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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1129573
審判番号 不服2003-21142  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-08-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-30 
確定日 2006-01-11 
事件の表示 平成6年特許願第50826号「音声・ビデオ再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成7年8月22日出願公開、特開平7-226983〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成6年3月22日(パリ条約による優先権主張 1993年3月22日(DE)ドイツ)の出願であって、平成15年7月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成15年10月30日付けの手続補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、
「音声及び(又は)ビデオ画像を再生する装置であって、
a)1以上の音声及び(又は)ビデオ入力信号が1以上の番組として供給される入力手段と、
b)上記入力手段に接続され、上記音声及び(又は)ビデオ入力信号を処理する処理手段と、
c)上記処理手段に接続され、上記音声及び(又は)ビデオ入力信号に対応する音声及び(又は)ビデオ画像を再生する再生手段と、
d)制御信号を送信するポインティング手段と、
e)上記処理手段に接続され、上記ポインティング手段から制御信号を受信し、該制御信号を復号し、この復号された制御信号に応答して制御画像信号を発生し、上記処理手段を制御する制御手段と、
f)上記制御手段に接続され、上記制御画像信号に対応する制御画像を表示する表示手段とを備え、
該制御画像は、複数の制御域と、上記ポインティング手段の操作に応答して該制御画像内を移動可能とされ、且つ該制御画像内のその位置に従って、従来装置の動作に関して行われる、選択操作を含む各種操作を模倣すべく、その形が変えられるポインタとを含むものであり、
上記処理手段の機能が、上記ポインタにより指し示される上記複数の制御域の1つに関して、上記ポインティング手段の操作によって選択され、上記処理手段の機能の選択及び上記ポインティング手段の操作に従って、上記制御画像、上記複数の制御域又は上記処理手段のどれかが制御され、
上記複数の制御域の1つが選択された場合に、上記処理手段は、音声を消音し、上記選択された制御域に対応するビデオ画像を再生するとともに、消音を解除することで上記選択された制御域に対応する音声が再生するよう再生手段に音声及び(又は)ビデオ信号を出力し、
また、上記制御手段は、制御画像を表示する際、表示可能な制御域のうち機能が無効である制御域は表示しないよう制御し、
上記制御画像が表示された後、所定の時間、上記ポインティング手段の操作がされなかった場合、上記制御画像を自動的に消去するよう制御することを特徴とする音声・ビデオ再生装置。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、補正前の「音声・ビデオ再生装置」に、「上記複数の制御域の1つが選択された場合に、上記処理手段は、音声を消音し、上記選択された制御域に対応するビデオ画像を再生するとともに、消音を解除することで上記選択された制御域に対応する音声が再生するよう再生手段に音声及び(又は)ビデオ信号を出力し、また、上記制御手段は、制御画像を表示する際、表示可能な制御域のうち機能が無効である制御域は表示しないよう制御し、上記制御画像が表示された後、所定の時間、上記ポインティング手段の操作がされなかった場合、上記制御画像を自動的に消去するよう制御する」という構成を付加して特許請求の範囲を減縮する補正であり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、上記補正は特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定(新規事項)及び同法第17条の2第3項の規定(補正の目的)に適合している。

(2)独立特許要件
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。
[補正後の発明]
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

[引用発明及び周知技術]
A.これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開昭63-54099号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「本発明は、テレビ受像機、ビデオデッキ、ステレオなどの映像音響関連機器および映像情報端末機器に使用する遠隔制御装置に関する。」(1頁左下欄、17〜18行目)
ロ.「第1図において、受信機50はテレビジョン受像機能を有し、送信機30から送られる信号を受信解読し、その信号に応じて機能が作動するものである。送信機30における入力面31を指で押すと絶縁状態にあったx抵抗シート32とy抵抗シート33が押された点で接触導通する。x抵抗シート32とy抵抗シート33のそれぞれの電極34に対する導通点の位置によってそれぞれの電極34の電圧または電流が直線的に変化し、その電圧または電流をA/Dコンバータ35によって7ビットのx座標データ36と6ビットのy座標データ37のデジタル値に変換する。・・・(中略)・・・送信機30ではA/Dコンバータ35の13ビットの出力をエンコーダ38でシリアルパルス列に変換するほか、キースイッチ39,40の入力に対してもシリアルパルス列を出力する。駆動部41は赤外発光ダイオード42を駆動し、赤外光43を使ってこのシリアルパルス列を送信する。
第3図から明らかなように、メニュー70,71上をカーソル78が移動する範囲は0≦x≦70,0≦y≦50である。」(3頁左上欄17〜右上欄19行目)
ハ.「受信機50では選局部51で選択したテレビジョン放送をチューナ52で受信し、検波部53で音声信号と映像信号に分け、音声信号は音量調整、ステレオ放送二カ国語放送の音声切換などの制御を行う音声制御部58を介してスピーカ61を駆動する。映像信号は、同期分離部54から出力する水平、垂直同期信号に同期してメニュー映像信号を発生するメニュー発生部55と同じくカーソル映像信号を発生するカーソル発生部56とのそれぞれの出力信号と混合部57で合成され、CRT駆動部59を介してCRTに映像として映し出される。メニュー発生部55はマイクロコンピュータ64によって制御され、メニュー表示のオンオフと第3図におけるメニュー70とメニュー71の切換を行う。また、カーソル発生部56はマイクロコンピュータ64によって制御され、カーソル表示のオンオフをするほか、マイクロコンピュータ64から座標(x,y)を入力し、メニュー70、71上のその座標位置にカーソルを表示する。」(3頁左下欄5行目〜右下欄3行目)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「受信機50」は「テレビジョン受像機能」を有しているから、当該「受信機50」は例えばテレビジョン放送の「音声及び(又は)ビデオ画像を再生する装置」であり、また、「選局部51で選択したテレビジョン放送をチューナ52で受信」するものであるから、「a)1以上の音声及び(又は)ビデオ入力信号が1以上の番組として供給される入力手段」を備え、「検波部53で音声信号と映像信号に分け・・・スピーカを駆動・・・CRTに映像として映し出される」構成における当該検波部やメニュー発生部、カーソル発生部、混合部、マイクロコンピュータ等は「b)上記入力手段に接続され、上記音声及び(又は)ビデオ入力信号を処理する処理手段」を構成し、当該スピーカやCRTは「c)上記処理手段に接続され、上記音声及び(又は)ビデオ入力信号に対応する音声及び(又は)ビデオ画像を再生する再生手段」を備えている。また、上記「送信機30」は「赤外光43を使ってこのシリアルパルス列を送信」(即ち、制御のためのx,y座標データを送信)するものであるから、上記「受信機50」は「制御信号を送信するポインティング手段」を備えており、上記「受信機50」の「メニュー発生部55はマイクロコンピュータ64によって制御され、カーソル表示のオンオフをするほか、マイクロコンピュータ64から座標(x,y)を入力し、メニュー70、71上のその座標位置にカーソルを表示する」構成における「マイクロコンピュータ」は前記処理手段や再生手段に接続されてこれらを制御するいわゆる「制御手段」を構成しているから、上記「受信機50」は「e)上記処理手段に接続され、上記ポインティング手段から制御信号を受信し、該制御信号を復号し、この復号された制御信号に応答してメニュー信号を発生し、上記処理手段を制御する制御手段と、f)上記制御手段に接続され、上記メニュー信号に対応するメニューを表示する表示手段」とを備えている。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「音声及び(又は)ビデオ画像を再生する装置であって、
a)1以上の音声及び(又は)ビデオ入力信号が1以上の番組として供給される入力手段と、
b)上記入力手段に接続され、上記音声及び(又は)ビデオ入力信号を処理する処理手段と、
c)上記処理手段に接続され、上記音声及び(又は)ビデオ入力信号に対応する音声及び(又は)ビデオ画像を再生する再生手段と、
d)制御信号を送信するポインティング手段と、
e)上記処理手段に接続され、上記ポインティング手段から制御信号を受信し、該制御信号を復号し、この復号された制御信号に応答してメニュー信号を発生し、上記処理手段を制御する制御手段と、
f)上記制御手段に接続され、上記メニュー信号に対応するメニューを表示する表示手段とを備え、
該メニューは、複数のメニュー項目と、上記ポインティング手段の操作に応答して該メニュー内を移動可能とされるポインタとを含むものであり、
上記処理手段の機能が、上記ポインタにより指し示される上記複数のメニュー項目の1つに関して、上記ポインティング手段の操作によって選択され、上記処理手段の機能の選択及び上記ポインティング手段の操作に従って、上記メニュー、上記複数のメニュー項目又は上記処理手段のどれかが制御される音声・ビデオ再生装置。」

B.また、原審の拒絶理由で引用された特開昭63-298431号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項イ〜ロが記載されており、また例えば特開平1-263878号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項ハ〜ニが記載されており、また例えば特開平1-159690号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項ホが記載されている。
イ.「さらに、最近の使用形態の複雑化、高度化に従い、ウィンドウ内の任意の領域で、マウスカーソルの形状を変更したいという要求が生じている。カーソルの表示形状を変更することにより、ユーザにカーソルの位置する領域の属性を、容易に認識させることができるという効果がある。」(2頁右上欄3〜8行目)
ロ.「また、本実施例では、説明していないが、カーソルを変更する領域をウィンドウ内に複数設定したり、変更するカーソル形状を複数設定することも可能である。」(7頁右下欄2〜5行目)
ハ.「第3図(a),(b)はこの発明によるカーソル種別描画動作を説明する模式図であり、第2図と同一のものには同じ符号を付してある。
これらの図において、31は第1カーソル種別となる矢印カーソルで、第1図に示したディジタイザ7a上のピック位置が、例えば切換え指示領域境界LINEよりも下位に位置する時、すなわちメニュー領域をポインティングデバイス7bが指示した場合に描画される。・・・(中略)・・・
33は第2カーソル種別となる十字カーソルで、第1図に示したディジタイザ7a上のピック位置が、例えば切換え指示領域境界LINEより上位に位置する時、すなわちレイアウト描画領域をポインティングデバイス7bが指示した場合に描画される。」(3頁左下欄3〜19行目)
ニ.「なお、上記実施例では表示手段5に表示されたカーソル種別を領域、例えば切換え指示領域境界LINEよりも上位か下位で、そのカーソル種別を変更描画する場合について説明したが、一定の領域を設定し、その領域の内外でカーソル種別を変更描画させてもよい。」(4頁左上欄12〜17行目)
ホ.「画像の一部を拡大若しくは縮小或いは移動させ画像全体のレイアウトを編集する際に、拡大若しくは縮小或いは移動したい部分を囲む枠の内部をPCによってポインティングし、ポインティングされた位置によって拡大若しくは縮小或いは移動などのいずれの機能かを判断し、そのままPCを動かすことによって枠が変形又は移動し、同時に枠に囲まれた部分が拡大若しくは縮小或いは移動することによって画像全体のレイアウトの編集を行うことができ、操作の容易性および確実性が向上する。尚上記機能判断を行った後、編集位置指定の為の第1PCに代え、編集機能に対応するPCに変更表示させるようにすることにより、操作者にどの機能を選んでいるかを視覚的に認識させることができ、更に、操作の容易性、確実性を向上させるようにすることができる。」(4頁左上欄7行目〜右上欄3行目)

例えば、上記周知例1〜3に記載されているように「カーソルの形状を変更する領域は所定の機能が設定されたいわゆる制御領域(例えばコマンド領域、図形描画領域)であり、これらの制御領域に制御機能に対応する形状のカーソル(例えば十字カーソルや矢印カーソル)を割り当てること」は周知である。

C.また、例えば特開昭64-7864号公報(以下、「周知例4」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
「電源ON/OFF時およびチャンネル切換時にはマイクロプロセッサの制御信号出力端子4より制御信号(切換音消去信号)が出され、信号切換スイッチ3はこの信号によってCに切り換わる。Cには信号が入っていないので音声信号は無信号状態となり消音する。」(2頁左下欄6〜11行目)

例えば上記周知例4に記載されているように「テレビ受像機において、チャンネル切換時に、消音する」ことは周知である。

D.また、例えば特開平4-113785号公報(以下、「周知例5」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「ここで、サウンドモードを「オフ」状態に選択すれば次の第7ステップST7で選択された定常的なメニュー画面(31c)が第2図Dの様にサウンドモードが消されて表示される。」(3頁右下欄16〜19行目)
ロ.「本発明のテレビジョン画像表示装置によれば、ユーザにとって余計な表示がでない定常メニューが表示され見やすい画面を得ることが出来る。」(4頁右上欄15〜17行目)

上記周知例5に記載されているように「制御画像を表示する際、表示可能な制御域のうち機能が無効である制御域は表示しないよう制御する」ことは周知である。

E.また、例えば特開平3-106276号公報(以下、「周知例6」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「オンスクリーン装置は、モニタに表示すべきテレビ放映画像等の本来の画像信号に対してスイッチング回路によりキャラクタゼネレータから読み出したキャラクタ信号や別回路で作成したパターン信号を混合させる回路であり、そのキャラクタ信号やパターン信号は予め設定された所定の時間(例えば5秒間)だけスイッチング回路に入力されるように構成されている。つまり、オンスクリーンが開始してから終了(タイムアウト)するまでの表示時間は上記時間に固定されている。」(1頁右下欄7〜14行目)
ロ.「この装置では、リモコン送信器2で例えば音量を変化させる操作を行うと、その操作内容を担持した赤外線光がそこから出射してホトアンプ12に入射し、・・・(中略)・・・デコード等が行われて、・・・(中略)・・・このコードに基づいて音量制御部(電子ボリウム:図示せず)に対して音量を変化させる指令が与えられると同時に、制御部11に内蔵されたキャラクタゼネレータおよびパターンゼネレータにより、オンスクリーン信号が作成され、これがオンスクリーン回路13に出力される。」(2頁右上欄14〜左下欄5行目)

上記周知例6に記載されているように「リモコンのオンスクリーン画像が表示された後、所定の時間、前記リモコンの操作がされなかった場合、前記画像を自動的に消去するよう制御する」ことは周知である。

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比するに、補正後の発明の「制御画像」は「TV受像機1で選択され制御されるべき機能を示す」ものであり、「TV受像機1の機能に関しこれを表すワード又はアイコンと一緒にキーやその他のシンボルの映像をも含むように作る」ものであり、「制御域CA又は表示域DAを定める」ものであるから(本願公開公報段落11参照)、補正後の発明の当該構成は引用発明でいう「メニュー」に他ならず、それゆえ、補正後の発明の「制御画像」、「制御画像信号」、「制御域」と引用発明の「メニュー」、「メニュー信号」、「メニュー項目」との間に実質的な差異はない。
また、引用発明の「ポインティング手段の操作に従って、上記メニュー、上記複数のメニュー項目又は上記処理手段のどれかが制御され」という構成と補正後の発明の「ポインティング手段の操作に従って、上記制御画像、上記複数の制御域又は上記処理手段のどれかが制御され」という構成は少なくとも「処理手段が制御され」る点で差異はない。
したがって、補正後の発明と引用発明は、
「音声及び(又は)ビデオ画像を再生する装置であって、
a)1以上の音声及び(又は)ビデオ入力信号が1以上の番組として供給される入力手段と、
b)上記入力手段に接続され、上記音声及び(又は)ビデオ入力信号を処理する処理手段と、
c)上記処理手段に接続され、上記音声及び(又は)ビデオ入力信号に対応する音声及び(又は)ビデオ画像を再生する再生手段と、
d)制御信号を送信するポインティング手段と、
e)上記処理手段に接続され、上記ポインティング手段から制御信号を受信し、該制御信号を復号し、この復号された制御信号に応答して制御画像信号を発生し、上記処理手段を制御する制御手段と、
f)上記制御手段に接続され、上記制御画像信号に対応する制御画像を表示する表示手段とを備え、
該制御画像は、複数の制御域と、上記ポインティング手段の操作に応答して該制御画像内を移動可能とされるポインタとを含むものであり、
上記処理手段の機能が、上記ポインタにより指し示される上記複数の制御域の1つに関して、上記ポインティング手段の操作によって選択され、上記処理手段の機能の選択及び上記ポインティング手段の操作に従って、上記制御画像、上記複数の制御域又は上記処理手段のどれかが制御される音声・ビデオ再生装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>「ポインタ」に関し、補正後の発明は「上記ポインティング手段の操作に応答して該制御画像内を移動可能とされ、且つ該制御画像内のその位置に従って、従来装置の動作に関して行われる、選択操作を含む各種操作を模倣すべく、その形が変えられる」構成であるのに対し、引用発明は単に「上記ポインティング手段の操作に応答して該制御画像内を移動可能とされる」構成である点。

<相違点2>「音声・ビデオ再生装置」に関し、補正後の発明は「上記複数の制御域の1つが選択された場合に、上記処理手段は、音声を消音し、上記選択された制御域に対応するビデオ画像を再生するとともに、消音を解除することで上記選択された制御域に対応する音声が再生するよう再生手段に音声及び(又は)ビデオ信号を出力し、また、上記制御手段は、制御画像を表示する際、表示可能な制御域のうち機能が無効である制御域は表示しないよう制御し、上記制御画像が表示された後、所定の時間、上記ポインティング手段の操作がされなかった場合、上記制御画像を自動的に消去するよう制御する」という構成を備えているのに対し、引用発明はその点の構成を備えていない点。

そこで、上記相違点1の「ポインタ」について検討するに、例えば上記周知例1〜3に開示されているように「カーソルの形状を変更する領域は所定の機能が設定されたいわゆる制御領域(例えばコマンド領域、図形描画領域)であり、これらの制御領域に制御機能に対応する形状のカーソル(例えば十字カーソルや矢印カーソル)を割り当てること」は周知であるところ、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらず、また、例えば上記周知例2に開示されている「レイアウト描画領域における十字カーソル」や上記周知例3に開示されている「拡大若しくは縮小或いは移動方向を示す矢印カーソル」は「制御画像内のその位置に従って、従来装置の動作に関して行われる、選択操作を含む各種操作を模倣」する形状のカーソルに他ならないから、引用発明の「ポインタ」をこれらの周知技術に基づいて、補正後の発明のような「上記ポインティング手段の操作に応答して該制御画像内を移動可能とされ、且つ該制御画像内のその位置に従って、従来装置の動作に関して行われる、選択操作を含む各種操作を模倣すべく、その形が変えられる」構成とする程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。

ついで、上記相違点2の「音声・ビデオ再生装置」について検討するに、例えば上記周知例4に記載されているように「テレビ受像機において、チャンネル切換時に、消音する」ことは周知であり、上記周知例5に記載されているように「制御画像を表示する際、表示可能な制御域のうち機能が無効である制御域は表示しないよう制御する」ことも周知であり、上記周知例6に記載されているように「リモコンのオンスクリーン画像が表示された後、所定の時間、前記リモコンの操作がされなかった場合、前記画像を自動的に消去するよう制御する」ことも周知であるところ、これらの周知技術は互いに独立な技術手段であり、しかもテレビ受像機において普通に利用されている技術手段であるから、これらの周知技術を引用発明に適用する程度のことは単なる設計的事項である。したがって、引用発明の音声・ビデオ再生装置にこれらの周知な技術手段を付加して補正後の発明のような「上記複数の制御域の1つが選択された場合に、上記処理手段は、音声を消音し、上記選択された制御域に対応するビデオ画像を再生するとともに、消音を解除することで上記選択された制御域に対応する音声が再生するよう再生手段に音声及び(又は)ビデオ信号を出力し、また、上記制御手段は、制御画像を表示する際、表示可能な制御域のうち機能が無効である制御域は表示しないよう制御し、上記制御画像が表示された後、所定の時間、上記ポインティング手段の操作がされなかった場合、上記制御画像を自動的に消去するよう制御する」構成を得る程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第4項の規定により準用する特許法第126条第3項の規定に違反している。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成15年10月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年5月12日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「音声及び(又は)ビデオ画像を再生する装置であって、
a)1以上の音声及び(又は)ビデオ入力信号が1以上の番組として供給される入力手段と、
b)上記入力手段に接続され、上記音声及び(又は)ビデオ入力信号を処理する処理手段と、
c)上記処理手段に接続され、上記音声及び(又は)ビデオ入力信号に対応する音声及び(又は)ビデオ画像を再生する再生手段と、
d)制御信号を送信するポインティング手段と、
e)上記処理手段に接続され、上記ポインティング手段から制御信号を受信し、該制御信号を復号し、この復号された制御信号に応答して制御画像信号を発生し、上記処理手段を制御する制御手段と、
f)上記制御手段に接続され、上記制御画像信号に対応する制御画像を表示し、該制御画像は、複数の制御域と、上記ポインティング手段の操作に応答して該制御画像内を移動可能とされ、且つ該制御画像内のその位置に従って、従来装置の動作に関して行われる操作を模倣すべく、その形が変えられるポインタとを含むものである表示手段と
を具え、上記処理手段の機能が、上記ポインタにより指し示される上記複数の制御域の1つに関して、上記ポインティング手段の操作によって選択され、上記処理手段の機能の選択及び上記ポインティング手段の操作に従って、上記制御画像、上記複数の制御域又は上記処理手段のどれかが制御されることを特徴とする音声・ビデオ再生装置。」

2.引用発明及び周知技術
引用例に記載された引用発明及び周知技術は、上記「第2.2(2)[引用発明及び周知技術]」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は、補正後の「音声・ビデオ再生装置」の構成から、「上記複数の制御域の1つが選択された場合に、上記処理手段は、音声を消音し、上記選択された制御域に対応するビデオ画像を再生するとともに、消音を解除することで上記選択された制御域に対応する音声が再生するよう再生手段に音声及び(又は)ビデオ信号を出力し、また、上記制御手段は、制御画像を表示する際、表示可能な制御域のうち機能が無効である制御域は表示しないよう制御し、上記制御画像が表示された後、所定の時間、上記ポインティング手段の操作がされなかった場合、上記制御画像を自動的に消去するよう制御する」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を限定した上記補正後の発明が上記「第2.2(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知例1〜7に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-10 
結審通知日 2005-08-16 
審決日 2005-08-29 
出願番号 特願平6-50826
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04Q)
P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 浜野 友茂
小林 紀和
発明の名称 音声・ビデオ再生装置  
代理人 角田 芳末  
代理人 磯山 弘信  

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