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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1130077
審判番号 不服2000-5208  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-04-13 
確定日 2006-01-26 
事件の表示 平成11年特許願第 95740号「ゲ―ムシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月17日出願公開、特開2000-288238〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成11年4月2日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許法第17条の2第4項第1号に規定する目的(請求項の削除)に適合する平成12年5月12日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「ゲームの進行に応じた遊技価値を払い出すゲームシステムにおいて、
着脱可能な記録媒体の情報を読み取る読取手段と、
中断されたゲームの状態や履歴を個々の前記記録媒体の情報と対応付けて記憶する記憶手段と、
プレイヤーの操作を受付けるステーションと、
前記ステーションで受付けた操作に応じてゲームを進行させるゲーム進行手段と、
前記ゲーム進行手段によるゲームの進行に応じた遊技価値を払い出す払い出し手段と、を有するアーケードゲーム機を備え、
前記記録媒体には個々の記録媒体を特定する特定情報が記録され、
前記記憶手段には、前記特定情報と対応付けて前記ゲームの状態や履歴が記憶されるとともに、
前記ゲーム進行手段は、前記読取手段によって読み取られた前記特定情報に対応付けられて前記記憶手段に記憶された前記ゲームの状態や履歴を用いて、そのゲームの続きを継続的に進行させるようにしたことを特徴とするゲームシステム。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平8-829号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、
「ユーザーが所有し、かつ各種ゲームにおけるキャラクタに特有のデータを設定できるユーザーゲーム装置と、・・・通信回線を介して取り込んだキャラクタに特有のデータを基にゲームを展開実行する中央制御装置と、・・・通信回線で取り込んだゲーム展開を表示する業務用ゲーム装置とを備えた・・・ネットワークゲームシステム。」(特許請求の範囲、請求項1)、
「・・・ユーザーゲーム装置は、キャラクタに固有のデータを基にゲームを展開できるゲーム制御部と、キャラクタに固有のデータを作成し、これを前記ゲーム制御部に与え、そのゲーム結果から前記固有のデータを修正できる情報作成部とを備えた・・・」(特許請求の範囲、請求項2)、
「・・・ユーザーゲーム装置は、前記中央制御装置で展開実行されたゲームが終了した結果に基づき当該キャラクタに付与されたデータを受信し、当該データを前記キャラクタに固有のデータに反映させる情報作成部を備えた・・・」(特許請求の範囲、請求項4)、
「・・・中央制御装置は、前記ユーザーゲーム装置に接続される通信回線及び業務用ゲーム装置に接続される通信回線に接続されて情報の転送・受信する情報転送・受信制御部と、前記キャラクタに固有のデータとその他の条件に基づいてゲームを展開動作するゲーム制御部と、その他必要な情報処理を実行する情報処理部とを備えた・・・。」(特許請求の範囲、請求項5)、
「・・・業務用ゲーム装置は、中央制御装置からのゲーム展開中継データを受信する情報受信部と、当該中継データを基に表示手段を駆動制御するゲーム展開部と、・・・とを備えた・・・」(特許請求の範囲、請求項6)、
「キャラクタに固有のデータを基にゲームを展開できるゲーム制御部、及びキャラクタに固有のデータを作成し、これを前記ゲーム制御部に与え、かつ当該ゲーム結果から前記固有のデータを修正できる情報作成部を備えたユーザーゲーム装置と、ゲーム展開中継データを受信する情報受信部、当該中継データを基に表示手段を駆動制御するゲーム展開部、・・・とを備えた業務用ゲーム装置と、・・・情報の転送・受信する情報転送・受信制御部、前記キャラクタに固有のデータとその他の条件に基づいてゲームを展開動作するゲーム制御部、及びその他必要な情報処理を実行する情報処理部とを備えた中央制御装置とからなる・・・ネットワークゲームシステム。」(特許請求の範囲、請求項7)、
「ユーザーが所有し、かつ各種ゲームにおけるキャラクタに特有のデータを設定できるユーザーゲーム装置と、・・・通信回線を介して取り込んだキャラクタに特有のデータを基にゲームを展開実行する中央制御装置と、・・・通信回線で取り込んだゲーム展開を表示する業務用ゲーム装置とを備えた・・・ネットワークゲームシステムであって、・・・ゲームに関する新聞を発行できるようにした・・・ネットワークゲームシステム。」(特許請求の範囲、請求項8)、
「・・・本発明は、ユーザーが所有するユーザーゲーム装置及びゲームセンター等に設置された業務用ゲーム装置とを通信回線で中央制御装置に接続し、ユーザーゲーム装置で設定されたところのキャラクタに固有のデータに基づいて中央制御装置でゲームを展開し、その展開を業務用ゲーム装置で実現できるようにしたネットワークゲームシステムに関する。」(段落【0001】)、
「・・・一般に、ユーザーが所有するユーザーゲーム装置は、ゲーム機本体と、コントローラとからなり、・・・ゲームビデオ信号をテレビモニターに供給できるようにしたものである。・・・ゲーム機本体にカセットロムを装着した後スタートボタンを押下すると、当該カセットロムに記憶されているゲームソフトが当該ゲーム機本体に読み込まれ、かつ、ユーザーがコントローラを操作することにより・・・、当該ゲーム機本体内でゲームソフトを動作させてゲーム展開させて、これを・・・テレビモニタ上に表示させるようにしている。したがって、・・・、ゲーム展開が一様であり、面白みに欠けるものであった。」(段落【0002】)、
「一方、ゲームセンター等に設置された業務用ゲーム装置にあっては、ゲーム機本体上に、ゲーム展開を実現する複数の模型を移動可能に設置し、かつゲーム機本体の隅に、各模型に固有のキャラクタに関するデータを表示できるテレビモニタを設置してなるものであった。また、・・・、ゲーム機本体内にある・・・ゲーム処理制御装置は、ゲームを展開する各種キャラクタに固有のデータを備えるとともに、ベット処理ソフトと各キャラクタに固有のデータとを基にゲームを展開し、当該展開したゲーム結果を基に各種配当等を出せるようにしたものである。したがって、・・・、各競争対象キャラクタのバラエティに富んだ個性付け、思い入れ、ストーリ性等が表現できなかった。」(段落【0005】)、
「また、ユーザーゲーム装置及び業務用ゲーム装置にカセット着脱ソケットを設け、ユーザーゲーム装置あるいは業務用ゲーム装置でゲームを行なうときに、前記ソケットに能力データ記憶装置を装着し、前記能力データ記憶装置の当該キャラクタの能力を基にゲーム展開をし、かつゲーム展開に伴って得たキャラクタの能力を再び能力データ記憶装置に記憶させるようにしたシステムも提案されている(特開昭63-242293号公報)。しかしながら、上記ゲームシステムは、単に、ユーザー一人が当該能力を利用するものであって、やはり各競争対象キャラクタのバラエティに富んだ個性付け、思い入れ、ストーリ性等が表現できなかった。」(段落【0006】)、
「・・・ユーザーゲーム装置で設定されたキャラクタの能力を業務用ゲーム装置で利用したり、業務用ゲーム装置で設定されたキャラクタの能力をユーザーゲーム装置で利用したりできるシステムにあっては・・・、ユーザー各人がもつ能力データ記憶装置に記憶されているキャラクタの能力であるため、他のユーザーも同時に利用できるものではなく、かつ各競争対象キャラクタのバラエティに富んだ個性付け、思い入れ、ストーリ性等が表現が十分なものではなかった。」(段落【0010】)、
「・・・本発明のネットワークゲームシステムよれば、ユーザーが所有するユーザーゲーム装置により各種ゲームにおけるキャラクタに特有のデータを設定し、これを中央制御装置に与える。中央制御装置では、ゲーム条件と、前記キャラクタの固有のデータとを基にゲームを展開する。このゲーム展開を業務用ゲーム装置に転送し、ゲームを表示させる。これにより、ユーザー側では、キャラクタに固有のデータの作成、修正が「(に):以下()内の文字は誤字と認められ、当審で訂正する。)できる。また、業務用ゲーム装置側では、キャラクタのゲーム展開を予想することができる。」(段落【0020】)、
「・・・ユーザーゲーム装置では、情報作成部でキャラクタの固有のデータを作成し、・・・ゲーム制御部でゲームを展開してみて、そのゲーム結果から前記情報作成部で当該キャラクタの固有のデータを修正したりすることができる。」(段落【0021】)、
「・・・中央制御装置では、・・・、前記キャラクタに固有のデータとその他の条件に基づいてゲーム制御部においてゲームが展開動作され、あるいは他必要な情報処理が情報処理部で実行された結果を、ユーザーゲーム装置及び業務用ゲーム装置に与えることができる。」(段落【0024】)、
「図1に示すネットワークゲームシステムは、ユーザーが所有しており各家庭等に設置されているユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-n(nは任意の整数であり、以下同じ)と、前記各ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nに通信回線、例えば電話回線・・・で結ばれ、しかも前記電話回線・・・を介して取り込んだキャラクタに特有のデータを基にゲームを展開実行するとともに、その他各種処理を実行できる中央制御装置3と、前記中央制御装置3に通信回線、例えば電話回線・・・で結ばれ、しかも前記電話回線・・・を介して取り込んだゲーム展開を表示する業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mとを備えている。」(段落【0029】)、
「家庭等6に設置されかつ電話回線2で中央制御装置3に接続されたユーザーゲ ーム装置1は、カセットロム等11を装着できるゲーム機本体12と、ゲーム機本体12に操作信号を与えるコントローラ13と、電話回線2に接続され各種データの送受信ができる情報転送・受信制御部14とからなり、かつ前記ゲーム機本体12から取り出したゲームビデオ信号をテレビモニター15に供給できるようにしたものである。」(段落【0031】)、
「ゲームセンター等ゲーム機設置施設7に設置された業務用ゲーム装置5は、ゲーム機本体51上にゲーム場52を形成し、かつこのゲーム場52の上でゲーム展開を実現する複数の模型53,53,…を移動可能に設置し、かつゲーム機本体51の隅に各模型53,53,…に固有のキャラクタに関するデータを表示できるテレビモニタ54を設置して構成されている。なお、上記各模型53,53,…をゲーム展開通りに移動させたり、テレビモニタ54上に表示される各キャラクタのデータやゲーム展開の状況は、ゲーム機本体51内に設けてあるゲーム制御部(図示せず)により処理されるようになっている。このゲーム制御部は、受信制御部を介して電話回線4に接続されるようになっている。」(段落【0033】)、
「・・・中央制御装置3は、例えば大型コンピュータシステム30と、情報転送・受信制御部31とで構成されており、情報処理センター8内に設置されている。この情報転送・受信制御部31には、電話回線2、及び電話回線4が接続されている。」(段落【0034】)、
「図2において、中央制御装置3には、ユーザーゲーム装置1が電話回線2を介して、業務用ゲーム装置5が電話回線4を介してそれぞれ接続されることにより、ネットワークゲームシステムを構成している。」(段落【0036】)、
「・・・ユーザーゲーム装置1は家庭6に設置されており、このユーザーゲーム装置1は、ゲーム機本体12と、コントローラ13と、情報転送・受信制御部14とからなる。また、ゲーム機本体12にはテレビモニター15が接続されている。このゲーム機本体12は、カセットロム等から得たゲームソフトにより各種ゲームを実現させるゲーム制御部21と、コントローラ等から入力した情報を基にキャラクタに固有のデータを形成できる情報作成部22とを備えている。また、前記ゲーム制御部21は、情報作成部22で作成したキャラクタに固有のデータを基に、ゲームを展開させられるようになっている。情報作成部22は、前記ゲーム制御部21でのゲーム結果を基に、前記キャラクタに固有のデータを修正できるようになっている。このゲーム機本体12は、情報転送・受信制御部14を介して電話回線2に接続されている。」(段落【0037】)、
「・・・中央制御装置3は、情報処理センター8に設置されており、この中央制御装置3は、大型コンピュータシステム30と、情報転送・受信制御部31とからなる。また、大型コンピュータシステム30は、その処理部として、各種情報を処理する情報処理部32と、所定のゲームソフト及びキャラクタに固有のデータを基にゲームを展開させるゲーム制御部33とを備えており、また必要な記憶装置や他の機器を備えている。前記情報転送・受信制御部31には、電話回線2及び電話回線4が接続されている。」(段落【0038】)、
「・・・業務用ゲーム装置5はゲーム機設置施設7に設置されていて、・・・、テレビモニタ54と、情報受信部55と、この情報受信部55を介して受信したレース中継データによりゲームを展開させるゲーム制御部56と、ベットの賭率やメタル清算処理等を実行し、かつレース中継データやオ(ウ)ッズ等を表示するためのモニタ信号を形成する情報処理部57と、このゲーム制御部56に接続されて模型53,53,…を駆動する模型駆動部58と、ゲーム展開前にかけるベットの受付等を行ない当該情報を前記情報処理部57に送る受付機構59と、ゲーム終了後に前記情報処理部57で清算されたデータを基に支払いを行なう支払機構部60とを備えている。」(段落【0039】)、
「・・・ネットワークゲームシステムに競馬ゲームを適用した実施例について、・・・説明する。」(段落【0040】)、
「・・・競争馬のキャラクタには、その固有のデータとして次のようなものがある。すなわち、(i) スタミナ、(ii)スピード、(iii) タイプ、(iv)ランク、及び(v) テクニックの五つである。これらキャラクタの固有のデータは、ユーザーゲーム装置1内に格納されている。」(段落【0041】)、
「(iv)ランクについて、これは、過去のレースの成績から決定されるものであり、それにより出場可能レースが限定される。例えば、新人馬が集まる新人戦、チャンピオンが集まるチャンピオンシップ等がある。」(段落【0045】)、
「各ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nには、・・・各種キャラクタに固有のデータが格納されている。したがって、各家庭等・・・において、各ユーザーは、各ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nを用いて、それぞれが育てて調教している競走対象キャラクタの固有のデータを作成する・・・。ここで、競走対象キャラクタの固有のデータを作成するということは、例えば競走馬を実際に調教するようにして、各種のデータを作りあげる。このようにしてユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nにおいて作成した競走馬の固有データは、・・・中央制御装置3に転送される・・・。」(段落【0047】)、
「中央制御装置3の情報処理部32は、・・・取り込んだ競走対象キャラクタデータを分析する・・・。ついで、中央制御装置3は、当該競走対象キャラクタが出場可能なレースに関するデータを、・・・各ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nに転送する・・・。」(段落【0048】)、
「各ユーザーゲーム装置1-1 ,1-2 ,…,1-nでは、・・・得られたレースに関するデータを、当該ユーザーゲーム装置1-1 ,1-2 ,…,1-nに接続したテレビモニター15に表示する。このテレビモニター15に表示されたデータをユーザーは見ながら、出場レースを決定する・・・。そして、ユーザーゲーム装置1-1 ,1-2 …,1-nは、その決定された出場レースデータを、・・・再び中央制御装置3に転送する・・・。」(段落【0049】)、
「・・・中央制御装置3の情報処理部32は、・・・取り込んだレースデータに対応させて競走対象キャラクタの固有データを登録する・・・。」(段落【0050】)、
「このような処理を終了した中央制御装置3の情報処理部32は、前記レースデータと、これに対応させて登録した競走対象キャラクタの固有データを、・・・所定の業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mに転送する・・・。」(段落【0051】)、
「各業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mでは、・・・各情報処理部57に取り込んだレースデータ及びキャラクタに固有のデータとを所定のメモリに記憶させる。これにより、各業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mの各情報処理部57が動作し、必要なデータを各テレビモニタ54に表示する・・・。また、業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mでは、ベットの受付けを開始する・・・。」(段落【0052】)、
「・・・一定の時間が経過した際に、中央制御装置3からベット受付終了の信号を各業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mに出し、かつ中央制御装置3のゲーム制御部33(32)は各キャラクタに固有のデータを基にレースを開始する・・・。そして、中央制御装置3の情報処理部32は、当該レース中継データを、・・・ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nに、・・・業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mに、それぞれ転送する・・・。中央制御装置3は、レースの終了を通知する・・・。」(段落【0053】)、
「これにより、業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mでは、情報処理部57の動作によりメダルの払出し処理が実行される・・・。」(段落【0054】)、
「・・・ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nでは、中央制御装置3から送出されてくる競走対象キャラクタに関するデータをセーブする・・・。」(段落【0055】)、
「・・・中央制御装置3では、レースに関するデータをセーブする・・・。」(段落【0056】)、
「・・・本実施例では、ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nを用いて競走対象キャラクタに固有のデータを作成し当該キャラクタの能力を向上、調整等により各競走対象の成長を楽しむという世界と、業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mによって実際にレース着順予想を行なうという世界とを、共通の場で楽しむことができる。」(段落【0057】)、
「さらに、・・・、業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-m上で、長期にわたる競走対象キャラクタの成長が行えるため、人気キャラクタ等が登場し、バラエティに富んだ面白いネットワークゲームシステムを構築することができる。」(段落【0058】)、
「・・・ユーザーゲーム装置1は、電源オンで動作を開始し、ゲームスタートになる・・・。そして、ユーザーゲーム装置1では、まず、競走馬キャラクタAについて調教する・・・。」(段落【0061】)、
「・・・所定の能力をもった競走馬キャラクタAに達したとユーザーが判断したところで、当該データをユーザーゲーム装置1から中央制御装置3に転送する・・・。」(段落【0062】)、
「・・・ユーザーゲーム装置1は、中央制御装置3から当該競走馬キャラクタAが出場可能なレースに関するデータを受信する・・・。」(段落【0063】)、
「このデータが受信されると、ユーザーゲーム装置1は、当該データをテレビモニター15に表示するので、ユーザーは、これを参照して出場レースを決定する。そして、ユーザーゲーム装置1のコントローラ13を操作して、当該レースに対して前記競走馬キャラクタAを出場させる旨のデータを中央制御装置3に転送する・・・。これにより、競走馬キャラクタAは、当該レースに出馬登録がされたことになる。」(段落【0064】)、
「ついで、ユーザーゲーム装置1は、出馬レースの時間がくるまで・・・、例えば競走馬キャラクタBの調教し・・・、当該データをユーザーゲーム装置1から中央制御装置3に転送する・・・。」(段落【0065】)、
「ここで、ユーザーゲーム装置1は、出馬レースの時間がくると・・・、当該レースを見るか否か決定してやる・・・。もし、当該レースを見る場合には・・・、ユーザーゲーム装置1は中央制御装置3からのレース中継データを受信してこれをテレビモニター15に表示する・・・。レースが終了した時点で、中央制御装置3からレース結果が送られてくるので、ユーザーゲーム装置1は、これを受信して、必要な記憶手段にセーブし・・・、最初の処理ステップに戻ることになる。」(段落【0066】)、
「中央制御装置3は、各ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nからのキャラクタの固有データを受信すると・・・、競走対象キャラクタの固有データを分析する・・・。」(段落【0069】)、
「そして、中央制御装置3は、ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nから特定のレースデータを要求されているときには・・・、当該特定レースデータを要求のあったユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nに送出する・・・。」(段落【0070】)、
「また、中央制御装置3は、特定レースデータの要求のないときには・・・、中央制御装置3で判断した出場可能レースデータを、特定レースデータを要求しなかったユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nに送出する・・・。」(段落【0071】)、
「そして、中央制御装置3は、ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nからの競走馬の出馬登録を待つ・・・。そして、中央制御装置3は、出馬登録のデータを受信すると、当該競走馬キャラクタの固有データを予定レースに登録する・・・。」(段落【0072】)、
「そして、中央制御装置3は、規定の時間によりレースを開始する・・・。ついで、中央制御装置3は、ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nからレース観戦を要求されたか否かにより・・・、レース中継データの送出方法を変更する。すなわち、レース観戦を要求された場合には・・・、ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nと、業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mとに、レース中継データを送出する・・・。これにより、家庭等6及びゲーム機設置施設7でそれぞれゲームを観戦できる。一方、レース観戦を要求されなかった場合には・・・、業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mのみにレース中継データを送出する・・・。これにより、ゲーム機設置施設7側でのみレースを観戦できる。」(段落【0073】)、
「そして、中央制御装置3は、レースが終了すると、当該レース結果をユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nに送出し・・・、再び最初の処理にリターンする。」(段落【0074】)、
「・・・各業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mでは、電源オンで動作を開始する。また、各業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mの一つの動作をみると、業務用ゲーム装置5は、情報処理部57の制御下に情報受信部55を介して中央制御装置3からのレースデータを受信する・・・。これにより、情報処理部57は、当該レースデータの所定のものをテレビモニタ54に表示し、かつメタルベットの受付を開始する・・・。そして、中央制御装置3からレース開始に関するデータを受信すると、情報処理部57は、テレビモニタ54にメタルベット受付終了を表示するとともに、メタルベットの受付を終了する・・・。」(段落【0076】)、
「そして、業務用ゲーム装置5は、中央制御装置3からのレース中継データを情報受信部55を介して受信し、ゲーム制御部56に与える・・・。これにより、模型駆動部58を動作させるとともに、当該ゲーム中継データをテレビモニタ54上に表示させる。」(段落【0077】)、
「ここで、ゲームが終了すると、業務用ゲーム装置5の情報処理部57は、上記ゲーム結果からメダルの払い戻し処理を実行する・・・。」(段落【0078】)、
「そして、再び、最初の処理ステップにリターンさせて、次のレースに備える(に)ことになる。」(段落【0079】)、
「このように各業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mは動作して、ゲーム展開を表示するので、これらを観戦する者はバラエティに富んだレースを予想する楽しみが増加する。」(段落【0080】)、
「・・・実施例では、キャラクタとして競走馬を例に説明したが、これに限らず競輪、競艇、オートレース等のゲームにも適用することができる。」(段落【0089】)、
「・・・ユーザーが所有するユーザーゲーム装置により各種ゲームにおけるキャラクタに特有のデータを設定し、これを中央制御装置に与え、中央制御装置では、ゲーム条件と前記キャラクタの固有のデータとを基にゲームを展開し、このゲーム展開を業務用ゲーム装置に転送し、ゲームを表示させることにより、ユーザー側ではキャラクタに固有のデータの作成、修正(に)できる楽しみができ、かつ業務用ゲーム装置側ではキャラクタのゲーム展開を予想する楽しみができる。」(段落【0090】)、
「・・・ユーザーがキャラクタに固有のデータを個々に作成・修正するため、各キャラクタに付与される個性付けが多様化し、複雑で物語性の高いゲームを展開させることができる。」(段落【0091】)、
「・・・ユーザーゲーム装置では、情報作成部でキャラクタの固有のデータを作成し、このキャラクタのデータを基にゲーム制御部でゲームを展開してみて、そのゲーム結果から前記情報作成部で当該キャラクタの固有のデータを修正したりすることができるため、各キャラクタに対する思い入れ等が大きくなり、かつ物語性の大きなゲーム展開をさせることのできるキャラクタの固有データが得られる。」(段落【0093】)、
「・・・ユーザーゲーム装置では、前記中央制御装置で展開実行されたゲームが終了した結果、当該キャラクタに付与されたデータを受信できるようにしてあるので、当該キャラクタに固有のデータをさらによいものに修正することができる。」(段落【0095】)、
「・・・中央制御装置では、ゲーム制御部で実行されたゲームが展開や、あるいは他必要な情報処理結果を、ユーザーゲーム装置及び業務用ゲーム装置に与えることができるので、さらに複雑、高度なゲーム展開を提供することができる。」(段落【0096】)、
「・・・業務用ゲーム装置では、中央制御装置からのゲーム展開中継データを受信し、これに基づいてゲーム制御部が表示部を駆動制御しているので、表示部に展開されたゲームに多様性を与えることがてきる。」(段落【0097】)
との記載が認められ、また、上記摘記事項より、各ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nには、電話回線を介して各種データを送受信できるようユーザーを特定するためのユーザー情報が記録されたメモリが設けられていると認められ、また、上記摘記事項より、大型コンピュータシステム30の処理部に、各種情報を処理する情報処理部32や所定のゲームソフト及びキャラクタに固有のデータを基にゲームを展開させるゲーム制御部33を作動させるのに必要な記憶装置や他の機器を備えていることから、中央制御装置3に、競馬ゲームのゲーム条件や過去のレースの成績をユーザー情報と対応付けて登録する記憶装置が設けられていると認められる。これらの記載によれば、引用例1には、

「競馬ゲームの展開に応じたメダルを支払うネットワークゲームシステムにおいて、
ゲーム条件に合った競馬ゲームの出場可能なレースや過去のレースの成績を記憶する記憶装置と、
プレイヤーの操作を受付けるユーザーゲーム装置と、
前記ユーザーゲーム装置で受付けた操作に応じて競馬ゲームを展開させるゲーム制御部33と、
前記ゲーム制御部33による競馬ゲームの展開に応じたメダルを支払う支払機構部60とを備え、
前記記憶装置には、前記競馬ゲームの出場可能なレースや過去のレースの成績が記憶されるとともに、
前記ゲーム制御部33は、前記記憶装置に記憶された前記競馬ゲームの出場可能なレースや過去のレースの成績を用いて、その競馬ゲームの次のレースに備えるようにしたネットワークゲームシステム。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「競馬ゲームの展開」、「メダルを支払う」、「ネットワークゲームシステム」、「ゲーム条件に合った競馬ゲームの出場可能なレースや過去のレースの成績」、「ユーザーゲーム装置」、「ゲーム制御部33」、「支払機構部60」および「次のレースに備える」は、本願発明における「ゲームの進行」、「遊技価値を払い出す」、「ゲームシステム」、「中断されたゲームの状態や履歴」、「ステーション」、「ゲーム進行手段」、「払い出し手段」および「続きを継続的に進行させる」に相当すると認められる。したがって、両者は、
「ゲームの進行に応じた遊技価値を払い出すゲームシステムにおいて、
中断されたゲームの状態や履歴を記憶する記憶手段と、
プレイヤーの操作を受付けるステーションと、
前記ステーションで受付けた操作に応じてゲームを進行させるゲーム進行手段と、
前記ゲーム進行手段によるゲームの進行に応じた遊技価値を払い出す払い出し手段とを備え、
前記記憶手段には、前記ゲームの状態や履歴が記憶されるとともに、
前記ゲーム進行手段は、前記記憶手段に記憶された前記ゲームの状態や履歴を用いて、そのゲームの続きを継続的に進行させるようにしたゲームシステム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:ゲームシステムにおいて、本願発明では、「アーケードゲーム機に着脱可能な記録媒体の情報を読み取る読取手段を備えているのに対し、引用例1発明では、そのような構成となっていない点。

相違点2:ゲームの状態や履歴を記憶する記憶手段において、本願発明では、「個々の記録媒体の情報と対応付けて」記憶するのに対し、引用例1発明では、そのような構成となっていない点。

相違点3:記憶手段、ステーション、進行手段、払い出し手段等を有するゲームシステムにおいて、本願発明では、それらが「アーケードゲーム機」内に有しているのに対し、引用例1発明は、通信回線によるネットワークシステムであり、そのような構成となっていない点。

相違点4:ゲームシステムにおいて、本願発明では、「記録媒体には個々の記録媒体を特定する特定情報が記録され」ているのに対し、引用例1発明では、そのような構成となっていない点。

相違点5:記憶手段には、ゲームの状態や履歴が記憶されるが、本願発明では、「特定情報と対応付けて」記憶されているのに対し、引用例1発明では、そのような構成となっていない点。

相違点6:記憶手段に記憶されたゲームの状態や履歴を用いて、そのゲームの続きを継続的に進行させるゲーム進行手段において、本願発明では、「読取手段によって読み取られた特定情報に対応付けられて」いるのに対し、引用例1発明では、そのような構成となっていない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
相違点1について、一般的に業務用ビデオゲーム機に着脱可能な磁気カード等の記録媒体の情報を読み取る磁気カードリーダライタを備えることは周知であり(例えば、特開平10-151275号公報、特開昭63-242293号公報参照。)、引用例1発明のネットワークゲームシステムに上記周知技術を付加して、本願発明のように、アーケードゲーム機に着脱可能な記録媒体の情報を読み取る読取手段を備えるようにすることは、当業者が必要に応じて容易に想到し得るものである。

相違点2について、一般的に、ゲーム分野における記録媒体式遊戯装置で遊技中または中断中等を示すカードの状態や持玉数と時刻等のカードの来歴を各記録媒体としてのカードCDのカード番号等と対応付けて記憶する主記憶装置内のカードファイルが周知であり(例えば、特開平7-132179号公報、特開平10-305151号公報参照。以下、「周知例A」という。」)、引用例1発明の「ゲーム条件に合った競馬ゲームの出場可能なレースや過去のレースの成績を記憶する記憶装置」に上記周知技術を適用して、本願発明のように「中断されたゲームの状態や履歴を個々の記録媒体の情報と対応付けて記憶する記憶手段」とすることは、当業者が必要に応じて適宜なしうる設計的事項である。

相違点3について、競馬ゲーム装置内にサテライト、ゲーム制御CPU、メダル払い出し口等を設けることは、従来周知であり(例えば、特開平10-94675号公報、特開平8-206355号公報参照。)、引用例1発明の通信回線によるネットワークシステムに上記周知の技術を適用して、本願発明のように「読取手段と、記憶手段と、ステーションと、ゲーム進行手段と、払い出し手段とを有するアーケードゲーム機」とすることは、各手段の配置状態で、引用例1発明のように分散型にするか、本願発明のように集中型にするかは、そのことによってゲームの進行に支障を来すものではなく、その選択は、設計に際し、当業者が適宜なし得る程度のものである。

相違点4について、一般的に、磁気カード等の記録媒体に個々の記録媒体を特定する識別コード、発行年月日、カード番号やチェックコードを記録することが周知であり(前記周知例A参照)、引用例1発明のネットワークゲームシステムに上記周知技術を付加して、本願発明の「記録媒体には個々の記録媒体を特定する特定情報が記録され」るようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なしうる設計的事項である。

相違点5について、相違点2で述べたようなカードファイルが周知であり、引用例1発明の「記憶装置には、競馬ゲームの出場可能なレースや過去のレースの成績が記憶される」ことに前記周知技術を適用して、本願発明のように「記憶手段には、特定情報と対応付けてゲームの状態や履歴が記憶される」とすることは、当業者が必要に応じて適宜なしうる設計的事項である。

相違点6について、一般的に、ゲーム分野における記録媒体式遊戯装置でカードリーダによって読み取られた年月日と識別コードに対応付けられて主記憶装置内のカードファイルに記憶された遊技中または中断中等を示すカードの状態や持玉数と時刻等のカードの来歴を用いて、データ処理を進めるユニットコントローラが周知であり(前記周知例A参照)、引用例1発明のゲーム制御部に上記周知の技術を付加して、本願発明のように「ゲーム進行手段は、読取手段によって読み取られた特定情報に対応付けられて記憶手段に記憶されたゲームの状態や履歴を用いて、そのゲームの続きを継続的に進行させるようにした」ことは、当業者が格別の発明力を要することなく必要に応じて容易に想到し得るものである。

そして、本願発明が上記構成を採ることによりもたらされる効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-24 
結審通知日 2005-11-25 
審決日 2005-12-12 
出願番号 特願平11-95740
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 辻野 安人
林 晴男
発明の名称 ゲ―ムシステム  
代理人 山本 晃司  

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