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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1130271
審判番号 不服2004-3719  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-06-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-26 
確定日 2006-02-03 
事件の表示 特願2001-370814「発電設備の遠隔運用支援方法及び発電設備の遠隔運用支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月20日出願公開、特開2003-173206〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年12月5日の出願であって、平成16年1月20日付で拒絶査定され、これに対し、同年2月26日に拒絶査定不服審判がされるとともに、同年3月26日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月26日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月26日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項6は、
「発電設備を遠隔運用支援する発電設備の遠隔運用支援システムであって、
該発電設備に関する複数の異常予兆データに対応する異常時対応データが記憶されたデータベースと、
該異常時対応データに対応するサービス形態が記憶されたデータベースと、
前記発電設備の経時的特性の情報の動的傾向を演算し、予め設定されたしきい値を超えた場合には該発電設備の異常予兆を判断する手段と、
該発電設備に異常予兆が生じた際に該異常予兆のレベルを判定する手段と、前記レベルを判定する手段で重故障と判定した場合は、判定された異常予兆データと、予め設定された該異常予兆データに対応する異常時対応データと、予め設定された該異常時対応データに対応する前記サービス形態とに基づき、前記サービス形態を設定する手段と、前記レベルを判定する手段で軽故障と判定した場合は、前記異常時対応データを設定する手段を備えたことを特徴とする発電設備の遠隔運用支援システム。」と補正された。

上記補正は、補正前の請求項7に記載した発明を特定するために必要な事項である「該発電設備に異常予兆が生じた際に該異常予兆のレベルを判定し、判定された異常予兆データと、予め設定された該異常予兆データに対応する異常時対応データと、予め設定された該異常時対応データに対応するサービス形態とに基づき、サービス形態を設定する手段」について、異常予兆の「レベルを判定する手段」を有するとの限定、「前記レベルを判定する手段で重故障と判定した場合は、判定された異常予兆データと、予め設定された該異常予兆データに対応する異常時対応データと、予め設定された該異常時対応データに対応する前記サービス形態とに基づき、前記サービス形態を設定する」との限定、及び「前記レベルを判定する手段で軽故障と判定した場合は、前記異常時対応データを設定する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項6に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成12年1月21日に頒布された「特開2000-20124号公報」(以下「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項2】 計算機能を有しプラントの監視制御を行うプラント監視制御システムにおいて、プラント機器を撮影しその映像情報を取得するITVカメラと、タッチパネル等の入力装置と、ディスプレイを有し各種情報を表示する表示手段と、プラントの系統図の表示情報を保存する系統図情報保存部と、プラントの各種プロセス値を記録する過去値テーブルと、上記過去値からトレンドグラフを作成する手段と、上記過去値から推測して推測値トレンドグラフを作成する手段と、上記推測値トレンドグラフと予め設定された制限値とを比較する比較手段とを備え、上記推測値トレンドグラフ作成手段でプラント各機器の推測値トレンドグラフを順次作成すると共に、この作成された推測値トレンドグラフと制限値とを上記比較手段で順次比較し、その比較結果に応じて上記表示手段は上記ディスプレイ上に比較対象機器の系統図、トレンドグラフ、推測値トレンドグラフ、映像情報を併せて表示するようにしたことを特徴とするプラント監視制御システム。」

イ 「【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項のプラント監視制御システムにおいて、運転指示マニュアルのデータベースを備えると共に、ディスプレイ上に表示された推測値トレンドグラフに対応する機器の運転指示マニュアルを上記データベースから検索し系統図上に表示する手段を備えたことを特徴とするプラント監視制御システム。」

ウ 「【発明の実施の形態】実施の形態1. 図1に本発明の実施の形態1によるプラント監視制御システムの構成を、発電プラントを例にとって示す。 図2は使用される各種データテーブルのデータ構造示し、図3、図4は監視動作のフローチャートを示す。」(【0013】)

エ 「図1において、1はプラントを構成する排水槽や脱水機等の水量、温度、圧力、電圧、運転状況等を測定するセンサ、2はセンサ1からのプロセス信号を制御するプロセス制御装置、3はプラント機器の状況を撮影するITVカメラ、4はプラント機器の音を採取するマイク、5はITVカメラ3からの入力信号やITVカメラを制御する映像制御装置、6はマイク4からの音声信号やマイクを制御する音声制御装置、7はプロセス制御装置2や映像制御装置5、および音声制御装置6からの信号を元に計算、記録し、またタッチパネル10からのオペレータの入力を元に計算処理する計算機である。」(【0014】)

オ 「(c)過去値管理テーブル73は、機器測定点に対応する過去のプロセス値と、タグ番号、リンクキーで構成される。
(d)推測値計算用経験値管理テーブル74は運転モードに対応する推測値計算式と、対象とする機器または測定点の実測値と、この実測値に対応して上記推測値計算式で計算された推測値と、リンクキーで構成され、計算式はその計算を行うプログラムが指定され、このプログラムは経験により修正や補正がされる。
(e)制限値管理テーブル75は、各機器測定点のプロセス値の上限値と下限値を表し、タグ番号、リンクキーと共に構成される。」(【0018】)

カ 「(6)計算機7は選択機器の過去値を過去値管理テーブル73より取得し、また、プロセス制御装置2より入力されている信号の計算処理を行い、その結果が現在値として機器測定点情報管理テーブル71に格納されているその現在値を取得し、トレンドグラフを作成する(S6)。
(7)推測値は運転モードごとに管理している推測値計算用経験値管理テーブル74を元に計算処理を行い運転モードから推測された推測値トレンドグラフを作成する(S7)。」(【0021】)

キ 「 図2はディスプレイ11での表示例である。 図2において、系統図101上に注意やオペレータの対処が必要な点のトレンドグラフ102、トレンドグラフ102中には現在値までの過去値トレンドグラフ(実線)と推測値トレンドグラフ(点線)があり、警戒すべき状態にある機器のITV映像103が合成され表示されている。」(【0024】)

ク 「実施の形態2.実施の形態1がオペレータの任意操作により動作するのに対して実施の形態2では、オペレータが特別な操作をしなくても計算機が常時プラントの各点を監視しており、その推測値トレンドグラフがオペレータに注意やプラント機器操作を促す場合に自動的に系統図上にトレンドグラフと推測値トレンドグラフを表示し、音声によりオペレータに注意を促すようにする。」(【0030】)

ケ 「動作について説明する。
(1)ディスプレイ11に系統図表示情報データベース70の系統図を表示しておき(T1)、
(2)計算機7が監視している点のトレンドグラフを作成し、運転モードよりその点の推測値トレンドグラフを計算する(T2,T3)。
(3)計算した推測値トレンドグラフの値が制限値テーブル75の制限値の範囲外であれば(T4)、
(4)計算機7が自動的に該当する機器を機器測定点情報管理テーブル71から選択し映像制御装置5へ出力する。映像制御装置5は複数台あるITVカメラ3のうち計算機7からの情報を元に該当のITVカメラの電源を入れ該当点を撮影し、その映像信号を映像制御装置5を介して計算機7へ出力する(T5)。」(【0032】)

コ 「 図7において、運転指示マニュアルデータベース76は、プラントの運転指示マニュアルの内容と過去の対処事例をあらかじめ入力したもので計算機7の記憶装置に保存されている。 なお、本システムの他の部分については図1に示した実施の形態1〜2の対応部分と同一符号を使用しているので説明は省略する。」(【0041】)

サ 「実施の形態4. 実施の形態4は実施の形態3の発明を実施の形態2に適用したものである。即ち、いずれかの機器測定点の推測値トレンドグラフが制限値の範囲外になると、その機器測定点の系統図、トレンドグラフ、推測値トレンドグラフ、ITV映像、運転指示マニュアルの内容を合成表示するものである。」(【0046】)

シ 「 次に動作を説明する。
(1)実施の形態2の図6のT1〜T6を実行する(V1)。この実行により、順次監視している点で推測値トレンドグラフが制限値テーブル75の制限値の範囲外であれば、
(2)運転指示マニュアルテーブル76より該当する項目を自動的に選択し、表示制御部8に出力する(V2)。」(【0048】)

ス 「(3)表示制御部8にて系統図、トレンドグラフ、推測値トレンドグラフ、ITV映像、および運転指示マニュアルを合成してディスプレイ11に表示する。 このディスプレイ画面表示の例は実施の形態3の図10と同様である(V3)。
(4)オペレータより選択機器の音声情報のリクエストがあれば、その音をスピーカ12より出力する(V4,V5)。」(【0049】)

これらの記載事項から、引用例1には、

「発電プラントの監視制御を行う発電プラント監視制御システムにおいて、
プラントを構成する排水槽や脱水機等の水量、温度、圧力、電圧、運転状況等を測定するセンサと、
前記各センサからのプロセス信号を制御するプロセス制御装置と、
プロセス制御装置からの各種プロセス値を記録する過去値テーブルと、
前記過去値からトレンドグラフを作成する手段と、
前記過去値から推測して推測値トレンドグラフを作成する手段と、
前記推測値トレンドグラフと予め設定された制限値とを比較する比較手段と、
プラントの運転指示マニュアルの内容と過去の対処事例があらかじめ入力された運転指示マニュアルのデータベースとを備え、
前記推測値トレンドグラフ作成手段でプラント各機器の推測値トレンドグラフを順次作成すると共に、この作成された推測値トレンドグラフと制限値とを前記比較手段で順次比較し、いずれかの機器測定点の推測値トレンドグラフが制限値の範囲外になると、その機器測定点の系統図、トレンドグラフ、推測値トレンドグラフが表示ディスプレイ上に表示され、更に、前記ディスプレイ上に表示された前記推測値トレンドグラフに対応する機器の運転指示マニュアルを上記データベースから検索し、運転指示マニュアルの内容を系統図上に表示する
発電プラント監視制御システム。」の発明(以下「引用例発明」という。)

が記載されているものと認められる。

(3)対 比
そこで、本願補正発明と引用例発明とを比較すると、その作用、機能からみて、後者の「発電プラント」が前者の「発電設備」に相当し、以下同様に、後者の「監視制御システム」が前者の「運用支援システム」に相当し、後者の「プラントの運転指示マニュアルの内容と過去の対処事例があらかじめ入力された運転指示マニュアルのデータベース」が前者の「該発電設備に関する複数の異常予兆データに対応する異常時対応データが記憶されたデータベース」に相当し、後者の「プラントを構成する排水槽や脱水機等の水量、温度、圧力、電圧、運転状況等を測定するセンサと、前記各センサからのプロセス信号を制御するプロセス制御装置と、プロセス制御装置からの各種プロセス値を記録する過去値テーブルと、前記過去値からトレンドグラフを作成する手段と、前記過去値から推測して推測値トレンドグラフを作成する手段」での態様が前者の「前記発電設備の経時的特性の情報の動的傾向を演算」する態様に相当する。
また、後者の「前記推測値トレンドグラフと予め設定された制限値とを比較する比較手段」は、比較した結果、「いずれかの機器測定点の推測値トレンドグラフが制限値の範囲外になる」か否かを判断しているので、前者の「予め設定されたしきい値を超えた場合には該発電設備の異常予兆を判断する手段」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用例発明とは、

「発電設備を運用支援する発電設備の運用支援システムであって、
該発電設備に関する複数の異常予兆データに対応する異常時対応データが記憶されたデータベースと、
前記発電設備の経時的特性の情報の動的傾向を演算し、予め設定されたしきい値を超えた場合には該発電設備の異常予兆を判断する手段
を備えた発電設備の運用支援システム。」

で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
前者が、発電設備を「遠隔」運用支援する発電設備の「遠隔」運用支援システムであるのに対して、後者は、発電プラント監視制御システムである点。

(相違点2)
前者が「異常時対応データに対応するサービス形態が記憶されたデータベースと、該発電設備に異常予兆が生じた際に該異常予兆のレベルを判定する手段と、前記レベルを判定する手段で重故障と判定した場合は、判定された異常予兆データと、予め設定された該異常予兆データに対応する異常時対応データと、予め設定された該異常時対応データに対応する前記サービス形態とに基づき、前記サービス形態を設定する手段と、前記レベルを判定する手段で軽故障と判定した場合は、前記異常時対応データを設定する手段」を備えているのに対して、後者は、かかる異常時対応データに対応するサービス形態が記憶されたデータベース、及び異常予兆のレベルを判定する手段を備えておらず、いずれかの機器測定点の推測値トレンドグラフが制限値の範囲外になると、その機器測定点の系統図、トレンドグラフ、推測値トレンドグラフが表示ディスプレイ上に表示され、更に、前記ディスプレイ上に表示された前記推測値トレンドグラフに対応する機器の運転指示マニュアルを上記データベースから検索し、運転指示マニュアルの内容を系統図上に表示するという構成である点。

(4)当審の判断
ア 相違点1について
発電プラントの監視制御システムにおいて、発電所から離れた制御所に発電プラント監視制御システムを設置し、当該監視制御システムによって、複数の発電所のプラントを監視操作する形態をとることは、本願の出願前において周知であるから(例えば、特開平11-175139号公報、特開2000-207018号公報)、引用例発明を遠隔運用支援の形態とすることは、当業者が容易になし得ることである。

イ 相違点2について
発電プラントの監視制御システムにおいて、検出された異常を重大なものとそれ以外のものとに分け、検出された異常が重大な場合には、当該重大な異常に関する情報を外部に通報するための機能を作動させるということは、本願の出願前において周知であり(例えば、特開平1-125695号公報、特開2001-331215号公報)、更に、周知例として示した特開平1-125695号公報には、監視側で対処できないものが重大な異常として例示されている。上記周知例では、発電プラントに生じた異常のレベルを判定する判定手段については明記されていないが、検出された異常が重大であるか否かの判断を行っていることから、上記周知例が発電プラントに発生した異常のレベルを判定する判定手段を備えていることは自明である。
そして、発電プラントの監視制御システムにおいて、監視側で対処できないような重大な異常が発生する可能性は当然に存在することから、そのような観点に基づけば、引用例発明に対して上記周知技術を適用することに、当業者が格別の困難性を伴うということはできない。
なお、その適用に際し、引用例発明における検出の対象が異常予兆であることを考慮すると、適用される上記周知技術の判定手段の判定対象が異常予兆のレベルとなることは明らかであり、当該判定手段が本願補正発明の「発電設備に異常予兆が生じた際に該異常予兆のレベルを判定する手段」に相当することは明らかである。
また、引用例発明における運転指示マニュアルの表示は発電プラントの異常予兆に対し監視側での対処を促すためのものであるので、引用例発明に対して上記周知技術を適用した場合、判定手段が異常予兆を重大でないと判定した場合に上記運転指示マニュアルの表示が行われ、判定手段が異常予兆を重大であると判定した場合に上記運転指示マニュアルの表示に換えて重大と判定された異常予兆に関する情報を外部に通報するための機能が作動される構成となることは言うまでもない。
ところで、上記周知例では、重大と判定された異常に関する情報が通報された外部の側の対応については記載されていないが、外部の側において、通報された重大な異常に対する対応策が検討されることは当然である。そして、発電プラントの外部支援において、発電プラントの監視制御システム側から異常に関する情報を受けた外部の支援側が、データベースを利用して通報を受けた異常に対する適切な対処方法を監視側に回答するということは、本願の出願前において周知であるので(例えば、特開2000-56080号公報、特開2001-297179号公報)、引用例発明に対する前述の異常のレベルの判定及び重大と判定された異常に関する情報の外部への通報に関する周知技術の適用に際し、通報された重大と判定された異常予兆への対応のための手段として上記発電プラントの外部支援に関する周知技術を併せて用いることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。また、上記外部支援に関する周知技術における外部支援側の通報を受けた異常に対応するための適切な対処方法に関するデータベースが、本願補正発明の「異常時対応データに対応するサービス形態が記憶されたデータベース 」に相当するものである。
なお、発電プラントの監視制御システムにおいて、重故障、軽故障という用語は、異常のレベルを表す際に通常に用いられる用語に過ぎない(例えば、特開平4-15710号公報、特開2001-22439号公報及び特開2001-117630号公報)。
そして、引用例発明に対して上記各周知技術を適用した場合における、異常予兆のレベル判定手段によって異常予兆が重大でないと判定された場合に運転指示マニュアルの表示が行われることが、本願補正発明の「レベルを判定する手段で軽故障と判定した場合は、前記異常時対応データを設定する手段」での態様に相当し、更に、異常予兆のレベル判定手段によって異常予兆が重大であると判定された場合に重大と判定された異常予兆に関する情報を外部に通報するための機能が作動されること、及び当該重大な異常予兆に関する情報を受けた外部の支援側がデータベースを利用してその内容に対する適切な対処方法を監視側に回答することが、本願補正発明の「レベルを判定する手段で重故障と判定した場合」の「予め設定された該異常予兆データに対応する異常時対応データ」の設定、及び「予め設定された該異常時対応データに対応する前記サービス形態」に基づく「サービス形態」の設定に各々相当するものである。よって、引用例発明に対する上記各周知技術の適用によって得られる発電設備の運用支援システムは、本願補正発明の「前記レベルを判定する手段で重故障と判定した場合は、判定された異常予兆データと、予め設定された該異常予兆データに対応する異常時対応データと、予め設定された該異常時対応データに対応する前記サービス形態とに基づき、前記サービス形態を設定する手段と、前記レベルを判定する手段で軽故障と判定した場合は、前記異常時対応データを設定する手段」を備えたものとなる。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用例発明、及び上記各周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するものではない。

したがって、本願補正発明は、引用例発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年3月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、上記本願補正発明に対応する本願の請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年12月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「発電設備を遠隔運用支援する発電設備の遠隔運用支援システムであって、
該発電設備に関する複数の異常予兆データに対応する異常時対応データが記憶されたデータベースと、
該異常時対応データに対応するサービス形態が記憶されたデータベースと、
前記発電設備の経時的特性の情報の動的傾向を演算し、予め設定されたしきい値を超えた場合には該発電設備の異常予兆を判断する手段と、
該発電設備に異常予兆が生じた際に該異常予兆のレベルを判定し、判定された異常予兆データと、予め設定された該異常予兆データに対応する異常時対応データと、予め設定された該異常時対応データに対応するサービス形態とに基づき、サービス形態を設定する手段
を備えたことを特徴とする発電設備の遠隔運用支援システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「該発電設備に異常予兆が生じた際に該異常予兆のレベルを判定し、判定された異常予兆データと、予め設定された該異常予兆データに対応する異常時対応データと、予め設定された該異常時対応データに対応するサービス形態とに基づき、サービス形態を設定する手段」の限定事項である異常予兆の「レベルを判定する手段」、「前記レベルを判定する手段で重故障と判定した場合は、判定された異常予兆データと、予め設定された該異常予兆データに対応する異常時対応データと、予め設定された該異常時対応データに対応する前記サービス形態とに基づき、前記サービス形態を設定する」、及び「前記レベルを判定する手段で軽故障と判定した場合は、前記異常時対応データを設定する」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-28 
結審通知日 2005-11-29 
審決日 2005-12-13 
出願番号 特願2001-370814(P2001-370814)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G05B)
P 1 8・ 121- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森林 克郎  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 佐々木 芳枝
高橋 学
発明の名称 発電設備の遠隔運用支援方法及び発電設備の遠隔運用支援システム  
代理人 作田 康夫  

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