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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11C |
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管理番号 | 1130608 |
審判番号 | 不服2002-18478 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-07-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-09-24 |
確定日 | 2006-02-09 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第268696号「データ記憶装置とその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月11日出願公開、特開平 9-180458〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年10月9日(優先権主張平成7年10月25日)の出願であって、平成14年8月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 2.平成14年9月24日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年9月24日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「複数のデータ保持手段を備えたデータ記憶装置において、 前記複数のデータ保持手段とそれぞれ接続され、前記複数のデータ保持手段のうちから特定のデータ保持手段を選択するアクセストランジスタとビット線とを備え、 前記複数のデータ保持手段は、 ロウデータを保持するロウデータ保持手段と、ハイデータを保持するハイデータ保持手段とを有し、 前記ロウデータの保持電位は、読み出し期間と比較して、非読み出し期間においては、接地電位に対して前記ビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトした電位に変化し、一方、前記ハイデータの保持電位は、前記読み出し期間及び非読み出し期間を通して、電源電位に対して前記ビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトした電位に固定され一定に保持されていることを特徴とするデータ記憶装置。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ロウデータの保持電位」について「読み出し期間と比較して、非読み出し期間においては、接地電位に対して前記ビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトした電位に変化し」との限定を付加し、同じく「ハイデータの保持電位」について「読み出し期間及び非読み出し期間を通して、電源電位に対して前記ビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトした電位に固定され一定に保持されている」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭58-211391号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、 (a)「(1) 行方向および列方向に配列された複数のスタティックメモリセルと、同一列のメモリセルそれぞれにおける一対の転送用MOSトランジスタの各一端に共通接続される一対のビット線と、同一行のメモリセルそれぞれにおける上記転送用MOSトランジスタの各ゲートに共通接続されるワード線と、前記メモリセルに供給すべき2電源のうち一方の電源をメモリセルの読み出しに際して第3の電源に切り換え、この切り換えによってメモリセルの2電源の電位差をメモリの休止モード期間における電位差に比べて大きくする電源切換手段とを具備することを特徴とする半導体記憶装置。」(第1頁、特許請求の範囲) (b)「したがって、読み出しに際して、すなわちリードモード時あるいはリードサイクルの全区間もしくは一部の期間にメモリセルに供給される2電源の電位差が休止モード期間の電位差よりも大きくなるので、メモリセルによるビット線の駆動能力が増し、高速の読み出し動作が行なわれるようになる。」(第3頁左上欄12行〜18行) (c)「そこで、本発明は、セルの一方の電源VDDと他方の電源(-VB)との電位差を、読み出しに際してメモリの休止モード期間に比べて大きくすることにより、高速の読み出しを行なうようにしている。」(第4頁左上欄10行〜14行) (d)「以下、種々のタイプのスタティックメモリセルに本発明を適用した具体例について説明する。先ず、メモリセルの命名法について述べておく。E/R型セルのうちNチャンネル型のものをRNセル、Pチャンネル型のものをRPセルと称し、CMOS型セルのうち転送トランジスタがNチャンネルのものをCNセル、PチャンネルのものをCPセルと称する。」(同左上欄15行〜右上欄2行) (e)「第6図(a)はCNセルに対する適用例を簡略的に示したもので、その詳細は第6図(b)に示す通りである。」(同右上欄16行〜18行) (f)「なお、第6図および第7図において、T5〜T6はNチャンネルMOSトランジスタ、T5’〜T6’はPチャンネルMOSトランジスタ、VDDCは高電位側電源、VSSCは低電位側電源、VXBNおよびVXBPはそれぞれNチャンネルトランジスタおよびPチャンネルトランジスタのバックゲート電源であって、半導体基板および半導体基板中に設けた前記半導体基板とは逆導電型の不純物拡散層に供給されている。」(同左下欄2行〜10行) (g)「第8図乃至第11図は、上記第4図乃至第7図のメモリセルに選択的に適用される電源電圧関係を示すもので、VDDおよびVSSはメモリセル以外の周辺回路で用いられている2つの電源の電圧(VDD>VSS)である。VBBSおよびVBBDはそれぞれ上記2電源の電圧範囲外の第3の電源の電圧であって、VBBS<VSS,VBBD>VDDである。VDD’,VSS’は第4の電源であって、VSS<VDD’<VDD,VSS<VSS’<VDDである。この場合、第3、第4の電線の電位差|VDD’-VBBS|,|VBBD-VSS’|はメモリの休止モード期間におけるメモリセルの2電源の電位差、つまり|VDD-VSS|に比べて大きく設定されている。」(同左下欄11行〜右下欄3行) (h)「(1)第1実施例 第4図もしくは第6図に示すメモリセルを持ち、このメモリセルの電源電圧は第8図に示す電圧関係の電源が用意されていて、読み出しに際してはVDDC=VDD,VSSC=VXBN=VBBSに設定され、さらに第6図の場合はVXBP≧VDDCに設定される。」(同4行〜10行) (i)「上述した第1、第2実施例によれば、読み出しに際してはメモリセルの高電位側電源電圧VDDC、低電位側電源電圧VSSCの少なくとも一方がメモリセル以外の周辺回路で用いられている駆動用の2電源の電圧範囲(VDD〜VSS)外の第3の電源の電圧VBBSもしくはVBBDとなっていて、メモリセルの2電源の電位差|VDD-VBS|,|VBBD-VSS|が休止モード期間のメモリセルの2電源の電位差|VDD-VSS|に比べて大きくなっているので、セルのビット線に対するVSS電源電圧方向もしくはVDD電源電圧方向への引き込み駆動能力が増し、第3図を参照して前述したようにビット線引き込み時間Tが短かくなり、読み出し時間が従来に比べて5〜20%短縮された。」(同18行〜第5頁左上欄11行) (j)「(6)第6実施例 第13図に示すようにCNセルを持ち、第14図に示すような関係の(VDD>VSS’>VSS)電源電圧を使用し、VDDC=VXBP=VDD,VXBN=VSSとし、VSS’ラインとセルのVSSCラインとの間にNチャンネルトランジスタN1を接続してそのゲートに前述したようなVin1を印加し、VSSラインとセルのVSSCラインとの間にNチャンネルトランジスタN2を接続してそのゲートに前述したようなVin2を印加したものである。したがって、休止モード期間におけるセルの2電源の電位差(|VDD-VSS’|)に比べて読み出しに際してそれはVDD〜VSSとなり、相対的に大きくなる。」(同右下欄5行〜17行) との記載が認められ、これらの記載によれば、引用例には、 「複数のスタティックメモリセルを備えた半導体記憶装置であって、同一列のメモリセルそれぞれに一対の転送用MOSトランジスタと一対のビット線が接続され、メモリセルの高電位側電源電圧、低電位側電源電圧の少なくとも一方がメモリセル以外の周辺回路で用いられている駆動用の2電源の電圧範囲外の第3の電源電圧となっていて、読み出し時のメモリセルの2電源の電位差が、休止モード期間のメモリセルの2電源の電位差に比べて大きくなっている半導体記憶装置。」 との発明(以下「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例発明とを比較すると、引用例発明の「メモリセル」、「半導体記憶装置」、「転送用MOSトランジスタ」、「高電位側電源電圧」、及び「低電位側電源電圧」は、本願補正発明の「データ保持手段」、「データ記憶装置」、「アクセストランジスタ」、「ハイデータ保持電位」、及び「ロウデータ保持電位」に相当する。 引用例発明において、ハイデータ及びロウデータを保持するためのハイデータ保持手段及びロウデータ保持手段を有することは明らかであるから、両者は、 「複数のデータ保持手段を備えたデータ記憶装置において、 前記複数のデータ保持手段とそれぞれ接続され、前記複数のデータ保持手段のうちから特定のデータ保持手段を選択するアクセストランジスタとビット線とを備え、 前記複数のデータ保持手段は、 ロウデータを保持するロウデータ保持手段と、ハイデータを保持するハイデータ保持手段とを有するデータ記憶装置。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]ロウデータの保持電位が、本願補正発明では、読み出し期間と比較して、非読み出し期間においては、接地電位に対してビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトした電位に変化するのに対し、引用例発明では、読み出し期間と比較して、非読み出し期間においては、接地電位に対して高電位側にシフトした電位に変化する点。 [相違点2]ハイデータの保持電位が、本願補正発明では、読み出し期間及び非読み出し期間を通して、電源電位に対してビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトした電位に固定され一定に保持されているのに対し、引用例発明では、電源電位に固定されている点。 (4)判断 [相違点1]について まず、「ビット線を駆動する方向とは逆の方向」について検討するに、本願明細書を参照すると「読み出し動作時に、メモリセル1Bが選択されたとすると、ロウデータ保持手段の電位を接地して、ロウデータ保持手段であるトランジスタ対のゲート・ソース間電圧Vgsを大きくし、駆動能力を高めるBL駆動を行なって読み出し速度の向上を図っている」(【0067】段落)こと、及び「本願のメモリセル1Bは、データ保持手段におけるデータの各保持電位がビット線BLを駆動する方向とは逆の方向にそれぞれシフトされている。ここで、ビット線BLの駆動方向とは、例えば、電源電位Vccにプリチャージされるビット線BLの場合は、接地電位方向がその駆動方向である」(【0068】段落)ことがそれぞれ記載されており、この記載から、「ビット線を駆動する方向とは逆の方向」とは即ち、接地電位からみて、電源電位側への方向を指すことが明らかである。したがって、引用例発明において、読み出し期間と比較して、非読み出し期間(例えば休止モード期間)において、接地電位に対して高電位側にシフトした電位に変化することと接地電位に対してビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトした電位に変化することとは同義であることは当業者に明らかである。したがって、本相違は実質的なものではない。 [相違点2]について 引用例発明において、ロウデータ保持電位を制御する以外に、ハイデータ保持電位を制御しても良いことは当業者に明らか(摘記事項(g),(i)において、ハイデータ保持電位をVBBD(>VDD)に保持する場合に相当。)であり、また、本願補正発明と同様な記憶装置(スタティックRAM)において、ハイデータ保持電位を、読み出し期間及び非読み出し期間を通して電源電位よりも高い電位に保持すること、即ちビット線を駆動する方向とは逆の方向に保持することは周知技術に過ぎず(特開平5-120882号公報第6頁右欄25行〜第7頁左欄9行、図8参照)、ハイデータ保持電位を読み出し期間及び非読み出し期間を通して、電源電位に対してビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトした電位に固定され一定に保持されるよう制御することは当業者にとって容易である。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用例及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成14年9月24日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年4月26日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「複数のデータ保持手段を備えたデータ記憶装置において、 前記複数のデータ保持手段とそれぞれ接続され、前記複数のデータ保持手段のうちから特定のデータ保持手段を選択するアクセストランジスタとビット線とを備え、 前記複数のデータ保持手段は、 ロウデータを保持するロウデータ保持手段と、ハイデータを保持するハイデータ保持手段とを有し、 前記ロウデータの保持電位は、接地電位に対して、前記ビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトしていることを特徴とするデータ記憶装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「ロウデータの保持電位」の限定事項である「読み出し期間と比較して、非読み出し期間においては、接地電位に対して前記ビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトした電位に変化し」との構成を省き、「ハイデータの保持電位」の限定事項である「読み出し期間及び非読み出し期間を通して、電源電位に対して前記ビット線を駆動する方向とは逆の方向にシフトした電位に固定され一定に保持されている」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-11-30 |
結審通知日 | 2005-12-06 |
審決日 | 2005-12-19 |
出願番号 | 特願平8-268696 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11C)
P 1 8・ 575- Z (G11C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須原 宏光 |
特許庁審判長 |
大野 克人 |
特許庁審判官 |
山崎 慎一 竹井 文雄 |
発明の名称 | データ記憶装置とその駆動方法 |
代理人 | 前田 弘 |