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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1130768
審判番号 不服2004-10804  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-08-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-24 
確定日 2006-02-08 
事件の表示 特願2000-569894「個々のスウイングに従ったゴルフクラブの形態」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月23日国際公開、WO00/15311、平成14年 8月 6日国内公表、特表2002-524223〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、1999年9月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年9月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1ないし30に係る発明は、平成16年6月23日付けの手続補正書で補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし30に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「打たれるべきゴルフボールを位置決めするためのボール打ち位置と、
ストライクフェース及びソールを有するシャフト及びクラブヘッドを含む所定寸法形状のゴルフクラブと、
ゴルフクラブ及びボール打ち位置のゴルフクラブによるゴルフボールとのインパクト中及びインパクト後のゴルフボールのビデオ画像を得るための、ボール打ち位置に差し向けられた高速ビデオ撮り手段と、
ゴルフボールのサイド観察ビデオ画像を含む、高速ビデオ撮り手段からのビデオ画像を受けてこれを記憶するためのビデオ画像記憶手段と、
ビデオ画像記憶手段によって高速ビデオ撮り手段からのビデオ画像の記憶を開始するための手段と、
ビデオ画像記憶手段によって記憶されたゴルフクラブ及びゴルフボールのビデオ画像を表示するための、ビデオ画像記憶手段に接続された表示器と、
表示器に表示されたゴルフクラブ及びゴルフボールのビデオ画像を分析するための分析手段と、
分析手段を使用してゴルフボールとのインパクトの際のゴルフクラブの分析から、どんなゴルフクラブ寸法形状がゴルファーにクラブによるインパクトに続くゴルフボールの望ましいショット又は望ましいパットを与えるかを決定するための決定手段と、
ゴルファーのスウイングにより、改善されたショット又はパットをもたらすクラブヘッドのストライクフェース角度を確認するための手段と、を含み、確認する手段は、ゴルフクラブとのインパクトに続くゴルフボールのショット又はパットを、ゴルフボールのサイド観察ビデオ画像から分析するための手段を含む、ゴルファーのスウイングを分析するための装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、特開昭63-257583号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
「(産業上の利用分野)
本発明は、顧客に応じた最適なゴルフクラブの製作管理が可能なゴルフクラブ製作管理システムに関する。」(1頁左下欄13〜16行)」、
「第1図は本発明の基本構成図であり、・・・
2は制御手段で、クラブ選定手段3、スイング分析手段4及びスイング診断手段5から構成され、基礎データ入力手段1から入力された基礎データから適数本の試打クラブを選択し、試打クラブ選定データ表示手段6にデータを表示する。
スイング分析手段4には、この試打クラブ選定データ表示手段6で表示された試打クラブを選択して、実際にボールを打ってみて、スイングアナライザ7で、その試打クラブによるヘッドスピード、ボール初速度、ボール飛距離、スイング軌道、ボール打出し角度等が測定され、この試打データが入力される。そして、スイング診断手段5でこの顧客のスイングと予め設定されている模範スイングとを比較し、スイングフォームの分析を行い、このスイング診断手段5の分析によって前記クラブ選定手段3でゴルフクラブの長さ、バランス、ロフト面はもとよりプログレッション等パーフェクトなクラブスペックの選定が行われる。
クラブ選定手段3ではこのスイング分析手段4からのデータに基づき、製作クラブデータ表示手段8に顧客に応じた製作クラブのデータを表示させ、この表示によってインストラクタが顧客の確認を行いながら、最終スペックの決定を行い最適クラブの選定が行われる。
この制御手段2に入力されるデータ、或いは制御手段2で得られるデータは制御手段2の半導体記憶メモリに記録され、顧客に応じた最適クラブの製作・・・のデータとして使用される。」(2頁右上欄4行〜左下欄15行)、
「第2図乃至第8図は、本発明のさらに具体的な実施例を示している。」( 2頁左下欄16〜17行)、
「・・・選定されたゴルフクラブで実際にボールを打って、これをスイングアナライザ7で測定する。・・・
・・・このとき・・・スイングアナライザ7の総計表示を見ながら、顧客とインストラクタが検討を行い、インストラクタは各クラブの初速度データを記録する。そして、3本の試打クラブの硬さと、それぞれの初速度とをキー入力する。」(3頁左上欄7ないし17行)、
「このとき、ビデオ装置13で模範スイングフォームと顧客スイングフォームとの比較が行われ、フォームの分析、指導を行う。
ビデオ装置13は第8図に示すように2台のテレビ14、15を有し、テレビ14ではVTR16に装着された模範スイングフォームのカセット17から、その模範スイングフォームが映し出される。また、テレビ15にはVTR18に記録された顧客のスイングフォームがQ信号発生手段19の出力信号によって、テレビ14に出力される模範スイングフォームと同期してカメラ20から得られる顧客のスイングフォームが映し出される。
この同期して出力させるコンピュータ11はリモートコントロール操作手段21で操作されるようになっている。
即ち、ビデオ装置13の機能は、模範スイングフォームの重要なチェックポイントに予めQ信号が挿入されており・・・、そしてカメラ20,VTR18により、顧客のスイングフォームを録画し、このとき録画駒毎に特殊な駒信号をビデオ信号とする。」(3頁左上欄18行〜右上欄18行)、
「このコンピュータ11による診断結果は診断結果表示手段22に、・・・表示され、この診断結果表示では・・・、初速度ピーク値演算、対応するシャフト硬度を求め、適値としてグラフィック表示が行われる。但し、ピーク値が求められない場合は、傾向を表示し試打クラブデータ2本を追加し、試打クラブの選定から再度行う。
そして、適値シャフトに近い試打クラブをインストラクタが選定し、再度上述の試打を行いコンピュータで計算をして最適硬度を決定する。・・・この決定された最適シャフト硬度をキー入力しクラブデータを選出し、アルゴリズムのシャフト硬度以下を算出し総合データを表示する。この総合データを顧客とインストラクタが、必要に応じて修正を行い、クラブ仕様最終データとして確定することができる。」(3頁右下欄7行〜4頁左上欄6行)、
「第13図はゴルフクラブ製作システムを示しており、ステップaにおいて、体力測定、問診等により顧客に関する基準データを入力する。この基準データからコンピュータで、例えば3本の試打クラブのデータを出力し、これによって試打クラブが選定される(ステップb)。
そして、実際にボールを打って(ステップc)ビデオ装置により模範スイングフォームと顧客スイングフォームとを比較して、フォームの分析指導を行い(ステップd)、コンピュータによりクラブの長さ、バランス、ロフト角はもとよりプログレッション等パーフェクトなクラブスペックの選定を行う(ステップe)。
この診断結果に基づき、再度顧客の確認を得ながら最終スペックの決定を行い(ステップf)、このクラブデータに基づいて顧客のクラブを製作する(ステップg)。」(4頁左上欄14行〜右上欄10行)。
また、試打クラブで実際にボールを打つのであるから、打たれるべきゴルフボールを位置決めするためのボール打ち位置を含むこと、及び、試打クラブが、ロフト角及びソールを有するシャフト及びクラブヘッドを含む所定寸法形状をしていることは明らかであり、また、該試打クラブで実際にゴルフボールを打つ顧客の試打のスイングフォームを撮影するのであるから、VTR20は、試打クラブのビデオ画像を得るための位置に差し向けられていることは明らかである。
さらに、VTR18はカメラ20からのビデオ画像の記憶を開始するための手段を有していることは技術常識である。
これらの記載、第1,2,8,13図等、及び、技術常識から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「打たれるべきゴルフボールを位置決めするためのボール打ち位置と、
ロフト角及びソールを有するシャフト及びクラブヘッドを含む所定寸法形状のゴルフクラブと、
ゴルフクラブのビデオ画像を得るための位置に差し向けられたカメラ20と、
カメラ20からのビデオ画像を受けてこれを記憶するためのVTR18と、
VTR18によってカメラ20からのビデオ画像の記憶を開始するための手段と、
VTR18によって記憶されたゴルフクラブのビデオ画像を表示するための、VTR18に接続されたテレビ15と、
スイング分析手段4と、
スイング分析手段4を使用してゴルフクラブの分析から、どんなゴルフクラブ寸法形状がゴルファーにクラブによるゴルフボールの望ましいショットを与えるかを決定するためのクラブ選定手段5と、
を含むゴルフクラブ製作管理システム。」(以下、「引用例記載の発明」という。)

3.対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「ロフト角」、「カメラ20」、「VTR11」、「テレビ15」、「スイング分析手段5」、「クラブ選定手段5」、「ゴルフクラブ管理システム」は、それぞれ、本願発明の「ストライクフェース」、「ビデオ撮り手段」、「ビデオ画像記憶手段」、「表示器」、「分析手段」、「決定手段」、「ゴルファーのスウイングを分析するための装置」に相当し、
両者は、
「打たれるべきゴルフボールを位置決めするためのボール打ち位置と、
ストライクフェース及びソールを有するシャフト及びクラブヘッドを含む所定寸法形状のゴルフクラブと、
ゴルフクラブのビデオ画像を得るための、位置に差し向けられたビデオ撮り手段と、
ビデオ撮り手段からのビデオ画像を受けてこれを記憶するためのビデオ画像記憶手段と、
ビデオ画像記憶手段によってビデオ撮り手段からのビデオ画像の記憶を開始するための手段と、
ビデオ画像記憶手段によって記憶されたゴルフクラブ及びゴルフボールのビデオ画像を表示するための、ビデオ画像記憶手段に接続された表示器と、
分析手段と、
分析手段を使用してゴルフクラブの分析から、どんなゴルフクラブ寸法形状がゴルファーにクラブによるゴルフボールの望ましいショットを与えるかを決定するための決定手段と、
を含むゴルファーのスウイングを分析するための装置。」の点で一致し、下記の点で相違している。
(相違点1)
ビデオ撮り手段は、本願発明が高速でありボール打ち位置に差し向けられたのに対し、引用例記載の発明がそのような限定のない点。
(相違点2)
ビデオ画像は、本願発明が、ゴルフクラブのみならず、ボール打ち位置のゴルフクラブによるゴルフボールとのインパクト中及びインパクト後のゴルフボールのサイド観察ビデオ画像を含むのに対し、引用例記載の発明がゴルフクラブの画像である点
(相違点3)
分析手段は、本願発明が、表示器に表示されたゴルフクラブ及びゴルフボールのビデオ画像を分析するための分析手段であるのに対し、引用例記載の発明がこのような限定のない点。
(相違点4)
ゴルフクラブ寸法形状を決定するための決定手段は、本願発明が、ゴルフボールとのインパクトの際のゴルフクラブの分析からゴルフクラブ寸法形状を決定するための決定手段であるのに対し、引用例記載の発明がこのような限定のない点。
(相違点5)
確認する手段は、本願発明が、ゴルファーのスウイングにより、改善されたショット又はパットをもたらすクラブヘッドのストライクフェース角度を確認し、ゴルフクラブとのインパクトに続くゴルフボールのショット又はパットを、ゴルフボールのサイド観察ビデオ画像から分析するための手段を含むのに対し、引用例記載の発明がこのような限定のない点。

上記相違点1を検討すると、ゴルフに限らずその他のスポーツに用いられるビデオ撮り手段で高速撮影することはきわめて普通に行われることであり、また、ゴルフにおいては、クラブのボール打ち位置(クラブとゴルフボールとのインパクトの状態)により、クラブの性能が決まるのであるから、ゴルファーのスウイングを分析するための装置にビデオ撮り手段を用いれば、ビデオ撮り手段はボール打ち位置に差し向けられることは当然のことである。したがって、相違点1の本願発明の構成とすることは、設計的事項にすぎない。
上記相違点2を検討すると、ゴルファーのスウイングを分析するための装置において、ゴルフクラブのみならず、ボール打ち位置のゴルフクラブによるゴルフボールとのインパクト中及びインパクト後のゴルフボールのサイド観察ビデオ画像を撮ることは、例えば、特開平3-12179号公報の第3図(a)及び特開平9-215807号公報の図4等に記載されているように周知である。したがって、相違点2の本願発明の構成とすることは、設計的事項にすぎない。
上記相違点3を検討すると、引用例には、上記認定事項とは別に、試打を行った際に、ビデオ装置13で模範スイングフォームと顧客スイングフォームとの比較が行われ、フォームの分析を行う旨の記載(3頁左上欄18〜20行)があり、表示器に表示されたゴルフクラブのビデオ画像を分析するための分析手段が事実上記載されていると認められ、また、ゴルフボールの画像をも撮影することは上記周知公報等に記載されているように周知であるから、引用例記載の発明において、表示器に表示されたゴルフクラブ及びゴルフボールのビデオ画像を分析するための分析手段を設けることは、設計的事項にすぎない。
上記相違点4を検討すると、前述したように、ゴルフにおいては、クラブとゴルフボールとのインパクトの状態により、クラブの性能が決まるのであるから、本願発明のようにゴルフボールとのインパクトの際のゴルフクラブの分析から、ゴルフクラブ寸法形状を決定するための決定手段を設けることは当業者であれば容易になし得ることである。
上記相違点5を検討すると、引用例には、上記認定事項とは別に、「このコンピュータ11による診断結果は診断結果表示手段22に、・・・表示され、この診断結果表示では・・・、初速度ピーク値演算、対応するシャフト硬度を求め、適値としてグラフィック表示が行われる。但し、ピーク値が求められない場合は、傾向を表示し試打クラブデータ2本を追加し、試打クラブの選定から再度行う。そして、適値シャフトに近い試打クラブをインストラクタが選定し、再度上述の試打を行いコンピュータで計算をして最適硬度を決定する。」(3頁右下欄7行〜4頁左上欄17行)と記載されており、ゴルファーのスウイングにより、改善されたショットをもたらすクラブヘッドの最適値を「確認する手段」が記載されていると認められるから、引用例記載の発明において、最適値を「確認する手段」を設けることは当業者であれば容易になし得ることである。また、引用例には、上記認定事項とは別に、「スイング診断手段5の分析によって前記クラブ選定手段3で・・・ロフト面・・・等のパーフェクトなクラブスペックの選定が行われる。」(2頁左下欄2〜5行)と記載されていることから、引用例記載の発明において最適値を「確認する手段」を、設けるに当たり、上記最適値をストライクフェース角度(ロフト角)とすることは、当業者であれば適宜採用しうる設計的事項にすぎない。さらに、ゴルフクラブとのインパクトに続くゴルフボールのショットを、ゴルフボールのサイド観察ビデオ画像から分析するための手段を設けることは、上記相違点2を検討したとおり、設計的事項にすぎないから、最適値を「確認する手段」においても、該分析するための手段を含めることは、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明によってもたらされる全体的効果も、引用例記載の発明及び周知技術から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別なものとはいえない。

4.むすび
以上のように、本願発明は、引用例記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-08 
結審通知日 2005-09-12 
審決日 2005-09-28 
出願番号 特願2000-569894(P2000-569894)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光澤田 真治  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 南澤 弘明
安藤 勝治
発明の名称 個々のスウイングに従ったゴルフクラブの形態  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 中村 稔  
代理人 小川 信夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 今城 俊夫  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 箱田 篤  
代理人 西島 孝喜  
代理人 村社 厚夫  

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