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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60H
管理番号 1129859
審判番号 不服2004-4980  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-11 
確定日 2006-01-18 
事件の表示 平成 7年特許願第248662号「車両用空調機の操作装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月11日出願公開、特開平 9- 66725〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年8月31日の出願であって、その請求項2に係る発明は、平成17年9月1日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2に記載された次の事項により特定されるものである。
「設定用のロータリタイプの設定器を備えた車両用空調機の操作装置であって、該設定器の回転軸の先端に設定用のツマミを取り付け、該設定器を、該ツマミがセットされる操作パネルに設けられた取付部に固定し、該設定器の電気的な接続のための端子を、弾性変形可能なフラットな板状の金属板であり、該金属板の途中で、直交する位置までねじられた該金属板とし、該端子を用いて、前記設定器を印刷配線板に接続した車両用空調機の操作装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
これに対し、当審において拒絶の理由に引用した実願昭59-145027号(実開昭61-61803号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「被取付部分にネジの形成された電子部品を操作パネルにあけた取付孔に取付けるにあたり、前記取付孔に一体形成した弾性の係合片に逆って前記電子部品のネジの山部を圧入し、ネジの山部と係合片を係合することによって電子部品を操作パネルに取付けてなる電子部品の取付装置。」(実用新案登録請求の範囲)
ロ.「本考案は音響機器や各種電子機器の被取付用ネジの形成された電子部品の取付装置に関する。」(第1頁第13〜14行)
ハ.「以下本考案の一実施例につき図面を参照して詳細に説明する。先ず第1図および第2図において、(20)はプリント配線板(19)に取着され、電気的に接続されたボリウムであり、このボリウム(20)の操作軸(19)[(18)の誤記と思われる。]取付部付近には取付用のネジ(21)が形成されている。また(22)は操作パネルであり、この操作パネル(22)には凹部(23)が形成され、さらに凹部(23)の底面(24)には取付孔(25)があけられている。」(第3頁第12〜20行)
ニ.「ところでプリント配線板(19)に取着した状態のボリウム(20)の操作軸(18)を操作軸(18)を取付孔(25)に挿入していくと、ネジ(21)のネジ山(212)と係合片(26)の先端部(27)が突き当たる。そこで係合片(26)の弾性に抗してボリウム(20)を押込んで行くと係合片(25)の先端はネジ(21)のネジ山(212)とネジ溝(211)を交互に飛び越えて移動する。そしてボリウム(20)の本体部と凹部(23)の底面(24)が当接したネジ溝(211)と係合片(26)の位置によりボリウム(20)は保持される。なお操作軸(18)の先端には図示しないが操作つまみが取着される。」(第4頁第7〜17行)
そして、第1図、第2図から、ボリウム(20)とプリント配線板(19)とを接続する複数の部材が把握できる。
上記イ〜ニの記載及び図面の記載によれば、引用例には、
ボリウムの取付装置であって、ボリウムの操作軸の先端に操作つまみが取着され、ボリウムを操作パネルの凹部の底面に係合・保持し、該ボリウムの電気的な接続のための部材を用いて、ボリウムをプリント配線板に接続したボリウムの取付装置(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。 また、当審における拒絶の理由に示し、本願の出願前に頒布された刊行物である実願平5-1762(実開平6-60068号)のCD-ROM(以下、「周知例A」という。)には、次の事項が記載されている。
・「リード片を有する端子を絶縁ハウジングの一側壁に所定のピッチで複数組備え、プリント基板の回路パターンに接続されるリード片に弾性部を形成して成るプリント基板用コネクタ。」( 【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】)
・「【考案が解決しようとする課題】ところで、上述した従来のプリント基板は、ハウジング1とプリント基板3の熱膨張係数が異なるため、例えば自動車等の温度変化が大きい所で使用すると、ハウジングの熱膨張量aとプリント基板の熱膨張量bの関係がa>bとなる。このため、上記温度変化を何度も繰り返すと、半田接合部6に応力が加わり、図6に示すように半田接合部6にクラックXが入り、遂にはリード片5の導通が遮断されたものも出ることがあるという問題がある。この考案は、上記従来のプリント基板用コネクタの問題点に留意して、リード片にスプリング構造を取り付けることにより温度変化があっても半田接合部に加わる熱応力をスプリングで吸収して端子の半田接合部に無理な力が作用するのを防止し、信頼性のあるプリント基板用コネクタを提供することを課題とする。
」(段落【0004】〜【0006】参照。)
・「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するためこの考案は、リード片を有する端子を絶縁ハウジングの一側壁に所定のピッチで複数組備え、プリント基板の回路パターンに接続されるリード片に熱応力の吸収に十分な弾性部を形成して成るプリント基板用コネクタとしたのである。【作用】上記の構成としたこの考案のコネクタは、プリント基板にねじ止め等の方法により固定され、それぞれの端子は基板へ半田接合されて固定され、これに接続コネクタを接続して使用される。温度変化によりハウジングが膨張、収縮してもその動きは端子のリード片に形成された弾性部で吸収され、従ってリード片を固定している接合部に無理な力は作用しない。このため接合部にクラックが生じるのが防止される。」(段落【0007】〜【0009】)・「【実施例】以下この考案の実施例について図面を参照して説明する。図1〜図3に実施例のプリント基板用コネクタの構成の概略を示す。基本的な構成は、従来例と同様に、接続コネクタを収容するための収容部1aを有する絶縁ハウジング1の一側壁に端子2を所定のピッチで複数組を備えたものから成る。端子2はコンタクト部2aを有し、ハウジング1に圧入又はインサート成形等の方法により固定される。ハウジング1はプリント基板3にねじ4によって固定される。端子2のリード片5は、図2の(a)、(b)に示すようにプリント基板3に対して2通りの方法で接合される。(a)ではリード片5をパッド7上にリフローソルダリングを施すことにより半田接合部6で接合固定される。(b)ではリード片5をスルーホール8に貫入させ、半田接合部6で接合固定される。この実施例では、図示のように、端子2のリード片5にスプリング部5aを備えている点が異なっている。スプリング部5aは図4の(a)に示すようにコイルばねとしてもよいが、(b)に示すように、リード片5を波形状として弾性を持たせたものとしてもよい。以上のように構成した実施例のコネクタは、プリント基板に固定され、これに接続コネクタを接続して使用される。そしてこのコネクタを自動車等のように温度条件が大きく変化し、振動が激しく加わるような環境で使用する場合であっても、端子のリード片を固定する部分にクラックが生じるようなことはなくなる。【効果】以上詳細に説明したように、この考案のコネクタはプリント基板に固定されるハウジングの側壁に設けられた端子のリード片に弾性部を設けたから、プリント基板とハウジングの熱膨張による不整合が起っても半田接合部に応力が加わることがなくなり、環境(温度)変化に対する半田接合部の信頼性を大幅に向上でき、自動車、エレクトロニクス、民生等のプリント基板が使用される分野で用いれば効果的である。」(段落【0010】〜【0014】)
以上の記載及び図面によると、周知例Aには、自動車等に用いられるコネクタ端子のプリント基板への接続リード片にコイルばねまたは波形状の弾性を有するスプリング部を具備し、半田接合部に無理な力が作用するのを防止する技術(以下、「周知技術A」という。)が記載されている。
また、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-140601号公報(以下、「周知例B」という。)には、次の事項が記載されている。
・「弾性を有した金属板からなる端子を一体成型で固着した取付ケースと、前記弾性を有した端子に圧接する様に前記取付ケースに取付けた電極部を印刷した絶縁基板とから構成された端子接続装置。」(特許請求の範囲)
・「本発明は可変抵抗器等に使用される端子接続装置に関するものである。」(第1頁左下欄第11〜12行)
・「従来の端子10と電極部を印刷した絶縁基板11をかしめにより固着しているものは、・・・(中略)・・・、また熱や湿気による絶縁基板11の膨張、収縮による接触不安定という現象も発生していた。」(第1頁左下欄第18行〜同右下欄第3行)
・「以上のように本発明は構成されているものであり、端子と電極部が圧接された状態のため、かしめ工数がかからず、端子かしめ部の固着強度管理が不要で、熱や湿気による接触も安定するものである。」(第2頁左上欄第5〜9行)
以上の記載によると、周知例Bには、可変抵抗器等に使用される端子接続装置において、弾性を有した金属板からなる端子を電極部を印刷した絶縁基板に圧接して接続することにより、膨張、収縮による接触不安定を回避する技術(以下、「周知技術B」という。)が記載されている。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「ボリウム」は本願発明の「設定用のロータリタイプの設定器」に相当し、以下同様に「操作軸」は「回転軸」に、「操作つまみ」は「設定用のツマミ」に、「取着」は「取り付け」に、「凹部の底面」は「取付部」に、「係合・保持」は「固定」に、「電気的な接続のための部材」は「端子」に、「プリント配線板」は「印刷配線板」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
設定用のロータリタイプの設定器を備えた装置であって、該設定器の回転軸の先端に設定用のツマミを取り付け、該設定器を、操作パネルに設けられた取付部に固定し、該設定器の電気的な接続のための端子を用いて、前記設定器を印刷配線板に接続した装置の点で一致し、次の1〜3の点で相違している。
[相違点1]
本願発明では、車両用空調機の操作装置であるのに対し、引用例発明では、ボリウムの取付装置である点。
[相違点2]
本願発明では、ツマミがセットされる操作パネルとしているのに対し、引用例発明では、つまみは、ボリウムの操作軸の先端に取着されることについての記載はあるが、操作パネルとの関係について明記がない点。
[相違点3]
本願発明は、端子を、弾性変形可能なフラットな板状の金属板であり、該金属板の途中で、直交する位置までねじられた該金属板としているのに対し、引用例発明は、端子の形状及び構成について記載がない点。
そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討する。
ロータリタイプの設定器を車両用空調機の操作装置に用いることは、従来、一般に行われていることであり、引用例発明を車両用空調機の操作装置に用いた点に何ら困難性は、認められない。
次に、相違点2について検討する。
引用例発明の操作つまみは、音響機器や各種電子機器のボリウムに用いられるものであり(「2.ロ、ニ」参照。)、図面(第1図、第2図)からみても、操作パネルの前面側に取着されるものと考えられる。
そして、操作つまみの回転度合いを操作者が知り得る必要があることは、技術常識であり、その態様として、操作パネルの前面の表示とセットにして表示されるか、操作パネルに設けられる部材とセットになって何らかの表示がなされるものと考えられる。
いずれにしても、操作ツマミが操作パネルにセットされる点は、当業者が、必要に応じ、適宜なし得る設計的事項である。
さらに、相違点3について検討する。
端子をフラットな板状の金属板とすることは、本願出願前、周知の技術である(必要であれば、一例として、周知技術B参照。)。
また、端子を弾性変形可能とした点も、本願出願前、周知の技術である(周知技術A、周知技術B参照。)。
そして、金属板の途中で、直交する位置までねじられたものとした点は、力を吸収する工夫として、当業者が容易に想到し得たことである。
そうすると、引用例発明の端子を、弾性変形可能なフラットな板状の金属板であり、該金属板の途中で、直交する位置までねじられた該金属板とした点は、印刷配線板への端子の接触を安定したものとする必要に応じて、当業者が、周知技術に基づいて、容易に想到し得たことである。
さらに、本願発明の奏する作用効果をみても、引用例発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-07 
結審通知日 2005-11-15 
審決日 2005-11-28 
出願番号 特願平7-248662
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 小椋 正幸
特許庁審判官 佐野 遵
岡本 昌直
発明の名称 車両用空調機の操作装置  
代理人 五十嵐 孝雄  
代理人 下出 隆史  

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