されているように、ニッケルは微量の硫黄でも硫黄ぜい性を生じるものであることは広く知られていることは明らかであり、刊行物1の『断熱層24a』として、わざわざ硫黄ぜい性という欠点のある『電鋳法によるニッケルフィルム』を選択する必然性はなく、周知の硫黄ぜい性は刊行物1において『電鋳法によるニッケルフィルム』を選択することの阻害要件でしかないものである」旨主張している。
しかしながら、次項「相違点2について」において述べるように、刊行物2及び3の記載は、電鋳法によるニッケルフィルムの使用が困難であることを示すものではなく、硫黄の量を少なくすれば使用が可能であることを示すものである。しかも、刊行物4ないし6に記載されている様に、現に、画像形成装置の定着に用いられる誘導加熱方式の像加熱装置に使用されるニッケルフィルムは、電鋳法で製造されているものである。
したがって、被請求人の上記主張は採用することができない。

イ.相違点2について
刊行物2、刊行物3及び刊行物7に記載されている様に、メッキにおける添加剤を介してニッケルに硫黄が混入すると粒界への硫黄の析出により脆くなり、曲げると割れたりひびが入ったりしてしまうこと(いわゆる「硫黄ぜい性」)は、本件出願前にすでに周知である。
曲率半径が小さくなれば、ニッケルフィルムに加わる曲げ応力が強くなり、割れやすくなることは当業者に自明であるから、電鋳法によるニッケルフィルムを用いるにあたり、曲げ応力に対して十分な耐性を有するよう硫黄の含有率を制御することは、硫黄ぜい性を知る当業者が当然に検討すべき事項にすぎない。
すなわち、その製法上硫黄の混入が避けられない周知の電鋳ニッケルフィルムを、定着装置というニッケルフィルムが高温となる装置に使用するにあたり、ニッケルフィルムへの硫黄の混入量を所定量以下とすることで硫黄ぜい性の影響を抑えるという作用効果を得ることは、周知の硫黄ぜい性を知る当業者が予期し得るものであって、その上限値は実験により適宜決めうるものである。

本件発明1では、硫黄の含有量を「0.04wt%以下」と特定しているが、刊行物2には0.0n%硫黄が共析することで硫黄ぜい性が生じ、約200℃程度以上に加熱すると脆くなる旨記載されており、また、刊行物7に記載された比較例では0.06重量%という含有率で硫黄が混入した比較用磁歪層においては200℃以上の熱処理で脆化する旨記載されている。
これら刊行物の記載からみて、本件発明1で特定する「0.04wt%以下」という数値は、当業者によって予期し得ない格別な値ではなく、予期し得る範囲内のものである。
してみれば、引用発明に記載された像加熱装置において、そのニッケルフィルムの硫黄含有率を0.04wt%以下とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

ウ.まとめ
以上のとおり、引用発明において、相違点1及び2に係る構成を採用することは、いずれも周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、これらの相違点に係る構成を組み合わせたところで、顕著な作用効果を奏するものでもない。
よって、本件発明1は、刊行物1、2及び7に記載された発明ならびに刊行物2ないし7に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

2.本件発明2に対して
(1)対比
本件発明2は、本件発明1の特定事項に加えて、さらに「樹脂層」が「単層又は、複数層の樹脂層であり、樹脂層のうち少なくとも一層は導電性樹脂層」であり、かつ、「誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させる」ことを特定事項とするものである。
そこで、本件発明1で検討した事項をふまえて、本件発明2と引用発明とを対比すると、引用発明における、導電剤を混入した樹脂からなる「離型層」は、本件発明2における「導電性樹脂層」に相当するから、両者は「円筒フィルムの樹脂層が単層の樹脂層であり、その層が導電性樹脂層」である点でも一致していると言える。
よって、両者は前記相違点1及び2に加えて、以下の点でも相違している。

相違点3:本件発明2は誘導加熱により円筒フィルムを発熱させるものであるのに対して、引用発明は発熱体により定着フィルム(円筒フィルム)を加熱するものである点。

(2)相違点についての判断
ア.相違点3について
相違点1及び2については既に検討したとおりであるので、以下、相違点3について検討する。
刊行物4ないし6に記載されている様に、定着装置において、誘導加熱により円筒フィルムを発熱させることは、当業者に周知の技術事項にすぎないから、引用発明において定着フィルム(円筒フィルム)を誘導加熱により発熱させることは、当業者が容易になし得ることである。

ところで、引用発明における「導電性樹脂層」である、導電剤を混入した樹脂からなる離型層の役割は、定着フィルム(円筒フィルム)へのトナーのオフセットを防止することにあるのに対し、誘導加熱により円筒フィルムを発熱させるものであるところの本件発明2における「導電性樹脂層」の役割は、本件特許明細書の【0059】及び【0060】の記載から明らかなように、発熱層の周囲に漏れる磁束のエネルギーを消費して周辺への磁束を遮断するとともに、自ら発熱して像加熱に寄与することにあるから、両者の「導電性樹脂層」の役割が異なるものである。

しかしながら、誘導加熱を行う周知の定着装置においては、変動する磁束が導電性を有する部位を通過することで渦電流が生じ、前記磁束を打ち消すとともに前記部位を発熱することは、誘導加熱の原理から当業者に自明の事項にすぎない。
そして、この点は、上記刊行物5に、電磁加熱(誘導加熱)方式により加熱された発熱ベルトが回転駆動され、加圧ローラとの間の定着ニップ部に被記録材を導入することでトナー像を定着する加熱装置において、その発熱ベルト(導電発熱部材)が基層、弾性層、導電発熱層及び表層からなり、導電発熱層以外の弾性層中や表層中に導電性粒子を分散させることにより、該弾性層や表層を導電発熱層として機能させることが記載されている(【請求項3】等)ことからも明らかである。
したがって、引用発明における定着フィルム(円筒フィルム)の加熱手段として誘導加熱による方法を採用した場合において、引用発明における「ニッケルフィルム」及び「導電剤を混入した樹脂からなる離型層」は、いずれも導電性を有するから、ともに磁束を打ち消すとともに発熱するという作用効果を奏することは、当業者が当然に予測し得るものである。

イ.まとめ
以上のとおり、引用発明において、相違点1ないし3に係る構成を採用することは、いずれも周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、これらの相違点に係る構成を組み合わせたところで、顕著な作用効果を奏するものでもない。
よって、本件発明2は、刊行物1、2及び7に記載された発明ならびに刊行物2ないし7に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

3.本件発明3に対して
(1)対比
本件発明3は、本件発明2の特定事項に加えて、さらに「樹脂層」が「ニッケルフィルム側の導電性樹脂層と、これを被覆する絶縁層」からなることを特定事項とするものである。
そこで、本件発明2で検討した事項をふまえて、本件発明3と引用発明とを対比すると、引用発明における、導電剤を混入した樹脂からなる「離型層」は、本件発明3における「ニッケルフィルム側の導電性樹脂層」に相当するから、両者は上記相違点1ないし3に加えて、以下の点でも相違している。

相違点4:本件発明3における樹脂層は、「ニッケルフィルム側の導電性樹脂層」と、「これを被覆する絶縁層」とからなるのに対して、引用発明における樹脂層は、「ニッケルフィルム側の導電性樹脂層」のみからなり、本件発明3の「絶縁層」に相当する層を有していない点。

(2)相違点についての判断
ア.相違点4について
相違点1ないし3については既に検討したとおりであるので、以下、相違点4について検討する。

前項に記載したとおり、刊行物5には、電磁加熱(誘導加熱)方式により加熱された発熱ベルトが回転駆動され、加圧ローラとの間の定着ニップ部に被記録材を導入することでトナー像を定着する加熱装置において、前記発熱ベルト(導電発熱部材)は、基層と、弾性層と、Ni等をメッキ処理により数μmの厚さで形成した導電発熱層と、導電発熱層の外側に位置し離形性の良好な耐熱樹脂からなる表層とを有することが記載されているとともに、該表層中に導電性・高透磁率な粒子やウィスカーを分散させることにより表層を導電発熱層として機能させてもよいこと(【請求項3】等参照)及び表層中に粒子を分散させると離型性が悪くなるので、表層には導電性・高透磁率な粒子やウィスカーを分散させずに、導電発熱層と表層とを接着する際の接着剤に導電性・高透磁率な粒子やウィスカーを分散させることもできること(摘示事項(3)参照)が記載されている。
刊行物5に記載された技術的事項における「発熱ベルト(導電発熱部材)」は、相違点4に係る構成における「円筒フィルム」に相当し、刊行物5に記載された発明における「導電発熱層」は、ニッケルからなるフィルムであるから、相違点4に係る構成における「ニッケルフィルム」に相当し、刊行物5に記載された技術的事項における「接着剤」は、導電性・高透磁率な粒子やウィスカーを分散させた樹脂であるから、相違点4に係る構成における「導電性樹脂」に相当し、刊行物5に記載された技術的事項における「導電性・高透磁率な粒子やウィスカーを分散していない表層」は、相違点4に係る構成における「絶縁層」に相当する。
したがって、相違点4に係る構成であるところの「円筒フィルムのニッケルフィルムを被覆する樹脂層は、ニッケルフィルム側の導電性樹脂層と、これを被覆する絶縁層とからなる」ことは、刊行物5に記載されているものである。

してみれば、引用発明において、定着フィルム(円筒フィルム)を誘導加熱により加熱するようにする際に、引用発明における「導電性樹脂層」である離型層に代えて、「ニッケルフィルム側の導電性樹脂層」と、「これを被覆する絶縁層」とからなる2層構造とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

イ.まとめ
以上のとおり、引用発明において、相違点1ないし4に係る構成を採用することは、いずれも刊行物5に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、これらの相違点に係る構成を組み合わせたところで、顕著な作用効果を奏するものでもない。
よって、本件発明3は、刊行物1、2、5及び7に記載された発明ならびに刊行物2ないし7に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

4.本件発明4に対して
(1)対比
本件発明4は、本件発明2の特定事項に加えて、さらに「導電性樹脂層」が「磁性体を分散含有する」ことを特定事項とするものである。
そこで、本件発明2で検討した事項をふまえて、本件発明4と引用発明とを対比すると、刊行物1には磁性体を分散させることは記載されていないから、両者は上記相違点1ないし3に加えて、以下の点でも相違している。

相違点5:本件発明4における導電性樹脂層は磁性体を分散含有するのに対して、引用発明における導電性樹脂層には磁性体が分散含有されていない点。

(2)相違点についての判断
ア.相違点5について
相違点1ないし3については既に検討したとおりであるので、以下、相違点5について検討する。

前項「本件発明2に対して」及び「本件発明3に対して」の項に記載したとおり、刊行物5には、電磁加熱(誘導加熱)方式により加熱された発熱ベルトが回転駆動され、加圧ローラとの間の定着ニップ部に被記録材を導入することでトナー像を定着する加熱装置において、その発熱ベルト(導電発熱部材)の表層中に導電性・高透磁率な粒子やウィスカーを分散させることにより、該表層を導電発熱層として機能させることが記載されている。
刊行物5に記載された事項における「導電性・高透磁率な粒子やウィスカー」が相違点5に係る構成における「磁性体」に相当する。
したがって、相違点5に係る構成であるところの「導電性樹脂層に磁性体を分散含有すること」は、刊行物5に記載されているものである。

してみれば、引用発明において、定着フィルム(円筒フィルム)を誘導加熱により加熱するようにする際に、引用発明における「導電性樹脂層」である離型層に代えて、「磁性体を分散含有した導電性樹脂層」とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

イ.まとめ
以上のとおり、引用発明において、相違点1ないし3及び5に係る構成を採用することは、いずれも刊行物5に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、これらの相違点に係る構成を組み合わせたところで、顕著な作用効果を奏するものでもない。
よって、本件発明4は、刊行物1、2、5及び7に記載された発明ならびに刊行物2ないし7に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明4についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

5.本件発明5に対して
本件発明5は、本件発明1の特定事項に加えて、さらに「誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させる」ことを特定事項とするものである。
そこで、本件発明1で検討した事項をふまえて、本件発明5と引用発明とを対比すると、両者は上記相違点1ないし3で相違している。
そして、前項「1.本件発明1に対して」及び「2.本件発明2に対して」の項で述べたように、引用発明において、相違点1ないし3に係る構成を採用することは、いずれも周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、これらの相違点に係る構成を組み合わせたことにより、顕著な作用効果を奏するものでもない。
よって、本件発明5は、刊行物1、2及び7に記載された発明ならびに刊行物2ないし7に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明5についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

6.本件発明6に対して
(1)対比
本件発明6と引用発明とを対比する。
引用発明における「加圧ローラ」、「圧接部」及び「定着装置」は、本件発明6における「回転加圧部材」、「像加熱ニップ」及び「像加熱装置」にそれぞれ相当する。
引用発明における「離型層」は、ニッケルフィルムを被覆する樹脂層であるから、本件発明6における「樹脂層」に相当する。
引用発明における「定着フィルム」は、エンドレスベルト状すなわち円筒状の形状であり、かつ、曲率可変なものであるから、本件発明1における「円筒フィルム」に相当する。

したがって、両者は
「回転加圧部材とともに像加熱ニップを形成する曲率可変の円筒フィルムであって、ニツケルフィルムとこれを被覆する樹脂層とを有する円筒フィルムを備える像加熱装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点6:本件発明6におけるニッケルフィルムは電鋳法によるものであるのに対して、引用発明ではニッケルフィルムの製造方法については規定していない点。
相違点7:本件発明6は誘導加熱により円筒フィルムを発熱させるものであるのに対して、引用発明は発熱体により定着フィルムを加熱するものである点。
相違点8:本件発明6におけるニッケルフィルムは、マンガンの含有率が0.2wt%以上と規定されているのに対して、引用発明ではニッケルフィルムにおけるマンガンの含有率については規定していない点。

(2)相違点についての判断
ア.相違点6及び7について
相違点6及び7は、実質的に相違点1及び3と同一であり、これらの相違点についてはすでに検討したとおり、いずれも周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。

イ.相違点8について
刊行物2及び刊行物7に記載されている様に、電鋳法によるニッケル膜の製造にあたり、ニッケルにマンガンを添加して硫黄を結合させ、硫黄ぜい性の発現を妨げることは、当業者に周知の技術事項にすぎない。
曲率半径が小さくなれば、ニッケルフィルムに加わる曲げ応力が強くなり、割れやすくなることは当業者に自明であるから、電鋳法によるニッケルフィルムを用いるにあたり、曲げ応力に対して十分な耐性を有するようマンガンの含有率を制御することは、硫黄ぜい性を知る当業者が当然に検討すべき事項にすぎない。
すなわち、その製法上硫黄の混入が避けられない周知の電鋳ニッケルフィルムを、定着装置というニッケルフィルムが高温となる装置に使用するにあたり、ニッケルフィルムに十分な量のマンガンを添加して硫黄を結合させ、硫黄ぜい性の発現を妨げるという作用効果を得ることは、周知の硫黄ぜい性を知る当業者が予期し得るものであって、その下限値は実験により適宜決めうるものである。

本件発明6では、マンガンの含有量を「0.2wt%以上」と特定しているが、硫黄ぜい性の発現を妨げるためのマンガンの添加量として、刊行物2には、0.0n〜0.2%程度のMnを添加する旨記載されており、また、刊行物7にはマンガンを約2重量%含む旨記載されている。
これら刊行物の記載からみて、本件発明6で特定する「0.2wt%以上」という数値は、当業者によって予期し得ない格別な値ではなく、予期し得る範囲内のものである。
してみれば、引用発明に記載された像加熱装置において、そのニッケルフィルムのマンガン含有率を0.2wt%以上とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

ウ.まとめ
以上のとおり、引用発明において、相違点6ないし8に係る構成を採用することは、いずれも周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、これらの相違点に係る構成を組み合わせたところで、顕著な作用効果を奏するものでもない。
よって、本件発明6は、刊行物1、2及び7に記載された発明ならびに刊行物2ないし7に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

7.本件発明7に対して
本件発明7は、記録材上にトナー像を形成し、このトナー像を担持した記録材を定着装置を通過させることにより永久画像ならしめる画像形成装置の定着装置として、本件発明6の像加熱装置を用いたものである。
そこで、本件発明6で検討した事項をふまえて、本件発明7と引用発明とを対比するに、引用発明における「転写材シート」は本件発明7における「記録材」に相当するから、両者は上記相違点6ないし8でのみ相違する。
そして、引用発明においてこれらの相違点に係る構成を採用することについては、前項「6.本件発明6に対して」の項で述べたように、いずれも周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、引用発明にこれらの周知技術を組み合わせたところで、顕著な作用効果を奏するものでもない。
よって、本件発明7は、刊行物1、2及び7に記載された発明ならびに刊行物2ないし7に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明7についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

第9 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし7は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
像加熱装置および画像形成装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】トナー像を担持した記録材を、回転加圧部材と曲率可変の円筒フィルムとで形成される像加熱ニップを通過させることにより永久画像ならしめる画像形成装置において、該円筒フィルムが、硫黄の含有率0.04wt%以下の、電鋳法によるニッケルフィルムと、これを被覆する樹脂層とを有し、曲率半径が12mm以下の部分が存在するように懸架されていることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】上記円筒フィルムの樹脂層が単層又は、複数層の樹脂層であり、樹脂層のうち少なくとも一層は導電性樹脂層であり、誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを特徴とする請求項1記載の像加熱装置。
【請求項3】上記円筒フィルムの樹脂層がニッケルフィルム側の導電性樹脂層と、これを被覆する絶縁層とからなり、誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを特徴とする請求項2記載の像加熱装置。
【請求項4】導電性樹脂層が磁性体を分散含有することを特徴とする請求項2記載の像加熱装置。
【請求項5】誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを特徴とする請求項1記載の像加熱装置。
【請求項6】回転加圧部材とともに像加熱ニップを形成する曲率可変の円筒フィルムであって、マンガンの含有率が0.2wt%以上の、電鋳法によるニッケルフィルムと、これを被覆する樹脂層とを有する円筒フィルムを、誘導加熱により発熱させることを特徴とする像加熱装置。
【請求項7】記録材上にトナー像を形成し、このトナー像を担持した記録材を定着装置を通過させることにより永久画像ならしめる画像形成装置であって、上記定着装置として請求項6記載の像加熱装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁誘導を利用して渦電流を発生させて加熱する像加熱装置に関する。
【0002】
この装置は、特に電子写真複写機・プリンタ・ファックス等の画像形成装置における定着装置、即ち電子写真・静電記録・磁気記録等の適宜の画像形成プロセス手段により、加熱溶融性の樹脂等によりなるトナーを用いて記録材の面に直接若しくは間接方式で形成した未定着のトナー画像を記録材面に永久固着画像として加熱定着処理する装置に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
図10は従来の技術を説明する図であり、電子写真技術をプリンタに応用したレーザービームプリンタの概略断面図である。この装置の動作を以下に説明する。
【0004】
ホストコンピュータより送られた画像情報信号によりスキャナー13からのレーザー光の強度を変調し、感光ドラム11上に静電潜像を作成する。レーザー光の強度及び照射スポット径は画像形成装置の解像度及び所望の画像濃度によって適正に設定されており、感光ドラム11上の静電潜像はレーザー光が照射された部分は明部電位VLに、そうでない部分は一次帯電器12で帯電された暗部電位VDに保持されることによって形成する。感光ドラム11は矢印の方向に回転して静電潜像は現像器14によって順次現像される。現像器14内のトナーはトナー供給回転体である現像スリーブ1402と現像ブレード1401とによって、トナー高さ、トリボを制御され、現像スリーブ上1402に均一なトナー層を形成する。現像ブレード1401としては通常金属製若しくは樹脂製のものが用いられ、樹脂系のものは現像スリーブ1402に対して適正な当接圧をもって接している。現像スリーブ1402上に形成されたトナー層は現像スリーブ1402自身の回転にともない感光ドラム11に対向し、現像スリーブ1402に印加されている電圧Vdcと感光ドラム11の表面電位が形成する電界によりVLの部分だけ選択的に顕像化する。感光ドラム11上のトナー像は転写装置15によって、給紙装置から送られてきた紙に順次転写される。転写装置としては図に示したコロナ帯電器以外に、導電弾性回転体に電源から電流を供給して紙に転写電荷を付与しながら搬送する転写ローラ方式がある。トナー像を転写された紙は感光ドラム11の回転と共に定着装置10へと送り出され、加熱加圧により永久固定画像となる。
【0005】
加熱定着装置に代表される像加熱装置としては、従来から図10に示した熱ローラ方式以外に、フィルム加熱方式が広く用いられている。
【0006】
熱ローラ方式はローラ内にハロゲンヒータ等の熱源を用いるのが一般的であるが、これ以外に熱ローラ自身に電気抵抗を持たせてこれに電力を供給して加熱する自己発熱ローラ方式も考案されている。
【0007】
また、フィルム加熱方式としてはセラミックヒータを熱源として小熱容量のフィルムを加熱するものが広く実施されているが、特開平7-114276号公報では金属フィルムを利用して、これを電磁誘導による渦電流で自己発熱させる誘導加熱方式も開示されている。このようなフィルム加熱方式の特徴としては
▲1▼小熱容量であるため加熱に要するエネルギーを小さくできて、オンデマンド定着、省エネ定着を実現できる。
▲2▼ニップ直後でフィルムの曲率を変化させることができるために、フィルム周長によらず、記録材を曲率分離することが可能である。
▲3▼フィルム周長或いは、加圧ローラ径に比較して広いニップを確保することができるため像加熱装置を小さくすることができる。が挙げられる。さらに、金属フィルムを用いた自己発熱型定着装置においては
▲1▼金属フィルムの熱伝導性によりニップ内に均一な温度分布を作ることができるため、画像ムラや定着ムラなどの問題が発生しにくい。
▲2▼フィルム自身が発熱体であるため、伝達ロスが小さい。
等の特徴を挙げることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の熱ローラ方式による定着装置では、定着ローラの熱容量が大きく、加熱に要する電力が大きくなるばかりか、ウェイトタイムが長くなるという問題があった。
【0009】
また、フルカラーの画像記録装置のような熱容量の大きな定着ローラを用いる場合、温調と定着ローラ表面の昇温とに遅延が発生するため、定着不良や光沢ムラやオフセット等の問題が発生していた。
【0010】
さらにフィルム加熱方式、特に金属フィルムを用いた場合には、フィルム自身の回転に伴ってニップ部及びその出入口においてフィルムが屈曲を繰り返されるために機械的に疲労しやすく、耐久性が低いという問題があった。
【0011】
また、上記機械的疲労に対して金属層を厚くするのには限界があり、薄い金属層に対しては磁束が有効に働かないためにロスが大きくなるという問題があった。
【0012】
本発明は、像加熱装置および画像形成装置において、小熱容量の加熱体を利用して低エネルギー加熱を可能とし、高耐久性の装置を提供することを目的としたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本出願に係る第1の発明は、トナー像を担持した記録材を、回転加圧部材と曲率可変の円筒フィルムとで形成される像加熱ニップを通過させることにより永久画像ならしめる画像形成装置において、該円筒フィルムが、硫黄の含有率0.04wt%以下の、電鋳法によるニッケルフィルムと、これを被覆する樹脂層とを有し、曲率半径が12mm以下の部分が存在するように懸架されていることを特徴とする像加熱装置である。
【0014】
上記構成において、ニッケル中の硫黄成分を抑えることにより屈曲による像加熱フィルムの金属疲労を低減することができる。
【0015】
本出願に係る第2の発明は、回転加圧部材とともに像加熱ニップを形成する曲率可変の円筒フィルムを用いる像加熱装置であって、上記円筒フィルムはマンガンの含有率が0.2wt%以上の、電鋳法によるニッケルフィルムと、これを被覆する樹脂層とを有することを特徴とするものである。
【0016】
上記構成において、ニッケル中のマンガン成分を加えることにより高温時の像加熱フィルムの柔軟性を高めることができる。
【0017】
本出願に係る第3の発明は、像加熱装置に用いる、円筒フィルムは磁性金属層と、これを被覆する単層又は、複数層の樹脂層とを有し、樹脂層のうち少なくとも一層は導電性樹脂層であり、誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを特徴とするものである。
【0018】
導電性樹脂層は円筒フィルムに復元力を与えるとともに、磁性金属層の外部の磁束を有効利用できるものである。
【0019】
また、本出願に係る第4の発明は、第3の発明において、磁性金属層は硫黄の含有率が0.04wt%以下のニッケル層であることを特徴とするものである。
【0020】
また、本出願に係る第5の発明は、第3の発明において、磁性金属層はマンガンの含有率が0.2wt%以上のニッケル層であることを特徴とするものである。
【0021】
また、本出願に係る第6の発明は、第3の発明において、樹脂層はニッケルフィルム側の導電性樹脂層と、これを被覆する絶縁層とからなり、誘導加熱により上記円筒フィルムを発熱させることを特徴とするものである。
【0022】
上記構成において、絶縁層は導電性樹脂と被加熱像との間に働く電気的鏡映力を減衰させる効果を有する。
【0023】
また、本出願に係る第7の発明は、第3の発明において、導電性樹脂層が磁性体を分散含有することを特徴とするものである。
【0024】
上記構成において磁性体を分散した導電性樹脂層は、磁性金属の外部の磁束を導く効果を有する。
【0025】
また、本発明は、上記したこれの像加熱用フィルムに誘導加熱により発熱させることを特徴とする像加熱装置である。
【0026】
また、本発明は、記録材上にトナーを形成し、このトナー像を担時した記録材を定着装置を通過させることにより永久画像ならしめる画像形成装置であって、上記定着装置として上記像加熱装置を用いたことを特徴とする画像形成装置である。
【0027】
上記構成において、本発明の像加熱フィルムを用いた像加熱装置は小熱容量の加熱体を利用して低電力動作を可能とし、高い記録材分離性と高耐久性とを有し、上記像加熱装置を備えた画像形成装置は、省エネルギー、高信頼性を有するものとなる。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施例の特徴を表す図面であり、図2はその斜視図である。同図において1は回転加熱部材であるところの定着フィルム、105は磁束の通過を妨げない絶縁性のフィルムガイドで、定着フィルム1はフィルムガイド105によって搬送安定性を図られながら矢印の方向に回転する。
【0029】
フィルムガイド105の形状としてはニップ部で平らな部分をもたせており、ニップ出口近傍において高い曲率(実測曲率半径で5mm)で定着フィルム1をガイドするような形状となっている。
【0030】
201は交番磁束を発生するための励磁コイルであり、フィルムガイド105によって支持されている。202は励磁コイル201で発生する磁束を効率よく定着フィルム1に導くための高透磁率磁性部材であるところのフェライトコアである。3は回転加圧部材であるところの加圧ローラで芯金301上にシリコーンゴム層302を2mm被覆させて弾性をもたせ、定着フィルム1とニップNを形成している。また、加圧ローラ3は定着フィルム1を記録材Pの搬送方向に回転駆動させる駆動ローラの役割も兼ねている。
【0031】
励磁コイル201には励磁回路601が接続されており、この励磁回路601は60KHzの交番電流を励磁コイル201へ供給できるようになっている。5はNTC素子で定着フィルム1の裏面に接触させてあり、マイコン603に定着フィルム1の温度を電圧に変換して伝えている。602は矩形波発生回路で、マイコン603からの情報によって矩形波のデューテイー比を変化させて励磁回路601内のスイッチング素子を制御する。
【0032】
励磁コイル201としては加熱に十分な交番磁束を発生するものでなければならないが、そのためには抵抗成分を低く、インダクタンス成分を高くとる必要がある。本実施例では励磁コイル201の芯線として線径3mmの高周波用のものを用いて、定着フイルム内にニップNを周回するように10回巻いてある。
【0033】
励磁コイル201は励磁回路601から供給される交番電流によって交番磁束を発生し、交番磁束は定着フィルム1の発熱層101に渦電流を発生させる。この渦電流は発熱層101の固有抵抗によってジュール熱を発生させて、弾性層102、離型層103を介してニップNに搬送される記録材Pと記録材P上のトナーTを加熱することができる。
【0034】
定着フィルム1について図3を用いて詳しく説明する。定着フィルム1は抵抗体であるニッケルからなる厚み50μmの円筒状発熱層101の表面に樹脂層として、シリコーンゴムからなる弾性層102とフッ素樹脂の離型層103との2層を設けてある。抵抗体としては10-3〜10-8Ω・cmの電気良導体である金属、金属化合物であれば同様の原理で加熱可能であるが、電鋳法によるフィルム製造が容易で、耐腐食性が優れている点からニッケルフィルムが好ましい。通常、電鋳法によるニッケルフィルムは、電解浴中にサッカリン、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等の添加剤を加えることにより、電着応力を低減させて成型精度を向上させ、電鋳被膜に光沢を与えている。一方このようにして製造されたニッケル電鋳は硫黄を含み、柔軟性や高温時の弾力性失われるという性質があるため本発明の構成においては金属疲労が発生して破断するという問題が発生した。そこで、本発明におけるニッケルフィルムにおいては、柔軟性を重視して上記添加剤を極力減量してニッケルフィルムにおける硫黄の含有率を0.04%(質量比)以下にしたものを用いている。硫黄の含有率が0.04%を越えると、高温状態においてニッケルフィルムが脆くなったり、柔軟性を失ってしまう。
【0035】
またニッケルフィルムにマンガンを加えることにより高温度にニッケルフィルムが脆くなることを防ぐことができる。ニッケルフィルム中にマンガンを加える方法としては、スルファミン酸ニッケルが300〜450g/l、塩化ニッケルが0〜30g/l、およびホウ酸が30〜45g/lからなるニッケル電解液中にマンガン微粒子を入れ良く撹拌した状態で電気メッキする方法が挙げられる。
【0036】
また発熱層101の厚みに関しては、薄くすると十分な磁路が確保できなくなり、外部へ磁束が洩れて発熱体自身の発熱エネルギーは小さくなる場合があり、厚くすると熱容量が大きくなり昇温に要する時間が長くなるばかりか、屈曲疲労に対して弱くなる傾向がある。従って厚みは発熱体に用いた材料の比熱、密度、透磁率、抵抗率、不純物含有率の値によって適正値があり、本実施例では50μmの厚みで、3℃/sec以上の昇温速度を得ることができて、耐久性も満足するものが得られた。
【0037】
弾性層102は200μmのシリコーンゴムを用いており、ニップ部において被加熱像を覆って熱の伝達を確実にするとともに、ニッケルフィルムからなる発熱層101に復元力を補って、回転・屈曲による疲労を防いでいる。
【0038】
離型層103としてはPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂以外に、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の離型性かつ耐熱性のよい材料を選択することができる。離型層103の厚さは20〜100μmが好ましく、離型層103の厚さが20μmよりも小さいと塗膜の塗ムラで離型性の悪い部分ができたり、耐久性が不足するといった問題が発生する。また、離型層が100μmを超えると熱伝導が悪化するという問題が発生し、特に樹脂系の離型層の場合は硬度が高くなりすぎ、弾性層102の効果がなくなってしまう。
【0039】
また図4に示すように、定着フィルム1の層構成において断熱層104を設けてもよい。断熱層104としてはフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂などの耐熱樹脂がよい。また、断熱層104の厚さとしては10〜1000μmが好ましい。断熱層104の厚さが10μmよりも小さい場合には断熱効果が得られず、また、耐久性も不足する。一方、1000μmを超えると高透磁率コア202から発熱層101の距離が大きくなり、磁束が十分に発熱層101に到達しなくなる。断熱層104を設けた場合、発熱層101に発生した熱による励磁コイル201の昇温を防止できるため、安定した加熱をすることができる。
【0040】
定着フィルム1の径としては内包する励磁コイル201やコア202の占有容積によって選ぶことができる。本例では円筒形状で直径40mmのものを用いているが、これを剛体ローラで構成したとすると、図5(1)に示すようにニップ下流端での曲率半径はローラの半径に等しく20mmとなり、回転加熱体と記録材との曲率分離が困難になって分離爪等の補助部材が必要となる。分離爪は回転加熱体表面を摺擦するために、磨耗跡や汚れなどの問題の原因となりやすく、従来より高画質画像形成装置において重要な問題となる。一方本例では曲率可変なフィルム状回転加熱体を用いることにより、ニップ下流端において曲率を高くして、大径の回転加熱体を用いた場合でも曲率分離を行うことを達成している。
【0041】
なお実測曲率半径は
▲1▼定着フィルム1がフィルムガイド105に密着しているとみなせる場合には定着フィルムガイド105のニップ下流端の丸め半径に定着フィルム1の厚みを加えた値。
▲2▼図5(2)に示すようにフィルムガイド105に対して定着フィルム1が隙間を有する場合には、ニップ下流端と最大隙間とを定着フィルムが結ぶ曲線から仮想円Cを作ったときの外半径r。
で定義している。
【0042】
(実施例)
〔実施例1〕
図3に示される定着フィルム1を製造した。
【0043】
定着フィルム1は抵抗体であるニッケルからなる厚み50μmの円筒状発熱層101の表面に樹脂層として、シリコーンゴムからなる弾性層102とフッ素樹脂の離型層103との2層を設けてある。
【0044】
実験は図6に示すような二つのローラA、及びBに定着ベルト1を懸架して、ローラB内にはハロゲンヒータHを入れて像加熱時と同じ温度条件にし、定着ベルトの発熱層であるニッケルフィルム層に含む硫黄の含有率及び、ローラBの半径rを変化させて空回転耐久及び記録材分離試験を行った。表1に結果を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
結果より分離部における曲率半径を12mm以下にして、ニッケルフィルム中の硫黄含有率を0.04wt%以下にすることによって、記録材の分離性を確保し且つ、耐久疲労によるフィルム破断を防止することができることがわかる。なお、上記実験はニッケルフィルム単独について行ったものであるが、別の実験において上記ニッケルフィルムに被覆する樹脂層の有無による違いを確認したところ、本実施例のように樹脂層を設けた場合にはローラBの半径が1mmの場合でフィルムの耐久寿命が約30%延びることがわかった。
【0047】
また、ニッケルフィルム中にマンガンを微量加えることにより高温時にニッケルが脆くなることを防ぐことができる。本例の定着フィルムは200℃程度の温度に耐える必要があり、0.2wt%以上マンガンを含むニッケルフィルムを用いている。
【0048】
次に最大通紙幅がA4サイズ紙、印字速度が毎分3枚の4色カラー画像形成装置の定着装置として上記像加熱装置を用いた場合の作用効果について画像形成装置の動作と共に記す。
【0049】
図7は本発明を用いた電子写真カラープリンタの断面図である。11は有機感光体でできた感光体ドラム、12はこの感光体ドラム11に一様な帯電を行なうための帯電装置、13は不図示の画像信号発生装置からの信号をレーザ光のオン/オフに変換し、感光体ドラム11に静電潜像を形成するレーザ光学箱である。1101はレーザ光、1102はミラーである。感光体ドラム11の静電潜像は現像器14によってトナーを選択的に付着させることで顕像化される。現像器14は、イエローY、マゼンタM、シアンCのカラー現像器と黒用の現像器Bから構成され、一色ずつ感光体ドラム11上の潜像を現像しこのトナー像を中間転写体ドラム16上に順次重ねてカラー画像を得る。中間転写体ドラム16は金属ドラム上に中抵抗の弾性層と高抵抗の表層を有するもので、金属ドラムにバイアス電位を与えて感光体ドラム11との電位差でトナー像の転写を行なうものである。一方、給紙カセットから給紙ローラによって送り出された記録材Pは、感光体ドラム11の静電潜像と同期するように転写ローラ15と中間転写体ドラム16との間に送り込まれる。転写ローラ15は記録材Pの背面からトナーと逆極性の電荷を供給することで、中間転写体ドラム16上のトナー像を記録材P上に転写する。こうして、未定着のトナー像をのせた記録材Pは加熱定着装置10で熱と圧を加えられて、記録材P上に永久固着させられて、排紙トレー(不図示)へと排出される。感光体ドラム11上に残ったトナーや紙粉はクリーナ17によって除去され、また、中間転写体ドラム16上に残ったトナーや紙粉はクリーナ18によって除去され、感光体ドラム11は帯電以降の工程を繰り返す。
【0050】
定着装置10には上述の像加熱装置を用いており、記録材Pはニップで加熱されてトナー像が定着されてニップ出口で分離される。
【0051】
前述のように本例の像加熱装置は、弾性層102や離型層103の樹脂層を介してはいるが、その熱抵抗はハロゲンヒータを内包する熱ローラ方式の定着装置に比して小さく、発熱体の熱を直接像加熱に消費するものであって、上記構成においてトナー量の多いフルカラー画像を定着する場合にも、トナー像を十分溶融することができて、高画質の画像形成装置を得ることができる。また、定着装置の熱容量が小さいためオンデマンド定着が可能で、待機中の消費電力を著しく低減させることができる。
【0052】
また、本実施例では4色カラー画像形成装置について説明してきたが、モノクロ或いは1パスマルチカラー画像形成装置に利用してもよい。この場合は定着フィルム1の樹脂層として弾性層102を省略して離型層103だけにすることができる。
【0053】
〔実施例2〕
次に、本発明の他の実施例について説明する。
【0054】
本例は像加熱装置より一層の小型化を図ったもので、概略構成は図8に示すものである。なお、図中前出と同機能の部材には同符号を付すものとする。
【0055】
定着フィルム1としては前述同様φ40mmのものを用いており、フィルムガイド105、駆動ローラ19及び、テンションローラ20により懸架してある。19、20両ローラはともに直径15mmのものを用いており、駆動ローラ19では表面に滑り防止加工を施して、定着フィルム1の内面と高摩擦で接触して回転駆動させ、平滑な表面を持つテンションローラ20は従動回転しながら定着フィルム1に対して一定のテンションをかけてて駆動ローラ19との良好な接触を確保している。本構成のニップ出口ではテンションローラ20による引張力により定着フィルム1の曲率を高く(実測曲率半径0.5mm以下)できる。
【0056】
前述の第一の実施例においては加圧ローラ3により定着フィルム1を駆動するために記録材がニップに挿入された時に駆動力が低下するのに対して、本例では直接定着フィルム1を駆動できるためにスリップなどの問題が発生しにくいという利点がある。
【0057】
一方本構成は3カ所の懸架部で、定着フィルム1の曲率を大きく変化させるのに加えて、定着フィルム1にテンションを加える必要があり、屈曲或いは引っ張りストレスを与えやすい。この点に関して、本発明の定着フィルム1は硫黄分を0.04%以下に抑えて柔軟性を持たせたことによって、定着フィルム1の金属疲労による破断を防止して高耐久の像加熱装置を実現できる。
【0058】
〔実施例3〕
次に本発明のさらなる他の実施例について説明する。本実施例は第一の実施例における弾性層102を導電化している。具体的にはシリコーンゴムにカーボンブラックを適量配合して体積抵抗率で106Ωcm以下に調整した厚み300μmのものを用いている。弾性層102の導電化に関しては上記方法以外に金属ウィスカー等を配合しても良い。一方、離型層103の体積抵抗率は1014Ωcm以上で絶縁層として機能する。
【0059】
本実施例におけるこの導電性弾性層の役割は、磁性金属からなる発熱層101の周囲に洩れる磁束のエネルギーを導電弾性層内を流れる電流により消費して周辺への磁束を遮断するとともに、自ら発熱して像加熱に寄与することにある。特に、金属疲労を防止するために発熱層102の厚みを薄くしていくと周辺への漏れ磁束が増加するために、導電性弾性層の役割は重要となる。
【0060】
一般に上記導電性弾性層の抵抗値は磁性金属に比較して大きくまた、透磁率も磁性金属に比較すると小さいことから、単独で発熱層として利用した場合には発熱効率が低くなる傾向があるが、本発明の構成によれば磁束エネルギーの大部分を磁性金属で消費して、これを補うものとして上記導電性弾性層を用い場合には高効率の加熱が実現できる。
【0061】
また本例における磁性金属は上記導電性弾性層に対しては磁束の誘導部材として働いて、導電性弾性層に導かれる磁力線の密度を高くして発熱効率を高める作用を持つ。
【0062】
本発明は、上述した磁性金属からなる主発熱層と、導電化した樹脂層とが互いの短所を補足する形で高効率に発熱することに着目したものである。
【0063】
離型層103は導電性弾性層102に対して記録材を絶縁する絶縁層としても働いて、記録材上の被加熱像と導電性弾性層に働く鏡映力を弱めて、オフセット汚れが発生するのを防ぐ効果がある。
【0064】
図9は、樹脂層として導電性ゴムを用いた場合の効果を確認した実験結果を示すもので、入力電力1000W、回転速度120mm/secの条件で、室温からの定着フィルム温度上昇の様子をプロットしたものである。磁性金属との組み合わせは導電性ゴム単独より、また、導電ゴム層を用いた方が絶縁ゴム層より発熱効率が高くなることがわかる。
【0065】
〔実施例4〕
次に本発明のさらなる他の実施例について説明する。本実施例は前記第三の実施例の構成においてさらに、弾性層102に磁性体を分散させている。磁性体としてはニッケル、コバルト、鉄等の金属、またはこれらの磁性化合物を用いることが好適で、弾性層102はカーボンブラックにより導電性を示すととも、磁性体により高い透磁率を有する。これにより導電性弾性層内に高い密度の磁力線が通るために、導電性弾性層を流れる誘導電流密度が高くすることができて、さらなる発熱効率の向上を得ることができる。
【0066】
検討によれば、弾性体102に磁性体を配合して透磁率を10〜200倍にしたもので加熱を行った場合、10%以上低い電圧において同発熱量(1000W)を得ることができた。これは励磁コイル201の発生した磁束を効率よく定着フィルム1で消費して熱に変換できていることを意味しており、本発明によれば省エネルギーであるばかりでなく、電源負荷を低減することが可能で、低コストな像加熱装置、或いはこれを用いた画像形成装置を実現できる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本出願の発明によれば、小熱容量の像加熱フィルムを実現して省電力動作を可能とし、しかも像加熱フィルムと記録材との分離を容易にして、さらに耐久性に富んだ像加熱フィルムを実現できる。
【0068】
また、本出願の発明によれば、ウェイトタイムが短縮されて、省エネルギー動作が可能となり、記録材との分離が容易になって信頼性が向上した、高寿命の像加熱装置又は、画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の実施例を説明する概略断面図である。
【図2】
本発明の第1の実施例の説明する概略斜視図及び回路接続図である。
【図3】
本発明の第1の実施例の定着フィルムの一部断面図である。
【図4】
本発明の第1の実施例の動作を説明する図である。
【図5】
本発明の定着フィルムの性能試験を説明する概略断面図である。
【図6】
本発明の像加熱装置を用いたカラー画像形成装置を説明する概略断面図である。
【図7】
本発明の第1の実施例の原理を説明する図である。
【図8】
本発明の第2の実施例を説明する概略断面図である。
【図9】
本発明の第3の実施例の効果を説明する図である。
【図10】
従来例の利用例を示す図である。
【符号の説明】
1 定着フィルム
101 磁性金属層
102 弾性樹脂層
103 被覆樹脂層
201 励磁コイル
202 コア
3 加圧ローラ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-09-12 
結審通知日 2005-09-15 
審決日 2005-09-27 
出願番号 特願平8-203654
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 山口 由木
井出 和水
登録日 2003-09-12 
登録番号 特許第3472043号(P3472043)
発明の名称 像加熱装置および画像形成装置  
代理人 山口 芳広  
代理人 中村 誠  
代理人 山口 芳広  
代理人 渡邉 敬介  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  
代理人 渡邉 敬介  

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