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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1130497
審判番号 不服2003-9576  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-28 
確定日 2006-02-09 
事件の表示 平成 9年特許願第161363号「情報提供サービスシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月12日出願公開,特開平11- 7474〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成9年6月18日の出願であって,平成15年4月28日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年5月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,手続補正がなされたものである。

第2 平成15年5月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成15年5月28日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1)補正後の本願発明
本補正により,特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。
「【請求項1】 コンピュータネットワークを介して通信教育を行う情報提供サービスシステムにおいて,
通信教育を提供する業者コンピュータは,
通信教育の提供を受ける受講者コンピュータに与える提出問題毎の,暗号化された正解に関する情報を送信する手段と,
前記受講者コンピュータからの解答が出来たことを示す前記提出問題毎の解答完了通知を受信する手段と,
前記提出問題と,前記正解に関する情報の復号化のための該提出問題に固有な解錠キーとが対応付けて記憶されている受講者管理ファイルから,前記解答完了通知に基づいて,対応する前記解錠キーを読み出して,前記受講者コンピュータに送信する手段と,
前記受講者コンピュータによって,前記復号化された正解に関する情報を基に解答を採点された採点結果を受信する手段とを有することを特徴とする情報提供サービスシステム。」

上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「問題毎に固有に設定された解錠キー」について限定を付加するものであって,問題と解錠キーが対応付けられていることは,補正前の請求項に記載され,記憶されるものがファイル形式で管理ファイルと表現されることは普通であるから,当該補正は,特許法17条の2第4項に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第4項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された,特開平7-225550号公報(以下「引用例」という。)には,次の事項が開示されている。(摘記箇所は,項目名又は段落番号で表記)

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】データ提供者により提供された複数の部分データから成るデータ集合のうち,データ利用者が参照する処理の段階に対応した特定の部分データのみを参照可能にするデータ多段階参照方法において,
データ提供者側において参照処理段階数と同数の暗号鍵を生成または設定しておき,データ利用者が参照する処理の段階に対応した特定の部分データを当該参照処理段階に対応した暗号鍵で暗号化する時,当該参照処理段階の特定の部分データに対し,次段階以降で参照する全ての部分データをその参照処理段階に対応する暗号鍵で暗号化した暗号化部分データ集合を追加し,これら特定の部分データと暗号化部分データ集合とから成るデータ集合を次の参照処理段階とは異なる暗号鍵で暗号化する処理を,参照処理段階数と同回数行ってデータ集合全体を暗号化し,この暗号化されたデータ集合をデータ利用者に提供し,データ利用者側では参照処理段階順に参照処理段階に応じた暗号鍵を用いてデータ提供者から提供されるデータ集合の中の当該参照処理段階の部分データを順次復号し,参照することを特徴とするデータ多段階参照方法。」

イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,データ提供者により提供されるデータ集合をデータ利用者側で参照するシステムにおけるデータ多段階参照方法およびデータ多段階参照システムに係り,特に,データ利用者がデータを参照する処理の段階によって特定の部分データのみを参照可能とするデータ多段階復号方法およびデータ多段階参照システムに関する。」

ウ 「【0020】このシステムは,例えば,ゲームソフトの配布システムとして,まず利用者にゲームソフトの一部の機能や画面データだけを試用してもらい,引き続いてゲーム全体を楽しみたいという意志が利用者にあれば,それに対する追加料金を払ってもらうことで,ゲーム全体の使用を許すという場合に適用されるものである。」

(3)対比
本願補正発明と上記引用例に記載された発明(以下,「引用発明」という。)とを対比する。
本願補正発明の業者コンピュータは,引用発明のデータ提供者のコンピュータに相当し,同じく受講者コンピュータはデータの提供を受けるデータ利用者のコンピュータに相当することが理解できる。
引用発明では,データ提供者からデータ利用者へデータを暗号化して提供しており,データ利用者側では参照処理段階順に参照処理段階に応じた暗号鍵を用いてデータ提供者から提供されるデータ集合の中の当該参照処理段階の部分データを順次復号して利用していることが認められる。
また,暗号化の場合,対象ファイルと解錠キーを対応付けて記憶することは,普通に行われていることであり,これを管理ファイルと表現したファイルに記憶することも当業者に自明の事項である。
引用例はゲームソフトを例に説明がなされており,「利用者にゲームソフトの一部の機能や画面データだけを試用してもらい,引き続いてゲーム全体を楽しみたいという意志が利用者にあれば,それに対する追加料金を払ってもらうことで,ゲーム全体の使用を許す」(段落【0020】)ことから,データの提供を受けるコンピュータからの通知を受信する手段を引用発明でも備えていることが認められる。
そして,本願補正発明では,その用途が通信教育であるため,特徴的な用語である,通信教育,受講者,提出問題,正解,解答,採点などを用いて記載されている点で引用発明と明確な相違があることから,次の一致点,相違点が認められる。

一致点
データを提供する業者コンピュータは,データの提供を受けるコンピュータに,暗号化された情報を送信する手段と,前記データの提供を受けるコンピュータからの通知を受信する手段と,前記データの復号化のためのデータに固有な解錠キーとが対応付けて記憶されている管理ファイルから,前記通知に基づいて,対応する前記解錠キーを読み出して,前記データの提供を受けるコンピュータに送信する手段と, 前記データの提供を受けるコンピュータによって,前記復号化された情報を基に信号を受信する手段とを有することを特徴とする情報提供サービスシステム

相違点
本願補正発明では,通信教育を対象としているのに対し,引用発明では用途を特定しない情報提供システムであるため,前述のとおり本願補正発明に特徴的な用語である,通信教育,受講者,提出問題,正解,解答,採点などが引用発明では用いられておらず,かつ,採点結果を,データを提供する側で受信することも引用発明には示されていない点。

(4) 当審の判断
コンピュータやネットワークを利用した通信教育システムは,原審の拒絶の理由でも引用されたように当業者に周知な技術である。
すなわち,「自動採点システム」と題する特開平7-77928号公報,「在宅模擬試験受験システム」と題する特開平7-334074号公報及び「添削支援装置」と題する特開平7-181882号公報が周知な例として既に提示されている。
また,一般に教育の分野では,採点のやり方として,解答を特定の者に集め採点する方法と同様に,解答者自身又は解答者相互に採点を行うことも普通に行われていることである。
そうすると,上記相違点は,当業者に周知な技術である通信教育をコンピュータで行うに際し,普通に行われている解答者自身が採点を行う自己採点の方法を単に採用したものにすぎず,格別の技術的な創意工夫は認められない。

そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明の効果及び引用発明から当業者が予測できる範囲のもので,格別顕著な効果も認められない。
よって,本願補正発明は,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって,本件補正は,特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則6条1項によりなお従前の例によるものとされた同法による改正前の特許法17条の2第4項において読み替えて準用する同法126条4項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 平成15年5月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成14年7月9日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 コンピュータネットワークを介して通信教育を行う情報提供サービスシステムにおいて,通信教育を提供する業者コンピュータは,通信教育の提供を受ける受講者コンピュータに与える提出問題毎の,暗号化された正解に関する情報を送信する手段と,前記受講者コンピュータからの解答が出来たことを示す解答完了通知を受信する手段と,前記解答完了通知に基づいて,前記提出問題毎に固有に設定された,前記正解に関する情報の復号化のための解錠キーを送信する手段と,前記受講者コンピュータによって,前記復号化された正解に関する情報を基に解答を採点された採点結果を受信する手段と,を有することを特徴とする情報提供サービスシステム。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及びその記載事項は,前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記第2 2で検討した本願補正発明から解錠キーに関連する具体的限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前述のとおり,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたもので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-25 
結審通知日 2005-11-29 
審決日 2005-12-12 
出願番号 特願平9-161363
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 幸一貝塚 涼  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 田中幸雄
大野 弘
発明の名称 情報提供サービスシステム  
代理人 横山 淳一  

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