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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1130519
審判番号 不服2003-18565  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-24 
確定日 2006-02-09 
事件の表示 平成 6年特許願第211982号「化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月 5日出願公開、特開平 8- 59427〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年8月12日の出願であって、その発明の要旨は、明細書の記載からみて、請求項1〜4に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項4に係る発明は、次のとおりである。

「ベニバナより抽出された色素を吸着させた赤色セルロース粉末を含む化粧料の蛍光灯下での黄ぐすみを防止し、発色性を向上させる方法であって、前記赤色セルロース粉末と疎水化処理粉末を含ませることを特徴とする赤色セルロース粉末含有化粧料の発色性向上方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
原査定の理由である平成14年5月22日付けの拒絶の理由に引用された本出願前に頒布された刊行物である特開昭63-196506号公報(以下「引用例1」という。)には、
(1-1)「天然色素である紅花色素すなわちカルサミンは古来から化粧料、・・・に用いられてきた。しかしカルサミンは油には溶解せず、水にも溶解しにくいため、又カルサミン自体では発色しにくいため直接化粧料に配合することは難しい。そこで近年では溶解性、分散性向上のためカルサミンを利用した着色粉末の検討がおこなわれ結晶セルロースを用いた方法・・・による着色粉末が一般的に化粧料に配合されている」(1頁、右下欄10〜19行)
(1-2)「結晶セルロースにカルサミンを吸着させた着色粉末を配合した化粧料の色調は赤紫系の狭い範囲の色調であり・・・色調に幅のある製品は得られなかった。又、耐ブリード性(色の滲み)が不良であるため汗等の水分に弱く化粧くずれを起こしやすかった」(2頁、左上欄2〜7行)
と記載されている。
また、拒絶の理由に引用された本出願前に頒布された刊行物である特開昭55-167209号公報(以下「引用例2」という。)には、
(2-1)「化粧用粉体と着色料を主たる成分として構成される化粧料において、弗素を含有する重合体からなる撥水撥油剤で処理した化粧用粉体及び/又は着色料を配合したことを特徴とする化粧料」(1頁、左下欄5〜9行、特許請求の範囲、請求項1)
(2-2)「本発明の化粧料は、水、発汗等による透明化、色むらあるいは化粧崩れを生じない著しく改良された化粧料であり、例えば、おしろい、コンパクトパウダー、ケーキファンデーション、パウダーファンデーション、チークカラーパウダー、ボディパウダー等に極めて有用である」(2頁、左下欄13〜18行)
と記載されている。

3.対比
摘示事項(1-1)、(1-2)には、ベニバナから抽出した紅色色素(カルサミン)は、油に溶解せず、水にも溶解しにくいため、また、それ自体は発色しにくいため直接化粧料に配合することが難しい。このため、カルミサンを利用した着色粉末の検討がおこなわれ、カルミサンを結晶性セルロースに吸着させた着色粉末を化粧料に配合することが行われていることが、引用例1に記載された発明の従来技術として記載されている。
したがって、引用例1には、「ベニバナより抽出された色素を吸着させた紅色結晶性セルロース粉末を含ませる化粧料の発色性向上方法」が記載されているものと認められる。(以下、「引用発明」という。)
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の紅色結晶性セルロース粉末は、本願発明の赤色セルロース粉末に相当するから両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「ベニバナより抽出された色素を吸着させた赤色結晶性セルロース粉末を含ませる化粧料の発色性向上方法」である点。
<相違点>
本願発明は化粧料に「疎水化処理粉末を含ませる」のに対して、引用発明は、疎水化処理粉末を含んでいない点。(以下「相違点1」という。)
及び
本願発明は「化粧料の蛍光灯下での黄ぐすみを防止」することを目的とする方法であるが、引用発明ではこの目的が記載されていない点。(以下「相違点2」という。)

4.当審の判断
(相違点1について)
引用発明は、耐ブリード性(色の滲み)が不良であるため汗等の水分に弱く化粧崩れを起こしやすいといった課題を持つものである。(摘示事項(1-2))
一方、引用例2には、「化粧用粉体と着色料を主たる成分として構成される化粧料において、弗素を含有する重合体からなる撥水撥油剤で処理した化粧用粉体及び/又は着色料を配合したことを特徴とする化粧料」が記載されており(摘示事項(2-1))、撥水揮発剤で処理した化粧料粉体及び/又は着色料を化粧料に配合することにより水、発汗等による透明化、色むらあるいは化粧崩れを生じない著しく改良された化粧料が得られることが記載されている。(摘示事項(2-2))。
してみれば、引用発明において、化粧崩れを防止できる等、よりすぐれたものとするため、撥水揮発剤で処理した化粧料粉体すなわち疎水化処理粉末をさらに含ませることは当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2について)
化粧料の蛍光灯下での黄ぐすみを防止することは化粧料において周知の課題であり、引用発明においても当然に有していた課題である。そして、本願発明の明細書の記載によれば、本願発明の発色性向上方法による蛍光灯下での黄ぐすみの防止効果は、表2の北窓光と白色蛍光灯下での見え方の差の項目のテスト結果だけであり、撥水化処理粉末を含まない化粧料との比較例が示されているのは実施例1,6だけである。実施例と比較例の上記見え方の差は実施例1が◎、比較例1が○、実施例6が◎、比較例4が○であるが、◎は4.5以上5.0まで、○が3.5以上4.5未満であることを考えれば、このテスト結果をもって、本願発明が化粧料の蛍光灯下での黄ぐすみを防止する格別な効果があるものとは認められないから、相違点2は格別のものでない。
そして、その他の効果の点からみても本願発明の効果が格別なものとは認められない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-01 
結審通知日 2005-12-06 
審決日 2005-12-19 
出願番号 特願平6-211982
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 榎本 佳予子福井 悟福井 美穂  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 中野 孝一
弘實 謙二
発明の名称 化粧料  
代理人 舘野 千惠子  
代理人 舘野 千惠子  

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