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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01M |
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管理番号 | 1130336 |
審判番号 | 不服2003-6774 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-10-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-04-21 |
確定日 | 2006-02-01 |
事件の表示 | 特願2000-79162「容器の検査法、検査法の利用ならびに検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月13日出願公開、特開2000-283880〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1992年8月27日(外国庁受理、スイス国)を国際出願日とする出願の一部を新たな特許出願として、平成12年3月21日に出願したものであって、平成15年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成15年4月21日に拒絶査定不服の審判を請求するとともに、同年4月25日に手続補正書を提出して特許請求の範囲の補正を行ったものである。 2.本願発明 本願請求項1ないし23に係る発明は、平成15年4月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載されたとおりのものであるところ、そのうち請求項1に係る発明は請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 容器の内圧と容器を取り囲む空間の圧力との間に差圧を設け、一方の圧力の変動状態に基いて、容器があらかじめ決められた検査条件を満たしていないかを決定する容器の検査方法において、 前記差圧が得られるように前記の一方の圧力が所定の検査値に達し、かつ、前記差圧が得られた後に、調整状態を経て、前記の一方の圧力が所定の検査値に再び達した直後から、前記の所定の検査値に対する前記の一方の圧力の圧力変化を圧力センサーによって測定を開始し、前記容器が所定の検査条件を満足するか否かを決定するためにその測定結果を利用する容器の検査方法。」 3.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された本願出願日前に刊行された特開平1-142430号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (a)「本発明は少なくとも1つの空容器の密封試験及び空容器の壁の圧力荷重に応じた容積変化を検出する方法と装置に関し、」(第2頁左下欄18-20行) (b)「試験室内の空容器に空容器内圧と試験室内の圧力との正又は負の差圧を加え、試験室内の圧力の状態から空容器の密封度及び(又は)容積変化を判定することにより達成される。」(第3頁左上欄4-7行) (c)「基準圧システムを先ず室と連結することによってそこに試験室内と同一の圧力が生ずる。次に基準圧システムを室から遮断すると、その時試験室内にある圧力値は基準圧システム内に残留され、後に評価する際の、差圧測定用の基準圧となる。更に室圧の評価を所定の時点でポイント方式で行なうことによって、極めて簡易に評価することが可能である。・・・。現在の試験室内圧を2つ以上の時点で、2つ以上の時点の目標圧力値と比較し、又は連続的な時間推移を目標圧の時間推移と比較することによって、特に極めて小さい漏れがある場合に、例えば比較結果ないし目標値と現在値の差を積算することにより、評価の解の正確さが高まる。」(第3頁左下欄11行-右下欄6行) (d)「第4図には第1図に基づく試験室3における圧力測定の好適な実施形態が示されている。試験室3は、t1とt2の時点の間の圧力準備段階中に、導管19を介して例えば圧電検出器のような差圧検出器21の入力E19と連結される。また、試験室3は遮断弁25を備えた第2導管23を介して、更に差圧検出器21の第2入力E23と連結される。第2図に示すtRの時点で遮断弁25が閉じられると、遮断弁25と入力E23の間の導管部分23a内には基準圧システムとして試験室3内の圧力が留まる。連結部23a内の前記圧力は基準圧として差圧検出器21に作用し、導管19は後続のt>tRのための測定段階では開いた状態に留っているので、差圧検出器21にてtRの時点での試験室圧力に対する差圧測定が行われる。第2図を参照すると明らかであるように、tRの時点は場合に応じて最適な測定精度で調整され、tR’、tR”及びその時点で生ずる基準圧PR,PR’,PR”に示されている。」(第5頁左上欄5行-右上欄3行) (e)「基準室29に試験用の気体が充填され、その内部で圧力検出器33を用いて圧力が測定される。検出器33により測定される圧力が基準信号源35で調整された基準圧に達すると、弁27が閉じられる。そこで引き続き弁31が開かれ、それにより室3と29とは連通系を形成し、室29内と室3内の容積に応じて試験用気体の平衡が行なわれる。平衡段階の後に、第2図の時点t2,t1に応じて、第4図を参照し前述した通り、差圧検出器21によって差圧の推移が測定され、又は第2図bに基づく所定の測定時点tmに、目標差圧と現在差圧との差が記録される。」(第5頁右上欄11行-左下欄2行) が、それぞれ図面と共に記載されている。 そして、上記(d)の記載からは、tRの時点の試験室内の圧力を基準圧として保存し、tR直後からの測定段階では差圧検出器21にてtRの時点での試験室圧力に対する差圧測定が行われることが把握される。また、この時の差圧測定は、2つ以上の時点で、または連続的な時間推移で行なえることも上記(c)の記載から理解される。 よって、これらの記載から刊行物1には 「容器の内圧と容器を取り囲む空間の圧力との間に差圧を設け、一方の圧力の変動状態に基いて、容器があらかじめ決められた検査条件を満たしていないかを決定する容器の検査方法において、 圧力準備段階を経て、前記の一方の圧力が基準圧に達した直後から、前記の基準圧に対する前記の一方の圧力の圧力変化を差圧検出器によって測定を開始し、前記容器が所定の検査条件を満足するか否かを決定するためにその測定結果を利用する容器の検査方法。」 が記載されているものと認められる。 4.対比・判断 (1)請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と刊行物1に記載の発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明における「基準圧」、「圧力準備段階」、および「差圧検出器」が、それぞれ本願発明1における「所定の検査値」、「調整状態」、および「圧力センサー」に相当するから、両者は 〈一致点〉 「容器の内圧と容器を取り囲む空間の圧力との間に差圧を設け、一方の圧力の変動状態に基いて、容器があらかじめ決められた検査条件を満たしていないかを決定する容器の検査方法において、 調整状態を経て、前記の一方の圧力が所定の検査値に達した直後から、前記の所定の検査値に対する前記の一方の圧力の圧力変化を圧力センサーによって測定を開始し、前記容器が所定の検査条件を満足するか否かを決定するためにその測定結果を利用する容器の検査方法。」 で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点a〉 「前記の所定の検査値に対する前記の一方の圧力の圧力変化を圧力センサーによって測定を開始し、」ているのが、本願発明1においては、「前記差圧が得られるように前記の一方の圧力が所定の検査値に達し、かつ、前記差圧が得られた後に、調整状態を経て、前記の一方の圧力が所定の検査値に再び達した直後から、」行っているのに対し、引用発明においては、「圧力準備段階(調整状態)を経て、前記の一方の圧力が基準圧(所定の検査値)に達した直後から、」行っている点。 (2)そこで、上記相違点aについて検討する。 本願発明1の上記相違点aに係る「前記差圧が得られるように前記の一方の圧力が所定の検査値に達し、かつ、前記差圧が得られた後に、調整状態を経て、前記の一方の圧力が所定の検査値に再び達した直後から、」の構成の根拠として、請求人は、図6を挙げているが、図6のグラフおよび同図下部の記載「1照合値を得るための測定時間t1における変換器の値」、「2漏洩を評価するための測定時間t2における変換器の値」によると、「所定の検査値」とは測定時間t1におけるX軸の変換器の値1を意味するものと理解され、さらに段落【0020】の記載「検査室3には、さらに相対圧力センサー11が取り付けられており、そのセンサーは、入口側での圧力値を電気的な出力信号に変換する。センサー11の電気的出力信号elは、図にSで表示したメモリー制御スイッチを介して、時間制御ユニット(図には示していない)から送られた制御信号sに応じて、メモリーユニット13に記憶される。圧力照合基準値としては、メモリー13から発信される出力信号el0 がコンパレータユニット15に導かれる。その第2入力端子には、センサー11の出力信号elが直結されている。照合基準値el0 がメモリーに記憶されると、コンパレータユニット15で、検査室内の圧力推移が追跡される。」を参酌すると、「所定の検査値」とは特定の値を示すものではなく測定時間t1における検査室内の圧力値を意味するものとして把握される。 一方、引用発明においては、上記(d)の記載及びFIG.2bから、tRの時点での試験室内の圧力を基準圧として蓄積し、時点tR以降の測定段階でtR時点での試験室圧力に対する差圧測定を行う。 してみると、上記相違点は、本願発明1においては照合値を得る測定時間t1が圧力充填履歴のピークを越えた位置にあることを意味するものとして把握され、一方の引用発明においては、基準圧の蓄積時点tRが、圧力準備段階中、即ちFIG.2bによれば圧力の加圧段階の途中にあるものとして把握される。 さらに、本願発明1のt1および引用発明のtRのいずれの時点についても、圧力値を測定して決定されるものではなく、あらかじめタイマーで設定された時点として決定されている。 そして、引用発明においては基準圧の蓄積時点tRは場合に応じて前後に変更できることが示されており(上記(d)参照)、その時点tRの決定に際しては、中空容器の内圧と試験室内の圧力との差圧の正負の関係によってtR’又はtR”が選択されることがFIG.2bから理解される。 ところで、本願発明1において、照合値を得るための測定時間t1を充填期間の終了後の位置に設定しているが、その位置に設定することについての技術的な意義についての説明が明細書中には一切されておらず、また、調整期間に格別の技術内容が行われることが示されているわけではないから、測定時間t1は、単に変換器の値(検査室内の圧力)が最大値をすぎた時点を測定時間として設定したにすぎないものとして把握される。 以上のことから、引用発明においても、前記差圧の予想される減衰の方向・大きさ等によっては、基準圧の蓄積時点tRをFIG.2bに示される圧力履歴のピークの時点t2を越えた位置に設定するということは当業者が容易に想到できたことにすぎず、また、試験室内の圧力変化がピークを過ぎて安定状態になったと思われる時点から測定を開始するということも技術常識から見て当然に選択されることであるから、引用発明において、基準圧の蓄積時点tRを圧力履歴のピークを過ぎた時点に選択して、本願発明1の上記相違点に係る構成とすることは当業者が適宜なし得たことにすぎない。 (3)請求人は、審判請求理由において、「本願発明は、所定の圧力の検査値(照合値あるいは参照値)として、圧力の最大値を用いるのではなく、それより小さい値を用いる。そして、その所定の圧力検査値を超えて最大値に達した後、再びその所定の検査値に達した直後から、その所定の検査値を照合値あるいは参照値として、それを基準にした圧力の圧力変化の測定を圧力センサーによって開始し、それによって漏れを検査する。調整状態の時間の長さ(間隔)は容器によって異なるが、本願発明では調整状態を経て再び達した所定の検査値を照合値とし、その所定の検査値に対する圧力変化を測定する構成なので、容器の種類によらず、極めて簡単でかつ正確な測定を行なうことができるという効果を奏する。」、また、「本願発明は、調整期間を経た直後(時刻t1)から圧力の測定を開始することを主要な構成とする検査法である。この構成によって、本願発明は従来の検査法に比べて顕著に簡素化されている。また、調整期間は容器によって異なるが、本願発明はその期間を経てから測定を開始する構成なので、調整期間の差に依存しない(容器の種類に依存しない)測定を可能としている。従って、図6において本願発明の本質が示されている部分は、グラフの曲線自体や調整期間自体ではなく、測定開始時が調整期間を経過して再び所定の検査値1に達した直後であることを示した部分にある。」との主張をしている。 ところが、上記主張の根拠となる調整期間の技術的な意味及び調整期間と容器との関係等については明細書中には記載されておらず、上記の主張は、明細書の記載に基づかない主張であるので採用することはできない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-08-30 |
結審通知日 | 2005-09-06 |
審決日 | 2005-09-20 |
出願番号 | 特願2000-79162(P2000-79162) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 本郷 徹 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
長井 真一 水垣 親房 |
発明の名称 | 容器の検査法、検査法の利用ならびに検査装置 |
代理人 | 志賀 正武 |