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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21C
管理番号 1130545
審判番号 不服2004-6053  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-25 
確定日 2006-02-09 
事件の表示 平成 8年特許願第191716号「原子力発電所建屋」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月13日出願公開、特開平10- 39075〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年7月22日の出願であって、平成16年2月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成16年3月25日に審判請求がなされるとともに、同年4月23日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
平成16年4月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載に基づいて、誤記の訂正を目的として、特許請求の範囲の請求項1に記載された補正前の「原子力建屋内」を「原子炉建屋内」と補正し、また、明りょうでない記載の釈明を目的として、同請求項1に記載された補正前の「原子炉格納容器の外側部分の床」を「原子炉格納容器よりも外側部分の床を、」と補正したものである。

そして、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「原子力発電所建屋において、原子炉建屋内に設置された原子炉格納容器よりも外側部分の床を、床下に突出部が無いフラットスラブ構造としたことを特徴とする原子力発電所建屋。」

3.引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-240794号公報(以下「引用刊行物」という。)には、「マットスラブの施工法」の発明に関して以下の事項が記載されている。
<記載事項1>
「【請求項1】 適宜間隔で仕切板を設けた上下鉄板間にコンクリートを充填してなる鋼板コンクリート製床版の上にスラブ鉄筋を配筋し、コンクリートを打設して床スラブを形成することを特徴としたマットスラブの施工法。」(請求項1)
<記載事項2>
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、原子力発電所の建屋など、剛構造の建築物の施工におけるマットスラブの施工法に関するものである。」(段落【0001】)
<記載事項3>
「【0002】
【従来の技術】原子力発電所の建屋などの原子力関連施設は、放射線を遮蔽するという要請上、床スラブもその厚さが1.0 mを越えるマットスラブとなるものが多い。
【0003】また、建屋内に設置される機器類は、その機器のサイズ、機器の設置場所、機器のシステムなどの諸条件から建物躯体内に上部開口から先行して搬入し、その後で機器の上部に床スラブを施工するケースが多い。」(段落【0002】〜【0003】)
<記載事項4>
「【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面について詳細に説明する。図1は本発明のマットスラブの施工法の1実施例を示す平面図、図2は図1のA-A線断面図、図3はB-B線断面図である。
【0015】上鉄板1と下鉄板2を約10cmの間隔をもって平行に重ね、この上鉄板1と下鉄板2間には適宜間隔、例えば1.0 mピッチで鉄板による仕切板3を設けた。これら上鉄板1と下鉄板2や仕切板3は鉄板(R-9)を使用し、上鉄板1や下鉄板2と仕切板3とは溶接により接合する。
【0016】さらに、この上鉄板1と下鉄板2の間にコンクリート4を充填して鋼板コンクリート製(S.C)床版5を作製する。
【0017】なお、前記仕切板3はその長さ方向において適宜長さおよび適宜間隔で突出部3aを形成し、この突出部3aを上鉄板1に設けたスリットより上方へ突出させる。該突出部3aは上鉄板1の上方に約50mmの高さ、約500 mmの幅で突出するものであり、相互の間隔も約500 mmのピッチである。そして相隣接する仕切板3の相互では突出部3aは互い違い、すなわち千鳥に並ぶものとする。
【0018】この突出部3aを支持体として利用してスラブ下端筋6を鋼板コンクリート製床版5上に配置し、さらに図示は省略するが必要なスラブ上端筋を配設して、1.0 m程度の厚のコンクリート7(荷重としては2.4 t /m 2 )を打設して床スラブを形成する。」(段落【0014】〜【0018】)
<記載事項5>
「【0019】前記鋼板コンクリート製床版5は周囲の受金物8に直接載置し、完成した床スラブは約6.0 m のスパンに対応できるが、コンクリート7の厚さ、スパン寸法に応じて上鉄板1、下鉄板2、仕切板3の厚さを変化させ、鋼板コンクリート製床版5の強度を調整することも可能である。」(段落【0019】)
<記載事項6>
図1〜図3には、鋼板コンクリート製床版5で形成した床スラブの床下は、突出部が無いフラットスラブ構造としたことが記載されている。

したがって、上記記載事項1乃至6及びそこで参照している図1〜図3に基づけば、引用刊行物には、
「原子力発電所の建屋の床スラブにおいて、適宜間隔で仕切板を設けた上下鉄板間にコンクリートを充填してなる鋼板コンクリート製床版の上にスラブ鉄筋を配筋し、コンクリートを打設して床スラブを形成し、鋼板コンクリート製床版で形成した床スラブの床下は、突出部が無いフラットスラブ構造としたことを特徴とする床スラブ。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

4.対比
本願発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「原子力発電所の建屋」、「床スラブ」は、本願発明の「原子力発電所建屋」、「床」にそれぞれ相当するので、両者は、
「原子力発電所建屋において、原子炉建屋の床を、床下に突出部が無いフラットスラブ構造としたことを特徴とする原子力発電所建屋。」の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
原子炉建屋のフラットスラブ構造とした床を、本願発明は、原子炉建屋内に設置された原子炉格納容器よりも外側部分の床と特定しているのに対して、引用発明は、このような場所の特定がなされていない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用刊行物には、原子炉建屋と原子炉格納容器との配置関係について記載されていないが、原子炉建屋の内部に原子炉格納容器が配置されることは周知事項である(例えば、特開昭58-143296号公報参照)。
そして、引用刊行物には、フラットスラブ構造とする原子炉建屋の床について、原子炉建屋内に設置された原子炉格納容器よりも外側部分の床が除外される旨の記載がなされていない。
したがって、引用発明の「原子炉建屋のフラットスラブ構造とした床」には、原子炉建屋内に設置された原子炉格納容器よりも外側部分の床が含まれることは、引用刊行物の記載及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

また、本願発明の効果は、引用刊行物の記載及び周知事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、上記相違点に係る発明特定事項は、引用刊行物の記載及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物の記載及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-28 
結審通知日 2005-11-29 
審決日 2005-12-15 
出願番号 特願平8-191716
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平加藤 隆夫  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 井口 猶二
前川 慎喜
発明の名称 原子力発電所建屋  
代理人 猪股 祥晃  
代理人 猪股 祥晃  

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