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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1130642
審判番号 不服2003-7638  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-01 
確定日 2006-02-09 
事件の表示 平成11年特許願第 22689号「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年8月11日出願公開、特開2000-223655〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年1月29日の出願であって、平成15年3月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年5月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月2日付で手続補正がなされ、つづいて当審において拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年10月19日付で手続補正がなされたものである。
そして、本願の請求項1〜6に係る発明は、上記平成17年10月19日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】表面に接続パッドが形成された半導体チップと、
この半導体チップの表面に重ね合わせて接合され、上記半導体チップに対向する表面に可動素子および接続パッドが形成された表面可動素子と、
上記半導体チップの表面の接続パッドと上記表面可動素子の接続パッドとを接続するとともに、上記半導体チップと上記表面可動素子との間に、上記可動素子の移動動作を許容する動作空間を確保するパッド接合部と、
導電性材料からなり、上記半導体チップと上記表面可動素子の間に配置されてこれらを互いに接合するとともに、上記半導体チップまたは上記表面可動素子の低インピーダンス部に接続され、上記動作空間に封止樹脂が入り込むことを防ぐとともに電磁シールドとしても機能する壁状の周縁接合部とを含むことを特徴とする半導体装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
当審の平成17年8月22日付の拒絶理由に引用された本願出願前に国内で頒布された刊行物である特開平2-109410号公報(以下、「引用刊行物1」という。)、及び特開平7-99420号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)引用刊行物1:特開平2-109410号公報
(1a)「少なくとも一方に素子領域が形成された2つの半導体チップと、そのいずれかの半導体チップに形成された凹部を中空状とすると共にその中空状空間に前記素子領域を表出するように両半導体チップを接合する手段と、接合された両半導体チップを封止する樹脂封止材とで構成されていることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。」(特許請求の範囲)
(1b)「[従来の技術]従来、表面弾性波素子のように、パッケージ内に中空部分を設ける必要がある場合、セラミックパッケージあるいは金属パッケージを用いた気密封止構造のものが多用されている。」(1頁右欄3〜7行)
(1c)「[発明が解決しようとする課題]しかし、上記気密封止パッケージ構造は、樹脂封止型パッケージに比べて著しくコストが高く、経済性および生産性に劣っており、それが生産効率を高めるうえでの妨げの一つとなっている。
[発明の目的]本発明は、パッケージ内に中空部を設け、かつ樹脂封止のできる半導体装置を提供することを主たる目的としているものである。」(1頁右欄12〜末行)
(1d)「[実施例]第1図乃至第5図は、本発明の一実施例を示すものである。同図において、A,Bは接合される半導体チップである。一方の半導体チップAは、第2図および第3図に示すように、その接合面にチップ接合用リング6およびワイヤボンデング用パッド7が設けられている。前記チップ接合用リング6は、ウエーハプロセス中に蒸着あるいはメッキ等の手段により形成される。リングの材料としては例えばAuが好ましいが、それに限らず、Al、ハンダなど、容易に金属接合できるものであればよく、・・・。ワイヤボンデイング用パッドは、アンダーパスあるいは二層配線手段により、リング内部の素子領域部8と接続されている。他方の半導体チップBは、第4図および第5図に示すように、前記半導体チップAと同様なチップ接合用リング9が形成され、・・・・。上記構成の半導体チップA,Bは、アセンブリ工程中において、各チップに形成された接合用リング6,9を介して超音波熱圧着等の適当な手段により接合されたとき、チップBの凹部10により、素子領域を中空状空間に表出する中空部12が形成される。前記半導体チップA,Bの接合後、・・・、ダイステージ16に搭載された半導体チップA,Bとワイヤボンデイング領域が樹脂封止材17により封止されている。半導体チップA,Bの素子領域の接続は、周知の手段であるバンプ電極等を用いて行うことができる。」(2頁左上欄17行〜左下欄14行)

(2)引用刊行物2:特開平7-99420号公報
(2a)「【発明が解決しようとする課題】・・・、前記従来の弾性表面波素子実装回路では、実装する基板が単層のセラミック基板であり、2次元配線が限界であるため、インピーダンス整合回路等をセラミック基板に形成する場合や、他の部品と集積化してモジュールを構成するなどの場合に大型化するという問題点があった。また、従来の弾性表面波素子実装回路では、セラミック基板の表面に配線パターンが形成されており、金属からなる蓋を導電性物質で封止できないため、金属からなる蓋を十分に接地できず、電磁遮蔽が不十分であるという致命的な問題点を有していた。
前記従来の課題を解決するため、本発明は周波数特性に優れ、信頼性の高い、超小型軽量の弾性表面波素子実装回路を提供することを目的とする」(【0008】【0009】)
(2b)「(実施例1)本発明による、弾性表面波素子実装回路の第1の実施例の構成の断面図を図1に示す。図1において、1は弾性表面波素子であり、・・・圧電基板で構成されている。また、弾性表面波素子1上に入出力端子2、接地端子3及び櫛形電極部4が形成されており、これらはアルミニウムを主成分とする合金または金を主成分とする合金を用いて、公知のフォトリソグラフィ技術により電極パターンを形成している。5は金またはアルミニウムからなるバンプ、6は導電性樹脂、7は弾性表面波素子の保持強度を補強するための絶縁性樹脂である。8は多層基板である。また、多層基板8にはビアホール9、入出力電極10、接地電極11及びシールドパターン12が形成されている。これらは、銅または銀を主成分とする導体で構成されている。13は金属製の蓋、14は多層基板8の弾性表面波素子1実装面に形成され、かつ弾性表面波素子1を囲むように形成された接地電極パターンである。蓋13は、半田や導電性樹脂などからなる導電性接着層15を介して接地電極パターン14と接着し、さらに、接地電極パターン14はビアホール9を介して多層基板8に形成されている接地端子3と接続され、蓋13を接地している。」(【0032】)
(2c)「・・・。さらに、金属からなる蓋13を、前記弾性表面波素子1を囲むように設けられた接地電極パターン14と、Au-Sn合金を用いて接着した。接地電極パターン14はビアホール9を介してシールドパターン12と接続され、金属からなる蓋13が接地されている。したがって、弾性表面波素子実装回路の電磁遮蔽を充分にとることができ、良好な周波数特性を得ることができた。また、多層基板8に設けられた、入力電極と出力電極との間に、接地電極パターンを配することで、電磁遮蔽をより十分にとることができる。・・・」(【0034】)
(2d)「以上のように、電極パッド部に導電性樹脂を転写塗布した金またはアルミニウムからなるバンプを有し、素子の周囲あるいはその一部に絶縁性樹脂を有する弾性表面波素子と、少なくとも1層以上のシールドパターンと、入出力電極と、接地電極と、異なる層の電極を接続するビアホールを有する多層基板とを有し、前記弾性表面波素子の入出力端子と接地端子をビアホールを介して、前記多層基板に形成された前記入出力電極および前記接地電極と導通を図り、金属からなる蓋を、半田あるいは導電性樹脂により、前記多層基板表面上に前記弾性表面波素子を囲むように形成された電極パターンと接着封止し、気密を保持するとともに、前記電極パターンをビアホールを介して前記接地電極と接続した構成により、周波数特性に優れ、信頼性の高い、超小型軽量の弾性表面波素子実装回路を得ることができる。」(【0036】)
(2e)「(実施例3)本発明による弾性表面波素子実装回路の第3の実施例の構成の断面図を図3に示す。図3において16は対向電極パターンであり、多層基板8上に、弾性表面波素子1の櫛形電極部4に対向した位置に形成されている。さらに、対向電極パターン16は、ビアホール9を介して接地電極11またはシールドパターン12と接続されている。このような構成をとることによって、弾性表面波素子の入出力電極間での直達波の影響を軽減し、充分なアイソレーションをとることができる。これにより、バンドパスフィルタを構成した場合には、周波数特性、特に帯域外抑圧度に優れた弾性表面波素子実装回路が得られる。」(【0039】)
(2f)「(実施例4)本発明による弾性表面波素子実装回路の第4の実施例の構成の断面図を図4に示す。図4において17は裏面電極であり、弾性表面波素子1の櫛形電極部4の形成されている面の裏面にアルミニウムまたは金を主成分とする金属膜により構成されている。18は導電性樹脂であり、裏面電極17と金属からなる蓋13との導通を図る役目をしている。
このような構成をとることによって、弾性表面波素子実装回路の電磁遮蔽を充分確保するとともに、浮遊容量等の影響を少なくすることができ、従来の弾性表面波素子実装回路に比べて良好な周波数特性を有する弾性表面波素子実装回路が得られる。」(【0040】【0041】)

3.対比・判断
引用刊行物1には、上記摘記事項(1b)(1c)によれば、従来、表面弾性波素子のように、パッケージ内に中空部分を設ける必要がある場合、セラミックパッケージあるいは金属パッケージを用いた気密封止構造のものが多用されているが、これらは樹脂封止型パッケージに比べて著しくコストが高く、経済性および生産性に劣っており、それが生産効率を高めるうえでの妨げの一つとなっており、本発明は、パッケージ内に中空部分を設け、かつ樹脂封止のできる半導体装置を提供することを主たる目的としていることが記載されている。
また、上記摘記事項(1d)によれば、一方の半導体チップAは、その接合面にチップ接合用リングおよびワイヤボンデング用パッドが設けられ、チップ接合用リングは、Auが好ましいが、Al、ハンダでよいこと、ワイヤボンデイング用パッドは、アンダーパスあるいは二層配線手段により、リング内部の素子領域部と接合されていること、他方の半導体チップBは、半導体チップAと同様なチップ接合用リングが形成され、半導体チップA,Bは、各チップに形成された接合用リングを介して接合されたとき、素子領域を中空状空間に表出する中空部が形成され、半導体チップA,Bの素子領域の接続は、周知の手段であるバンプ電極等を用いて行うことができることが記載され、ここで、チップ接合用リングは導電性材料からなっており、又半導体チップA,Bの素子領域の接続は、周知の手段であるバンプ電極等を用いて行うものであるから、両者の接続表面には接続パッドが当然に形成されているものである。
そうすると、上記摘記事項(1a)〜(1d)を総合すると、引用刊行物1には、「少なくとも一方に素子領域が形成された2つの半導体チップA,Bと、半導体チップAは、その接合面に導電性材料からなるチップ接合用リングおよびワイヤボンデング用パッドが設けられ、半導体チップBに形成された凹部を中空状とすると共にその中空状空間に前記素子領域を表出するように両半導体チップをチップ接合用リングにより接合する手段と、半導体チップA,Bの素子領域の接続は、両者の接続表面の接続パッドとで接続すると共に、接合された両半導体チップを封止する樹脂封止材とで構成されている樹脂封止型半導体装置。」(以下、「引用刊行物1記載発明」という。)が記載されていることになる。

本願発明と引用刊行物1記載発明とを対比する。
引用刊行物1記載発明において、半導体チップA,BのうちBに形成された凹部を中空状とするとされている。ここで動作空間の必要な半導体チップBを表面弾性波素子とすることは自明のことであって、又表面弾性波素子のため両半導体チップをチップ接合用リングにより接合し該リングを壁の一部とする中空状空間を形成するものであるから、この空間には封止樹脂が入り込まないものである。そして、引用刊行物1記載発明の「半導体チップA」、「半導体チップB」、「チップ接合用リング」、「中空状空間」は、順に本願発明の「半導体チップ」、「表面弾性波素子」、「壁状の周縁接合部」、「動作空間」に相当している。
そうすると、両者は、「表面に接続パッドが形成された半導体チップと、
この半導体チップの表面に重ね合わせて接合され、上記半導体チップに対向する表面に可動素子および接続パッドが形成された表面可動素子と、
上記半導体チップの表面の接続パッドと上記表面可動素子の接続パッドを接続するとともに、上記半導体チップと上記表面可動素子との間に、上記可動素子の移動動作を許容する動作空間を確保するパッド接合部と、
導電性材料からなり、上記半導体チップと上記表面可動素子の間に配置されてこれらを互いに接合するとともに、上記動作空間に封止樹脂が入り込むことを防ぐ壁状の周縁接合部とを含む半導体装置。」で一致するものの、次の点で相違している。
(a)壁状の周縁接合部について、本願発明では、上記半導体チップまたは上記表面可動素子の低インピーダンス部に接続され、上記動作空間に封止樹脂が入り込むことを防ぐとともに電磁シールドとしても機能するとしているのに対し、引用刊行物1記載発明では、動作空間に封止樹脂が入り込むことは防いでいるものの、半導体チップまたは表面可動素子の低インピーダンス部に接続され、上記動作空間に封止樹脂が入り込むことを防ぐとともに電磁シールドとしても機能する点が記載されていない点。

そこで、上記相違点(a)について検討する。
引用刊行物2には、従来の弾性表面波素子実装回路では、セラミック基板の表面に配線パターンが形成されており、金属からなる蓋を導電性物質で封止できないため、金属からなる蓋を十分に接地できず、電磁遮蔽が不十分であったのを解決するために(上記摘記事項(2a))、実施例1では、弾性表面波素子1上に入出力端子2、接地端子3及び櫛形電極部4が形成されており、多層基板8にはビアホール9、入出力電極10、接地電極11及びシールドパターン12が形成されており、蓋13は、導電性接着層15を介して接地電極パターン14と接着し、さらに、接地電極パターン14はビアホール9を介して多層基板8に形成されている接地端子3と接続され、蓋13を接地していること(上記摘記事項(2b))が記載され、これによれば、弾性表面波素子1上の接地端子3は、多層基板8の接地電極パターン14、ビアホール9、シールドパターン12、及び接地電極11と接続しており、弾性表面波素子の櫛形電極部4が効率よく電磁遮蔽されることが理解できる。
又引用刊行物2の実施例3では、対向電極パターン16を多層基板8上で、弾性表面波素子1の櫛形電極部4に対向した位置に形成し、対向電極パターン16は、ビアホール9を介して接地電極11またはシールドパターン12と接続され、このような構成をとることによって、弾性表面波素子の入出力電極間での直達波の影響を軽減し、充分なアイソレーションをとることができようにしたこと(上記摘記事項(2e))、同じく実施例4では、裏面電極17を弾性表面波素子1の櫛形電極部4の形成されている面の裏面に金属膜により構成し、裏面電極17と金属からなる蓋13との導通を更にさせることによって、弾性表面波素子実装回路の電磁遮蔽を充分確保すること(上記摘記事項(2f))が記載されている。
このように、高周波デバイスとして利用される弾性表面波素子の電磁遮蔽を十分とることは周知であって、又引用刊行物2には、このためには、櫛形電極部の付近でシールドパターン、対向電極パターン、金属膜等の導電性材料と導通させればよいことが示唆されているものである。
一方、モールド型表面波フィルターにおいて、薄膜回路部をそれと間隔をおいて金属シールド板で覆い、更に合成樹脂でモールドすることは、例えば実願昭53-79228号(実開昭54-181840号)のマイクロフィルム(従来技術の説明、1頁末行〜2頁4行)、特開昭55-8191号公報(Al層14,2頁左上欄14〜18行)で示されるように周知の技術であって、これによれば金属シールド板(Al層)は電磁遮蔽機能とモールド樹脂の進入を防いでいるものである。また、マザーチップ基板と半導体チップ間の信号用バンプSの周囲を接地用バンプで包囲しシールドすることは、例えば特開昭61-5549号公報(第4図、第5図の説明参照)にあるように周知のことである。
そうすると、引用刊行物1記載発明においても、弾性表面波素子の電磁シールドを効率よく接地処理することは高周波特性改善のため当然に要求される技術課題であって、引用刊行物1記載の壁状の周縁接合部は、導電性材料でモールド樹脂の進入を防いでいるものであるから、壁状の周縁接合部を電磁シールドとしても機能するようにし上記相違点(a)なる構成とすることは当業者ならば容易に想到し得ることである。
そして、本願発明の作用効果も、引用刊行物1、2に記載された事項及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものとは認められない。
したがって、本願発明は、引用刊行物1、2に記載された発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の本願の請求項2〜6に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2005-11-30 
結審通知日 2005-12-06 
審決日 2005-12-20 
出願番号 特願平11-22689
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北島 健次今井 拓也  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 大嶋 洋一
市川 裕司
発明の名称 半導体装置  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 川崎 実夫  

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