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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A47C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47C |
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管理番号 | 1130691 |
審判番号 | 不服2005-6999 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2004-09-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-20 |
確定日 | 2006-02-10 |
事件の表示 | 特願2004- 8837「座席の暖房装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 9日出願公開、特開2004-249092号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成16年1月16日の出願であって,平成17年3月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成17年4月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,平成17年5月10日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成17年5月10日付け手続補正についての補正却下の決定 【補正却下の決定の結論】 平成17年5月10日付け手続補正を却下する。 【理由】 1.補正後の請求項1及び請求項2に記載された発明 平成17年5月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明1」という。)及び請求項2に記載された発明(以下,「本件補正発明2」という。)は,以下のとおりのものである。 「【請求項1】 細長状の電気抵抗体と該電気抵抗体の両側に位置する細長状の電極とを備えたPTC特性を有するフレキシブルなヒーターを、着座者の身体接触部位に沿うように座部パッドの前端側から後端側に向けて連続するように左右一対配設し、左右一対の前記ヒーターを、両者の離間距離を後端側に行くほど小さくして内側に位置する前記電極の後端同士を接合させることによりV字状に配設し、後端側を除く前記ヒーターを前記座部パッドの座面に位置させることにより、左右一対の前記ヒーターを前記座面にハ字状に配設したことを特徴とする座席の暖房装置。」 「【請求項2】 前記座部パッドに配設される前記ヒーターの前記電気抵抗体の幅を、前記座部パッドの前端側に行くほど狭くなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の座席の暖房装置。」 (下線部は補正箇所。) (1)本件補正発明1について 上記請求項1についての補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「電気抵抗体」について「細長状の」と限定するものであって,同様に,「電極」について「該電気抵抗体の両側に位置する細長状の」と,「ヒータ」について「座部パッドの後端側から前端側にかけて連続させることによって細長状に配設し」としていたものを「座部パッドの前端側から後端側に向けて連続するように左右一対配設し,左右一対の前記ヒーターを、両者の離間距離を後端側に行くほど小さくして内側に位置する前記電極の後端同士を接合させることによりV字状に配設し、後端側を除く前記ヒーターを前記座部パッドの座面に位置させることにより、左右一対の前記ヒーターを前記座面にハ字状に配設し」と限定するものである。そして,補正前の請求項1に記載された発明と本件補正発明1の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから,上記請求項1についての補正は,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下の「2.」〜「4.」において検討する。 (2)本件補正発明2について 上記請求項2についての補正は,上記「1.(1)」で示した限定に加えて,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「電気抵抗体」について「前記座部パッドに配設される前記ヒーターの」と限定し,「前記電気抵抗体の幅」について「前記座部パッドの前端側に行くほど狭くなるようにした」と限定するものである。 請求項2は請求項1の従属項であるので,本件補正発明2は,「左右一対の前記ヒーターを、両者の離間距離を後端側に行くほど小さくして内側に位置する前記電極の後端同士を接合させることによりV字状に配設し」という事項と「前記座部パッドに配設される前記ヒーターの前記電気抵抗体の幅を、前記座部パッドの前端側に行くほど狭くなるようにしたこと」という事項とを,発明を特定するために必要な事項として同時に併せもつこととなる。 確かに,前者については,願書に最初に添付した明細書の「実施形態12」,すなわち段落【0107】から段落【0114】,【図36】及び【図37】に記載した事項の範囲内において,他方,後者については,願書に最初に添付した明細書の「実施形態13」,すなわち段落【0115】から段落【0119】,【図38】及び【図39】に記載した事項の範囲内において,それぞれ限定されたものであると認められる。 しかしながら,前者及び後者を同時に併せもつ本件補正発明2については,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項のいずれにも記載されていない。 よって,上記請求項2についての補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではなく,特許法第17条の2第3項の規定に違反する。 2.引用刊行物及びその記載事項 刊行物1:特開2003-157958号公報 刊行物2:実願昭63-21257号(実開平1-126149号)のマ イクロフィルム (1)刊行物1について 刊行物1には以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 フレキシブル性と伸縮性を有する基材と、前記基材の表面に導電性材料からなる一対の電極部と、前記一対の電極部と電気的に接続された自己温度制御機能を有する抵抗体材料からなる発熱部とを備え、前記基材は少なくとも前記導電性材料からなる電極部および前記抵抗体材料からなる発熱部が含浸する含浸層と含浸しない非含浸層を設けてなる面状発熱体。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】) (イ)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、電気カーペット、電気毛布、床暖房パネル、車載用シートヒーター等の電気暖房器具に用いられる面状発熱体に関するものである。」(段落【0001】) (ウ)「【0002】【従来の技術】従来、この種の面状発熱体としては、例えば図6に示すように、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルムからなる基材15と、基材15上に銀ペースト等の導電性材料を塗布することにより形成された一対の電極部13a、13bと、一対の電極部13a、13bに電気的に接続するように一対の電極部13a、13bの全体あるいは一部を覆うように自己温度制御機能を有する抵抗体材料を塗布することにより形成された発熱部14で構成されている。20は電源であり、21は接続端子でハトメとメガネ端子等が使用される。22は接続線でリード線等が使用される。 【0003】この構成において、電流は、電源20から接続線22、接続端子21を通り、電極部13a、13bに供給される。図7は、図6に示す面状発熱体のA-A断面図であり、電極部13aと13bの間に生じた電位差によって電流iが流れることにより発熱部14が発熱するようになっている。なお、発熱部14を形成している自己温度制御機能を有する抵抗体材料は、通電により発熱部14の温度が上昇して、ある温度に到達すると抵抗値が急激に増加し、発熱量を抑えて自己温度調節を行うという特性を備えている。」(段落【0002】-段落【0003】) (エ)「【0026】図1において、1は不織布よりなる含浸層であり、ポリウレタン系樹脂シートよりなる非含浸層2とラミネートにより接着されて基材5を形成している。 【0027】この基材5の含浸層1の側から銀ペーストからなる導電性材料を塗布し、一対の電極部3a、3bを構成している。導電性材料は含浸層1に含浸しており、非含浸層2の表面まで達している。 【0028】さらに、一対の電極部3a、3bの全面あるいは一部を覆うようにしながら電極部3a、3bの間に抵抗体材料を塗布し、発熱部4を構成している。抵抗体材料も含浸層1に含浸し、非含浸層2の表面まで達している。一対の電極部3a、3bは全面あるいは一部が発熱部4で覆われているので、電気的に接続された状態となっている。抵抗体材料は、樹脂材料にカーボンを混合してなるPTC材料であり、発熱して温度が上昇し、ある温度に達すると電気抵抗値が急激に増加して発熱量を抑制する自己温度制御特性を有している。」(段落【0026】-段落【0028】) (オ)【図6】には,以下の事項が図示されている。 「細長状の抵抗体材料からなる発熱部14と該発熱部14の両側に位置する細長状の電極部13a,13bとを備えたPCT特性を有するフレキシブルな面状発熱体。」 (カ)【図8】には,以下の事項が図示されている。 「座部に配設された面状発熱体24。」 上記記載事項(ア)-(エ),及び,図示事項(オ),(カ)によれば,刊行物1には「細長状の抵抗体材料からなる発熱部14と該発熱部14の両側に位置する細長状の電極部13a,13bとを備えたPCT特性を有するフレキシブルな面状発熱体を,座部に配設したシートの電気暖房器具。」(以下,「引用発明1」という。)が記載されている。 (2)刊行物2について 刊行物2には以下の事項が記載されている。 (ア)「(1)座る人の腿および臀部が当たるシート所定領域に、ヒータ回路を形成するフレキシブルプリント配線板を配置したことを特徴とするヒータ内蔵シート。」(第1頁の「2.実用新案登録請求の範囲」) (イ)「[産業上の利用分野]本考案はヒータを内蔵するシートに関する。なお,ここでシートとは、自動車用のシートや座布団は勿論、家庭用の一般的な座布団やクッションあるいは座椅子も含む意味である。」(第1頁第10-14行) (ウ)「図に示されるように、シートクッション10aには、座る人の両腿および臀部が当たる領域に対応させてFPCヒータ20A,20B,20Cを配置し、シートバック10bには、腰部が当たる領域に対応させてFPCヒータ20Dを配置している。なおFPCヒータ20の貼り付け位置は、シートに座る人の好みに応じ、あるいは大人と子供の場合に応じて、その位置は自由に変えることができる。」(第3頁第20行-第4頁第8行) (エ)第3図には,以下の事項が図示されている。 「FPCヒータ20A,20Bを座る人の両腿部に沿うようにシートの前端側から後端側に向けて連続するように左右一対配設するとともに,FPCヒータ20Cを座る人の臀部に沿うように配設したヒータ内蔵シート。」 上記記載事項(ア)-(ウ),及び図示事項(エ)によれば,刊行物2には,「FPCヒータ20A,20Bを座る人の両腿部に沿うようにシートの前端側から後端側に向けて連続するように左右一対配設するとともに,FPCヒータ20Cを座る人の臀部に沿うように配設したヒータ内蔵シート。」(以下,「引用発明2」という。)が記載されている。 3.対比 本件補正発明1と引用発明1とを対比すると,その発明の機能・作用からみて,後者の「抵抗体材料からなる発熱部14」は前者の「電気抵抗体」に相当し,以下同様に,後者の「電極部13a,13b」は「電極」に,後者の「面状発熱体」は前者の「ヒーター」に,後者の「座部」は前者の「座部パッド」に,後者の「シート」は前者の「座席」に,後者の「電気暖房器具」は前者の「暖房装置」にそれぞれ相当する。 してみれば,本件補正発明1と引用発明1とは,「細長状の電気抵抗体と該電気抵抗体の両側に位置する細長状の電極とを備えたPTC特性を有するフレキシブルなヒーターを座部パッドに配設した座席の暖房装置。」である点で一致し,以下の点で相違する。 (相違点)「ヒーター」について,本件補正発明1は「着座者の身体接触部に沿うように座部パッドの前端側から後端側に向けて連続するように左右一対配設し,左右一対の前記ヒーターを、両者の離間距離を後端側に行くほど小さくして内側に位置する前記電極の後端同士を接合させることによりV字状に配設し、後端側を除く前記ヒーターを前記座部パッドの座面に位置させることにより、左右一対の前記ヒーターを前記座面にハ字状に配設し」たのに対し,引用発明1はそうではない点。 4.判断 引用発明2は,ヒータ内蔵シートにおいて,「FPCヒータ20A,20Bを座る人の両腿部に沿うようにシートの前端側から後端側に向けて連続するように左右一対配設し」たものである。本件補正発明1と引用発明2とを対比すると,その発明の機能・作用からみて,後者の「FPCヒータ20A,20B」及び「FPCヒータ20C」は前者の「ヒーター」に相当し,以下同様に,後者の「座る人」は前者の「着座者」に,後者の「両腿部」及び「臀部」は前者の「身体接触部位」に,後者の「シート」は前者の「座部パッド」にそれぞれ相当する。してみれば,引用発明2には,ヒータ内蔵シートにおいて「ヒーターを着座者の身体接触部位(両腿部)に沿うように座部の前端側から後端側に向けて連続するように左右一対配設するとともに,第3のヒーターを着座者の身体接触部位(臀部)に沿うように配設し」たことが示されているといえる。 引用発明1において,引用発明2を適用して,「ヒーターを着座者の身体接触部位(両腿部)に沿うように座部の前端側から後端側に向けて連続するように左右一対配設するとともに,別のヒーターを着座者の身体接触部位(臀部)に沿うように配設」することは,「座席の暖房装置」と「ヒータ内蔵シート」という同一技術分野における従来公知の技術的事項の単なる適用に過ぎないので,当業者にとって何ら困難性はない。 ここで,人体の構造上,臀部と両腿部が連続していること,臀部(或いは股部)を中心として両腿(両脚)がハ字状に広がっていることは公然知られた事実であること,また,機械・電気分野において,部品点数を減少させるため複数の部品を共通化することや配線を簡素化するため複数の配線を共通化することは従来周知の技術(技術課題及びその解決手段)であることをかんがみれば,身体接触部位である両腿部と臀部との両方を加温するために,3つのヒーターを配設するかわりに,ヒータを2つとし,この2つのヒーターをハ字状にそれぞれ腿部から臀部の連続する線に沿って配設することを検討することは,当業者であれば当然考慮すべき事項であり,またその際,臀部に対応する箇所で2つのヒータを離間させるか否か,配線を簡素化するため該電極の後端同士を接合(共通化)してV字状に配設するか否かは,実施する際に必要に応じて決定することのできる単なる設計事項に過ぎない。 以上を総合すれば,引用発明1において,引用発明2及び従来周知の技術を勘案して,「ヒータを,着座者の身体接触部位に沿うように座部の前端側から後端側に向けて連続するように左右一対配設」し,「左右一対の前記ヒーターを、両者の離間距離を後端側に行くほど小さくして内側に位置する前記電極の後端同士を接合させることによりV字状に配設し、後端側を除く前記ヒーターを前記座部パッドの座面に位置させることにより、左右一対の前記ヒーターを前記座面にハ字状に配設」することは,当業者が容易になし得たことである。 したがって,本件補正発明1は,上記刊行物1及び2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に,また,同法第17条の2第3項の規定に違反するものであり,特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成17年5月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成16年12月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「電気抵抗体及び電極を備えたPTC特性を有するフレキシブルなヒーターを、着座者の身体接触部位に沿うように座部パッドの後端側から前端側にかけて連続させることによって細長状に配設したことを特徴とする座席の暖房装置。」 2.引用刊行物及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用した引用例,及びその記載事項は前記「第2 2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は,前記「第2」で検討した本願補正発明から「電気抵抗体」の限定事項である「細長状の」との構成を省き,以下同様に,「電極」の限定事項である「該電気抵抗体の両側に位置する細長状の」との構成を,「ヒータ」の限定事項である「座部パッドの前端側から後端側に向けて連続するように左右一対配設し,左右一対の前記ヒーターを、両者の離間距離を後端側に行くほど小さくして内側に位置する前記電極の後端同士を接合させることによりV字状に配設し、後端側を除く前記ヒーターを前記座部パッドの座面に位置させることにより、左右一対の前記ヒーターを前記座面にハ字状に配設し」という限定を「座部パッドの後端側から前端側にかけて連続させることによって細長状に配設し」として一部省いたものである。 そうすると,本願発明を特定するために必要な事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明1が,前記「第2 4.」に記載したとおり,刊行物1及び2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1及び2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,上記刊行物1及び2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-12-09 |
結審通知日 | 2005-12-14 |
審決日 | 2005-12-27 |
出願番号 | 特願2004-8837(P2004-8837) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A47C)
P 1 8・ 121- Z (A47C) P 1 8・ 561- Z (A47C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小谷 一郎、宮崎 敏長 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
芦原 康裕 増沢 誠一 |
発明の名称 | 座席の暖房装置 |
代理人 | 谷田 龍一 |
代理人 | 三枝 英二 |
代理人 | 谷田 龍一 |
代理人 | 掛樋 悠路 |
代理人 | 谷田 龍一 |
代理人 | 掛樋 悠路 |
代理人 | 三枝 英二 |
代理人 | 三枝 英二 |
代理人 | 掛樋 悠路 |