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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1130577
審判番号 不服2001-4141  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-07-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-19 
確定日 2006-02-09 
事件の表示 平成 8年特許願第198347号「フィッシングリール」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月 8日出願公開、特開平 9-172920〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年7月8日(パリ条約による優先権主張1995年7月12日、米国)の出願であって、平成12年12月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年3月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月18日付けで手続補正がなされたものである。
平成13年4月18日付け上記手続補正は、明細書(平成12年9月28日付け全文補正明細書)の段落【0044】に記載された「・・・この指状90と立ち上げ肩110の動きは、・・・」の記載を「・・・この指状物90と立ち上げ肩110の動きは、・・・」と補正することにより、明細書のその他の箇所に記載された「指状物」の記載と整合させるための補正であり、新規事項の追加に該当するものではない。
そして、本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成13年4月18日付けの上記手続補正による明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のものである。
「フレームとフレーム上の操作機構で構成されたフィッシングリールにおいて、操作機構はラインキャリイングスプールと、釣糸をラインキャリイングスプール上に方向づける為の第一部材と、ラインキャリイングスプールの回りに釣糸を巻きつける為に第一軸の回りを第一の方向へフレームに相対して回転させる第一部材を取り付ける為に第一部材とフレームの間を共働する第一の手段と、第一部材が第一軸の回りを第一の方向とは反対向きに回転することを選択的に防ぐ第二の手段とを含み、
第二の手段はインナーとアウターリングを持つクラッチ組立部と、第一軸の回りの、第一部材に対する相対回転が無いようにインナーリングを固定する第三の手段と、
(a)インナーとアウターリングの一方に相対した他方のインナーとアウターリングが第一軸の回りを一方向に回転することを許容させる為に、そして、
(b)インナーとアウターリングの一方に相対した他方のインナーとアウターリングが第一軸の回りを一方向とは反対向きに回転することを防ぐ為にインナーとアウターリングの間を共働する第四の手段と、
(c)フレームに相対したインナーとアウターリングの回転を制限する為に、そして、
(d)フレームに相対したアウターリングに継続的な回転を許容させる為にフレームとクラッチ組立部の間を選択的に共働する第五の手段とを含み、第五の手段は、アクチュエーターと、中間部材と、係合する位置と係合しない位置の間でフレームに相対した動作の為に中間部材をフレームに取り付ける手段とを含み、中間部材をフレームに取り付ける手段は、第一軸と交差する軸の回りの回転の為に中間部材をフレームに取り付ける手段で構成され、係合する位置の中間部材によってフレームに相対したアウターリングの回転を制限し、そして係合しない位置の中間部材によってフレームに相対したアウターリングの継続的な回転を許容させ、さらに中間部材は指状物を含み、肩部たるアウターリング上の切欠きを含み、この指状物は切欠きの中に存するフィッシングリール。」(以下、「本願発明」という。)

2.原査定の理由
一方、原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、下記の引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例:
1.実願平4-69065号(実開平6-24473号)のCD-ROM
2.実願平5-24175号(実開平6-7476号)のCD-ROM
なお、原審における拒絶査定の理由となった、平成12年3月15日付けの拒絶の理由においては、引用例1として実願平5-24175号(実開平6-7476号)のCD-ROMを、引用例2として実願平4-69065号(実開平6-24473号)のCD-ROMを、それぞれ引用しているが、拒絶査定の備考欄において、「・・・引用例2に記載されるようなクラッチにおいても、逆転防止機構の作動方向を引用例1に記載の第1の実施例のようにすることは当業者が容易になし得たものといえる。」と記載され、審判請求人は審判請求書(第5頁第5-8行)において、「審査官は、引用例2が本願発明の基本構成を開示し、引用例1は、引用例2を補足するものであると考えている。そこで審査官の考えに従い、本願の請求項1・・・に記載の発明と引用例2の相違点について明確にしておく。」として、実質的に本願の請求項1に記載の発明と実願平4-69065号(実開平6-24473号)に記載の発明との対比を中心とした主張をしているので、原審において引用された各引用例に対し、上記のように番号を付すこととした。

3.引用刊行物に記載された発明
原審において引用された、本願の出願前に頒布された上記の各引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。
引用例1(実願平4-69065号(実開平6-24473号)のCD-ROM)
引用例1には、次の記載が認められる。
1-a「ハンドルの回転により連動回転する一方にピニオンを有する回転軸筒の他方にベ-ルア-ムを反転自在に支持したロ-タ-を固定し、ころがり式一方向クラッチを設けて前記ロ-タ-の逆回転を阻止するようにした魚釣用スピニングリ-ルにおいて、前記ロ-タ-後部に形成した筒部外周にカラ-を回り止め嵌合し、該カラ-外周にころがり式一方向クラッチを嵌合して該一方向クラッチの外側に係止部を設け、リ-ル本体前部に支持した係止部材を前記係止部に係脱可能としたことを特徴とする魚釣用スピニングリ-ルの逆転防止装置。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)
1-b「・・・魚釣用スピニングリ-ルは、リ-ル本体1の前部1aから突出した回転軸筒2の外周に鍔付きカラ-10が回り止め嵌合され、その前側にロ-タ-3の筒部3aが回り止め嵌合されてナット11で固定されている。ロ-タ-3は回転軸筒2に設けられたピニオン2aと噛合する駆動歯車12を介してハンドル13の回転に連動して回転されるように支持されている。前記回転軸筒2内に嵌合されて突出されたスプ-ル軸14の先端部にスプ-ル15が支持され・・・る。」(段落【0008】)
1-c「ロ-タ-3後部の凹陥部内に形成された筒部3a外周にカラ-4が嵌合されている。・・・カラ-4外周に・・・ころがり式一方向クラッチ5の棒状ころがり部材18が回転可能に載せられて鍔付きカラ-10で抜け止めされている。ころがり式一方向クラッチ5の外輪19の外周には逆転防止爪車6が固定されて係止部6aが設けられ、係止部6aには切欠部6bが形成されている。・・・」(段落【0009】)
1-d「ころがり式一方向クラッチ5は・・・カラ-4と複数個の棒状ころがり部材18と外輪19と保持体21と発条22とで構成されている。保持体21の複数個の貫通孔には複数個の棒状ころがり部材18が挿入されて保持されると共に、発条22で押圧付勢されている。・・・」(段落【0010】)
1-e「リ-ル本体1の前部1a右側には、・・・逆転防止用係止爪からなる係止部材7が回動自在にビス23で支持されている。係止部材7の爪先7aには、前記逆転防止爪車6の切欠部6bに嵌まり係合される段部からなる係合部7bが形成されて切欠部6bと係合部7bと発条24で係止部材7の爪先7aを係止部6aから離脱することを阻止する阻止手段が構成されている。
前記係止部材7の一端には前記爪先7aと係合部7bが形成され、他端には作動部7cが形成されている。リ-ル本体1の前部1a上側にはカム部8が設けられてカム部8には、係止部材7の作動部7cが当接される逆転防止用係合カム平面部8aと、逆転可能用係合カム凸部8bが夫々形成されている。
リ-ル本体1には図1で横向きに操作杆25が支持され、右側の操作杆25後端にはストッパ-ツマミ26が取り付けられ、操作杆25の左側先端部にカム部8が一体的に固定されている。操作杆25又はカム部8は発条27でロ-タ-3の逆転防止状態ONと逆回転可能状態OFFの2位置にクリックストップするように構成されている。」(段落【0011】〜【0013】)
1-f「図4のロ-タ-3の逆転防止状態ONにおける動作は、図示しない釣糸がスプ-ル15に捲回される正転方向にハンドル13が回転されると、回転軸筒2とロ-タ-3とカラ-4が時計方向に正回転される。更にカラ-4が時計方向に正回転されると、図5でころがり式一方向クラッチ5の棒状ころがり部材18が外輪19の自由回転域αに位置されてロ-タ-3の時計方向の回転が可能となる。この時逆転防止爪車6の切欠部6bには、係止部材7の係合部7bが係合されているので、外輪19と逆転防止爪車6は回転されない。
図4で獲物の引きで図示しない釣糸が繰り出されてロ-タ-3が反時計方向に逆回転されると、回転軸筒2とロ-タ-3の筒部3aとカラ-4が逆回転される。この時逆転防止爪車6の切欠部6bには、係止部材7の係合部7bが係合されているので、カラ-4の逆回転でころがり式一方向クラッチ5の棒状ころがり部材18が自由回転域α位置から阻止面βに移動されて当接され、棒状ころがり部材18のクサビ作用で外輪19に対してカラ-4の逆回転が阻止される。このことでロ-タ-3の逆回転が停止される。・・・」(段落【0016】〜【0017】)
1-g 引用例1の特に図2、図4、図6等によれば、リ-ル本体1に係止部材7を回動自在に支持するビス23は、スプール軸14と平行な位置関係にある。
上記の記載より、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ハンドルの回転により連動回転する一方にピニオンを有する回転軸筒の他方にベ-ルア-ムを反転自在に支持したロ-タ-を固定し、ころがり式一方向クラッチを設けて前記ロ-タ-の逆回転を阻止するようにした魚釣用スピニングリ-ルにおいて、前記ロ-タ-後部に形成した筒部外周にカラ-を回り止め嵌合し、該カラ-外周にころがり式一方向クラッチを嵌合して該一方向クラッチの外側に係止部を設け、リ-ル本体前部に支持した係止部材を前記係止部に係脱可能とした魚釣用スピニングリ-ルの逆転防止装置であって、魚釣用スピニングリ-ルは、リ-ル本体1の前部1aから突出した回転軸筒2にロ-タ-3の筒部3aが回り止め嵌合され、ロ-タ-3は回転軸筒2に設けられたピニオン2aと噛合する駆動歯車12を介してハンドル13の回転に連動して回転されるように支持されており、前記回転軸筒2内に嵌合されて突出したスプ-ル軸14の先端部にスプ-ル15が支持されており、ころがり式一方向クラッチ5は、筒部3aの外周に嵌合されたカラ-4と、カラ-4の外周に回転可能に載せられた複数個の棒状ころがり部材18と、外周に逆転防止爪車6が固定されて係止部6aが設けられ、係止部6aには切欠部6bが形成されている外輪19と、複数個の貫通孔に挿入された上記棒状ころがり部材18を保持すると共に、発条22で押圧付勢されている保持体21とで構成されており、リ-ル本体1には逆転防止用係止爪からなる係止部材7が回動自在にビス23で支持されおり、係止部材7の一端には爪先7aが形成され、爪先7aには、前記逆転防止爪車6の切欠部6bに嵌まり係合される段部からなる係合部7bが形成されて切欠部6bと係合部7bと発条24で係止部材7の爪先7aを係止部6aから離脱することを阻止する阻止手段が構成されており、係止部材7の他端には作動部7cが形成されていて、リ-ル本体1に設けられたカム部8には、係止部材7の作動部7cが当接される逆転防止用係合カム平面部8aと、逆転可能用係合カム凸部8bが夫々形成されており、リ-ル本体1に支持された操作杆25の先端部に上記カム部8が一体的に固定されて、発条27でロ-タ-3の逆転防止状態ONと逆回転可能状態OFFの2位置にクリックストップするように構成された、魚釣用スピニングリ-ルの逆転防止装置。」

引用例2(実願平5-24175号(実開平6-7476号)のCD-ROM)
引用例2には、次の記載が認められる。
2-a「リール本体(2)前部に備えたロータ(4)、又は、このロータ(4)と連係して回転する系に形成した歯部(14A)と、この歯部(14A)への係合によってロータ(4)の釣り糸繰り出し方向への回転を阻止するストッパー(15)と、このストッパー(15)を前記歯部(14A)と係合可能な姿勢、又は、係合不能な姿勢のいずれかに切り換える切換部材(25)とを有する逆転阻止機構(A)を備え・・・てなるスピニングリール。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)
2-b「前記逆転阻止機構(A)を、前記リール本体(2)に備えたハンドル(1)からの駆動力を前記ロータ(4)に伝える伝動軸(9)のリール本体(2)の内部位置に形成したギヤ状の歯部(14A)と、この歯部(14A)に係脱自在なストッパー(15)とで構成してある請求項1又は2記載のスピニングリール。」(実用新案登録請求の範囲の請求項2)
2-c「・・・〔第1実施例〕
図1に示すように、ハンドル1を備えたリール本体2の前部にベール3を有したロータ4、及び、釣り糸を巻取るスプール5夫々を配置すると共に、ハンドル1と連結するハンドル軸6によって駆動される駆動ギヤ7からの動力をピニオンギヤ8、筒軸9(駆動軸の一例)夫々を介してロータ4に伝える巻取り駆動系・・・を備えてスピニングリールを構成する。・・・」(段落【0018】)
2-d「・・・ラチェットホイール型の逆転阻止機構Aのホイール14を伝動軸としての筒軸9に外嵌固定し、ストッパー15を、リール本体2に対して第1軸19周りで揺動自在に支持し、かつ、バネ15Aで係合側に付勢し、・・・更に、ストッパー15・・・を非作用姿勢に切り換えるカム24がリール本体外部の切換部材としてのレバー25で操作自在に備えられている。・・・」(段落【0019】)
2-e 特に図2及び図3によれば、「第1軸19」は「筒軸9」と交差する位置関係に配置されている。
上記の記載より、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「リール本体(2)前部に備えたロータ(4)、又は、このロータ(4)と連係して回転する系に形成した歯部(14A)と、この歯部(14A)への係合によってロータ(4)の釣り糸繰り出し方向への回転を阻止するストッパー(15)と、このストッパー(15)を前記歯部(14A)と係合可能な姿勢、又は、係合不能な姿勢のいずれかに切り換える切換部材(25)とを有する逆転阻止機構(A)を備えてなるスピニングリールにおいて、前記逆転阻止機構(A)は、前記リール本体(2)に備えたハンドル(1)からの駆動力を前記ロータ(4)に伝える伝動軸としての筒軸(9)にラチェットホイール型のホイール(14)を外嵌固定し、該ホイール(14)に形成したギヤ状の歯部(14A)に係脱自在なストッパー(15)を、上記筒軸(9)と交差する位置関係に配置した第1軸(19)周りでリール本体(2)に対して揺動自在に支持し、かつ、バネ(15A)で係合側に付勢し、更に、ストッパー(15)を非作用姿勢に切り換えるカム(24)がリール本体外部の切換部材としてのレバー(25)で操作自在に備えられている、スピニングリール。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比すると、両者は共にフィッシングリールに関する発明であって、引用発明1における「リール本体」はその機能に照らすと本願発明における「フレーム」に、同じく「スプ-ル」は「ラインキャリイングスプール」に、それぞれ対応しており、さらに引用発明1について次のことがいえる。
(i)本願発明は「フレームとフレーム上の操作機構で構成されたフィッシングリールにおいて、操作機構はラインキャリイングスプールと、釣糸をラインキャリイングスプール上に方向づける為の第一部材」を備えることをその発明特定事項とするものであり、「第1部材」として、請求項8により特定される、「第一部材は、回転可能なクランクハンドルと、第一シャフトと交差しながら延長したクランクシャフトと、クランクシャフトから第一シャフトへ回転力を伝達する手段と、を含む操作機構と、第一シャフトと、回転力を伝達する手段から空間を置ながら回転力を伝達する手段とラインキャリイングスプール間に在する第二の手段」を包含するものである。ここで、前記「第二の手段」は、本願発明において特定されるように「クラッチ組立部」であることを考慮すると、上記「第1部材」は、「回転可能なクランクハンドルと、第一シャフトと交差しながら延長したクランクシャフトと、クランクシャフトから第一シャフトへ回転力を伝達する手段と、を含む操作機構と、第一シャフトと、回転力を伝達する手段から空間を置ながら回転力を伝達する手段とラインキャリイングスプール間に在するクラッチ組立部」を実質的に包含しているといえる。
一方、引用発明1は「リ-ル本体1の前部1aから突出した回転軸筒2にロ-タ-3の筒部3aが回り止め嵌合され、ロ-タ-3は回転軸筒2に設けられたピニオン2aと噛合する駆動歯車12を介してハンドル13の回転に連動して回転されるように支持され」るとともに、「回転軸筒2内に嵌合されて突出したスプ-ル軸14の先端部にスプ-ル15が支持されて」(引用例1の1-b)おり、「前記ロ-タ-後部に形成した筒部外周にカラ-を回り止め嵌合し、該カラ-外周にころがり式一方向クラッチを嵌合し」(引用例1の1-a)て構成されている。すなわち引用発明1は、回転可能な「ハンドル13」の「回転に連動して回転される」「駆動歯車12」と、該「駆動歯車12」と噛合する「ピニオン2a」により回転される「回転軸筒2」に、上記「駆動歯車12」、「ピニオン2a」と空間をおいて「ころがり式一方向クラッチ」を備えており、該「ころがり式一方向クラッチ」は「駆動歯車12」、「ピニオン2a」と「スプール15」間に存するものである。また、フィッシングリールの回転ハンドルとして一般にクランクハンドルが用いられることを考慮すると、引用例1の図1に示される「ハンドル13」は実質上クランクハンドルであるということができ、クランクハンドルからクランクシャフトを介して、該クランクシャフトと交差する位置関係にある上記「回転軸筒2」に回転力が伝達されるものであるといえる。
そこで、引用発明1が備える上記摘示構成を本願発明における上記発明特定事項との関係でみると、引用発明1における「回転軸筒2」は本願発明における「第一シャフト」に対応しており、同引用発明1は、本願発明が「第1部材」として実質的に包含する「回転可能なクランクハンドルと、第一シャフトと交差しながら延長したクランクシャフトと、クランクシャフトから第一シャフトへ回転力を伝達する手段と、を含む操作機構と、第一シャフトと、回転力を伝達する手段から空間を置ながら回転力を伝達する手段とラインキャリイングスプール間に在するクラッチ組立部」の技術事項に対応する構成を実質的に備えているということができ、引用発明1において、上記摘示構成により、釣糸は「スプ-ル」(本願発明における「ラインキャリイングスプール」に対応。)上に方向づけられるものである。
そうすると、引用発明1は、本願発明を特定する「フレームとフレーム上の操作機構で構成されたフィッシングリールにおいて、操作機構はラインキャリイングスプールと、釣糸をラインキャリイングスプール上に方向づける為の第一部材」の事項に対応する構成を実質的に備えているといえる。
(ii)上記(i)に記載したように、引用発明1は本願発明を特定する「第1部材」の事項に対応する構成(以下、「第1部材対応構成」という。)を実質的に備えており、該「第1部材対応構成」は、「スプ-ル」(本願発明における「ラインキャリイングスプール」に対応。)に釣糸を巻き取る為に、「スプ-ル軸14」の回りを巻き取り方向へ、「リール本体」(本願発明における「フレーム」に対応。)に対して、回転可能に取り付けられており、上記「スプ-ル軸14」は本願発明を特定する「第一軸」に対応し、同様に上記「巻き取り方向」は実質上、本願発明を特定する「第一の方向」に対応するものである。
そうすると、引用発明1は、本願発明を特定する「ラインキャリイングスプールの回りに釣糸を巻きつける為に第一軸の回りを第一の方向へフレームに相対して回転させる第一部材を取り付ける為に第一部材とフレームの間を共働する第一の手段」の事項に対応する構成を実質的に備えているといえる。
(iii)引用発明1が実質的に備える「第1部材対応構成」は、「スプ-ル軸14」(本願発明における「第一軸」に対応。)の回りの、釣糸巻き取り方向と反対方向の回転に対しては、「ころがり式一方向クラッチ5」により、「逆転防止」と「逆転可能」とを選択可能に構成されている。そして、「ころがり式一方向クラッチ5」は「カラ-4」と「外輪19」を備えており、本願発明を特定する「第二の手段」に対応するとともに、上記「カラ-4」と「外輪19」は、それぞれ本願発明を特定する「インナーリング」と「アウターリング」に対応するものである。また、上記「カラ-」は「筒部外周に回り止め嵌合」(引用例1の1-b)されており、引用発明1は本願発明を特定する「インナーリングを固定する第三の手段」に対応する構成を備えている。
そうすると、引用発明1は、本願発明を特定する「第一部材が第一軸の回りを第一の方向とは反対向きに回転することを選択的に防ぐ第二の手段」及び、「第二の手段はインナーとアウターリングを持つクラッチ組立部と、第一軸の回りの、第一部材に対する相対回転が無いようにインナーリングを固定する第三の手段」の事項に対応する構成を実質的に備えているといえる。
(iv)本願発明は「(a)インナーとアウターリングの一方に相対した他方のインナーとアウターリングが第一軸の回りを一方向に回転することを許容させる為に、そして、
(b)インナーとアウターリングの一方に相対した他方のインナーとアウターリングが第一軸の回りを一方向とは反対向きに回転することを防ぐ為にインナーとアウターリングの間を共働する第四の手段」を備えることをその発明特定事項とするものであり、「第四の手段」として、請求項9により特定される、「インナーとアウターリング間で動く多数の円筒形ローラー部材」を包含するものである。
一方、引用発明1は「カラ-4の外周に回転可能に載せられた複数個の棒状ころがり部材18」と、「外輪19」(引用例1の1-c)よりなる「ころがり式一方向クラッチ5」を備えており、「逆転防止状態ONにおける動作」は、「正転方向にハンドル13が回転されると」、「回転軸筒2とロ-タ-3とカラ-4が時計方向に正回転される。更にカラ-4が時計方向に正回転されると、ころがり式一方向クラッチ5の棒状ころがり部材18が外輪19の自由回転域αに位置されてロ-タ-3の時計方向の回転が可能となる。この時逆転防止爪車6の切欠部6bには、係止部材7の係合部7bが係合されているので、外輪19と逆転防止爪車6は回転され」ず、一方、「獲物の引きで釣糸が繰り出されてロ-タ-3が反時計方向に逆回転されると、回転軸筒2とロ-タ-3の筒部3aとカラ-4が逆回転される。この時逆転防止爪車6の切欠部6bには、係止部材7の係合部7bが係合されているので、カラ-4の逆回転でころがり式一方向クラッチ5の棒状ころがり部材18が自由回転域α位置から阻止面βに移動されて当接され、棒状ころがり部材18のクサビ作用で外輪19に対してカラ-4の逆回転が阻止される」(引用例1の1-f)ように動作する。すなわち、「棒状ころがり部材18」は「カラ-4」(本願発明における「インナーリング」に対応。)と「外輪19」(本願発明における「アウターリング」に対応。)の間に配置されて、「外輪19」(本願発明における「アウターリング」に対応。)に対して「カラ-4」(本願発明における「インナーリング」に対応。)の「正回転」を可能とし、「逆回転」を「阻止」するものである。そして上記(iii)に記載したように、上記「正回転」は本願発明における「第一軸の回り」の「一方向」への「回転」に実質的に対応しているとともに、上記「逆回転」は本願発明における「第一軸の回り」の「一方向とは反対向き」への「回転」に実質的に対応している。
そうすると、引用発明1における「棒状ころがり部材18」は、本願発明における「第四の手段」が実質的に包含する「円筒形ローラー部材」に対応しており、同引用発明1は、本願発明を特定する「(a)インナーとアウターリングの一方に相対した他方のインナーとアウターリングが第一軸の回りを一方向に回転することを許容させる為に、そして、
(b)インナーとアウターリングの一方に相対した他方のインナーとアウターリングが第一軸の回りを一方向とは反対向きに回転することを防ぐ為にインナーとアウターリングの間を共働する第四の手段」の事項に対応する構成を実質的に備えているといえる。
(v)引用発明1は、「ころがり式一方向クラッチ」の「外側に」設けた「係止部」に、「リ-ル本体前部に支持した係止部材」を「係脱可能」(引用例1の1-a)とする「逆転防止装置」を備えており、「係止部材」が「係止部」に「係合」した「逆転防止状態ON」においては、上記したように「ころがり式一方向クラッチ5」(本願発明における「クラッチ組立部」に対応。)の「カラ-4」(本願発明における「インナーリング」に対応。)と「外輪19」(本願発明における「アウターリング」に対応。)の回転が制限され、「係止部材」が「係止部」から「離脱」した「逆転防止状態OFF」においては、「ころがり式一方向クラッチ5」(本願発明における「クラッチ組立部」に対応。)の「外輪19」(本願発明における「アウターリング」に対応。)の継続的な回転が可能とされている。そうすると、引用発明1における「逆転防止装置」は本願発明における「第五の手段」に対応しており、同引用発明1は、本願発明を特定する「(c)フレームに相対したインナーとアウターリングの回転を制限する為に、そして、
(d)フレームに相対したアウターリングに継続的な回転を許容させる為にフレームとクラッチ組立部の間を選択的に共働する第五の手段」の事項に対応する構成を実質的に備えているといえる。
(vi)引用発明1が備える「逆転防止装置」(本願発明における「第五の手段」に対応。)における上記「係止部材」は、「係止部」に「係合」する位置と、「係合」しない「離脱」した位置との間を「回動自在にビス23」で「リ-ル本体1」(本願発明における「フレーム」に対応。)に「支持され」ており、「リ-ル本体1」に支持された「操作杆25」の「カム部8」により回動作動され(引用例1の1-e)、上記したように「係止部材」が「係合」する位置にあるとき「外輪19」(本願発明における「アウターリング」に対応。)の回転が制限され、「係止部材」が「係止部」に「係合」しない「離脱」した位置にあるとき「外輪19」(本願発明における「アウターリング」に対応。)の継続的な回転が可能とされるものである。そうすると、引用発明1における「操作杆25」は本願発明における「アクチュエーター」に、同じく「係止部材」は「中間部材」に、それぞれ対応しており、同引用発明1は、本願発明を特定する「第五の手段は、アクチュエーターと、中間部材と、係合する位置と係合しない位置の間でフレームに相対した動作の為に中間部材をフレームに取り付ける手段とを含み」の事項、及び「係合する位置の中間部材によってフレームに相対したアウターリングの回転を制限し、そして係合しない位置の中間部材によってフレームに相対したアウターリングの継続的な回転を許容させ」の事項に対応する構成を実質的に備えているといえる。
また、本願発明は「中間部材をフレームに取り付ける手段は、第一軸と交差する軸の回りの回転の為に中間部材をフレームに取り付ける手段で構成され」ているのに対して、引用発明1における「係止部材7」(本願発明における「中間部材」に対応。)は、「スプール軸14」(本願発明における「第一軸」に対応。)と平行な位置関係にある「ビス23」(本願発明における「軸」に対応するといえる。)により「リ-ル本体1」(本願発明における「フレーム」に対応。)に回動自在に支持((引用例1の1-g)されるものである。そうすると、本願発明と引用発明1は「中間部材を軸により回転可能にフレームに取り付ける手段」を備える点で共通しているといえる。
(vii)引用発明1が備える「係止部材」(本願発明における「中間部材」に対応。)は「一端には爪先7aが形成され、爪先7aには、前記逆転防止爪車6の切欠部6bに嵌まり係合される段部からなる係合部7bが形成され」(引用例1の1-e)るものであり、上記「逆転防止爪車6の切欠部6b」は「外輪19」(本願発明における「アウターリング」に対応。)に設けられている。
そうすると、引用発明1における「爪先7a」は本願発明における「指状物」に、同じく「逆転防止爪車6の切欠部6b」は「肩部たるアウターリング上の切欠き」にそれぞれ対応し、同引用発明1は、本願発明を特定する「中間部材は指状物を含み、肩部たるアウターリング上の切欠きを含み、この指状物は切欠きの中に存する」の事項に対応する構成を実質的に備えているといえる。
上記(i)ないし(vii)を勘案すると、本願発明と引用発明1とは以下の点で一致し、また相違していると認められる。
一致点;
フレームとフレーム上の操作機構で構成されたフィッシングリールにおいて、操作機構はラインキャリイングスプールと、釣糸をラインキャリイングスプール上に方向づける為の第一部材と、ラインキャリイングスプールの回りに釣糸を巻きつける為に第一軸の回りを第一の方向へフレームに相対して回転させる第一部材を取り付ける為に第一部材とフレームの間を共働する第一の手段と、第一部材が第一軸の回りを第一の方向とは反対向きに回転することを選択的に防ぐ第二の手段とを含み、
第二の手段はインナーとアウターリングを持つクラッチ組立部と、第一軸の回りの、第一部材に対する相対回転が無いようにインナーリングを固定する第三の手段と、
(a)インナーとアウターリングの一方に相対した他方のインナーとアウターリングが第一軸の回りを一方向に回転することを許容させる為に、そして、
(b)インナーとアウターリングの一方に相対した他方のインナーとアウターリングが第一軸の回りを一方向とは反対向きに回転することを防ぐ為にインナーとアウターリングの間を共働する第四の手段と、
(c)フレームに相対したインナーとアウターリングの回転を制限する為に、そして、
(d)フレームに相対したアウターリングに継続的な回転を許容させる為にフレームとクラッチ組立部の間を選択的に共働する第五の手段とを含み、第五の手段は、アクチュエーターと、中間部材と、係合する位置と係合しない位置の間でフレームに相対した動作の為に中間部材をフレームに取り付ける手段とを含み、中間部材をフレームに取り付ける手段は、軸により回転可能にフレームに取り付ける手段で構成され、係合する位置の中間部材によってフレームに相対したアウターリングの回転を制限し、そして係合しない位置の中間部材によってフレームに相対したアウターリングの継続的な回転を許容させ、さらに中間部材は指状物を含み、肩部たるアウターリング上の切欠きを含み、この指状物は切欠きの中に存するフィッシングリール、である点。
相違点;
中間部材を回転可能にフレームに取り付けるための軸が、本願発明では第一軸と交差する軸であるのに対して、引用発明1はスプール軸と平行な軸である点。
上記の相違点について検討する。
引用発明2は、ラチェットホイール型の逆転阻止機構を備えてなるスピニングリールにおいて、「伝動軸としての筒軸9に外嵌固定したホイール14」に形成したギヤ状の「歯部(14A)」に係脱自在な「ストッパー(15)」を、上記「筒軸9」と交差する位置関係に配置された「第1軸(19)周り」で「リール本体(2)」に対して揺動自在に支持したものであり、上記「ストッパー(15)」は、逆転阻止機構を構成する「ホイール(14)」に形成した「歯部(14A)」に対して、係合する位置と係合しない位置の間で「リール本体(2)」に対して「筒軸(9)」と交差、すなわちスプール軸と交差する位置関係にある軸の回りを回転するものであるから、同引用発明2は上記した相違点に係る構成を開示している。
そこで、引用発明1における「逆転防止装置」と引用発明2における「逆転阻止機構」との対応関係を以下に検討すると、両者は共にスピニングリール(フィッシングリール)におけるリールの逆転防止装置に関する発明であり、リールと連動して回転する回転体(「逆転防止爪車」(引用発明1)または「ホイール」(引用発明2))に設けた係合部(「係止部」(引用発明1)または歯部(引用発明2))に係脱部材(「係止部材」(引用発明1)または「ストッパー」(引用発明2))が係脱することで該逆転防止装置を選択的に作動させる点で共通しており、さらに、上記した係脱部材(「係止部材」(引用発明1)または「ストッパー」(引用発明2))は軸(「ビス23」(引用発明1)または「第1軸(19)」(引用発明2))の回りを回転する点でも両者は共通している。そして、引用発明1における、スプール軸と平行に配置された軸(「ビス23」)を、引用発明2における軸(第1軸(19))のように、スプール軸と交差する位置に配置することに格別な技術的障害は存在しない。
なお、引用発明2は「ロータ(4)、又は、このロータ(4)と連係して回転する系に、このロータ(4)の釣り糸巻き取り方向への回転を許容する転がり型の一方向クラッチ機構(B)を介装し、前記ロータ(4)に対し釣り糸繰り出し方向へ回転力が作用した際に、前記歯部(14A)とストッパー(15)とが係合状態に達するまでの回転を許し乍ら、この回転に対して前記一方向クラッチ機構(B)を介して制動力を作用させる制動機構(C)を備え、前記切換部材(25)によって、前記ストッパー(15)と前記歯部(14A)とが係合不能な姿勢になるよう前記逆転阻止機構(A)の設定作動に連動して、前記制動機構(C)からの制動力の作用を解除する」(引用例2の実用新案登録請求の範囲の請求項1)ように構成されているが、上記「制動機構(C)」は「逆転阻止機構(A)の設定作動に連動して制動力を作用させ」、また「制動力の作用を解除する」ものであり、「転がり型の一方向クラッチ機構(B)」によって「ロータ(4)の釣り糸巻き取り方向への回転」は「許容」されているから、「制動機構(C)」は「逆転阻止機構(A)」の作動を補助するものであり、引用発明1における「逆転防止装置」と引用発明2における「逆転阻止機構」との対応関係の上記検討に同「制動機構(C)」が影響を及ぼすものではない。
したがって、引用発明1に引用発明2が開示する上記技術事項を適用して上記相違点に係る本願の発明特定事項を想到することは当業者が容易になし得たものであり、本願発明の効果も、引用発明1及び引用発明2がそれぞれ奏する効果から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであって格別なものとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願の他の請求項に係る発明については論じるまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-09 
結審通知日 2005-09-12 
審決日 2005-09-30 
出願番号 特願平8-198347
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋月 美紀子関根 裕  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 渡部 葉子
塩崎 進
発明の名称 フィッシングリール  
代理人 藤田 隆  

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