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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07F
管理番号 1129705
審判番号 不服2004-13476  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-30 
確定日 2006-01-12 
事件の表示 平成 5年特許願第250191号「商品収納コラム」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 3月31日出願公開、特開平 7- 85358〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件審判請求に係る出願は、平成5年9月10日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年2月2日付及び平成16年6月30日付手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「商品収納コラムの内部に上下方向に多数配設され、商品の落下を案内する商品収納コラムのガイド板を、上下方向に配設され、商品通路を構成するとともに、前記商品収納コラムの側板に取り付けた支軸に、上端部が回動自在に支持された複数のガイド板本体と、当該ガイド板本体の下端部に回動自在に支持された姿勢制御板と、前記ガイド板本体を前記商品通路に張り出すように内方に付勢する本体用付勢手段と、前記姿勢制御板を前記商品通路に張り出すように上方に付勢する制御板用付勢手段とで、構成し、
前記複数のガイド板本体は、前記商品によって外方に押し退けられた状態で、上側の前記ガイド板本体の下端が下側の前記ガイド板本体の上端付近に隣接するように配置され、
前記複数のガイド板本体を前部と後部のいずれか一方に多数配設して、内部に上下方向に延びる商品通路を構成したことを特徴とする商品収納コラム。」

2.引用例に記載された事項及び発明
(1)原審において、拒絶の理由に引用された、実願昭58-142812号(実開昭60-52577号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。
A.「(イ) 産業上の利用分野
本考案は、対向して垂設した一対の側板間に蛇行しながら上下方向に延在する商品走行路を形成し、該走行路に上端を回勤自在に軸支し下部を揺動自在に垂下せしめた円弧状の走行部材を介在せしめ、前記走行路内に投入された商品が前記走行部材を外方へ揺動しながら転動落下するようにした自動販売機の商品収納装置に関する。」(明細書2頁7〜14行)
B.「(ハ)考案の目的
本考案は上記の点から、長短兼用の商品収納装置での転動落下商品のバランスを失わせることなく転動落下速度を確実に減速制御せしめるとともに転動商品の変形及び傷を発生させることなく、かつ簡単な構成とした装置を提供するものである。」(同2頁12〜15行)
C.「(1)(1)´は自動販売機本体内に相対向して垂設された左右一対の側板で、…(略)…。(3)は前記側板(1)(1)´間に架設された軸杆で、所定間隔を有して上下方向かつ前後に配設している。(4)は前記側板(1)(1)´の間隔よりも僅かに小さい幅を有した板体にて円弧状に湾曲形成された上側走行部材で、上側を湾曲外方へ折曲するとともに湾曲内方へカール折曲して前記軸杆(3)に着脱自在に係止して軸支される軸止部(5)を形成し、…(略)…。(9)は上端を前記上側走行部材(4)の下端に軸(10)を介して回動自在に連結した下側走行部材で、前記上側走行部材(4)と同じ幅を有した板体にて円弧状に湾曲形成して成り、該湾曲が前記上側走行部材(4)の湾曲と反対に湾曲する状態に連結される。即ち、上側走行部材(4)の下端に下側走行部材(9)を回動自在に連結して全体として略S字状に形成される走行部材(11)を構成し、上端の軸止部(5)を前記軸杆(3)にそれぞれ回動自在に係止して上下方向に連続して配設するとともに、上側走行部材(4)の湾曲内面を形成する走行面(12)が相対向するよう前後に対設せしめることにより、上端に商品の投入口(13)を形成し下端に送出口(14)を形成して前後に蛇行しながら上下方向に延在する商品走行路(15)を前記側板(1)(1)´間に形成している。また前記軸(10)には下側走行部材(9)の下部を商品走行路(15)内上方へ回動付勢するバネ(16)を設けている。即ち上端の軸止部(5)を前記軸杆(3)に回動自在に軸支され揺動自在なるよう自重にて垂下した走行部材(11)は上下端部の中間の連結部をバネ(16)の弾性にて回動折曲され、該走行部材(11)の下部である下側走行部材(9)の下部を商品走行路(15)内上方へ延出するように構成され、このとき下側走行部材(9)は湾曲外面を走行路(15)上方に向けて延出し、上方から転動落下してくる商品(A)を湾曲外面の面で受けるように構成される。(17)は前記側板(1)(1)´間に設けた規制部材で、上側走行部材(4)の湾曲外面に当接して上側走行部材(4)の揺動範囲を規制する。また下側走行部材(9)は下部を下方に位置する走行部材(11)上端の軸止部(5)に当接可能にして商品走行路(15)外方への回動を規制される。即ち下側走行部材(9)は規制部材として作用する下位の走行部材(11)の軸止部(5)によって回動を規制される。」(同6頁1行〜8頁13行)
D.「そして投入口(12)から商品走行路(15)内へ商品(A)が投入されると、商品(A)は上側走行部材(4)の走行面(12)に当接して走行部材(11)を走行路(15)外方へ押庄回動することにより減速制御され、更に下側走行部材(9)に当接してこの下側走行部材(9)をバネ(15)の弾性に抗して下方へ回動せしめるとともに走行路(15)外方へ回動して減速制御される。」(同2頁12〜15行)
E.「投入口から投入された商品の転動落下速度を一定の低速度となるよう確実に制御できる。また走行部材を上下に2分割し、上側走行部材及び下側走行部材は商品の長さ方向の全体を当接して制御する構成であるから、短い商品の転動落下時においても該商品が上側走行部材及び下側走行部材による転動制御によってバランスを失うことがない。」(同2頁12〜15行)
上記の記載(特にC参照)及び第1図、第3図の記載からみて、上記引用例1には、次のような発明が記載されている。
「自動販売機本体内に相対向して垂設された左右一対の側板間に架設された軸杆に、側板の間隔よりも僅かに小さい幅を有した板体を円弧状に湾曲形成した上側走行部材の上端の軸支部を回動自在に軸支し、上側走行部材の下端に軸を介して下側走行部材を回動自在に連結し、上側走行部材と下側走行部材とからなる走行部材を上下方向に連続して配設して、上側走行部材の湾曲内面が相対向するよう前後に対設せしめることにより、上下方向に延在する商品走行路を側板間に形成し、上側走行部材と下側走行部材との連結軸に、下側走行部材の下部を商品走行路内上方へ回動付勢するバネを設け、両側板間に、上側走行部材の湾曲外面に当接して上側走行部材の揺動範囲を規制する規制部材を設けた、自動販売機の商品収納装置。」

(2)同じく原審において引用された、実願平3-84631号(実開平5-36581号)のCD-ROM(以下、「引用例2」と言う。)には、次の事項が図面と共に記載されている。
F.「この円弧板3の上部には屈曲したバネ係止板3dが形成されている。このバネ係止板3dには円弧板3の軸3aに介装されたコイルバネ6の一端が係止し、他方、バネ係止棒5にはこのコイルバネ6の他端が係止して円弧板3を商品収納路4の内側に向かって回転付勢している。」(明細書の段落番号0014の10〜13行)
G.「更に、図1に示すように、円弧板3がコイルバネ6により内側に回動付勢されてるため、この円弧板3に衝突した商品がこのコイルバネ6の付勢力により、緩衝され、円弧板3の長穴3bと相俟ってその静音効果を更に向上させる。」(同0018)

3.対比・判断
本願発明と引用例1に記載された発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)とを対比する。
引用例1記載の発明の「走行部材」、「軸杆」、「上側走行部材」、「下側走行部材」、「バネ」、「商品走行路」、「商品収納装置」は、その作用等からみて、本願発明の「ガイド板」、「支軸」、「ガイド板本体」、「姿勢制御板」、「制御板用付勢手段」、「商品通路」、「商品収納コラム」にそれぞれ相当するものである。
又、本願発明と引用例1記載の発明とは、上側のガイド板本体の下端が、その設置間隔に違いはあるものの、下側のガイド板本体の上端の上方に位置していることにおいて共通するものである。
以上の認定によれば、両者は次の一致点および相違点を有するものと認められる。
[一致点]
商品収納コラムの内部に上下方向に多数配設され、商品の落下を案内する商品収納コラムのガイド板を、上下方向に配設され、商品通路を構成するとともに、前記商品収納コラムの側板に取り付けた支軸に、上端部が回動自在に支持された複数のガイド板本体と、当該ガイド板本体の下端部に回動自在に支持された姿勢制御板と、前記姿勢制御板を前記商品通路に張り出すように上方に付勢する制御板用付勢手段とで、構成し、
前記複数のガイド板本体は、前記商品によって外方に押し退けられた状態で、上側の前記ガイド板本体の下端が下側の前記ガイド板本体の上端の上方に配置され、
前記複数のガイド板本体を後部に多数配設して、内部に上下方向に延びる商品通路を構成したことを特徴とする商品収納コラム。
[相違点1]
本願発明が、ガイド板本体を商品通路に張り出すように内方に付勢する本体用付勢手段を備えているのに対して、引用例1記載の発明は、そのような付勢手段を備えていない点。
[相違点2]
商品によってガイド板本体が外方に押し退けられた状態における、上側のガイド板本体の下端と下側のガイド板本体の上端の位置関係に関して、本願発明では、下端が上端付近に隣接するように配置されているのに対して、引用例1記載の発明では、下端が上端の上方に間隙をあけて配置されている点。
[相違点3]
複数のガイド板本体を多数配設するについて、本願発明では、前部と後部のいずれか一方に配設しているのに対して、引用例1記載の発明では、前部と後部の両方に配設している点。

上記相違点について検討する。
[相違点1]について
コイルバネ(本願発明の「付勢手段」に相当)により円弧板(同「ガイド板」)を商品収納路(同「商品通路」)の内側に向かって付勢し、その付勢力により、円弧板に衝突した商品を緩衝することは、上記引用例2に記載されるように公知の技術手段であり、又、引用例2に記載された発明も自動販売機のサーペンタイン方式の商品収納部に関するものであるから、引用例2に記載された公知の技術手段を、引用例1記載の発明に応用して、本願発明の構成とすることに、格別の困難性は認められない。

[相違点2]について
相違点2に係る「商品によってガイド板本体が外方に押し退けられた状態で、上側のガイド板本体の下端が下側のガイド板本体の上端付近に隣接する」ことの意義について、本願明細書には特段の記載はないところ、請求人は、審判請求書において、「本願請求項1に係る発明においては、「前記複数のガイド板本体は、前記商品によって外方に押し退けられた状態で、上側の前記ガイド板本体の下端が下側の前記ガイド板本体の上端付近に隣接するように配置」した構成を採用することによって、仮に、制御板用付勢手段が損傷した場合にも、上側の前記ガイド板本体によって商品通路が形成される」(6頁11〜16行)と主張しており、この点が、相違点2に係る事項の意義と認められる。
ところで、請求人は、この点に関連して、「引用文献1では、上下に隣接する走行部材11の間に大きな間隙が形成(第1図、第4図)され、走行部材4が外方に押し退けられた状態で下側走行部材9が隙間を埋めるように配設されているから、バネ16が損傷すると、上側走行部材4が商品通路に張り出した状態で下側走行部材9は垂れ下がった状態となり、商品が投入されて上側走行部材4が外方に押し退けられた際に下側走行部材9の下端が下方に位置する走行部材11の軸止部5に当接することなく商品通路の外側に移動してしまうおそれがある」旨、主張する(審判請求書5頁22行〜6頁7行参照)ので、この点について、検討する。
引用例1に「(17)は前記側板(1)(1)´間に設けた規制部材で、上側走行部材(4)の湾曲外面に当接して上側走行部材(4)の揺動範囲を規制する。」(明細書8頁6〜8行、上記C参照)と記載されるとおり、引用例1記載の発明の上側走行部材(4)は、規制部材(17)によって揺動範囲が規制(第4図参照)されているものであり、下側走行部材は、その上端で上側走行部材下端に軸支されているだけであって、上側走行部材の揺動範囲に直接関与するものではないから、上側走行部材は、下側走行部材に関係なく、その回動範囲が規制されていることは明らかである(第4図の右側の上下2つの走行部材参照)。
付言すれば、引用例1記載の発明の下側走行部材(9)は「下部を下方に位置する走行部材(11)上端の軸止部(5)当接可能にして商品走行路(15)外方への回動を規制される。」(明細書8頁9〜11行、上記C参照)ものであるが、それによって、走行部材そのものの回動を規制しているわけではないことは、第4図等の記載からも明らかである。
したがって、仮に、バネ(16)が損傷して、下側走行部材が垂れ下がった状態となったとしても、商品により通路外方に押された上側走行部材は、規制部材に当接して回動が規制され、その状態で、上側走行部材の下端(下側走行部材の上端)の位置が決定され、下側走行部材は、当該位置を回動の軸として、垂れ下がった状態から、(支軸に当接することにより)若干持ち上げられた状態(第4図右側上方の走行部材参照)になるだけであるから、請求人が主張する「下側走行部材9の下端が下方に位置する走行部材11の軸止部5に当接することなく商品通路の外側に移動してしまう」ようなことは起こり得ず、引用例1記載の発明においても、仮にバネ(16)が損傷しても、商品走行路は形成されているから、請求人の上記主張は、失当である。
以上のとおり、相違点2に係る「上側のガイド板本体の下端が下側のガイド板本体の上端付近に隣接する」ことに関して、「上側のガイド板本体の下端」と「下側のガイド板本体の上端」との間隔の違いにより、作用効果に格別の差が生じるものとも認められないから、上記間隔をどの程度のものにするかは、当業者が適宜決定し得る設計事項であると認める。

[相違点3]について
相違点3に係る「複数のガイド板本体を前部と後部のいずれか一方に多数配設する」なる事項について検討する。
上記事項の意味するところについて、本願明細書には明記されていないので、審判請求書及び平成17年8月30日付回答書を参酌すると、「「前記複数のガイド板本体を前部と後部のいずれか一方に多数配設して、内部に上下方向に延びる商品通路を構成」することによって、前部と後部のいずれか一方に配設されるガイド板本体が上下方向に連接される側(例えば、前部)と対向する側(例えば、後側)のガイド板はコストの安いガイド板を使用することができる」(審判請求書6頁19〜23行)との主張、及び、本願の図1、2、4の記載からみて、上記事項は、商品通路を構成する前後のガイド板の一方(例えば後部)は、姿勢制御板、付勢手段等を有する(コストの高い)ガイド板で構成し、他方(例えば前部)のガイド板を、姿勢制御板、付勢手段を有しない(コストの安い)単なる湾曲板で構成することである、と解されるところ、前レール(ガイド板)を単なる湾曲板、後レールを付勢手段等を有する湾曲板で構成する商品通路は、例えば、実願昭60-181378号(実開昭62-89801号)のマイクロフィルム等に示されるように周知の技術手段であるから、引用例1記載の発明における商品走行路(商品通路)を構成するに際し、下側走行部材等を有する走行部材を一方の側だけのガイド板とすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。

4.まとめ
以上のとおり、上記各相違点は格別なものとは認められず、又、作用効果においても、上記引用例1記載の発明に、引用例2に記載された事項及び周知の技術手段を適用したものの奏する作用効果と比べて格別なものとも認められないから、本願発明は、上記引用例1記載の発明、引用例2に記載された事項及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-07 
結審通知日 2005-11-15 
審決日 2005-11-28 
出願番号 特願平5-250191
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨江 耕太郎  
特許庁審判長 岡 千代子
特許庁審判官 佐野 遵
長浜 義憲
発明の名称 商品収納コラム  
代理人 篠部 正治  

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