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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1130556 |
審判番号 | 不服2004-19075 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-15 |
確定日 | 2006-02-09 |
事件の表示 | 特願2000-383078「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月27日出願公開、特開2001-203279〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は、平成6年3月29日に出願した特願平6-58406号の一部を平成12年12月18日に新たな出願としたものであって、平成16年8月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明の認定 本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願第1発明」及び「本願第2発明」という。)は、平成16年6月28日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、その本願第1発明は、次のとおりである。 「メモリセル部となるトランジスタの閾値電圧をイオン注入で相違させることによりデータを書き込むマスクROMを有する半導体装置の製造方法において、半導体基板上に上記トランジスタを形成し、層間絶縁膜を形成し、上記半導体基板に形成された不純物拡散層上にコンタクト孔を形成した後、上記コンタクト孔を覆うように、データ書き込みイオン注入用レジストパターンを形成し、イオン注入により、上記データの書き込みを行う工程と、アニール処理温度を700〜800℃とし、不活性ガス雰囲気中で注入イオンの活性化アニールを行った後、上記コンタクト孔内で露出した上記半導体基板を所定量だけ除去し、その後、配線形成を行うことを特徴とする、半導体装置の製造方法。」 3.引用例 3-1.引用例1 これに対して、当審の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-326889号公報(以下、「引用例1」という。)は、「マスクROMの製造方法」(発明の名称)に関するものであり、図1(a)〜(e)と共に、次のとおり記載されている。 「【請求項1】 半導体基板上にMOSトランジスタを形成し、所望のチャネル領域に選択的に不純物イオンを注入し、データを書き込むマスクROMの製造方法において、・・・」(請求項1) 「【0002】 【従来の技術】従来、マスクROMのデータの書き込みは、イオン注入方法、・・・などによって行なわれてきた。イオン注入方法は、ウエハプロセスの比較的初期の段階、すなわち、層間絶縁膜を形成する前の段階で、トランジスタのチャネル領域に選択的にイオン注入し、しきい値電圧の大きいトランジスタと小さいトランジスタを作ることで書き込む方法である。・・・」(0002段落) 「【0007】 ・・・シリコン基板1上にゲート絶縁膜2を形成し、ゲート絶縁膜2上にポリシリコンゲート電極3を形成し、ソース、ドレインのN+拡散層4を形成し、層間絶縁膜5を形成し、コンタクトホールを形成する〔図1(a)〕。・・・」(0007段落) 「【0008】次に、リソグラフィー法により、所定のトランジスタのチャネル領域上に開口をもつホトレジスト層6を形成し、通常のミディアム型イオンプランタで所定のトランジスタのチャネル領域にボロン又はフッ化ボロンのイオン7を180keV程度で注入し〔図1(c)〕、ホトレジスト層を除去した後、N2雰囲気,900℃の条件で10分間熱処理を行なう。以上の工程でエンハンスメント型トランジスタがデプレッション化する。続いて、Al配線8を行ない〔図1(d)〕、パッシベーション膜9を形成すると〔図1(e)〕、ウエハプロセスが終了する。同様に、デプレッション型トランジスタを、リンあるいはヒ素のイオン注入によってエンハンスメント化することも可能である。」(0008段落) 以上の記載事項によれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「MOSトランジスタを形成し、不純物イオンを注入し、データを書き込むマスクROMの製造方法において、 シリコン基板上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にポリシリコンゲート電極を形成し、ソース、ドレインのN+拡散層を形成し、層間絶縁膜を形成し、コンタクトホールを形成し、 次に、リソグラフィー法により、所定のトランジスタのチャネル領域上に開口をもつホトレジスト層を形成し、イオン注入し、ホトレジスト層を除去した後、N2雰囲気,900℃の条件で熱処理を行ない、デプレッション化し、続いて、配線を行ない、ウエハプロセスが終了する。」 3-2.引用例2 同じく、当審の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開昭58-215073号公報(以下、「引用例2」という。)は、「絶縁ゲート型電界効果半導体装置の製造方法」(発明の名称)に関するものであり、次のとおり記載されている。 「以下、本発明をマスクROMに関する実施例について詳細に説明する。」(第2頁左下欄第12行〜第13行) 「例えばゲート酸化膜の加熱によつてゲート酸化膜-基板の界面が約600〜800℃に加熱されることになる。この加熱温度は、上記チヤネル部22に打込まれている不純物23を活性化するのに充分である。」(第3頁左上欄第13行〜第17行) 3-3.引用例3 当審の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-102401号公報(以下、「引用例3」という。)は、「半導体装置の製造方法」(発明の名称)に関するものであり、図2〜3と共に、次のとおり記載されている。 「【0017】図2に示すように、エミッタを除いてアルミニウム系配線層に接続する部分にコンタクトホール11を形成する。・・・コンタクトホール11はBPSG膜10及び層間絶縁膜6を開口して形成され、底部ではMOSトランジスタの拡散層4が露出する。」(0017段落) 「【0018】次に、BPSG膜10のリフローが行われる。このリフローは熱処理によりBPSG膜10を流動化して、全体の平坦化を図る工程である。このリフロー時にコンタクトホール11内では、リンのオートドープが発生する・・・」(0018段落) 「【0019】リフロー工程の後、拡散層4に対して補償イオン注入を行う。MOS構造がCMOSであるため、n+型及びp+型の両方のドーパントが各拡散層に打ち込まれる。」(0019段落) 「【0020】この補償イオン注入の後、特に、p+型の拡散層に於ける安定した電気的接続を図るために、図3に示すように、シリコンエッチングによって露出している拡散層4の表面12をわずかに削る。このシリコンエッチングは、コンタクトホール11が形成された領域の全ての基板表面やポリシリコン膜に対して行われる・・・」(0020段落) 4.対比・判断 引用発明の「MOSトランジスタ」、「シリコン基板」、「N+拡散層」、「コンタクトホール」は、それぞれ、本願第1発明の「トランジスタ」、「半導体基板」、「不純物拡散層」、「コンタクト孔」に相当する。 引用発明の「MOSトランジスタ」は、イオン注入によりデータが書き込まれ、記憶素子の最小単位を構成しているので、本願第1発明の「メモリセル部となるトランジスタ」に相当する。 引用発明の「不純物イオンを注入し、データを書き込むマスクROMの製造方法」は、本願第1発明の「イオン注入で」「データを書き込むマスクROMを有する半導体装置の製造方法」に相当する。 引用発明の「イオン注入」は、引用発明における従来技術と同様の「しきい値電圧の大きいトランジスタと小さいトランジスタを作る」ものであることは明らかであるので、引用発明の「イオン注入」は、本願第1発明の「トランジスタの閾値電圧をイオン注入で相違させる」イオン注入に相当する。 引用発明の「ゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にポリシリコンゲート電極を形成し、ソース、ドレインのN+拡散層を形成し、層間絶縁膜を形成」することは、本願第1発明の「トランジスタを形成し、層間絶縁膜を形成」することに相当する。 引用発明の「ソース、ドレインのN+拡散層を形成し、層間絶縁膜を形成し、コンタクトホールを形成し、次に、リソグラフィー法により、所定のトランジスタのチャネル領域上に開口をもつホトレジスト層を形成し、イオン注入」することは、本願第1発明の「半導体基板に形成された不純物拡散層上にコンタクト孔を形成した後、」「コンタクト孔を覆うように、」「データ書き込みイオン注入用レジストパターンを形成し、イオン注入」「を行う工程」に相当する。 また、引用例1には「N2雰囲気」で「熱処理を行なう。以上の工程でエンハンスメント型トランジスタがデプレッション化する。」「同様に、デプレッション型トランジスタを、リンあるいはヒ素のイオン注入によってエンハンスメント化することも可能である。」と記載されている。「N2」は「不活性ガス」であり、熱処理によってチャネル領域にイオン注入されたトランジスタがデプレッション化しているので、引用発明の「N2雰囲気」での「熱処理」は、本願第1発明の「不活性ガス雰囲気中での注入イオンの活性化アニール」に相当する。 よって、本願第1発明と引用発明とは、 「メモリセル部となるトランジスタの閾値電圧をイオン注入で相違させることによりデータを書き込むマスクROMを有する半導体装置の製造方法において、半導体基板上に上記トランジスタを形成し、層間絶縁膜を形成し、上記半導体基板に形成された不純物拡散層上にコンタクト孔を形成した後、上記コンタクト孔を覆うように、データ書き込みイオン注入用レジストパターンを形成し、イオン注入により、上記データの書き込みを行う工程と、不活性ガス雰囲気中で注入イオンの活性化アニールを行った後、その後、配線形成を行うことを特徴とする、半導体装置の製造方法。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本願第1発明が「アニール処理温度を700〜800℃とし」ているのに対し、引用発明では、「900℃」の条件で熱処理を行なう点 (相違点2) 本願第1発明が「上記コンタクト孔内で露出した半導体基板を所定量だけ除去」するのに対し、引用発明ではこのような構成を有していない点 以下、これらの相違点について検討する。 (相違点1について) 引用例2には、不純物を活性化するために「約600〜800℃に加熱」することが記載されている。 したがって、引用発明において、不純物を活性化するための熱処理温度として「900℃」とすることに代えて、引用例2に記載された「約600〜800℃」を採用し、本願第1発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る程度のものである。 なお、請求人は、平成17年11月11日付の意見書にて、実験的な裏づけがないので活性化が十分に行われるかどうか明らかでない旨主張しているが、引用例2に記載の発明の温度範囲600〜800℃の内、700〜800℃の範囲は、本願第1発明と重なっており、十分な不純物の活性化が行われると認められる。また、700℃という温度に当業者の予測を超える臨界的な意義も認められない。 (相違点2について) 引用例3には、半導体装置の製造方法であって、「熱処理」により「コンタクトホール11内では、リンのオートドープが発生する」が、「特に、p+型の拡散層に於ける安定した電気的接続を図るため」に、「エッチングによって露出している拡散層4の表面12をわずかに削る。このシリコンエッチングは、コンタクトホール11が形成された領域の全ての基板表面やポリシリコン膜に対して行われる」ことが記載されている。 一般に、層間絶縁膜にBPSGなどの不純物を含んだ絶縁膜を用いることは、周知慣用技術であるから、引用発明において、その層間絶縁膜部分に不純物を含んだ絶縁膜を用いることは、単に、周知慣用技術を用いたにすぎず、その場合、引用発明においても、必然的に「熱処理」によって、「層間絶縁膜」から「コンタクトホール」への「オートドープが発生する」ものである。さらに、引用例3に記載の「拡散層に於ける安定した電気的接続を図る」ことは、半導体装置の製造方法において一般的に求められる課題であり、引用発明においても求められる課題である。 したがって、引用発明において、拡散層に於ける安定した電気的接続を図るという課題解決のために、引用例3に記載された露出している全ての拡散層の表面をわずかに削ることを採用し、本願第1発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のものである。 よって、本願第1発明は、上記引用例1乃至引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願第2発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-12-08 |
結審通知日 | 2005-12-13 |
審決日 | 2005-12-27 |
出願番号 | 特願2000-383078(P2000-383078) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 正山 旭 |
特許庁審判長 |
岡 和久 |
特許庁審判官 |
松本 邦夫 瀧内 健夫 |
発明の名称 | 半導体装置の製造方法 |
代理人 | 野河 信太郎 |