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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G09C
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G09C
管理番号 1130417
審判番号 不服2002-8997  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-20 
確定日 2006-02-01 
事件の表示 平成 9年特許願第526610号「非対称暗号通信方法、および関連の携帯物体」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月31日国際公開、WO97/27688、平成10年 5月26日国内公表、特表平10-505439〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年1月24日(パリ条約による優先権主張1996年1月26日、仏国)の出願であって、平成13年4月23日付けで拒絶理由通知がなされたが、これに対して応答がなく、平成14月2日8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月20日に審判請求がなされ、同年6月18日に誤訳訂正がなされ、さらに、同年6月19日に手続補正がなされたものである。

2.平成14年6月19日付け手続補正書についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成14年6月19日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正
平成14年6月19日付け手続補正(以下「本件手続補正」という。)は、平成14年6月18日に誤訳訂正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を補正するものであって、本件手続補正により補正された後の特許請求の範囲(以下「補正後の特許請求の範囲」という。)の請求項1及び9は、次のとおり記載されている。(以下、請求項1及び9に係る補正を「本件補正」という。)

「【請求項1】 第1の装置と第2の装置との間の非対称暗号通信方法であって、各装置は計算手段と記憶手段とを含み、通信線によって他方の装置に接続されており、前記方法が、nおよびmを2以上の整数とする時、環(A)のn個の要素(x1,....,xn)で表わされる第一の値(x)と、この環のm個の要素(y1,....,ym)で表わされる第二の値(y)との間に対応関係を確立し、
前記対応関係は、Pi(x1,....,xn;y1,....,ym)=0のタイプの等式が存在するように、トータル次数が6以下のAn+m→Aの多変数公開多項式(Pi)によって定義されるアルゴリズムであり、いくつかの多項式が、1〜nの間の整数jと1〜mの間の整数pとが存在するようなものであり、多項式(Pi)が、xj.ypにおいて0でない単項式を少なくとも一つ含み、前記アルゴリズムが前記第1の装置の前記記憶手段に格納されており、第1の値(x)から第2の値(y)を得るために前記第1の装置の前記計算手段によって実行される、第1の装置と第2の装置との間の非対称暗号通信方法。」

「【請求項9】 前記方法が計算手段と記憶手段とを有する携帯物体によって実行され、、第1の値(x)から第2の値(y)を計算することができる多変数公開多項式(Pi)を携帯物体の外部で計算することを可能とするデータを前記携帯物体に格納するステップを有する、請求項1に記載の方法。」

(2)本件補正の目的
本件補正が、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるかについて検討する。

(a)まず、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものであるかについて検討する。

上記補正後の請求項9は、補正後の請求項1の記載と併せると、非対称暗号通信方法と「携帯物体」との関係が特定された、方法の発明である。一方、補正前の特許請求の範囲において、方法の発明は、請求項1乃至11であるが、これらの中には、「携帯物体」について記載又は示唆のあるもの、若しくは、「携帯媒体」を追加することによって解決できる課題と同一の課題を解決しようとするものは存在しないから、本件補正は、新たな発明特定事項である「携帯媒体」を含む請求項9を追加するものであるので、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当しない。

(b)次に、本件補正が、特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものであるか否かについて検討する。

上記(a)で検討したように、補正後の請求項9に対応する請求項は、補正前の特許請求の範囲には存在しないから、当然のことながら、補正後の請求項9に対応したものは、平成13年4月23日付けの拒絶理由通知及び平成14月2日8日付けの拒絶査定のいずれの拒絶の理由の対象にもなっていないから、本件補正は、特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものでもない。

(c)また、上記(a)で検討したように、本件補正は、新たな発明特定事項である「携帯物体」を含む請求項9を追加するものであるから、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、または、同第3号の誤記の訂正の何れをも目的とするものではないことは明らかである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正を含む本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について、
平成14年6月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、特許請求の範囲の請求項1に記載されたものは次のとおりである。(以下「本願発明」という。)

「nおよびmを2以上の整数とする時、環(A)のn個の要素(x1,....,xn)で表わされる第一の値(x)と、この環のm個の要素(y1,....,ym)で表わされる第二の値(y)との間に対応関係を確立する非対称暗号通信方法であって、
前記対応関係は、(z1,.....,zk)が可能な中間変数でありkが整数である時に、Pi(x1,....,xn;y1,....,ym;z1,.....,zk)=0のタイプの等式が存在するように、トータル次数が6以下のAn+m+k→Aの多変数公開多項式(Pi)によって定義され、
Siがトータル次数2の多項式であってTiがトータル次数1の多項式である時に、いくつかの多項式(Pi)がTi(y1,....,ym)=Si(x1,....,xn)の形態を有さないことを特徴とする方法。」

4.原査定の理由
原査定の理由の概要は、本願発明は、(1)自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められないから、特許法第2条でいう、特許法上の「発明」に該当せず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない、及び、(2)特許請求の範囲の記載が不明確であるから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない、というものである。

5.当審の判断
(1)特許法第29条第1項柱書について
まず、本願発明が、特許法第2条でいう特許法上の「発明」すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かについて検討する。

本願発明は、「非対称暗号通信方法」に関するものであるが、当該「非対称暗号通信方法」自体は、物理的な対象を制御するものでもなく、対象の物理的な性質に基づいた処理を行うものでもない。また、当該「非対称暗号通信方法」の内容は、「nおよびmを2以上の整数とする時、環(A)のn個の要素(x1,....,xn)で表わされる第一の値(x)と、この環のm個の要素(y1,....,ym)で表わされる第二の値(y)との間に対応関係を確立する」こと、「前記対応関係は、(z1,.....,zk)が可能な中間変数でありkが整数である時に、Pi(x1,....,xn;y1,....,ym;z1,.....,zk)=0のタイプの等式が存在するように、トータル次数が6以下のAn+m+k→Aの多変数公開多項式(Pi)によって定義」されていること、及び、「Siがトータル次数2の多項式であってTiがトータル次数1の多項式である時に、いくつかの多項式(Pi)がTi(y1,....,ym)=Si(x1,....,xn)の形態を有さないこと」から構成されているが、これらはいずれも、数学的又は人為的な取決めのみに基づいたものであって、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当しない。
したがって、本願発明は、特許法第2条でいう、特許法上の「発明」に該当せず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

(2)特許法第36条について
(2-1)本願発明において、「前記対応関係は、(z1,.....,zk)が可能な中間変数であり」は、「(z1,.....,zk)」の何がどのように「可能」であるのか不明であり、技術常識を参酌してもその意味を具体的に想定することができない。
よって、本願発明は、その意味するところが不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定により、特許を受けることができない。

(2-2)本願発明において、「Siがトータル次数2の多項式であってTiがトータル次数1の多項式である時に、いくつかの多項式(Pi)がTi(y1,....,ym)=Si(x1,....,xn)の形態を有さない」について、これに類似した記述として、明細書第3頁第1-4行に「多項式(Pi)の少なくとも大部分がTi(y1,....,ym)=Si(x1,....,xn)の形態ではなく、Siがトータル次数2の多項式であってTiがトータル次数1の多項式であることを特徴とする方法に関する。」との記載があるが、当該記載は、多項式(Pi)の大部分が、「Ti(y1,....,ym)=Si(x1,....,xn)の形態」ではないことを前提とし、それに付随して、「Siがトータル次数2の多項式であってTiがトータル次数1の多項式である」ことを説明するものである。
一方、本願発明は、「Siがトータル次数2の多項式であってTiがトータル次数1の多項式である時」を条件として、多項式(Pi)として、「Ti(y1,....,ym)=Si(x1,....,xn)の形態を有さない」ものがあることを特定するものであるから、両者は対応していない。明細書のこれ以外の部分を参照しても、本願発明の上記抜粋部分に対応した記述はない。
よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定により、特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書並びに第36条第6項第1号及び第2号の要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-09 
結審通知日 2005-08-16 
審決日 2005-09-21 
出願番号 特願平9-526610
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G09C)
P 1 8・ 14- Z (G09C)
P 1 8・ 537- Z (G09C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 林 毅
橋本 正弘
発明の名称 非対称暗号通信方法、および関連の携帯物体  
代理人 坪倉 道明  
代理人 大崎 勝真  
代理人 小野 誠  
代理人 川口 義雄  

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