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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B04B
管理番号 1129660
審判番号 不服2002-6039  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-04-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-09 
確定日 2006-01-12 
事件の表示 平成3年特許願第278351号「粉体分級機」拒絶査定不服審判事件〔平成5年4月16日出願公開、特開平5-92151〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年9月30日に特許出願したものであって、請求項1に係る発明は、平成13年1月31日付け及び平成14年5月1日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「分級ロータの回転により粉体に作用する遠心力と、分級ロータの軸心方向に通過する空気流により粉体に作用する抗力とのバランスにより粉体を分級するときに、ロータ回転の遠心力により分離された粗粉は粗粉側出口に、空気流による抗力により分離された微粉は微粉側出口に、それぞれ分級される粉体分級機において、前記分級ロータの直径D(cm)に対する羽根枚数nの比n/D(羽根比)を、前記微粉側出口からの微粉を目的とする製品として採取する場合は2.0>n/D>1.0、前記粗粉側出口からの粗粉を目的とする製品として採取する場合は0.8>n/D>0.4に設定したことを特徴とする分級機。」(以下「本願発明」という。)

2.引用文献の記載事項
原審において拒絶の理由に引用された特開昭62-298484号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。
「上面中央に粉体注入口を有し且つ外側壁周囲に空気導入口を有するケーシング内に、周縁部から軸心方向に向って伸びるように配置された複数の分級羽根により空気流通空胴部が形成された分級ロータを垂直回転軸により回転可能に設け、前記分級ロータの回転により粉体に作用する遠心力と前記空気流通空胴部を軸心方向に通過する空気流により該粉体に作用する抗力とのバランスにより粉体を分級する粉体分級機において、前記分級羽根の枚数を、少なくとも分級ロータの直径と前記流通空洞部を通過する空気量との基づいて通常定められる分級羽根の枚数より少ない枚数としたことを特徴とする粉体分級機。」(特許請求の範囲)
「ところでこの種の粉体分級機における分級羽根7および8の枚数は分級精度に影響を及ぼすことが知られている。羽根の作用は空気流の方向を一定にし、整流が正しく行なわれるようにするほかに粒子に遠心力を与えることである。そのため従来では羽根枚数は空気量と分級ロータの直径とを考慮して次のような観点から決定している。すなわち、羽根の枚数が少ないと空気の流れに逆向きの流れが生じて分級場が乱れることがあり、逆に羽根の枚数が多くなると多少の流れの傾きはあるものの全体としてはかなり整流された良い分級場が形成される。従って分級場の整流という面から見れば羽根の枚数は多い方が望ましいが、設計上有効風通過開口断面積の確保のために上限がある。そこでたとえば処理量が1時間当たり4000kg位までの大型分級機では羽根枚数は90枚、1000kg位までの中型分級機では羽根枚数は45枚が選ばれている。本発明者は分級機の分級羽根の枚数を変えて実験した結果、羽根枚数が製品の収率、特に粗粉側製品の収率に影響があることに気が付いた。
(発明の目的および構成)
本発明は上記の点にかんがみてなされたもので、粗粉側製品の収率を向上することを目的とし、この目的を達成するため粉体分級機の分級羽根の枚数を少なくとも分級ロータの直径と空気量との基づいて通常定められる分級羽根枚数より少ない枚数とした。
(実施例)
以下本発明を詳細に説明する。本発明の対象とする粉体分級機においては分級羽根も軽度の粉砕効果を有するため羽根枚数が多いと粉砕効果もそれだけ大きくなって粗粉の粉砕が起り、本来所望する微粉混入の少ない粗粉の回収が困難になる。次に比較的大型の分級機を用いて2種類の粉体を分級した実験例を示す。
(1)実験例1
対象粉体:重炭酸カルシウム
(審決註:重炭酸カルシウムの粉体は、通常存在しない(化学大事典「炭酸水素カルシウム」の項参照)ので、「炭酸カルシウム」の誤記と認定する。)
羽根 分級ロータ 風量 供給量 収率(%)
枚数 回転数(rpm)m3/分 トン/時 粗粉 微粉
60枚 1300 97.0 1.9 38.4 61.6
標準
90枚 1300 97.0 1.9 30.8 69.2
(2)実験例2
対象粉体:酸化ケイ素
羽根 分級ロータ 風量 供給量 収率(%)
枚数 回転数(rpm)m3/分 トン/時 粗粉 微粉
60枚 430 67.5 1.3 45.0 55.0
標準
90枚 430 67.5 1.3 38.0 62.0
上記2つの実験例からわかるように、分級羽根の羽根枚数を標準枚数(上記の例では90枚)より少なくすると、粗粉収率は増加する。さらに実験例2の結果を粒度分布図にしてみると第1図のようになる。曲線Aが分級前の粉体、曲線B1、B2が分級羽根枚数が90枚の場合の微粉と粗粉、曲線C1、C2が分級羽根枚数が60枚の場合の微粉と粗粉である。この図からわかるように、本発明で提案するように分級羽根の枚数を少なくすると微粉の粒度があまり変らず粗粉の粒度が粗くなっていることを示している。すなわち粗粉中の微粉が混入する割合が減少し良い粗粉が得られる。中型分級機についても、通常設計による羽根枚数45枚を36枚に減らすことにより同様の結果が得られることが実験的に確認されている。
(発明の効果)
以上説明したように、本発明においては、粉体分級機の分級羽根の枚数を少なくとも分級ロータの直径と空気量との基づいて通常定められる分級羽根枚数より少ない枚数としたので、粗粉側製品にとっては微粉の混入が減少するとともに収率が増加するという効果が得られる。」(第3頁左上欄16行〜第4頁左上欄10行、第1図参照)

3.対比・判断
本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比する。
引用文献1には、本願発明と同種の「粉体分級機」が記載され、さらに、粗粉側製品の収率を向上することを目的とし、この目的を達成するため粉体分級機の分級羽根の枚数を少なくとも分級ロータの直径と空気量との基づいて通常定められる(標準)分級羽根枚数より少ない枚数とすることが記載されている。
そして、処理量が1時間当たり4000kg位までの大型分級機では羽根枚数は標準90枚、1000kg位までの中型分級機では羽根枚数は標準45枚が選ばれていること、実施例では、上記標準90枚の大型分級機の羽根枚数を60枚としたもの(実験例(1))、標準45枚の中型分級機を36枚としたもの(実験例(2))が具体的に開示されている。
ここで、請求人の関連する会社が頒布する「精密空気分級機総合カタログ」(http://www.nisshineng.com/jpn/download/pdf/j06.pdf)をみると、処理量が1時間当たり4000kg位までの大型分級機は、型式TC-100、また、処理量が1時間当たり1000kg位までの中型分級機は、型式TC-60のものに相違なく、型式TC-100のものは、分級ロータの直径が100cm、型式TC-60のものは、同じく60cmであることが明らかに読み取れる。
してみると、粗粉側出口からの粗粉を目的とする製品として採取する場合として、n/Dが60/100=0.6のもの、あるいは36/60=0.6のものが記載され、本願発明の設定値0.8>n/D>0.4を満たしている。
したがって、引用文献1には、本願発明である「分級ロータの回転により粉体に作用する遠心力と、分級ロータの軸心方向に通過する空気流により粉体に作用する抗力とのバランスにより粉体を分級するときに、ロータ回転の遠心力により分離された粗粉は粗粉側出口に、空気流による抗力により分離された微粉は微粉側出口に、それぞれ分級される粉体分級機において、前記分級ロータの直径D(cm)に対する羽根枚数nの比n/D(羽根比)を、前記粗粉側出口からの粗粉を目的とする製品として採取する場合は0.8>n/D>0.4に設定したことを特徴とする分級機」が記載されている。
4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-11 
結審通知日 2005-11-15 
審決日 2005-11-29 
出願番号 特願平3-278351
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 泰三  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 野田 直人
佐藤 修
発明の名称 粉体分級機  
代理人 鈴木 弘男  
代理人 鈴木 弘男  

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