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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1130583
審判番号 不服2001-13097  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-26 
確定日 2006-02-09 
事件の表示 平成11年特許願第167331号「ゲームシステム、ゲームの制御方法及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月26日出願公開、特開2000-354684〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年6月14日の出願であって、平成13年6月20日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
請求項1〜8に記載された発明は、平成13年4月27日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に記載された発明(以下、本願発明という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】 ゲーム画面を表示可能な表示装置と、
プレイヤーの操作に応じた信号を出力する入力装置と、
前記入力装置からの出力信号を参照しつつ前記表示装置の画面上で所定のゲームを実行するゲーム制御装置と、を具備し、
前記ゲーム制御装置は、
所定の選択候補群からゲーム画面上に表示すべき所定数の象徴を選択する選択手段と、
選択された象徴の組み合わせに基づいてプレイヤーに対する配当を制御する配当制御手段と、
複数の象徴として通用可能な少なくとも一つの共通象徴を前記ゲームの成績に基づいて前記選択候補群に加えるか又は除くことにより、前記配当の確率を制御する確率制御手段と、
を具備し、
前記確率制御手段は、前記選択された象徴の組み合わせが所定の確率変動役を形成しているときにゲームの成績が所定の開始条件を満たしたものと判断して前記共通象徴を加えるとともに、前記共通象徴が前記選択候補群に加えられた後、前記ゲームの成績が所定の終了条件を満たすとき、前記選択候補群から少なくとも一つの共通象徴を除くものとされ、
前記選択手段が前記選択候補群から前記象徴のそれぞれを選択する確率が互いに等しく設定されていることを特徴とするゲームシステム。」

3.引用文献に記載された発明
原査定の拒絶理由に引用された特開平7-289687号公報(以下、引用文献という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0015】前述したマイクロコンピュータ6には、外部記憶素子として、ROM11、RAM12等が接続されている他、選択手段13が接続されている。ROM11には、入賞テーブル、設定払い戻し率(設定P/O)等が記憶されている。」(第3頁左欄第44〜48行)

(2)「実績払い戻し率(実績P/O)」(第3頁右欄第30〜31行)

(3)「【0022】選択手段13は、マイクロコンピュータ6の制御の下で、確率調整手段16から送られたデータを参照して、乱数発生手段17から送られた乱数に基づき、複数のシンボルテーブル18a、18b、18c、18d、18e、18f、18g、18hの中から一つのシンボルテーブルを選択する。」(第3頁右欄第43〜48行)

(4)「【0024】この入賞テーブルには、あらゆるシンボル組合せ、入賞のランク付け、および支払いコイン数が規定されている。入賞を構成するか否かの判断は、この入賞テーブルを基準として、マイクロコンピュータ6が行なう。」(第4頁左欄第12〜16行)

(5)「【0056】第8図は、第3実施例に係るポーカーゲーム装置に適用できる回路構成を示すブロック図、図9は、第3実施例に係るポーカーゲーム装置における確率調整およびクリア処理を説明する為のフローチャートである。」(第6頁右欄第27〜31行)

(6)「【0057】第2実施例と基本的構造は変わらないが、ROM19に記憶されているプログラムがポーカーゲーム用である点、内部カード記憶手段19に複数のカードテーブルから成る内部カード22が記憶されている点、CRT制御部21がカードゲームを実現するようにCRT20を制御する点が異なる。これらの点は、従来の構造を使用できるので説明は省略し、以下、確率調整およびクリア処理を中心として説明する。」(第6頁右欄第32〜39行)

(7)「【0058】まず、ゲームがスタートすると、過去のデータに基づき、実績P/Oの演算がなされる(ステップ301)。この演算は、実績P/O演算手段14により行なわれる。この演算結果は比較手段15に送られ、ここで設定P/Oと実績P/Oとを比較する(ステップ302)。」(第6頁右欄第40〜45行)

(8)「【0059】比較の結果、設定P/Oが実績P/O未満である場合、より高いP/Oを選択するように確率調整を行なう(ステップ303)。逆に、設定P/Oが実績P/O以上の場合には、より低いP/Oのカードテーブルを選択する確率を高める(ステップ304)。」(第6頁右欄第46〜50行)

(9)「【0060】例えば、設定P/Oが105%、実績P/Oが100%である場合、より低いP/O(90%、95%など)のカードテーブルを選択する確率が高められる。具体的には、100%未満のP/Oを有するシンボルテーブルの選択確率を増加させ、100%を越えるP/Oのカードテーブルの選択確率を減少させる。これらの確率設定は確率調整手段16により行なわれる。100%や80%などのP/Oの差異は、例えばカードテーブルにおける「A」や「ジョーカー」あるいは「ワイルドカード」等に対応したカードに多くの乱数を割り当てるか少ない数の乱数を割り当てるかにより、付けることができる。」(第7頁左欄第1〜12行)

(10)「【0061】次に、実績P/Oが限界値を越えているか否かを判断する(ステップ306)。この判断は、クリア手段23が行なう。その結果、限界値を越えている場合には実績P/Oを設定P/Oに設定し、クリア処理を行なう(ステップ307)。クリア処理は前述した通りであるので、説明は省略する。その後、カードテーブル選択用乱数を発生させる(ステップ308)。」(第7頁左欄第13〜19行)

(11)「【0062】次に、乱数発生手段17から5枚のカードの各々に対し、新たな乱数を発生させ、CRT20に表示されるカードを決定する(ステップ309)。カードは、CRT20上に表(絵柄)が表示される(ステップ310)。遊戯者はボタン操作などにより、所定枚数以下の不要カードを交換してゲームを行ない、ゲーム結果に応じて入賞判定がなされる(ステップ311)。この入賞判断は、入賞テーブルを参照して、マイクロコンピュータ6が行なう。なお、入賞判断は前述したように、表示されるカードが確定した後であればよく、カードをCRT20に表示する前に行なってもよい。」(第7頁左欄第20〜30行)

(12)これらの記載並びに図8及び9によれば、引用文献には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「ゲームスイッチ部4、マイクロコンピュータ6、コイン検出部8、コイン支払い部、ROM11、RAM12、選択手段13、実績P/O演算手段14、比較手段15、確率調整手段16、乱数発生手段17、内部カード記憶手段19、CRT20、CRT制御部21、及び、クリア手段23を具備し、
CRT制御部21がカードゲームを実現するようにCRT20を制御し、
内部カード記憶手段19に複数のカードテーブルから成る内部カード22が記憶され、
設定払い戻し率と実績払い戻し率とを比較し、比較結果に応じて、払い戻し率の異なるカードテーブルの選択確率を変化させてカードテーブルを乱数により選択し、
新たな乱数を発生させて、選択されたカードテーブルからCRT20に表示されるカードを決定し、
遊戯者はボタン操作などにより、所定枚数以下の不要カードを交換してポーカーゲームを行ない、
ゲーム結果に応じて入賞判定がなされ、入賞に該当する場合入賞テーブルに規定されたコインの払い出しが行われ、
ワイルドカードに対応したカードに多くの乱数を割り当てるか少ない数の乱数を割り当てるかにより、払い戻し率に差異をつけるゲームシステム。」(以下、「引用発明」という。)

4.本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明における「CRT20」「遊戯者」「ボタン」「カードテーブル」「カード」「入賞テーブルに規定されたコイン」及び「ワイルドカード」は、本願発明における「表示装置」「プレイヤー」「入力装置」「選択候補群」「象徴」「配当」及び「共通象徴」に相当する。

(2)引用発明は「マイクロコンピュータ6」「ROM11」「RAM12」「選択手段13」「クリア手段23」「実績P/O演算手段14」「比較手段15」「確率調整手段16」「乱数発生手段17」及び「内部カード記憶手段19」により、ゲームの実行を電子的に制御しているものなので、上記各構成を総合したものは、本願発明における「ゲーム制御装置」に対応するものである。
よって、引用発明の構成は、以下ア〜オの点で、本願発明の構成に対応する。

ア.引用発明において、CRT制御部21がカードゲームを実現するようにCRT20を制御することは、
本願発明における「ゲーム画面を表示可能な表示装置」を具備することに対応する。

イ.引用発明において、遊戯者がボタン操作などにより、所定枚数以下の不要カードを交換してゲームを行うことは、
本願発明における「プレイヤーの操作に応じた信号を出力する入力装置」を具備することに対応する。

ウ.引用発明において、カードテーブルからCRT20に表示されるカードを決定することは、
本願発明における「所定の選択候補群からゲーム画面上に表示すべき所定数の象徴を選択する選択手段」を具備することに対応する。

エ.引用発明において、ポーカーゲームを行い、ゲーム結果に応じて入賞判定がなされ、入賞に該当する場合入賞テーブルに規定されたコインの払い出しが行われることは、
本願発明における「選択された象徴の組み合わせに基づいてプレイヤーに対する配当を制御する配当制御手段」を具備することに対応する。

オ.引用発明において、設定払い戻し率と実績払い戻し率とを比較し、比較結果に応じて払い戻し率の異なるカードテーブルの選択確率を変化させてカードテーブルを乱数により選択すること、及び、ワイルドカードに対応したカードに多くの乱数を割り当てるか少ない数の乱数を割り当てるかにより、カードテーブルの払い戻し率に差異をつけることは、
本願発明における「複数の象徴として通用可能な少なくとも一つの共通象徴を前記ゲームの成績に基づいて前記選択候補群に加えるか又は除くことにより、前記配当の確率を制御する確率制御手段」を具備すること、及び、「選択手段が前記選択候補群から前記象徴のそれぞれを選択する確率が互いに等しく設定されている」ことに対応する。
なぜならば、上記3.(9)及び(11)によると、引用発明において、カードに割り当てられる乱数の多少(正確には、カードに割り当てられるカードを決定する乱数と一致しているかどうか判断するための数値の個数の多少)が、カードテーブルにおける当該カードの枚数の多少を意味しており、かつ、カードテーブルにおけるカード一枚一枚を選択する確率が等しいことが、当業者にとって自明のことだからである。

(3)したがって、本願発明と引用発明は、
「ゲーム画面を表示可能な表示装置と、
プレイヤーの操作に応じた信号を出力する入力装置と、
前記入力装置からの出力信号を参照しつつ前記表示装置の画面上で所定のゲームを実行するゲーム制御装置と、
を具備し、
前記ゲーム制御装置は、
所定の選択候補群からゲーム画面上に表示すべき所定数の象徴を選択する選択手段と、
選択された象徴の組み合わせに基づいてプレイヤーに対する配当を制御する配当制御手段と、
複数の象徴として通用可能な少なくとも一つの共通象徴を前記ゲームの成績に基づいて加えるか又は除くことにより、前記配当の確率を制御する確率制御手段と、
を具備し、
前記選択手段が前記選択候補群から前記象徴のそれぞれを選択する確率が互いに等しく設定されているゲームシステム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(4)本願発明は、確率制御手段が、選択された象徴の組み合わせが所定の確率変動役を形成しているときにゲームの成績が所定の開始条件を満たしたものと判断して共通象徴を加えるとともに、前記共通象徴が前記選択候補群に加えられた後、ゲームの成績が所定の終了条件を満たすとき、前記選択候補群から少なくとも一つの共通象徴を除くものであるのに対して、引用発明は、設定払い戻し率と実績払い戻し率との比較結果によって調整された確率に基づいた抽選結果により、共通象徴の加除(カードテーブルの変更)を行っている点。(以下、相違点という。)

5.相違点についての検討
象徴の組み合わせに応じて配当を得るゲームにおいて、選択された象徴の組み合わせが所定の確率変動役を形成しているときにゲームの成績が所定の開始条件を満たしたものと判断して、配当の確率を上昇させ、その後のゲームにおいて、ゲームの成績が所定の終了条件を満たすときに確率変動状態を解除する制御は、例えば、特開平9-103540号公報(特に【0015】〜【0019】段落)、特開平11-76580号公報(特に【0038】段落)に記載されているように周知の事項である。
よって、引用発明において、選択された象徴の組み合わせが所定の確率変動役を形成しているときに配当の確率を上昇させ、その後のゲームにおいて、ゲームの成績が所定のときに配当の確率を低下させることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、その実現にあたって、確率制御手段を、選択された象徴の組み合わせが所定の確率変動役を形成しているときにゲームの成績が所定の開始条件を満たしたものと判断して共通象徴を加えるとともに、前記共通象徴が前記選択候補群に加えられた後、ゲームの成績が所定の終了条件を満たすとき、前記選択候補群から少なくとも一つの共通象徴を除くように構成することは、引用発明が、ワイルドカードに対応したカードに多くの乱数を割り当てるか少ない数の乱数を割り当てるかにより、払い戻し率に差異をつけていること、つまり、共通象徴の枚数の増減により配当の確率制御を行っているとみなせることを考えれば、当業者が適宜設計し得るものにすぎない。

また、本願発明の効果が、引用発明に記載された発明の効果、及び、周知事項に基づく効果の総和以上の格別なものとは認められない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-02 
結審通知日 2005-12-06 
審決日 2005-12-19 
出願番号 特願平11-167331
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 宮本 昭彦
川島 陵司
発明の名称 ゲームシステム、ゲームの制御方法及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体  
代理人 山本 晃司  

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