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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1130664
審判番号 不服2003-18161  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-18 
確定日 2006-02-06 
事件の表示 平成10年特許願第375487号「発明評価システム及び発明評価プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月30日出願公開、特開2000-181966〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年12月16日の出願であって、平成15年8月8日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年9月18日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年9月18日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年9月18日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「マウス,キーボード等の入力手段と、該入力手段から入力される特許性評価項目を記憶する特許性評価項目記憶手段と、前記入力手段から入力される技術性評価項目を記憶する技術性評価項目記憶手段と、前記入力手段から入力される経済性評価項目を記憶する経済性評価項目記憶手段と、
キャラクタディスプレイ,液晶ディスプレイ等の表示手段と、前記評価項目のそれぞれを少なくとも3段階に評定した値である評定値を前記入力手段からの入力に応じてそれぞれ記憶する評定値記憶手段と、
入力される前記評定値のそれぞれから平均値,合計値その他のいかなる統計的演算方法によって演算されて算出される演算レベル値を,データ記録手段等に予め記録され、且つ少なくともAレベル,Bレベル,Cレベルの3段階に区分する基準となる評価レベル基準値と比較して,いずれのレベルに該当するか判定し,この判定された評価レベルを前記表示手段に表示する判定表示手段と、
入力される前記評価項目のそれぞれを基本項目とした放射状の基本グラフを描画する基本グラフ描画手段と、前記基本グラフの項目線上に,入力される前記評定値に対応して多角形状の直線で囲まれた閉領域を表示する閉領域表示手段と、前記評価レベル基準値を任意に変更することのできる評価レベル基準値変更手段とを備えてなり、
前記評価レベル基準値が任意に変更されたときには、変更された評価レベル基準値が基準となって制御されて前記判定表示手段にて判定された前記評価レベル及び該評価レベルの根拠数値となる判定レベル値が前記表示手段に表示されることを特徴とする発明評価システム。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「判定表示手段」について具体的な限定を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平10-91679号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

ア「【発明の実施の形態】以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態であるベンチャー企業評価支援システムの概略ブロック図である。図1に示すベンチャー企業評価支援システムは、入力装置としてのキーボード11a及びマウス11bと、制御部12と、記憶部13と、参考例記憶部14と、CRT表示装置15と、評価点算出手段16と、グラフ作成手段17とを備える。
【0008】かかるベンチャー企業評価支援システムは、例えば、金融機関や自治体等がベンチャー企業への投融資を行う際に、そのベンチャー企業の将来性や投資リスクを客観的に判断する場合に用いられる。本実施形態では、ベンチャー企業の内容を評価するに際して、「技術性」、「市場性」、「起業化性(開発意欲等)」という三つの主評価項目を用いる。「技術性」(第一の主評価項目)は、ベンチャー企業が有する新技術に関する真偽性、進歩性等を評価するための項目を含むものである。「市場性」(第二の主評価項目)は、市場における当該新技術の潜在又は顕在ニーズ、当該新技術に対する市場規模等を評価するための項目を含むものである。「起業化性」(第三の主評価項目)は、起業家の開発意欲、経営性等を評価するための項目を含むものである。この「起業化性」の評価項目を設けたことが本発明の一つの特徴である。また、各主評価項目は複数の項目に区分されている。各項目については、所定の評価基準に従って、多段階評価されて得点が付けられる。そして、その得点付けられた結果に基づいて、各主評価項目の評価点が得られる。
【0009】キーボード11aは、評価対象となるベンチャー企業について、それぞれの主評価項目毎に各項目の得点等を入力するものである。かかる項目の得点を入力する際には、CRT表示装置15の画面上に、例えば表計算ソフトウエアのスプレッドシートを入力画面として表示する。図2は「技術性」について各項目の得点を入力するスプレッドシートを示す図、図3は「市場性」について各項目の得点を入力するスプレッドシートを示す図、図4は「起業化性」について各項目の得点を入力するスプレッドシートを示す図である。図2乃至図4において、2行目のセルに表示されているのが項目である。「技術性」の主評価項目には、図2に示すように、「技術の妥当性」、「開発の困難度」、「知的所有権」、「アセスメント」、「開発費用」の五つの項目が含まれている。また、「市場性」の主評価項目には、図3に示すように、「社会適合性」、「ニーズの明確化」、「営業体制」、「予想売上高と利益」という四つの項目が含まれており、「起業化性」の主評価項目には、図4に示すように、「起業家の資質」又は「上級管理者による強力なバックアップ」、「熱狂的開発者の存在」、「経営管理的歯止めが掛かる構造」、「開発に必要なインフラ」の五つの項目が含まれている。」(3頁左欄32行〜同頁右欄31行)

イ「【0021】グラフ作成手段17は、キーボード11aやマウス11b等の入力装置からの指示信号に基づいて、評価対象となるベンチャー企業毎に各主評価項目について対応する軸上に正規化評価点を印したクモの巣状のグラフを作成するものである。グラフ作成手段17によって作成されたクモの巣状のグラフはCRT表示装置15の画面上に表示される。図5はCRT表示装置15の画面上に表示されたクモの巣状のグラフの一例を示す図である。かかるクモの巣状のグラフは、原点を共通にし異なる方向に伸びる三つの軸を座標軸として設定したものである。ここでは、上に伸びる軸を「技術性」に関する軸とし、右下に伸びる軸を「市場性」に関する軸とし、左下に伸びる軸を「起業化性」に関する軸としている。隣合う二つの軸のなす角度は120°である。そして、各軸には同じスケールで目盛りが付けられている。各主評価項目の正規化評価点は対応する軸上に丸等で印が付けられる。
【0022】また、グラフ作成手段17は、図5に示すように、三つの軸上に印が付けられた位置を実線等で結ぶことにより、三つの正規化評価点を三角形の図形で表現している。かかる図形の大きさや形状によって、一目で三つの主評価項目の評価を総合的に把握することができる。三つの主評価項目の評価点が満点である場合は、図形の形状は、最も大きな正三角形となる。また、例えば、三角形の形状が全体的に小さければ、すべての主評価項目についての評価が劣っていると分かる。また、鈍角三角形であれば、鈍角の頂点についての軸に対応する主評価項目の評価が極端に劣っていると分かる。」(5頁右欄25行〜6頁左欄2行)

ウ「【0016】こうして各専門機関で得られた各項目の得点は、図2乃至図4に示すように、各項目のセルと同じ列の10行目又は11行目に入力する。この例では、各項目の得点として最高点を付けた場合を示している。ここで、「技術の妥当性」、「社会適合性」、「起業家の資質」又は「上級管理者による強力なバックアップ」の項目については、10行目のセルに得点を入力し、その他の項目については、11行目のセルに得点を入力する。これは、主評価項目の評価点を算出する際の各項目のウエイトが異なるためである。この点については後に詳述する。」(5頁左欄5行〜15行)

エ「【0027】次に、本実施形態のベンチャー企業評価支援システムの動作について説明する。図7はそのベンチャー企業評価支援システムの動作手順を説明するためのフローチャートである。まず、各専門機関が、評価対象のベンチャー企業について、主評価項目の各項目の得点付けを行う。次に、オペレータは、各専門機関で得られた得点をキーボード11aから入力する(step11)。このとき、評価対象のベンチャー企業の新技術についての分類情報、発展ステップ情報を入力する。制御部12は、その入力された数値データを、主評価項目毎に記憶部13に記憶させる(step12)。各主評価項目毎に数値データの入力が終了すると、評価点算出手段16は、その数値データに基づいて主評価項目の評価点、及び正規化評価点を算出する(step13)。その算出した結果は、数値データと共に記憶部13に記憶される。」(6頁左欄49行〜同頁右欄13行)

したがって、アないしエの記載及び図2ないし5から、引用例1には、
「評価の対象となるベンチャー企業ごとに、技術性、市場性、企業化性のそれぞれについて、複数の主評価項目が示されているセルと各項目の得点を入力するためのセルを有するスプレッドシートがCRT表示装置15に表示され、これらのスプレッドシートに得点データを入力するキーボード11aと、入力された各得点データを記憶する記憶部13と、記憶部に記憶された各項目の各得点データに基づいて技術性、市場性、企業化性について評価点を算出し、評価対象となるベンチャー企業の技術性、市場性、企業化性について対応する軸上に前記評価点を記したクモの巣状のグラフを表示するグラフ作成手段17と、前記グラフ作成手段17によって作成されたクモの巣状のグラフがCRT表示装置15に表示されるベンチャー企業評価支援システム」の発明(以下「引用発明1」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
引用発明1の「クモの巣状のグラフ」は、図5にあるように、3つの主評価項目に関する軸を放射状に配置し、それぞれの軸上に評価点を印し、これらの点を折れ線で結んで多角形を描いて得られたものを意味する。よって、引用発明1のクモの巣状グラフを表示する「グラフ作成手段17」は、本願補正発明の放射状の基本グラフを描画する「基本グラフ描画手段」と、評定値に対応して多角形状の直線で囲まれた閉領域を表示する「閉領域表示手段」に相当する構成を有している。

引用発明1の「キーボード11a」、「CRT表示装置15」、「評価点」はそれぞれ本願補正発明の「入力手段」、「表示手段」、「評定値」に対応する。

以上を踏まえ、本願補正発明と引用発明1とを比較すると、
「マウス、キーボードなどの入力手段と、キャラクタディスプレイ、液晶ディスプレイなどの表示手段と、評価項目のそれぞれを基本項目とした放射状の基本グラフを描画する基本グラフ描画手段と、基本グラフの項目線上に、評定値に対応して多角形状の直線で囲まれた閉領域を表示する閉領域表示手段とを備えた評価システム」
である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願補正発明が、特許性評価項目を記憶する特許性評価項目記憶手段、技術性評価項目を記憶する技術性評価項目記憶手段、経済性評価項目を記憶する経済性評価項目記憶手段を有する発明評価システムであるのに対し、引用発明1は技術性、市場性、企業化性のそれぞれについて、複数の主評価項目が示されているセルと各項目の得点を入力するためのセルを有するスプレッドシートが表示されるベンチャー企業評価支援システムである点。

(相違点2)
本願補正発明においては、評定値を入力手段からの入力に応じて評定値記憶手段に記憶しているのに対して、引用発明1は入力手段から入力された得点データを記憶部13に記憶し、得点データに基づいて評定値を求めている点。

(相違点3)
本願補正発明が「入力される前記評定値のそれぞれから平均値、合計値その他のいかなる統計的演算方法によって演算されて算出される演算レベル値を、データ記録手段等に予め記録され、且つ少なくともAレベル、Bレベル、Cレベルの3段階に区分する基準となる評価レベル基準値と比較して、いずれのレベルに該当するか判定し、この判定された評価レベルを前記表示手段に表示する判定表示手段」、「評価レベル基準値を任意に変更することのできる評価レベル基準値変更手段」を有し、「評価レベル基準値が任意に変更されたときには、変更された評価レベル基準値が基準となって制御されて前記判定表示手段にて判定された前記評価レベル及び該評価レベルの根拠数値となる判定レベル値が前記表示手段に表示される」のに対し、引用発明1には係る手段が認められない点。

(4)判断
(相違点1)について
引用発明1は、ベンチャー企業の評価を技術性、市場性、企業化性という観点から行うことを支援するシステムであるが、システムを形成する機器構成は本願補正発明と格別な差違はなく、評価対象と評価の観点が異なるにすぎず、引用発明1のシステム構成を用いて、発明の評価を特許性、技術性、経済性という観点から行うことを支援するシステムとすることは、各観点が自明であり当業者が適宜採用しうる事項であるから、当業者であれば容易に想到し得る事項である。
また、計算機でスプレッドシートを扱う際に、セルに入力されたデータが記憶媒体に格納されることは当然のことであり、記憶媒体において各データが格納される領域を記憶手段として表現することも普通に行われている。
してみると、引用発明1において、発明の評価を支援する構成とするために、特許性、技術性、経済性についてそれぞれの評価項目を示すセルが設けられたスプレッドシートを設けること、すなわち各評価項目を記憶する手段を設けることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2)について
評価項目についての評定値を直接入力するか、評価項目に関連する項目の得点データを入力させ、その得点データから評定値を算出するかは、評価項目が直接評価しやすいか否かに応じて当業者が適宜選択し得る事項である。また、入力されたデータや演算により求められた値をメモリなどの記憶手段に格納することは情報処理の分野において普通に行われることである。
よって、引用発明1において評定値を入力手段から入力して記憶手段に記憶するよう構成することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点3)について
複数の評価項目の評価値から所定の評価式に基づいて総合評価値を計算し、その値に基づいて星の数やAランク、Bランク・・・等という形で総合評価を表示することは、ホテルやレストランの格付け、投資対象評価などの、いわゆる「ランク付け」として一般によく知られている。また、ランク付けを行う際に用いられる、各ランクを分ける基準値は、各ランクの重要さや、分布のバランス等を考えて任意に設定される性質のものである。
さらに、ランク付けによる評価の根拠となる評価値とランクとを共に表示することは、大学入試模擬試験の合格判定等において行われているように、慣用手段である。
よって、引用発明1において各主評価項目の評価点について平均値を計算し、任意に設定された基準値と比較してランク付けした結果と、ランク付けの根拠となった平均値とを表示するよう構成することは、当業者にとって格別困難なこととは認められない。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明1から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年9月18日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年4月17日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「マウス、キーボード等の入力手段と、該入力手段から入力される特許性評価項目を記憶する特許性評価項目記憶手段と、前記入力手段から入力される技術性評価項目を記憶する技術性評価項目記憶手段と、前記入力手段から入力される経済性評価項目を記憶する経済性評価項目記憶手段と、キャラクタディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示手段と、前記評価項目のそれぞれを少なくとも3段階に評定した値である評定値を前記入力手段からの入力に応じてそれぞれ記憶する評定値記憶手段と、入力される前記評定値のそれぞれから演算される演算レベル値を、少なくともAレベル、Bレベル、Cレベルの3段階に区分する基準となる評価レベル基準値と比較して,いずれのレベルに該当するか判定し、この判定された評価レベルを表示手段に表示する判定表示手段と、入力される前記評価項目のそれぞれを基本項目とした放射状の基本グラフを描画する基本グラフ描画手段と、前記基本グラフの項目線上に、入力される前記評定値に対応して多角形状の直線で囲まれた閉領域を表示する閉領域表示手段と、前記評価レベル基準値を任意に変更することのできる評価レベル基準値変更手段とを備えてなり、前記評価レベル基準値が任意に変更されたときには、変更された評価レベル基準値が基準となって制御されて前記判定表示手段にて判定された前記評価レベルが前記表示手段に表示されることを特徴とする発明評価システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「判定表示手段」について具体的な限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-24 
結審通知日 2005-11-29 
審決日 2005-12-12 
出願番号 特願平10-375487
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 田中 幸雄
大野 弘
発明の名称 発明評価システム及び発明評価プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体  

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