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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41M
管理番号 1130800
異議申立番号 異議2003-72748  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-12 
確定日 2005-11-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3404602号「中間転写記録媒体及び画像形成物」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3404602号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3404602号に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成5年12月2日 特許出願
平成15年3月7日 特許権の設定の登録
平成15年5月12日 特許掲載公報の発行
平成15年11月12日 コニカミノルタテクノロジーセンター株式会 社より特許異議の申立て
平成17年1月25日付け 取消理由の通知
平成17年4月4日 意見書及び訂正請求書の提出
平成17年6月3日付け 取消理由の通知
平成17年8月12日 意見書、訂正請求書の提出、及び平成17年 4月4日付け訂正請求の取下げ

第2 訂正の適否について
1 訂正事項
本件訂正請求は、本件明細書及び図面を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び図面のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、次のとおりである。
(1) 訂正事項a
特許請求の範囲の【請求項1】に「少なくとも画像受容層からなり、」とあるのを、「画像保護層と面像受容層からなり、」と訂正する。
(2) 訂正事項b
特許請求の範囲の【請求項1】に「熱転写記録方式により」とあるのを、「サーマルヘッドを使用した熱転写記録方式により」と訂正する。
(3) 訂正事項c
特許請求の範囲の【請求項1】に「被転写体上に転写して画像形成物を得る」とあるのを、「被転写体上に転写して画像保護層を最表層とする画像形成物を得る」と訂正する。
(4) 訂正事項d
特許請求の範囲の【請求項1】に「中間転写記録媒体の画像受容層を含む樹脂層が」とあるのを、「中間転写記録媒体の画像受容層と画像保護層を含む樹脂層が」と訂正する。
(4) 訂正事項e
特許請求の範囲の【請求項1】に「以下の方法のいずれかにより、制御することにより調整することを特徴とする中間転写記録媒体。・・・4)表面粗さを調整した離型層のコーティング」とあるのを、「該剥離面に設定され、乾燥後膜厚5〜20μmであり、かつ、無機微粒子あるいは金属微粒子が添付された離型層であって、表面粗さを調整した離型層のコーティングにより制御することにより調整することを特徴とする中間転写記録媒体。」と訂正する。
(5) 訂正事項f
特許請求の範囲の【請求項2】及び【請求項3】を削除する。
(6) 訂正事項g
特許請求の範囲の【請求項4】に「JIS8741-1983に規定された方法」とあるのを、「請求項1の中間転写記録媒体を使用して形成された画像形成物であって、JISZ8741-1983に規定された方法」と訂正するとともに、「【請求項4】」を「【請求項2】」と訂正する。
(7) 訂正事項h
段落【0009】に「前記の目的を達成する為に、・・・4)表面粗さを調整した離型層のコーティング」とあるのを、「前記の目的を達成する為に、本発明の中間転写記録媒体は、基材シートの一方の面に、画像保護層と面像受容層からなリ、最表面に画像受容層が形成された樹脂層を剥離可能に設けた中間転写記録媒体の該画像受容層が設けられている面に、サーマルヘッドを使用した熱転写記録方式により熱転写シートから色材を転写して画像を形成した後、画像が形成され画像受容層を含む樹脂層を被転写体上に転写して画像保護層を最表面とする画像形成方法に使用する中間転写記録媒体において、被転写体上に転写された樹脂層の表面の光沢度を、中間転写記録媒体の画像受容層と画像保護層を含む樹脂層が剥離する基材シート側の剥離面の表面粗さを、該剥離面に設定され、乾燥後膜厚5〜20μmであり、かつ、無機微粒子あるいは金属微粒子が添付された離型層であって、表面粗さを調整した離型層のコーティングにより制御することにより調整することを特徴とする調整することを特徴とする。」と訂正する。
(8) 訂正事項i
段落【0010】の記載を、「【作用】中間転写記録媒体の画像受容層を含む樹脂層が剥離する基材シート側の剥離面の表面粗さを、表面粗さを調整した離型層のコーティングにより、被転写体上に転写された樹脂層の表面の光沢度が所望の値となるように制御した本発明の中間転写記録媒体を使用することにより、中間転写記録媒体より画像が形成された画像受容層を含む樹脂層を被転写体上に転写して得られる画像形成物において、被転写体上の画像部分の表面は、中間転写記録媒体の基材シートの剥離面の面質を反映し、被転写体上の画像の未設定部分の表面との間に質感の差異がなくなる。」と訂正する。
(9)訂正事項j
段落【0012】に「従来の熱転写シートに使用されているものと同じ基材シートを用いることができるが、基材シートが所望の表面粗さを有しない場合は、後述するように所望の表面粗さに調整する処理を施して本発明の中間転写記録媒体に使用することが好ましい。好ましい基材シートの具体例は、」とあるのを、「従来の熱転写シートに使用されているものと同じ基材シートを用いることができる。好ましい基材シートの具体例は、」と訂正する。
(10) 訂正事項k
段落【0013】の記載を、「本発明の中間転写記録媒体に使用する基材シートの厚さは、強度、熱伝導性、耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。」と訂正する。
(11) 訂正事項l
段落【0015】ないし【0017】の記載を削除する。
(12) 訂正事項m
段落【0018】に「(4)表面粗さを調整した離型層のコーティング
図2に示すように」とあるのを、「表面粗さを調整した離型層のコーティング 図1に示すように」と訂正する。
(13) 訂正事項n
段落【0021】に「図3に示すように、」とあるのを、「図2に示すように、」と訂正する。
(14) 訂正事項o
段落【0022】の記載を、「基材シート上に形成した所望の表面粗さを有する離型層3上には、画像受容層1を剥離可能に形成する。」 と訂正する。
(15) 訂正事項p
段落【0023】に「あるいは、図2に示すように、」とあるのを、「図1に示すように、」と訂正する。
(16) 訂正事項q
段落【0024】に「あるいは、図3に示すように、」とあるのを、「あるいは、図2に示すように、」と訂正する。
(17) 訂正事項r
段落【0027】に「また、被転写体上に形成される画像と共に転写される画像受容層を保護する目的で、図4に示すように所望の表面粗さを有するように調整した基材シート2と画像受容層1との間に画像保護層5を設けてもよ良い。」とあるのを、「また、被転写体上に形成される画像と共に転写される画像受容層を保護する目的で、基材シート2と画像受容層1との間に画像保護層5を設ける。」と訂正する。
(18) 訂正事項s
段落【0028】に「すなわち、図3に示すように、上述の基材シート2上に離型層3を形成して所望の表面粗さとし基材シートを使用し、該離型層3上に画像保護層5を形成する。すなわち、基材シート2上に所望の表面粗さを有する離型層3、画像保護層5、画像受容層1をこの順に形成して中間転写記録媒体とする。」と訂正する。
(19) 訂正事項t
段落【0029】の「図6に示すように、」とあるのを、「図4に示すように、」と訂正する。
(20) 訂正事項u
段落【0041】に「(実施例2)」とあるのを、「(参割列1)」と訂正する。
(21) 訂正事項v
段落【0044】に「(実施例3)」とあるのを、「(参考例2)」と訂正する。
(22) 訂正事項w
段落【0046】及び【0047】の記載を削除する。
(23) 訂正事項x
【図面の簡単な説明】を、
「【図1】基材シート上に、光沢度を制御した離型層、及び画像受容層をこの順に積層して形成する本発明の中間転写記録媒体を説明するための概念図である。
【図2】基材シート上に、接着層、光沢度を制御した離型層、及び画像受容層をこの順に積層して形成する本発明の中間転写記録媒体を説明するための概念図である。
【図3】基材シート上に、光沢度を制御した離型層、画像保護層、及び画像受容層をこの順に積層して形成する本発明の中間転写記録媒体の一施態様の断面を示す概念図である。
【図4】基材シート上に、接着層、光沢度を制御した離型層、画像保護層及び画像受容層をこの順に積層して形成する本発明の中間転写記録媒体の一施態様の断面を示す概念図である。」
と訂正する。
(24) 訂正事項y
【図1】及び【図4】を削除すると共に、【図2】、【図3】、【図5】及び【図6】を、それぞれ【図1】、【図2】、【図3】及び【図4】とする。

2 新規事項の有無、訂正の目的の適否、及び拡張・変更の存否
(1) 訂正事項a及びdは、願書に添付した明細書の【0028】の「あるいは、図5に示すように、上述の基材シート2上に離型層3を形成して所望の表面粗さとした基材シート使用し、該離型層3上に画像保護層5を形成してもよい。」という記載、【図5】及び実施例1の記載に基づいて、請求項1に記載された「樹脂層」を、「画像保護層」を有するものに限定するものであるから、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(2) 訂正事項bは、願書に添付した明細書の【0039】の「サーマルヘッドとプラテンロールとの間に圧接し、」という記載に基づいて、請求項1に記載された「熱転写記録方式」を、「サーマルヘッドを使用した」ものに限定するものであるから、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3) 訂正事項cは、願書に添付した明細書の【0028】の「画像保護層5は、被転写体への画像受容層転写時に離型層3との界面で離型し、画像受容層1と共に被転写体上に転写されて被転写体の最表面に形成され、」という記載に基づいて、請求項1に記載した「画像形成物」が、画像保護層を最表面とするものに限定するものであるから、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(4) 訂正事項eは、願書に添付した明細書の【請求項3】の「離型層の表面粗さが調整されている」という記載、段落【0018】の「表面粗さを制御する為の微粒子としては、マイクロシリカや炭酸カルシウム等の無機微粒子、金属粒子、あるいは有機フィラー等を使用することができる。」という記載、及び実施例1の記載に基づいて、請求項1に記載した表面粗さを制御する方法を限定するものであるから、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(5) 訂正事項fは、請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(5) 訂正事項gは、請求項の削除に伴い、請求項の項番号を2にくり上げると共に、願書に添付した明細書の【0040】、【0043】及び【0044】の記載に基づいて、請求項4に記載した「画像形成層」を、「請求項1に記載した中間転写記録媒体を使用して形成された」ものに限定するものであるから、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(6) 訂正事項hないしxは、訂正事項aないしeよる特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と、発明の詳細な説明の記載あるいは図面の記載との間に生じた不整合を正すものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、願書に添付された明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3 訂正の適否のむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件発明
前項に記載したとおり、本件訂正請求は認められるから、本件特許に係る発明は、平成17年8月12日付け訂正請求書に添付した全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下のとおりのものと認める(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)。
「【請求項1】基材シートの一方の面に、画像保護層と面像受容層からなり、最表面に画像受容層が形成された樹脂層を剥離可能に設けた中間転写記録媒体の該画像受容層が設けられている面に、サーマルヘッドを使用した熱転写記録方式により熱転写シートから色材を転写して画像を形成した後、画像が形成され画像受容層を含む樹脂層を被転写体上に転写して画像保護層を最表面とする画像形成方法に使用する中間転写記録媒体において、被転写体上に転写された樹脂層の表面の光沢度を、中間転写記録媒体の画像受容層と画像保護層を含む樹脂層が剥離する基材シート側の剥離面の表面粗さを、該剥離面に設定され、乾燥後膜厚5〜20μmであり、かつ、無機微粒子あるいは金属微粒子が添付された離型層であって、表面粗さを調整した離型層のコーティングにより制御することにより調整することを特徴とする中間転写記録媒体。
【請求項2】請求項1の中間転写記録媒体を使用して形成された画像形成物であって、JISZ8741-1983に規定された方法に従って測定する被転写体の光沢度%と、中間転写記録媒体により被転写体上に転写された画像受容層と画像保護層を含む樹脂層表面の光沢度%との差が10ポイント以下であることを特徴とする画像形成物。」

第4 取消理由の概要
平成17年6月3日付けで通知した取消理由の理由の概要は、以下のとおりである。
本件の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件の請求項1ないし4に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。

刊行物1:特開昭62-238791号公報
刊行物2:欧州特許公開529537号
刊行物3:特開平2-3057号公報
刊行物4:特開平4-135793号公報
刊行物5:特開平4-197790号公報
刊行物6:特開昭60-104392号公報
刊行物7:特開昭60-104394号公報

第5 各刊行物に記載された事項
(1) 刊行物1
被転写シートに関し、
(1a)「本発明は、被転写シートおよび該被転写シ-トを用いる物品の装飾方法に関し、更に詳しくは熱移行性染料(昇華性染料)により任意の画像が形成でき、且つ形成された画像を任意の物品に転写することができる被転写シ-トと該画像を利用する装飾方法を提供するものである。」(第1頁右下欄末行〜第2頁左上欄第5行)
(1b)「本発明はシート状基材の一方の面に剥離可能な受像層が設けられていることを特徴とする被転写シートおよびシ-ト状基材の一方の面に剥離可能に設けられた受像層からなる被転写シートの受像層に、染着可能な染料により画像を形成し、画像の形成された受像層を剥離し、剥離した受像層を任意の物品に貼着するか、あるいは受像層を剥離することなく貼着し、貼着後にシート状基材を剥離することを特徴とする装飾方法である。」(第2頁左下欄末行〜右下欄第9行)
(1c)保護層について、「第4〜6図示の例は第3図示の例において,受像層2とシート状基材1との間に更に3保護層5を設けたものである。この保護層5は、画像を形成し剥離した受像層2を、受像層2の表面(画像形成面)を被装飾物品に対抗させて貼着した時に、受像層2の画像の劣化を防止するものであり、例えば、耐摩耗性、耐光性、耐候性、耐薬品性等の如く種々の物性に優れた材料から形成する。このような保護層5を設けることによって被装飾品に貼着後の画像の種々堅牢性を向上させることができる。」(第3頁右下欄第8〜18行)
(1d)「第4図示の例は、このような保護層5を中間層4と離型層3´との間に設けた例であり、第5図の例は受像層2と離型層3´との間に設けた例であり、更に第6図示の例は中間層4が保護層5を兼ねる例である。いずれにしてもこのような保護層5は離型層3´と隣接して設けることによって、画像を形成し且つ剥離した受像層2を反転して被装飾物品に貼着する時に最上層となるように設けることが望ましいものである。」(第3頁右下欄第19行〜第4頁左上欄第7行)
(1e)転写方法について、「従来公知の熱転写シートを前記の本発明の被熱転写シートに重ねて従来公知のいずれかの転写装置、例えば、サーマルプリンター(例えば、東芝製、サーマルプリンターTN-5400)等の装置によって5〜100mJ/mm2の熱エネルギーを付与することによって、所望の画像を本発明の被転写シートの受像層中に形成できる。」(第9頁左下欄第10〜17行)
と記載され、
(1f)実施例には、「得られた受像層の上に、シアンの昇華性染料(分子量が250以上)をバインダー樹脂で担持させた昇華転写フィルムを重ね、顔写真を色分解して得たシアン成分の電気信号に連結したサーマルヘッドで熱エネルギ-を付与し、シアン画像を得た。」(第10頁右下欄第8〜13行)
と記載されている。

(2) 刊行物2(特許権者が参考資料1として提出した翻訳文を採用する。)
(2a)「本発明は、印刷機から得られた印刷カラー画像を示すのに用いられるカラープル一フを得るため、染料熱転写法およびそれに用いられる中間受容体に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、この方法で用いられる中間受容体にクッション層を用いることに関する。本発明の目的のためには、黒白画像も用語「カラー画像」に含まれるものとみなす。」(第2頁第1〜4行)
(2b)「欧州特許公開公報0454083には、原版画像の直接デジタルハーフトーンカラープルーフを製造するための染料熱転写法が記載されている。このプルーフは、印刷機から得られる印刷カラー画像を示すのに用いられる。前記公開公報に記載されている方法は、以下の工程を含んでいる。
a)原版画像の形状および色スケールを示す一組の電気信号を発生させる 工程
b)染料層および赤外線吸収物質を表面に有する支持体を含む染料供与素 子と、ポリマーの染料画像受容層を表面に有する支持体を含む第一中間 染料受容素子とを接触させる工程
c)前記信号を用いてダイオードレーザーによって前記染料供与素子を画 像ごとに加熱することによって、染料画像を前記第一染料受容素子に転 写する工程、および
d)印刷カラー画像と同じ基板を有する第二最終染料画像受容素子に、前 記染料画像を再転写する工程。」(第1頁第18〜29行)
(2c)「染料熱転写カラープルーフについては、染料のなすりつけや結晶化を生じることなく、効率的な染料の取り込みについて中間受容体を最適化することができる。再転写工程において、染料および受容体バインダーを一緒に第二受容体へ転写するか、あるいは第二受容体が染料に対して受容性がある場合には染料のみを転写することができる。好ましくは、染料および受容体バインダーを一緒に最終カラープルーフ受容体に転写して、染料のみを最終受容体に再転写した場合に低下することのある画像の鮮鋭性や全般的品質を維持する。これは、分離可能な誘電性ポリマー支持体層を複合トナー画像と一緒に電子写真素子から最終受容体基板へと転写することについて開示しているNg et al.の電子写真カラープルーフィングシステムに類似している。同様に、特開平1-155,349(1989年6月19日公開)および特開平2-3057(1990年1月8日公開)は、中間支持体上の感光層を露光および現像し、次いで熱融合層と一緒に最終受容体基板へと転写するというカラープルーフイングシステムについて開示している。
最終受容体がプルーフ画像に対する所望のバックグラウンド(素地)を提供するので、中間支持体は観察のための特別なバックグラウンドを提供する必要はまったくない。中間染料受容素子の画像化染料受容層を最終カラープルーフ受容体に転写した後、中間受容体基板は単に廃棄することができる。こうして、経済的目的のため上記に参照した欧州特許公開公報0454083に開示されているように、簡単な透明支持体が用いられてきた。」(第2頁第40〜55行)
(2d)「画像毎に転写染料と中間受容素子の画像受容層バインダーとの両方を最終受容体基板に転写すると、最終受容体の表面の光沢が変化する場合がある。特に、受容層が中間受容体から最終紙素材へと転写される時に、より強い光沢が一般に生じる。このように光沢が強いと、プル-フが最終的な印刷機の作動(の具合)をどのように示すかを正確に判定することが難しくなるので、これは一般には望ましくない。光沢が強まるのは、転写されたポリマー層の表面が最終受容体基板よりも平滑なためである。これは、中間支持体が比較的平滑かつ硬質であり、転写されたポリマー層が一般にはるかに軟質であるために生じると考えられている。中間受容体素子を最終受容体基板に積層すると、最終受容体基板に付着している染料画像受容層面が最終受容体の表面に付着する一方、中間支持体に隣接する表面は中間支持体の表面に適合するよう平滑な状態を保つ。したがって、中間支持体を剥離すると、最終受容体基板の表面が比較的粗くても、転写されたポリマー染料画像受容層の露出面は平滑で、強い光沢を示す。」(第2頁下から第3行〜第3頁第11行)
(2e)「カラープルーフイングシステムにおける光沢調節の問題に対する従来の方法としては、特開平2-3057に記載されている転写後の画像層の粗面化や中間支持体の事前粗面化がある。これらの解決法は、実際の印刷機作動で印刷素材上で得られる印刷画像の粗さおよび光沢を模擬するために、カラープルーフの転写画像層を粗面化するものである。しかし、これらの方法は煩雑であり、対応すべき最終受容体の光沢に合わせて粗面化の程度を調節する必要がある。改めて細面化処理を行う必要がないことが望ましく、また画像化層を最終受容体基板に転写したときの最終受容体基板の光沢に近いカラープルーフが得られることが望ましい。」(第3頁第12〜20行)
と記載されている。

(3) 刊行物3
(3a)「支持体上に、熱可塑性有機重合体より成る熱融着層、及び少なくとも感光性組成物と着色剤とを含有する着色感光層を上記層に積層して有する着色画像形成材料において、前記支持体の熱融着層側表面が粗面化処理されていることを特徴とする着色面画像形成材料。」(特許請求の範囲の請求項1)に関し、
(3b)「本発明は上記問題点に鑑み、画像転写像、あらためて転写画像表面の粗面化処理を行うことなく、印刷物の画像品質に近似した転写画像を得ることのできる着色画像形成材料を提供することを主たる目的とする。」(第2頁左上欄第7〜11行)
(3c)「本発明の着色画像形成材料においては、支持体の熱融着層表面は粗面化処理されているが、このような粗面化処理方法としては種々の方法があり、具体的には例えば下記の方式が挙げられるが、
これらの方式に限定されるものではない。
(1)比較的低温で軟化する熱可塑性フィルムで、特に非結晶性ポリマーフィルムの場合、表面に目的に応じた模様または裂地を彫刻し、さらに一般には表面を薄くクロームメッキした-対の金属ロール間を、加熱、加圧の条件下で通過させることによりフィルム表面の粗面化を行なう。
(2)溶液流涎法によって製造するフィルムの場合、フィルムの成形にあたって、通常は鏡面仕上げしたドラム、まにはエンドレスべルト上に流延するかわりに、梁地、または艶消しした表面をもったドラム、またはエンドレスベルトを使用することにより、直接表面が粗面化されたフィルムを製造する。
(3)ポリエステルフィルム等、軟化点が高く、軟化する温度付近まで加熱すると物性が低下するようなフィルムの場合、フェノール、クレゾール等の濃厚溶接に浸潰し、フィルムの表面を侵食した後、水洗中和する化学的方法、またはカーボランダム、金属の粒子等を圧搾空気とともにフィルム上に強力に吹きつけてキズをつける物理的方法等によりフィルム表面の粗面化を行なう。」(第2頁右上欄第6行〜左下欄第11行)
(3d)「以上詳細に述べたように、本発明の着色画像形成材料により、画像転写機あらためて転写画像表面の粗面化処理を行うことなく、印刷物の画像品質に近似した転写画像を得ることができる。」(第9頁右上欄第2〜5行)
と記載されている。

(4) 刊行物4
(4a)「長尺基材フィルムの一方の面に1色又は複数色の染料層と1個又は複数個の剥離可能な染料受容層とが面順次に設けられている複合熱転写シートにおいて、受容層と基材フィルムとの間に離型層が設けられ、該離型層と受容層との間が剥離可能であることを特徴とする複合熱転写シート」(特許請求の範囲の請求項1)に関し、該離型層について、
(4b)「受容層の形成に先立って、基材フイルムの受容層積層面にのみ離型層を形成する。形成する離型層は、離型層-基材フィルムの接著力が離型層-受容層の接着力よりも大になる様な材料から形成すべきであって、」(第4頁左上欄第5〜9行)
(4c) 「離型層中には金属キレートやマット剤を添加することによって離型層の基材フイルム又は受容層に対する接着力を調整し、且つ艶消し受容層とすることが出来る。」(第4頁右上欄下から第2行〜左下欄第2行)
と記載されている。

(5) 刊行物5
(5a)「長尺基材フィルムの一方の面に1色又は複数色の染料層と1個又は複数個の剥離可能な染料受容層とが面順次に設けられている複合熱転写シートにおいて、上記染料層が離型剤成分を有することを特徴とする複合熱転写シート。」(特許請求の範囲の請求項1)に関し、
(5b)「受容層の形成に先立って、基材フイルムの面に剥離層を形成することが好ましい。かかる剥離層はワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、弗素樹脂、アクリル樹脂、水溶性樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等の剥離剤から形成する。形成方法は後記受容層の形成方法と同様でよく、その厚みは0.0l〜5μm程度で十分である。又、転写後に艶消し受容層が望ましい場合には、剥離層中に各種の粒子を包含させるか或は剥離層側表面をマット処理した基材フイルムを使用することにより表面マット状にすることも出来る勿論、上記の如き基材フイルムが適度な剥離性を有している場合には離型層の形成は不要である。」(第3頁右下欄第12行〜第4頁左上欄第5行)
と記載されている。

(6) 刊行物6
(6a)「支持体上に感熱転写性色材層を有する感熱転写記録媒体において、該色材層と接する側の該支持体表面が、中心線平均あらさ(Ra)の値が0.20〜0.50μmのあらさを有することを特徴とする感熱転写記録媒体。」(特許請求の範囲)に関し、
(6b)技術分野について、「本発明は感熱転写記録媒体に関し、詳しくは、光沢を消した色素転写像を得ることができる感熱転写記録媒体に関する。」(第1頁左下欄第12〜14行)
(6c)発明の目的について、「本発明の目的は、ツヤ消し剤を用いる必要がなくて、光沢のない色素転写像を得ることができる感熱転写記録媒体を提供することである。」(第1頁右下欄末行〜第2頁左上欄第2行)
(6d)「支持体に本発明のあらさをもたせる技術は、電気的処理、物理的処理または化学的処理のいずれであってもよく、これらの処理を2以上併用してもよい。具体的には、(1)支持体を砂目立て処理、プレス加工処理、プラズマ放射処理または薬品処理すること、(2)ポリメチルメタクリレート樹脂の微粒子(直径0.1〜1.0μmのもの)等からなるマット剤を支持体原材料中に含有させておき、これを製膜することによって本発明の支持体を得ること、(3)支持体製膜時に型付によって粗面化すること又はエンボス加工によって粗面化すること、等を挙げることができる。」(第2頁左下欄第11行〜右下欄第2行)
と記載されている。

(7) 刊行物7
(7a)「支持体上に感熱転写性色材層を有する感熱転写記録媒体において、該色材層と支持体との間に剥離性層が設けられており、剥離性層の表面が、光沢度20%以下の色素転写像を得られるあらさを有することを特徴とする感熱転写記録媒体。」(特許請求の範囲)に関し、
(7b)発明の目的について、「本発明の目的は,いわゆる中間層を設けることによって、光沢のない色素転写像を得ることができるようにした感熱転写記録媒体を提供することである。」(第2頁左上欄第11〜14行)
(7c)剥離層について、「本発明の剥離性層は、記録の際にその上の色材層が剥離され普通紙のような記録シート上に転写されるように、即ち、記録時に自らは支持体に接着したままで、色材層のみをその境界から剥離することが可能な剥離性物質によって形成される。」(第2頁左下第7〜11行)
(7d)「剥離性層に本発明のあらさをもたせる技術は、電気的処理、物理的処理または化学的処理のいずれであってもよく、これらの処理を2以上併用してもよい。具体的には、(1)支持体上に塗設された剥離性層を砂目立て処理、プレス加工処理、プラズマ放射処理または薬品処理すること、(2)ポリメチルメタクリレート樹脂の微粒子(直径0.1〜1.0μmのもの)等からなるマット剤を剥離性層用塗布液中に含有させておき、該塗布液を支持体上に塗布すること、(3)本発明のあらさを有する支持体上に剥離性層を薄膜(0.01〜1μm)に塗設して支持体上のあらさが剥離性層の表面あらさとして具現化されるようにすること(このような支持体のあらさを得るには、前記(1)または(2)の技術を支持体に適用してもよいし、支持体製造時に型付けによって粗面化してもよいし、エンボス加工によってもよく、その方法は問わない。)等を挙げることができる。」(第2頁右下欄第1〜18行)
と記載されている。

第6 判断
1 本件発明1について
(1) 刊行物1に記載された発明との対比
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比する。
ア 摘記事項から明らかなように、刊行物1には、シート状基材の一方の面 に剥離可能な受像層が設けられている被転写シートにおいて、受像層とシ ート状基材との間に、剥離層、中間層および保護層の少なくとも1層を設 けることが記載されており、該保護層は受像層の画像の劣化を防止するも のであること(摘記事項(1c)参照)も記載されている。
よって、刊行物1に記載された発明における「シート状基材」、「保護 層」、「受像層」、及び「剥離層」は、それぞれ本件発明1における「基 材シート」、「画像保護層」、「画像受容層」及び「離型層」に相当する ものである。
イ 刊行物1には、該被転写シートの受像層に、染着可能な染料により画像 を形成し、画像の形成された受像層を剥離し、剥離した受像層を任意の物 品に貼着するか、あるいは受像層を剥離することなく貼着し、貼着後にシ ート状基材を剥離すること(摘記事項(1b)参照)が記載されている。
ウ 刊行物1には、サーマルプリンター等の装置によって所望の画像を被転 写シートの受像層中に形成できること(摘記事項(1e)参照)、及び実施例 では、サーマルヘッドで熱エネルギーを付与したこと(摘記事項(1f)参照 )が記載されている。

以上のことから、両者は、
「基材シートの一方の面に、画像保護層と画像受容層からなり、最表面に画像受容層が形成された樹脂層を剥離可能に設けた中間転写記録媒体の該画像受容層が設けられている面に、サーマルヘッドを使用した熱転写記録方式により熱転写シートから色材を転写して画像を形成した後、画像が形成された画像受容層を含む樹脂層を被転写体上に転写して画像保護層を最表面とする画像形成物を得る画像形成方法に使用する中間転写記録媒体において、画像受容層と基材シートの間に離型層を設けた中間転写記録媒体」
である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点:
本件発明1では、
「被転写体上に転写された樹脂層の表面の光沢度を、中間転写記録媒体の画像受容層と画像受容層を含む樹脂層が剥離する基材シート側の剥離面の表面粗さを、該剥離面に設定され、乾燥後膜厚5〜20μmであり、かつ、無機粒子あるいは金属粒子が添加された離型層であって、表面粗さを調整した離型層のコーティングにより制御することにより調整する」
としているのに対して、刊行物1に記載された発明では、そのような言及がされていない点。

(2) 相違点について
ア 相違点に係る構成のうち、「基材シート側の剥離面の表面粗さを制御する」点について
摘記事項(2d)、(2e)から明らかなように、刊行物2には、中間支持体を事前に粗面化することにより、転写されたポリマー層の表面の光沢度が最終受容体基板の光沢度に合うように、中間支持体の粗面化の程度を調節することが記載されており、該刊行物記載の「ポリマー層」及び「中間支持体」は、それぞれ刊行物1記載の発明における「受像層」及び「シート状基材」(本件発明1の「樹脂層」及び「基材シート」)に対応するものである。
また、刊行物3は、上記刊行物2において引用されているものであるが、該刊行物にも、印刷物の画像品質に近似した転写画像を得ることを目的として、支持体の熱融着層側表面を粗面化処理しておくことが記載されており、該刊行物記載の「熱融着層」及び「支持体」は、刊行物1記載の発明における「受像層」及び「シート状基材」(本件発明1の「樹脂層」及び「基材シート」)に対応するものである。

すなわち、刊行物2及び刊行物3に記載されているように、中間転写記録媒体を用いた画像形成方法において、被転写体上に転写された層の表面の光沢度を、被転写体の表面の光沢度と大きく異ならないように、基材シートの粗面化により、被転写体上の樹脂層の調整することは、本件の出願前にすでによく知られているところである。
刊行物1記載の発明の中間転写記録媒体は、サーマルヘッドを使用した熱転写記録方式よるものであるのに対して、刊行物2記載の発明或いは刊行物3記載の発明のものは、サーマルヘッドを使用することまでは明らかでないものの、熱転写方式によるものであるて点では一致しているから、当業者であれば、刊行物1記載の発明において、被転写体上に転写された樹脂層の表面の光沢度が、被転写体の表面の光沢度と大きく異ならないように調整すること、そのために、基材シートを粗面化することによりその粗面化の程度を制御することは、容易に想到しうることである。

イ 相違点に係る構成のうち、「乾燥後膜厚5〜20μmであり、かつ、無機粒子あるいは金属粒子が添加された離型層であって、表面粗さを調整した離型層のコーティングにより制御する」点について
前記「基材シートの表面粗さを制御する」方法について、本件発明では、「基材シート側の剥離面の表面粗さを、該剥離面に設定され、乾燥後膜厚5〜20μmであり、かつ、無機粒子あるいは金属粒子が添加された離型層であって、表面粗さを調整した離型層のコーティング」によるとしているのに対し、上記刊行物2及び刊行物3には、基材シートの表面粗さをそのような剥離層のコーティングにより制御することまでは記載がない。

しかしながら、被転写体上に転写された転写層の表面のつやを消すため、、すなわち、転写層の表面の光沢度を低下させるために、該転写層が剥離する基材シート側の剥離面に、マット剤あるいは粒子を添加した剥離層を設けることは、刊行物4(摘記事項(4c))、刊行物5(摘記事項(5b))及び刊行物7(摘記事項(7d))に記載されているように、本件の出願前に既に周知である。
本件発明1では含有させる粒子を「無機粒子あるいは金属粒子」と特定しているが、マット剤として無機粒子及び金属粒子は周知であるうえ、本件明細書をみても、無機粒子あるいは金属粒子に特定したことにより格別な効果を有しているとも認められない。なお、この点については、本件の出願当初の明細書(段落【0018】)に「表面粗さを制御する為の微粒子としては、マイクロシリカや炭酸カルシウム等の無機微粒子、金属微粒子、あるいは有機フィラー等を使用することができる。」と記載されていることからも明らかである。
また、本件発明1では離型層の厚さを「乾燥後膜厚5〜20μmであり」と特定しているのに対して、上記刊行物4及び5には「0.5〜5μm程度で十分であり」と記載されており、5μmでは重複するものの、5μmより大きくする旨の記載はない。しかしながら、刊行物1に記載された発明において、刊行物4、5、及び7に記載された周知の方法を適用して、基材シートの表面を粗面化するにあたり、その好ましい範囲を規定する程度のことは、当業者が当然になすことにすぎない、また、該特定は、本件の出願当初の明細書(段落【0019】)に「その塗布量は、塗布乾燥後の膜厚が0.1〜20μmになるようにするのが望ましい。」とあったものを、実施例に記載されていた「5μm」を根拠として下限値のみを特定したものであるが、本件の明細書の記載をみても、「5〜20μm」と特定したことにより格別な効果を有しているとも認められない。

ウ まとめ
すなわち、当業者であれば、刊行物1に記載された発明において、刊行物2及び刊行物3に記載された発明に基づいて、被転写体上に転写された透明保護層(樹脂層)の表面の光沢度を、被転写体表面の光沢度と大きく異ならないように、基材シートの表面粗さを制御することは容易に想到しうることであり、その際に、基材シートの表面を粗面化する手段として、刊行物4、5及び7等に記載された粒子を含有する剥離層をコーティングするという周知の粗面化手段を用いることに格別な創意を要するものではない。
そして、刊行物1に記載された発明に周知の技術手段に適用するにあたり、その剥離層の層厚を規定する程度のことは当業者が当然になすことであり、該特定により格別な効果を奏しているとも認められない。
よって、本件発明1は、刊行物1ないし3に記載された発明、及びに刊行物4、5及び7等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の中間転写体を使用して形成された画像形成物であって、「JIS Z8741-1983に規定された方法に従って測定する被転写体の光沢度%と、中間転写記録媒体より被転写体上に転写された少なくとも画像受容層と画像保護層を含む樹脂層表面の光沢度%との差が10ポイント以下である」というものである。
しかしながら、既に記載したとおり、被転写体の光沢度と、中間転写記録媒体より被転写体上に転写された層の表面の光沢度とが、大きく違わないように調整することは本件の出願前に既に周知であるから、その光沢度の違いを、JIS Z8741-1983に規定された方法に従って測定し、その差を数値化する程度のことは当業者が容易になしうることにすぎない。

よって、本件発明2は、刊行物1ないし3に記載された発明、及びに刊行物4、5及び7等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 結び
以上のとおり、本件発明1及び本件発明2は、いずれも刊行物1ないし刊行物3に記載された発明、及び刊行物4、5及び7等に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1及び本件発明2についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
中間転写記録媒体及び画像形成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】基材シートの一方の面に、画像保護層と画像受容層からなり、最表面に画像受容層が形成された樹脂層を剥離可能に設けた中間転写記録媒体の該画像受容層が設けられている面に、サーマルヘッドを使用した熱転写記録方式により熱転写シートから色材を転写して画像を形成した後、画像が形成された画像受容層を含む樹脂層を被転写体上に転写して画像保護層を最表面とする画像形成物を得る画像形成方法に使用する中間転写記録媒体において、被転写体上に転写された樹脂層の表面の光沢度を、中間転写記録媒体の画像受容層と画像保護層を含む樹脂層が剥離する基材シート側の剥離面の表面粗さを、該剥離面に設定され、乾燥後膜厚5〜20μmであり、かつ、無機微粒子あるいは金属微粒子が添加された離型層であって、表面粗さを調整した離型層のコーティングにより制御することにより調整することを特徴とする中間転写記録媒体。
【請求項2】請求項1記載の中間転写記録媒体を使用して形成された画像形成物であって、JlSZ8741-1983に規定された方法に従って測定する被転写体の光沢度%と、中間転写記録媒体より被転写体上に転写された画像受容層と画像保護層を含む樹脂層表面の光沢度%との差が10ポイント以下であることを特徴とする画像形成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は熱転写記録材料に関し、更に詳しくは任意の被転写体上に形成される感熱昇華転写方式によるフルカラー画像及び感熱溶融転写方式による高濃度で鮮明な画像に良好な質感を付与する熱転写記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、基材シートの一方の面に色材層が設けられた熱転写シートと、必要に応じて画像受容層が設けられた被転写体とを、サーマルヘッド等の加熱デバイスとプラテンロールとの間に圧接し、画像情報に応じて加熱デバイスの発熱部分を選択的に発熱させ、熱転写シート上の色材層に含まれる色材を被転写体に移行させることにより、画像を記録する感熱転写方式が種々提案されている。中でも感熱溶融転写方式と感熱昇華転写方式が広く用いられている。
【0003】感熱溶融転写方式は、顔料等の色材を熱溶融性のワックスや樹脂等のバインダに分散させた熱容融インキ層を、プラスチックフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用いて、サーマルヘッド等の加熱デバイスに画像情報に応じたエネルギーを印加し、天然繊維紙やプラスチックシート等の被転写体上に色材をバインダとともに転写する画像形成方法である。感熱溶融転写方式によって形成される画像は、高震度で鮮鋭性に優れており、文字,線画等の2値画像の記録に適している。また、イエロー、マゼンタ、シアン,ブラック等の熱転写シートを用いて、被転写体上に重ねて記録することにより、多色あるいはカラー画像の形成も可能である。
【0004】
また、感熱昇華転写方式は、色材として用いる昇華性染料をバインダ樹脂に溶解あるいは分散させた染料層を、プラスチックフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートと、天然繊維紙やプラスチックシート等の支持体上に画像受容層を設けた被転写体を用いて、サーマルヘッド等の加熱デバイスに画像情報に応じたエネルギーを印加することにより、熱転写シート上の染料層中に含まれる昇華染料を被転写体上の画像受容層中に移行させて、画像を記録する方法である。感熱昇華転写方式は熱転写シートに印加するエネルギー量によって、ドット単位で染料の移行量を制御できる為、濃度変調による階調再現が可能である。また、使用する色材が染料である為、形成される画像は透明性があり、複数の染料層を用いて色を重ねた際の中間色の再現性に優れている。したがって、イエロー、マゼンタ、シアンの3色あるいはこれにブラックを加えた4色の熱転写シートを用いて、被転写体上にこれらの3色あるいは4色を重ねて記録することにより、高画質なフルカラー画像の形成が可能である。
【0005】
これらの熱転写による画像形成方式のうち、特に感熱昇華転写方式においては、被転写体の画像受容面が染料の染着性をもつことが必要であり、画像受容層が設けられていない被転写体に画像を形成することはほとんと不可能であった。画像受容層を予め設定した専用紙以外の被転写体に染料による画像を形成する為に、画像受容層を基材シート上に剥離可能に形成した受容層転写シートから、画像受容層を被転写体に転写し、その上に染料熱転写シートから色材を転写して画像を設ける技術が提案されている(特開昭62-264994号公報参照)。この方法では被転写体上の画像受容層は被転写体の面質の影響を強く受け、被転写体の凹部にピンホールが発生したり、被転写体表面の凹凸によって画像受容層表面が凹凸になり、形成される画像にムラが発生したりする為、良好な画像形成物を得る為には表面が平滑な被転写体を選択する必要があった。
【0006】
そこで、任意の被転写体上に画像を形成可能とし、被転写体の表面凹凸や地合いにより画像品質が影響を受けることを防止する為に、まず、画像受容層が基材シート上に剥離可能に設けられた中間転写記録媒体の画像受容層上に、染料層が基材シート上に形成された熱転写シートより昇華染料を転写して画像を形成し、然る後に中間転写記録媒体を加熱して、画像が形成された画像受容層を被転写体上に転写する方法も提案されている(特開昭62-238791号公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、被転写体上に形成される画像受容層の表面の質感は、被転写体の質感に関わらず、中間転写記録媒体の基材シートから画像受容層が剥離する該基材シート側の剥離界面の面質の影響を受け、光沢度の低い被転写体上に光沢度の高い画像受容層が形成されたり、高光沢を有する被転写本上に被転写体の光沢度よりも低い光沢度画像受容層が形成されたりして、画像を被転写体上に貼り付けたような感じになるという問題点があった。
【0008】
本発明は、前記の問題点である被転写体の質感と、該被転写体上に形成される画像部分の質感とに差異がなく、感熱昇華転写方式によるフルカラー画像及び感熱溶融転写方式による高濃度で鮮明な画像を任意の被転写体上に形成することが可能な中間転写記録媒体を提供することを目的としている。
【0009】
【問題を解決するための手段】
前記の目的を達成する為に、本発明の中間転写記録媒体は、基材シートの一方の面に、画像保護層と画像受容層からなり、最表面に画像受容層が形成された樹脂層を剥離可能に設けた中間転写記録媒体の該画像受容層が設けられている面に、サーマルヘッドを使用した熱転写記録方式により熱転写シートから色材を転写して画像を形成した後、画像が形成された画像受容層を含む樹脂層を被転写体上に転写して画像保護層を最表面とする画像形成物を得る画像形成方法に使用する中間転写記録媒体において、被転写体上に転写された樹脂層の表面の光沢度を、中間転写記録媒体の画像受容層と画像保護層を含む樹脂層が剥離する基材シート側の剥離面の表面粗さを、該剥離面に設定され、乾燥後膜厚5〜20μmであり、かつ、無機微粒子あるいは金属微粒子が添加された離型層であって、表面粗さを調整した離型層のコーティングにより制御することにより調整することを特徴とする。
【0010】
【作用】
中間転写記録媒体の画像受容層を含む樹脂層が剥離する基材シート側の剥離面の表面粗さを、表面粗さを調整した離型層のコーティングにより、被転写体上に転写された樹脂層の表面の光沢度が所望の値となるように制御した本発明の中間転写記録媒体を使用することにより、中間転写記録媒体より画像が形成された画像受容層を含む樹脂層を被転写体上に転写して得られる画像形成物において、被転写体上の画像部分の表面は、中間転写記録媒体の基材シート側の剥離面の面質を反映し、被転写体上の画像の未設定部分の表面との間に質感の差異がなくなる。
【0011】
以下、本発明の中間転写記録媒体について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の中間転写記録媒体の基本構成を示す図面である。本発明の中間転写記録媒体は基材シート2の一方の面に画像受容層1を剥離可能に形成したものである。
【0012】
本発明の中間転写記録媒体の基材シート2は、従来の熱転写シートに使用されているものと同じ基材シートを用いることができる。好ましい基材シートの具体例は、グラシン紙、コンデンサー紙、パラフイン紙等の薄紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレンの誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、アイオノマー等プラスチックの延伸あるいは未延伸フイルムや、これらの材料を積層したもの等が挙げられる。
【0013】
本発明の中間転写記録媒体に使用する基材シートの厚さは、強度、熱伝導性、耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0014】
本発明の中間転写記録媒体に使用する基材シートは、所望の表面粗さに制御する処理を施して使用することが好ましい。基材シートの表面粗さを制御する好ましい方法としては以下のような方法が挙げられる。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
表面粗さを調整した離型層のコーティング
図1に示すように前述の中間転写記録媒体に使用可能な基材シート2の表面に、コーティングによって表面粗さを調整した離型層3を形成して、基材シート表面を所望の表面粗さとする。基材シート上に所望の表面粗さを有する離型層を形成する本発明の中間転写記録媒体に使用可能な基材シートは、上述の中間転写記録媒体に使用可能な基材シートのうちから表面粗さの制限なく選択することができる。表面粗さを調整した該離型層3は少なくともバインダ樹脂からなり、必要に応じて表面粗さ制御の為の微粒子を添加する。離型層3に使用可能なバインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂であるポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースのセルロース誘導体、あるいは熱硬化型樹脂である不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、アミノアルキッド樹脂等が挙げられる。また、基材シート2上に形成される前記離型層3上に、剥離可能に形成される少なくとも画像受容層を含む樹脂層の剥離性能を制御する為に、離型性を有するバインダ樹脂を使用してもよく、シリコーン系樹脂、メラミン樹脂、フッ素系樹脂等が使用でき、更にアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の樹脂分子中にポリシロキサンセグメント、フッ化炭素セグメント等の離型性セグメントがグラフトしたグラフトポリマーを使用してもよく、離型層は上記の樹脂の1種又は2種以上からなる組成物から構成することができる。また、表面粗さを制御する為の微粒子としては、マイクロシリカや炭酸カルシウム等の無機微粒子、金属微粒子、あるいは有機フィラー等を使用することができる。該微粒子の粒径は、離型層を形成する基材シートの表面粗さに加え、微粒子の操作性、及び離型層形成時に版づまりを防止する効果等を鑑みて決定され、通常は0.1〜20μm程度とすることが好ましい。また、離型層中への微粒子の添加量は、粒径と同様に基材シートの表面粗さ、微粒子の操作性等を考慮して決められるが、離型層樹脂に対する重量比で1〜200%の範囲で適宜選択することが好ましい。また、基材シート2上に形成される前記離型層3上に、剥離可能に形成される少なくとも画像受容層を含む樹脂層の離型性能が不足するような場合は、該離型層中に離型性材料を添加してもよい。離型性材料としては、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン系樹脂、メラミン樹脂、フッソ系樹脂、タルク、シリカの微粉末や、界面活性剤や金属セッケン等の滑剤等が使用できる。
【0019】
離型層3は、前述の基材シート2上に、前記の樹脂に微粒子や必要な添加剤を加え、水又は有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させたインキを、バーコーター、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の通常の方法で塗布を行うことが可能である。その塗布量は、塗布乾燥後の膜厚が0.1〜20μmになるようにするのが望ましい。
【0020】
基材シート2上に形成される離型層3は、微粒子の材質、粒径、添加量及び離型層の形成条件によって、表面の凹凸が大きい基材シートに対しては目止めの効果によって表面粗さを小さくすることが可能であり、表面が平滑な基材シートに対しては表面をマット化させて表面粗さを大きくすることが可能である。すなわち、離型層の表面粗さを小さくする場合は、樹脂中に微細な微粒子を添加するかあるいは微粒子を添加せずに、基材シート上に離型層インキを塗布後は乾燥時間を長くして、塗布面を平骨にすることが好ましい。また、離型層の表面粗さを大きくする場合は、樹脂中の微粒子の材質、粒径、添加量を制御することによって、表面粗さを調整することが可能である。
【0021】
離型層を形成するバインダ樹脂は基材シートとの接着性が良好なものを選択することが好ましいが、離型層中のバインダ樹脂と微粒子との混合を良好にするように離型層のバインダ樹脂を選択したり、離型層に良好な剥離性能を付与する為の離型性材料を加えたりすること等によって離型層と基材シートとの接着性が不十分になる場合は、図2に示すように、離型層3と基材シート2との間に接着層4を形成してもよい。前記接着層4に用いる材料としては、基材シート2との接着性が良好である熱可塑性樹脂、天然樹脂、ゴム、ワックス等を用いることができる。例えば、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン等のスチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、エボキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、粘着付与剤としてのロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩素化オレフイン等が挙げられ、前記の材料の1種又は2種以上よりなる組成物から接着層4を構成することができる。接着層4の形成は上記離型層の形成と同様な方法で行うことが可能で、基材シート2上に接着層4を形成後に離型層3を該接着層4上に形成する。接着層4の厚さは離型層3と基材シート2との接着性能を鑑みて決定されるが、通常は0.1μm〜20μmが好ましい。
【0022】
基材シート上に形成した所望の表面粗さを有する離型層3上には、画像受容層1を剥離可能に形成する。
【0023】
図1に示すように、基材シート2上に所望の表面粗さを有する離型層3、画像受容層1をこの順に形成して中間転写記録媒体とする場合は、画像受容層1は、被転写体への画像受容層転写時に離型層3との界面で剥離し、被転写体上に転写され、基材シート側の剥離面である基材シート2上に形成された離型層3の表面粗さによって光沢度が調整される。
【0024】
あるいは、図2に示すように、基材シート2上に接着層4、所望の表面粗さを有する離型層3、画像受容層1をこの順に形成して中間転写記録媒体とする場合は、画像受容層1は、被転写体への画像受容層転写時に離型層3との界面で剥離し、被転写体上に転写され、基材シート側の剥離面である基材シート2上に形成された離型層3の表面粗さによって光沢度が調整される。
【0025】
画像受容層1は、少なくともバインダ樹脂からなり、必要に応じて離型剤等の各種添加剤を添加してもよい。バインダ樹脂は昇華染料が染着し易いものを用いることが好ましく、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体、アイオノマー、セルロース誘導体等の単体又は混合物を用いることができ、これらの中でもビニル系樹脂及びポリエステル系樹脂が特に好ましく用いられる。
【0026】
画像受容層は熱転写シートとの熱融着を防止する為に、前記の樹脂に離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系化合物等を用いることができるが、この中でも特にシリコーンオイルが好ましく用いられる。該離型剤の添加量は、画像受容層を形成するバインダ樹脂100重量部に対し0.2〜30重量部が好ましい。画像受容層は、所望の表面粗さを有するように調整した基材シート上、あるいは基材シート上に形成される所望の表面粗さを有する離型層上に、前述の離型層と同様の方法で塗布を行うことが可能で、その塗布量は、塗布乾燥後の膜厚が0.1〜10μmになるようにするのが望ましい。
【0027】
また、被転写体上に形成される画像と共に転写される画像受容層を保護する目的で、基材シート2と画像受容層1との間に画像保護層5を設ける。この画像保護層5は、被転写体への画像受容層転写時に基材シートとの界面で剥離し、画像受容層1と共に被転写体上に転写さると、被転写体上に転写された樹脂層の最表面に位置し、基材シート側の剥離面である基材シートの表面粗さによって光沢度が調整されると同時に、画像の耐候性能や、指紋や薬品等に対する耐久性能を向上させる。画像保護層5は少なくともバインダ樹脂から構成されるが、基材シート2と適当な剥離性をもち、画像受容層と共に被転写体に転写された後は画像受容層の表面保護層として所望の物性をもつ樹脂組成を選定する。一般的には、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等のビニル重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂等の熱硬化型の樹脂を用いることができる。画像の形成された被転写体に対して、耐摩擦性、耐薬品性、耐汚染性が特に要求される場合は、画像保護層樹脂として電離放射線硬化型樹脂を用いることもできる。また、上記の樹脂に、画像形成物の擦過性を向上させる為の滑剤、汚染防止の為の界面活性剤、耐候性能を向上させる為の紫外線吸収剤、酸化防止剤等を加えてもよい。画像保護層は画像受容層と同様の方法で形成することができ、厚みは0.1〜10μmが好ましい。
【0028】
すなわち、図3に示すように、上述の基材シート2上に離型層3を形成して所望の表面粗さとした基材シートを使用し、該離型層3上に画像保護層5を形成する。すなわち、基材シート2上に所望の表面粗さを有する離型層3、画像保護層5、画像受容層1をこの順に形成して中間転写記録媒体とする。画像保護層5は、被転写体への画像受容層転写時に離型層3との界面で剥離し、画像受容層1と共に被転写体上に転写されて被転写体の最表面に形成され、基材シート側の剥離面である基材シート2上に形成された離型層3の表面粗さによって光沢度が調整される。基材シート上に所望の表面粗さを有する離型層を形成する本発明の中間転写記録媒体に使用可能な基材シートは、上述の中間転写記録媒体に使用可能な基材シートのうちから表面粗さの制限なく選択することができる。また、基材シート上に所望の表面粗さを有する離型層を形成する本発明の中間転写記録媒体に設定可能な画像保護層5は、上述の画像保護層に使用可能な樹脂のうち、離型層3と適当な剥離性を有する樹脂組成が選定され、上述の画像保護層と同様の方法で形成できる。画像保護層1及び離型層3に使用可能な材料、形成方法は上述の画像受容層及び離型層とそれぞれ同様である。
【0029】
更に、離型層を形成するバインダ樹脂は基材シートとの接着性が良好なものを選択することが好ましいが、離型層中のバインダ樹脂と微粒子との混合を良好にするように離型層のバインダ樹脂を選択したり、離型層に良好な剥離性能を付与する為の離型性材料を加えたりすること等によって離型層と基材シートとの接着性が不十分になる場合は、図4に示すように、離型層3と基材シート2との間に上記の接着層4を形成してもよい。すなわち、基材シート2上に接着層4、所望の表面粗さを有する離型層3、画像保護層5、画像受容層1をこの順に形成して中間転写記録媒体としてもよい。この場合、画像保護層5は、被転写体への画像受容層転写時に離型層3との界面で剥離し、画像受容層1と共に被転写体上に転写されて被転写体の最表面に形成され、基材シート側の剥離面である基材シート2上に形成された離型層3の表面粗さによって光沢度が調整される。該接着層4に使用可能な材料、形成方法は上記の接着層と同様である。また、画像受容層1、画像保護層5及び離型層3の材料及び形成方法は、上述の接着層を設定しない中間転写記録媒体に形成可能な画像受容層、画像保護層及び離型層の材料及び形成方法とそれぞれ同様である。
【0030】
また、少なくとも画像受容層からなる樹脂層を中間転写記録媒体より被転写体に転写する際に、サーマルヘッドやラインヒーター等の加熱デバイスとの熱融着を防止し、走行を滑らかに行う目的で、加熱デバイスと接触する基材シートの画像受容層側の他方の面に背面層を設けることが好ましい。この背面層に使用可能な樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、硝化綿等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル-スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性ウレタン又はフッ素変性ウレタン等が挙げられ、背面層は上記の樹脂の1種又は2種以上からなる組成物から構成することができる。背面層の耐熱性をより高める為に上記の樹脂のうち、水酸基等の反応性基を有している樹脂を使用し、架橋剤としてポリイソシアネート等を共用して、架橋樹脂層とすることが好ましい。更に、サーマルヘッド等の加熱デバイスとの摺動性を付与する為に、背面層に固形あるいは液状の離型剤又は滑剤を加えて耐熱滑性をもたせてもよい。離型剤又は滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、高級脂肪族アルコール、オルガノポリシロキサン、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機カルボン酸及びその誘導体、フッソ系樹脂、シリコーン系樹脂、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を用いることができる。背面層への滑剤の好ましい添加量は背面層の全固形分に対し5〜50重量%であり、特に好ましくは10〜30重量%である。
【0031】
本発明に用いる熱転写シートは、公知の染料熱転写シートや熱溶融インキ転写シートが使用できる。染料熱転写シートにおいては、熱により昇華・移行する染料が画像を形成する色材となり、熱溶融インキ転写シートを使用した場合には溶融・移行するインキ自体が色材となる。
【0032】
色材を中間転写記録媒体の画像受容層に転写するときに、熱エネルギーを与える手段は、従来から公知の方法はいずれも使用できる。
【0033】
尚、本発明で最終的に得られる画像は、中間転写記録媒体の画像受容層に形成した画像と鏡像関係となるので、中間転写記録媒体上に形成する画像は予め逆転像として形成しておく必要がある。
【0034】
本発明の中間転写記録媒体を使用する画像形成方法では、熱転写シートより色材を転写して上述の中間転写記録媒体の画像受容層に画像を形成した後、前記画像が形成された少なくとも画像受容層を含む樹脂層を中間転写記録媒体より被転写体上に適当な加熱デバイスを使用して転写して画像形成物を得る。画像受容層を中間転写記録媒体から被転写体に転写する際に使用される加熱デバイスとしては、サーマルヘッド、ラインヒータ、ホットスタンパ、ヒートローラ等が使用できる。
【0035】
本発明の中間転写記録媒体に使用する基材シートは、中間転写記録媒体を製造する前に予め被転写体の光沢度を測定しておき、測定された被転写体の光沢度に基づいて、基材シートを所望の表面粗さに制御する処理を施して使用することが好ましい。本発明においては、JISB0601-1982に規定された方法に従って測定する中心線平均粗さRa(μm)を表面粗さとし、JISZ8741-1983に規定された「鏡面光沢度測定方法」に従って測定する鏡面光沢度Gs(%)を光沢度とし、これらの方法による測定値を基準とする。特に被転写体の光沢度%と、中間転写記録媒体より被転写体上に転写された少なくとも画像受容層を含む樹脂層表面の光沢度%との差を10ポイント以下とすることにより、実用上、被転写体上と画像との質感の差異が目立たなくなり、質感について違和感のない画像形成物を得ることが可能である。
【0036】
本発明で使用できる被転写体は特に限定されず、例えば、天然繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフイルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布等いずれのものでも構わない。被転写体の形状、用途についても、株券、証券、証書、通帳類、乗車券、車馬券、印紙、切手、鑑賞券、入場券、チケット等の金券類、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード、メンバーズカード、グリーティングカード、ハガキ、名刺、運転免許証、ICカード、光カードなどのカード類、カートン、容器等のケース類、バッグ類、帳票類、封筒、タグ、OHPシート、スライドフィルム、しおり、カレンダー、ポスター、パンフレット、メニュー、パスポート、POP用品、コースター、ディスプレイ、ネームプレート、キーボード、化粧品、腕時計、ライター等の装身具、文房具、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、キー、布、衣類、履物、ラジオ、テレビ、電卓、OA機器等の装置類、各種見本帳、アルバム、また、コンピュータグラフィックスの出力、医療画像出力、印刷プルーフ等、種類を問うものではない。
【0037】
【実施例】
次に実施例について説明する。
(実施例1)
(株)東京精密製、表面粗さ形状測定機を使用して測定した表面粗さRa=0.02μmの厚さ12μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製、商品名ルミラー)を基材シートとし、その一方の面に下記組成のインキを使用し、塗布、乾燥後の厚さが1μmになるように背面層を形成した。
[背面層用インキの組成]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製、エスレックBX-1)
8重量部
ポリイソシアネート硬化剤(大日本インキ化学(株)製、バーノックD750)
18重量部
滑剤(第一工業製薬(株)製プライサーフA208S) 5重量部
タルク 1.5重量部
メチルエチルケトン/トルエン(重量比1/1) 130重量部
次に前記基材シートの背面層を形成した面側の他方の面側に、乾燥後の厚さが2μmになるように接着層、乾燥後の厚さが5μmになるように離型層、乾燥後の厚さが3μmになるように画像保護層、乾燥後の厚さが3μmになるように画像受容層をそれぞれ下記組成のインキを使用し、この順に塗布して形成し、中間転写記録媒体を得た。
[接着層用インキの組成]
ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロン200) 20重量部
メチルエチルケトン/トルエン(重量比1/1) 80重量部
[離型層用インキの組成]
シリコーン系樹脂インキ(信越化学工業(株)製、KS770A、固形分30重量%)
50重量部
マイクロシリカ(平均粒径1μm) 7.5重量部
トルエン 50重量部
[画像保護層用インキの組成]
ポリメチルメタクリレート樹脂(三菱レーヨン(株)、BR-85)
20重量部
メチルエチルケトン 80重量部
[画像受容層用インキの組成]
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂(ユニオンカーバイド社製、VYHD)
17.0重量部
アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、KS-343)
0.17重量部
エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、KF-393)
0.17重量部
メチルエチルケトン 82.6重量部
基材シート上に接着層及び離型層を形成した後、該離型層表面について表面粗さを測定したところ、Ra=0.28μmであった。
【0038】
別に、厚さ6μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製、商品名ルミラー)の一方の面に、中間転写記録媒体の場合と同様にして乾燥後の厚さが1μmになるように背面層を設定し、他方の面に下記組成の3色の染料層用インキを乾燥後の厚さが1μmになるようにグラビア印刷機で印刷して、3色の昇華染料熱転写シートを作製した。
[イエロー染料層用インキの組成]
イエロー分散染料(バイエル社製、Macrolex Yellow 6G)
5.5重量部
ポリビニールブチラール樹脂(積水化学工業(株)製、エスレックBX-1)
4.5重量部
メチルエチルケトン/トルエン(重量比1/1) 89.0重量部
[マゼンタ染料層用インキの組成]
染料としてマゼンタ分散染料(三井東圧(株)製、C.I.Disperse Red 60)を使用した他はイエロー染料層用インキの組成と同様のものである。
[シアン染料層用インキの組成]
染料としてシアン分散染料(日本化薬(株)製、Solvent Blue 63)を使用した他はイエロー染料層用インキの組成と同様のものである。
【0039】
前記の中間転写記録媒体の画像受容層面と、昇華染料熱転写シートの染料層面とを重ね合わせ、解像度6ドット/mmのサーマルヘッドとプラテンロールとの間に圧接し、10mJ/mm2から160mJ/mm2まで10mJ/mm2ずつ順次増加させるステップパターンを、送りピッチ6line/mm、印字スピード33.3msec/lineの条件で、昇華染料熱転写シートの背面から加熱し、中間転写記録媒体の画像受容層に染料を転写した。
【0040】
次いで、前記画像が形成された中間転写記録媒体の画像受容層面と、被転写体である、日本電色工業(株)製VGS-1001DPを使用して測定した光沢度Gs(60°)=23%の既製のコート紙とを重ね合わせ、解像度6ドット/mmのサーマルヘッドとプラテンロールとの間に圧接し、印加エネルギー160mJ/mm2、送りピッチ6line/mm、印字スピード33.3msec/lineの条件で、中間転写記録媒体の背面から前記画像領域のみにエネルギーを印加して、画像受容層と被転写体とを接着させた後、中間転写記録媒体の基材シートを剥離すると、被転写体であるコート紙上に昇華染料による画像が形成された樹脂層が転写された画像形成物を得ることができた。被転写体上の画像が形成された樹脂層が転写された領域の光沢度はGs(60°)=25%で、目視で被転写体上の画像領域と非画像領域との光沢度の差異は見られず、画像形成物の外観は画像を貼り付けたような違和感はなかった。
【0041】
(参考例1)
表面粗さRa=0.44μmの厚さ25μmの両面マットPETフィルム(東レ(株)製、商品名ルミマット)を基材シートとし、背面層を実施例1の中間転写記録媒体の場合と同様にして乾燥後の厚さが1μmになるように形成し、該基材シートの他方の面に乾燥後の厚さが1μmになるように画像保護層、乾燥後の厚さが3μmになるように画像受容層を、それぞれ下記組成のインキを使用して、この順に塗布して形成し、中間転写記録媒体を得た。
[画像保護層用インキの組成]
ポリメチルメタクリレート樹脂(三菱レーヨン(株)、BR-85)
20重量部
メチルエチルケトン 80重量部
[画像受容層用インキの組成]
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂(ユニオンカーバイド社製、VYHD)
17.0重量部
アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、KS-343)
0.17重量部
エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、KF-393)
0.17重量部
メチルエチルケトン 82.6重量部
【0042】
次に、厚さ6μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製、商品名:ルミラー)の一方の面に、背面層を中間転写記録媒体の場合と同様にして乾燥後の厚さが1μmになるように形成し、他方の面に下記組成の熱溶融インキを厚さが2μmになるようにホットメルトコーティングし、4色の熱溶融インキ転写シートを作製した。
[イエロー熱溶融インキの組成]
イエロー顔料(ベンチジンイエローG) 10重量部
カルナバワックス 40重量部
マイクロクリスタリンワックス 40重量部
体質顔料(コロイダルシリカ) 10重量部
[マゼンタ熱溶融インキの組成]
イエロー顔料の代りにマゼンタ顔料(ローダミンレーキY)を使用した他はイエロー熱溶融インキと同様のものである。
[シアン熱溶融インキの組成]
イエロー顔料の代りにシアン顔料(フタロシアニンブルー)を使用した他はイエロー熱溶融インキと同様のものである。
[ブラック熱溶融インキの組成]
イエロー顔料の代りにブラック顔料(カーボンブラック)を使用した他はイエロー熱溶融インキと同様のものである。
【0043】
実施例1に記載した方法と同様の手順で中間転写記録媒体の画像受容層上に昇華染料による画像を形成した後、更に、該中間転写記録媒体の画像受容層面と、前記の熱溶融インキ転写シートの色材面とを重ね合わせ、解像度6ドット/mmのサーマルヘッドとプラテンロールとで圧接し、20mJ/mm2、印字スピード10.0msec/line(送りピッチ6line/mm)の条件で、熱転写シートの背面からエネルギーを印加し、中間転写記録媒体の画像受容層に文字テストチャートを印字し、文字とフルカラー画像の両方が形成された中間転写記録媒体を得た。次いで、前記の画像が形成された中間転写記録媒体の画像受容層面と被転写体であるABS樹脂製カードとを重ね合わせ、200℃に加熱したヒートローラを使用して転写スピード10.0mm/secで熱圧着した後、中間転写記録媒体の基材シートを剥離すると、被転写体であるカード上に文字とフルカラー画像の両方を形成することができた。得られた画象形成物の画像部分の光沢度はGs(60°)=20%であり、また、非画像部分の光沢度はGs(60°)=17%で、被転写体上の画像部分と非画像部分との間には目視で光沢度の差異が見られず、両部分の外観には違和感がなかった。
【0044】
(参考例2)
表面粗さRa=0.12μmの厚さ12μmのPETフィルム(東レ(株)製、商品名ルミラー)を基材シートとし、背面層を実施例1の中間転写記録媒体の場合と同様にして乾燥後の厚さが1μmになるように形成し、該基材シートの他方の面に乾燥後の厚さが2μmになるように接着層、乾燥後の厚さが5μmになるように離型層を、それぞれ下記組成のインキを使用してこの順に塗布して形成した。
[接着層用インキの組成]
ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロン200) 20重量部
メチルエチルケトン/トルエン(重量比1/1) 80重量部
[離型層用インキの組成]
シリコーン系樹脂インキ(信越化学工業(株)製、KS770A、固形分30重量%)
50重量部
トルエン 50重量部
然る後に、上記の接着層及び離型層を形成した厚さ12μmのPETフィルムの離型層面と表面粗さRa=0.02μmの厚さ75μmのPETフィルム(東レ(株)製、商品名ルミラー)とを重ね合わせて、200℃に加熱した2本のヒートローラの間をスピード10.0mm/secで通過させてから両者を剥離した。該離型層は厚さ12μmのPETフィルム上に、表面粗さRa=0.03μmで形成されていた。上記のヒートローラを通過させた厚さ12μmのPETフィルムの該離型層面上に、乾燥後の厚さが3μmになるように画像保護層、乾燥後の厚さが3μmになるように画像受容層を、実施例1で使用した画像保護層用インキ、画像受容層用インキをそれぞれ使用し、この順に塗布して形成し、中間転写記録媒体を得た。実施例1に記載した方法と同様の手順で中間転写記録媒体の画像受容層上に昇華染料による画像を形成した後、前記の画像が形成された中間転写記録媒体の画像受容層面と被転写体であるキャストコート紙とを重ね合わせ、200℃に加熱したヒートローラを使用して転写スピード10.0mm/secで熱圧着した後、中間転写記録媒体の基材シートを剥離すると、被転写体であるカード上に文字とフルカラー画像の両方を形成することができた。得られた画像形成物の画像部分の光沢度はGs(60°)=72%であり、また、非画像部分の光沢度はGs(60°)=70%で、被転写体上の画像部分と非画像部分との間には目視で光沢度の差異が見られず、光沢のある写真印画紙のような画像形成物が得られた。
【0045】
(比較例1)
中間転写記録媒体ついて接着層及び離型層を設定しなかった以外は実施例1と同様にして、被転写体である光沢度Gs(60°)=23%のコート紙上に画像を形成した。得られた画像径生物の画像部分の光沢度はGs(60°)=81%で、被転写体上の非画像部分の光沢度との差異が大きく、被転写体上に画像部分を貼り付けたような外観となった。
【0046】
【0047】
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、中間転写記録媒体の基材シートから少なくとも画像受容層が剥離する該基材シート側の剥離界面の光沢度を制御する中間転写記録媒体を使用して、任意の被転写体上に画像受容層を転写する本発明の画像形成方法により、被転写体上の画像部分の光沢度が調整されて、被転写体表面の質感と該被転写体上に形成される画像受容層の表面の質感との差異がなくなり、感熱昇華転写方式によるフルカラー画像及び/又は感熱溶融転写方式による高濃度で鮮明な画像を任意の被転写体上に違和感なく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
基材シート上に、光沢度を制御した離型層、及び画像受容層をこの順に積層して形成する本発明の中間転写記録媒体を説明するための概念図である。
【図2】
基材シート上に、接着層、光沢度を制御した離型層、及び画像受容層をこの順に積層して形成する本発明の中間転写記録媒体を説明するための概念図である。
【図3】
基材シート上に、光沢度を制御した離型層、画面保護層、及び画像受容層をこの順に積層して形成する本発明の中間転写記録媒体の一施態様の断面状態を示す概念図である。
【図4】
基材シート上に、接着層、光沢度を制御した離型層、画像保護層、及び画像受容層をこの順に積層して形成する本発明の中間転写記録媒体の一実施態様の断面状態を示す概念図である。
【符号の説明】
1 画像受容層
2 基材シート
3 離型層
4 接着層
5 画像保護層
6 背面層
【図面】




 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-21 
出願番号 特願平5-329583
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B41M)
最終処分 取消  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 秋月 美紀子
前田 佳与子
登録日 2003-03-07 
登録番号 特許第3404602号(P3404602)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 中間転写記録媒体及び画像形成物  
代理人 青木 健二  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 内田 亘彦  
代理人 菅井 英雄  
代理人 米澤 明  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 内田 亘彦  
代理人 菅井 英雄  
代理人 韮澤 弘  
代理人 米澤 明  
代理人 韮澤 弘  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 青木 健二  
代理人 阿部 龍吉  

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