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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1130607
審判番号 不服2002-17458  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-10 
確定日 2006-02-09 
事件の表示 平成 7年特許願第138769号「現像方法及び現像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月22日出願公開、特開平 8-305167〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、出願日が平成7年5月11日である特願平7-138769号であって、平成14年8月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成14年9月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされた。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成14年6月20日提出の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。
「外表面に現像剤を担持しつつ回転によりそれを搬送する現像スリーブと、その内部に固定された磁気ロールと、該現像スリーブに現像剤を供給する現像剤供給手段とを少なくとも具備する現像装置を用い、磁性キャリアとトナーよりなる2成分系現像剤で静電潜像の現像を行う現像方法において、該現像スリーブの表面粗さRzが下記の条件を満たすと共に、該トナーが球形度1.1以下の球形トナーであることを特徴とする現像方法。
3×D≧表面粗さRz≧D×3/4
(但し、Dは球形トナーの重量平均粒子径)」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開平7-44017号公報(以下、引用例1という。)には、次の事項が記載されている。
ア.【0001】【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真複写装置等において、磁性キャリア粒子とトナー粒子とを混合した2成分現像剤を用いて静電潜像あるいは磁気潜像を現像する現像装置に関するものである。

イ.【0023】
図1は、本発明の現像装置の一実施例を示す断面図である。図において、20は現像装置、21はアルミニウム等の非磁性材料からなる現像スリーブ、22は現像スリーブ21の内部に固定して設けられ表面に複数のN,S磁極を周方向に有するロール状の固設された磁石体で、この現像スリーブ21と磁石体22とで現像剤搬送担体を構成している。そして、現像スリーブ21は固定した磁石体22に対して回転可能であり、現像スリーブ21は矢示方向に回転する感光体ドラム10に対向して配置される。磁石体22のN,S磁極は通常500〜1,500ガウスの磁束密度に磁化されており、その磁力によって現像スリーブ21の表面に現像剤Dの層即ち、磁気ブラシを形成する。・・・28は現像スリーブ21に現像剤Dを供給するスポンジ状の供給ローラ、29は現像スリーブ21に印加する交流バイアス電圧を供給するバイアス電源、Dは現像剤である。

ウ.【0026】
さらに、本発明の現像装置の現像スリーブ21の表面は図に示すように、厚さ2〜100μm、体積抵抗率109〜1011Ω・cmの絶縁性皮膜21aをもって被覆し、その表面のあらさをJISのRz値で0.1〜10μmとなるようサンドブラスト等の処理を施して微細な凹凸を設けて現像剤Dの搬送を良好にしている。特に、Rz=0.5〜5.0μmのとき良好な結果が得られた。
【0027】
本現像装置に用いられる現像剤Dについて説明する。
【0028】
トナーは例えば下記の組成から成るもので、
スチレン-メタクリル酸ブチル(75:25)共重合体樹脂 100重量部
着色剤 10重量部
バリファースト(オリエント化学社製) 0.2重量部
軟化点120℃のポリプロピレン 2重量部
上記組成物を溶融,練肉,冷却,粉砕し重量平均粒径8μm径のトナーとしたもので、5〜15μm径の間が好ましく用いられる。

エ.【0029】
・・・トナー粒子がスプレードライ法、あるいは粒子化後の球形化処理によって球形化されたものであると、現像剤の流動性が向上して凝集しにくくなり、キャリアとの均一混合性、搬送性及び帯電性も向上する。

したがって、上記記載事項、及び図1も参照すれば、引用例1には、
「表面に現像剤Dの層即ち、磁気ブラシを形成して、回転可能である現像スリーブ21と、その内部に固定して設けられ表面に複数のN,S磁極を周方向に有するロール状の固設された磁石体22、現像スリーブ21に現像剤Dを供給するスポンジ状の供給ローラ28とを少なくとも具備する現像装置20を用い、磁性キャリア粒子とトナー粒子とを混合した2成分現像剤を用いて静電潜像を現像する現像方法において、現像スリーブ21の表面のあらさをJISのRz値で0.1〜10μmとなるようサンドブラスト等の処理を施して微細な凹凸を設けて現像剤Dの搬送を良好にし、トナーは、重量平均粒径5〜15μm径の間のもので、粒子化後の球形化処理によって球形化されたものである現像方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「表面に現像剤Dの層即ち、磁気ブラシを形成して、回転可能である現像スリーブ21」、「ロール状の固設された磁石体22」、「供給ローラ28」、「磁性キャリア粒子とトナー粒子とを混合した2成分現像剤を用いて静電潜像を現像する現像方法」、「トナーは粒子化後の球形化処理によって球形化されたもの」は、本願発明の「外表面に現像剤を担持しつつ回転によりそれを搬送する現像スリーブ」、「磁気ロール」、「現像剤供給手段」、「磁性キャリアとトナーよりなる2成分系現像剤で静電潜像の現像を行う現像方法」、「トナーが球形トナー」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、「外表面に現像剤を担持しつつ回転によりそれを搬送する現像スリーブと、その内部に固定された磁気ロールと、該現像スリーブに現像剤を供給する現像剤供給手段とを少なくとも具備する現像装置を用い、磁性キャリアとトナーよりなる2成分系現像剤で静電潜像の現像を行う現像方法において、トナーが球形トナーである現像方法。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;
本願発明では、現像スリーブの表面粗さRzが、「3×D≧表面粗さRz≧D×3/4 (但し、Dは球形トナーの重量平均粒子径)」の条件を満たすのに対し、引用発明では、そのような限定がない点。

相違点2;
本願発明では、トナーが球形度1.1以下の球形トナーであるのに対し、引用発明では、そのような限定がない点。

5.当審の判断
上記各相違点について検討する。
相違点1について
引用例1には、トナーの重量平均粒径が5〜15μm径の間が好ましい(上記記載事項ウ.)とされているので、5μm径の場合について上記条件式に当てはめると、「15≧表面粗さRz≧3.75」を満たす表面粗さRzが本願発明の条件式を満たすものであるところ、引用発明では、表面粗さRzが0.1〜10μmであり、その大部分において、条件式を満足するものである。
また、上記条件式に、格別臨界的意義があるとは、認められず、本願発明の実施例においても、上記条件式を満足するものは、重量平均粒径が5μmで、表面粗さRzが4μmの一点のみである。
したがって、引用発明において、上記相違点1のように限定することは、当業者にとって困難性はない。

相違点2について
引用発明においても、トナーが「球形化されたものであると、現像剤の流動性が向上して凝集しにくくなり、キャリアとの均一混合性、搬送性及び帯電性も向上する。」(上記記載事項エ.)と記載されており、この記載から、できるだけ真円に近いもの、即ち球形度が1に近いものを想到することは、当業者にとって容易であり、また、球形度1.1以下の球形トナーについても、従来周知(例えば、特開昭61-279864号公報、特開平1-185654号公報、特開平7-36207号公報等参照。)の技術事項であるから、引用発明において、上記相違点2のように限定することは、当業者にとって困難性はない。

本願発明の効果も、引用発明、及び従来周知の技術事項から予測される範囲のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-02 
結審通知日 2005-12-05 
審決日 2005-12-22 
出願番号 特願平7-138769
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢沢 清純  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 秋月 美紀子
山下 喜代治
発明の名称 現像方法及び現像装置  
代理人 細田 芳徳  

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