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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1130450
審判番号 不服2003-385  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-08 
確定日 2005-12-09 
事件の表示 平成 5年特許願第519718号「フィト-エストロゲン,類似体またはその代謝産物を含有する健康補助剤」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年11月25日国際公開、WO93/23069、平成 7年 7月27日国内公表、特表平 7-506822〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、1993年(平成5年)5月19日(パリ条約による優先権主張1992年5月19日(AU)オーストラリア連邦)を国際出願日とする出願であって、その請求項1〜11に係る発明は、平成15年2月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜11に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである(以下、「本願発明」という)。
「ゲニステイン、ダイドゼイン、ビオカニンA、ホルモノネチンおよびこれらのグリコシドからなる群から選択される少なくとも2種の天然に存在するフィト-エストロゲンの健康補助量からなる健康補助剤。」
2.引用刊行物の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前に頒布された刊行物である特開平1-258669号公報(文献A8;以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(摘示した各記載事項を、以下「記載(a)」などという)。
(a)「大豆抽出液あるいは大豆磨砕物からイソフラボン化合物を製造するに際し、大豆中のβ-グルコシダーゼ活性が最大となるように、浸漬工程、磨砕工程あるいは磨砕後の酵素反応工程のいずれか、あるいは2以上の工程において、大豆あるいは大豆磨砕物を45〜55℃に加熱することを特徴とするイソフラボン化合物の製造法。」
(特許請求の範囲)
(b)「本発明は大豆からイソフラボン化合物、特にそのアグリコン類を多量に含むイソフラボン化合物の製造法に関するものである。」
(1頁左下欄下から6〜4行)
(c)「大豆にはダイジン、グリシチン、ゲニスチン、ダイゼイン、ゲニステイン等のイソフラボン化合物が含まれており、その生理活性作用はエストロゲン作用、抗酸化、抗溶血作用、抗菌作用、抗脂血、抗コレステロール作用が知られており、また最近ではガン細胞の分化誘導作用、ガン遺伝子阻害作用等、制ガン効果も確認され、その有用性が注目されている。」
(1頁左下欄下から2行〜同頁右下欄6行)
(d)「実験例1
脱皮大豆を5倍量の20〜80℃の水に6時間浸漬し、その浸漬水と浸漬大豆を直ちに冷却、凍結させる。それを凍結乾燥機にて乾燥、粉末化し、その一定量を80%メタノールで環流抽出し、定容したものの一定量を高速液体クロマトグラフィー(Waters社209D型)にて分析した。
結果を第1表に示す。

」(2頁右下欄6行〜3頁左上欄最下行)
(e)「実施例3
低変性脱脂大豆(日清ソーヤフラワー)10kgに50℃の水、50L(注、原文では小文字筆記体)を加え、1時間攪拌した。これをスプレードライにて熱風乾燥し、精製原料を得た。精製原料に対し5倍量の80%熱メタノールによりイソフラボン類を抽出し、減圧乾固して粗イソフラボン画分103gを得た。これを少量のメタノールに再溶解し、充填剤としてODS-Aタイプ60-01((株)山村化学研究所製)をつめたφ70mm×100cmのカラムに通して吸着させた。
次いで、40%のメタノールでフェノール酸やイソフラボン配糖体画分を流出させ、除去し、次いで80%メタノールで溶出し、これを減圧乾固したところ、アグリコン9.5gを得た。」
(3頁右下欄5〜18行)
3.対比・判断
記載(a)、(b)、(e)によれば、引用例には、大豆の抽出液又は磨砕物を原料として所定の工程によりアグリコン類を多量に含むイソフラボン化合物を製造する方法が記載され、記載(c)、(d)によれば、引用例で製造したイソフラボン化合物にはゲニステイン及びダイゼイン(本願発明のダイドゼインに相当)が含まれ、記載(c)によれば、これらイソフラボン化合物の生理活性作用としてエストロゲン作用が知られているから、これらの化合物は植物エストロゲンすなわち本願発明のフィトーエストロゲンに相当し、また大豆抽出物であるから天然に存在する物に該当する。
ここで、本願発明と引用例に記載された発明を対比すると、両者は、ゲニステイン及びダイドゼインという2種の天然に存在するフィトーエストロゲンを含む物である点で一致し、前者が該フィトーエストロゲンを健康補助量用いた健康補助剤であるのに対し、後者が該フィトーエストロゲンをどのような用途に使用するか特段に限定を付していない点で相違する。
そこで、上記相違点について以下に検討する。
引用例には、大豆に含まれるダイゼイン、ゲニステイン等のイソフラボン化合物の生理活性作用として、抗脂血、抗コレステロール作用が記載され(記載(c))、また特開平2-160722号公報(原査定の文献A1)の4頁右上欄7〜10行、特開昭62-106016号公報(原査定の文献A2)の3頁左上欄3〜6行、及び特開昭60-48924号公報(原査定の文献A4)の1頁右下欄18行〜2頁左上欄3行には、これらのイソフラボン化合物が、血小板凝集抑制作用、遊離ラジカルのスキャベンジャーとしての作用、及び骨粗鬆症の治療作用を有することが記載されており、さらに、これらのイソフラボン化合物は毒性が低いことも知られている(上記文献A2の3頁左上欄2〜3行、特開昭61-246124号公報(原査定の文献A3)の5頁左上欄下から5〜3行及び同頁右上欄2〜3行、並びに上記文献A4の2頁左上欄下から2行〜同頁右上欄5行を参照)。
そうすると、エストロゲン作用と共に上記様々な健康改善作用が知られた引用例記載のイソフラボン化合物(フィトーエストロゲン含有物)を、健康補助剤として使用することは、これらの化合物がヒトの日常的に摂取する食物中に含まれ毒性も低いことが判明しているものである以上、当業者が特段の障害なく容易に工夫し得る事項というべきであり、その際にフィトーエストロゲンの配合量を健康補助に適切な量(健康補助量)に設定することも当業者が当然に行うことである。また本願明細書の記載からみて、引用例に記載のフィトーエストロゲン含有物を健康補助剤として使用することにより奏される効果も、当業者の予測の範囲を越える格別なものであるとは認められない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-02 
結審通知日 2005-08-11 
審決日 2005-08-02 
出願番号 特願平5-519718
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩下 直人  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 谷口 博
中野 孝一
発明の名称 フィト-エストロゲン,類似体またはその代謝産物を含有する健康補助剤  
代理人 藤野 清也  

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