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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G07B
管理番号 1130540
審判番号 不服2004-3105  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-17 
確定日 2006-02-09 
事件の表示 平成 9年特許願第 11149号「自動精算機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月 7日出願公開、特開平10-208090〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年1月24日の出願であって、平成16年1月16日付け(発送日:同年1月27日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月17日に審判請求がなされ後、平成17年8月12日付けで当審から拒絶理由が通知され、これに対して、平成17年10月6日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年10月6日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 自動精算機本体にその自動精算機本体の設置されている駅で発行された乗車券が挿入されたとき、その乗車券にその自動精算機本体の設置されている駅の入場データがあり、かつ、その乗車券に対応する列車が以後存在せず、又は入場後に旅行を中止した場合のように一度も使用されていない払戻し対象券か否かを判定する判定手段と、
前記乗車券が払戻しができると判定されたときに、その払戻しの金額を算出する算出手段と、
算出された金額の金銭を排出するときに、前記自動精算機本体の設置されている駅から出場することのできる出場券を発券する発券手段と、
算出された金額の金銭を自動精算機本体から排出する金銭排出手段と、
を有することを特徴とする自動精算機。」

3.引用例
当審の拒絶の理由に引用した引用例は次の刊行物である。
特開昭50-8599号公報

4.引用例に記載されている事項
引用例には、払戻し機能を併有する精算機に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
・「従来、券面金額が乗車運賃に不足するときは乗越しと称して乗越し運賃について精算を行い、未使用切符については一定の手数料を引いて払戻しがされている。」(1頁右下欄6〜9行)
・「ある切符について精算が必要となるのは、第1図(イ)に示すように、原理的には、乗車駅(S)から下車駅(X)までの区数(または距離、以下同じ)すなわち乗車区数(Ds)が、切符金額に相当する区数すなわち券面区数(P)よりも大のとき、すなわち精算区数を(A)とすれば、A=Ds-P>0の関係を充足するときであり、また払戻しが必要となるのは第1図(ロ)に示すように、乗車区数(Ds)が零または券面区数(P)よりも小のとき、すなわち払戻し区数を(A’)とすれば、A’=Ds-P<0の関係を満足するときである。」(2頁右上欄2〜12行)
・「また要求される払戻し機能は、切符からA’<0の条件を満たす払戻し区数(A’)が求められたとき、これを券面金額から一定の手数料を引いて得られる払戻し金額に変換し、顧客への払戻し金排出、切符回収、または返却、払戻し券発行、およびデータ送信をするものでなければならない。」(2頁右上欄18行〜同左下欄4行)
・「このような切換えを可能にした本発明による精算機の実施例を第2図ないし第4図に基いて詳述する。この精算機は第2図に示すように、操作部(1)、読取部(3)、演算制御部(4)、検銭部(5)、つり銭部(6)、精算券発行部(7)、表示部(8)、インタフェイス(9)から構成されている。」(2頁左下欄8〜13行)
・「読取部(2)は切符から乗車駅コード(S)および券面区数コード(P)などの切符の情報を読取り、これを演算制御部(4)に送信する。記憶部(3)は乗車駅から下車駅までの乗車区数(Ds)を記憶し、精算区数(A)または払戻し区数(A’)を精算料金または払戻し料金に変換するものである。」(2頁右下欄2〜7行)
・「またつり銭部(6)は精算の場合には顧客につり銭の払い出しを行ない、払戻しの場合は払戻し金の払出しをするものである。精算券発行部(7)はいうまでもなく、精算の際に回収した切符に代えて精算券を顧客に発行するものである。途中下車の場合にも払戻しを認めるときは回収した切符の代りに払戻し券をこの精算券発行機(7)から発行してもよい。」(2頁右下欄12〜19行)
・「また、払戻し時は、第4図右欄に記載されているように第3ステップとしてゲート(Sb1)(Sb2)を開いて減算器(Sub)により、券面区数(P)から乗車区数(Ds)を引いて払戻し区数(A’)を求め、これをレジスタ(AR)に入力する。この場合はゲート(Sb1)(Sb2)の切替えにより、減数と被減数とを入れ替えているものである。そして、フリップフロップ回路(BOR)がセットされているときは、フリップフロップ回路(J)がセットされ、払戻し不能として切符を返却する。フリップフロップ回路(BOR)がセットされないときは、ゲート(Sb3)を開き、メモリー(M2)を用いて払戻し区数(A)を払戻し金額に変換して、これをレジスタ(FR)に記憶する。レジスタ(FR)では第5ステップとして払戻し金額が零のとき、フリップフロップ回路(J)がセットされ、同様に払戻し不能として切符が返却される。また、払戻し金額が零でないときは、表示部(8)、つり銭部(6)およびインタフェイス(9)がそれぞれ動作される。」(4頁左上欄8行〜同右上欄5行)
・「また、本発明によれば券面区数と乗車区数とから精算区数または払戻し区数を求め、これらを各別のメモリーを用いて精算金額または払戻し金額に変換するから、精算機能と払戻し機能の併有が可能となり、かつ払戻し金額の算出基準も任意に設定できるから、切符未使用者に対してのみならず、途中下車乗客に対しても必要に応じて払戻しをするように用いることもできる。」(4頁右下欄5〜12行)

5.対比・判断
上記摘示した事項からみて、引用例に記載された払戻し機能を併有する精算機は、乗越しの精算、途中下車における払戻し、未使用切符の払戻しができるものであって、その読取部(2)によって切符の乗車駅コード(S)を読取り、演算制御部(4)によって乗車区数(Ds)と券面区数(P)とから払戻し区数A’=Ds-Pを演算し、A’<0と判定した場合に払戻しをするものといえるから、引用例には、次の発明が記載されているものといえる。
「精算機に切符が挿入されたとき、その切符に乗車駅コード(S)があり、かつ、その切符が払戻し対象券か否かを判定する演算制御部(4)と、前記切符が払戻しができると判定されたときに、その払戻し金額を算出する演算制御部(4)と、払戻し券を発行し、算出された金額の金銭を排出するつり銭部(6)と、を有する払戻し機能を併有する精算機。」

そこで、本願発明と引用例に記載された発明とを対比し、検討する。
引用例に記載された発明の「払戻し機能を併有する精算機」、「切符」、「乗車駅コード(S)」、「切符が払戻し対象券か否かを判定する演算制御部(4)」、「払戻し金額を算出する演算制御部(4)」、「つり銭部(6)」は、それぞれ本願発明の「自動精算機本体」、「乗車券」、「駅の入場データ」、「払戻し対象券か否かを判定する判定手段」、「払戻し金額を算出する算出手段」、「金銭排出手段」に相当しているから、両者は、次の点で一致している。
〈一致点〉
「自動精算機本体に乗車券が挿入されたとき、その乗車券に駅の入場データがあり、かつ、その乗車券が払戻し対象券か否かを判定する判定手段と、
前記乗車券が払戻しができると判定されたときに、その払戻しの金額を算出する算出手段と、
算出された金額の金銭を自動精算機本体から排出する金銭排出手段と、
を有することを特徴とする自動精算機。」

しかし、次の点で相違している。
〈相違点〉
・相違点1
自動精算機本体に挿入された乗車券が、本願発明は、「その自動精算機本体の設置されている駅で発行された乗車券」であって、乗車券の入場データが「その自動精算機本体の設置されている駅の入場データ」であるのに対し、引用例に記載された発明には、このようなことが明りょうに示されていない点。
・相違点2
判定手段が、本願発明では、「乗車券にその自動精算機本体の設置されている駅の入場データがあり、かつ、その乗車券に対応する列車が以後存在せず、又は入場後に旅行を中止した場合のように一度も使用されていない払戻し対象券か否かを判定する」ものであるのに対し、引用例に記載された発明には、このような構成が記載されていない点。
・相違点3
本願発明は、「算出された金額の金銭を排出するときに、前記自動精算機本体の設置されている駅から出場することのできる出場券を発券する発券手段」を備えているのに対し、引用例に記載された発明は「払戻し券」を発行している点。

そこで、この相違点を検討する。
・相違点1について
乗車駅での乗車券の入場データは、自動改札機において乗車券に自動的に記録され、この入場データを基にして、払戻し、精算を行っていることは周知であり、終電に乗り遅れた場合等においても、出願人も明細書に記載しているように、従来から駅窓口で入場駅の乗車券の払戻し処理をしている。さらに、前記引用例には、「従来、券面金額が乗車運賃に不足するときは乗越しと称して乗越し運賃について精算を行い、未使用切符については一定の手数料を引いて払戻しがされている。」と記載され、 また、「切符未使用者に対してのみならず、途中下車乗客に対しても必要に応じて払戻しをするように用いることもできる。」と記載されていること、さらに、 演算制御部4で行われる乗車区数Ds=0の場合の払戻し区数A’の払戻し処理は、精算機が設置されている駅で入場して出場する場合の切符未使用者に対する乗車券の払戻し処理に相当する構成であるといえる。
そうすると、入場駅に設置されている払戻し機能を備えた自動精算機で、従来の駅窓口での乗車券の払戻し処理に代えて、その入場駅で発行された乗車券と、その駅の入場データで、乗車券の払戻しをすることは当業者が容易に想到し得たものといえる。
・相違点2について
「その乗車券に対応する列車が以後存在せず、又は入場後に旅行を中止した場合のように」という構成は、その構成に技術的な手段の開示がないから、単なる払戻し対象券となる場合の取引上の取決め事項の例示をしているにすぎないし、このような取決め事項は当業者が適宜決められるものでもある。
また、入場駅に設置されている払戻し機能を備えた自動精算機で、入場データと、一度も使用していないこと、とを条件にして払戻し対象券であるか否かを判定することは、従来の駅窓口での払戻し業務及び引用例記載の乗車区数Ds=0の演算制御部4における払戻し処理から当業者が容易に想到し得たものといえる
・相違点3について
精算機から発行される精算券で出場することは、例えば、特開平5-266284号公報、実願平5-62280号(実開平7-29668号)のCD-ROM、実願平3-55799号(実開平5-2276号)のCD-ROM、実願平5-35582号(実開平7-3049号)のCD-ROM、に示されるように周知であるから、引用例に記載された払戻し機能を併有する精算機からの「払戻し券」を出場券とすることは、容易に想到し得たものいえる。

そして、本願発明の効果についても、引用例に記載された発明及び周知事項から、当業者が容易に予測し得たものと認められる。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-09 
結審通知日 2005-12-13 
審決日 2005-12-28 
出願番号 特願平9-11149
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G07B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子 浩明  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
櫻井 康平
発明の名称 自動精算機  
代理人 石井 光正  

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