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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1130807
異議申立番号 異議2002-72227  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-08-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-09-11 
確定日 2005-11-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3265296号「ゲームシステムおよびそれに使用するコンピュータ読みとり可能な記憶媒体」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3265296号の請求項1ないし7に係る特許を取り消す。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3265296号の請求項1〜8に係る発明は、平成12年2月4日の出願であって、平成13年12月28日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立がなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である、平成16年12月27日に訂正請求がなされたものである。


第2.訂正の適否
[1].訂正の内容
<1>.訂正事項A
特許請求の範囲の請求項1の「前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ことを特徴とするゲームシステム。」を、「前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択し、
さらには、前記競技としてゴルフが行われるように前記ゲームシステムが構成され、 前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、 前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、 前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ことを特徴とするゲームシステム。」と訂正し、
全体を以下のように訂正する。
「仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムにおいて、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段と、
前記競技に関するプレイ例歴に関連づけられた情報を履歴データとして作成する履歴データ作成手段と、
前記履歴データを保存する履歴データ保存手段と、
前記競技が前記複数の特定の場面うち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段と、
選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段と、を備え、
前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、
前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択し、
さらには、前記競技としてゴルフが行われるように前記ゲームシステムが構成され、前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した価として与えられる平均スコアに関連付けられて前記条件が設定され、 前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、 前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、
ことを特徴とするゲームシステム。」
(なお、下線部分は訂正箇所を示す。以下同様)

<2>.訂正事項B
特許請求の範囲の請求項5に「前記データ選択手段は、前記履歴データによって特定される情報によって前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを選択することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゲームシステム。」とあるのを、
「仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムにおいて、 前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段と、 前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成する履歴データ作成手段と、 前記履歴データを保存する履歴データ保存手段と、 前記競技が前記複数の特定の場面うち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段と、 選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段と、を備え、 前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、 前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを過去のプレイ履歴に適合した実況データとして選択する、ことを特徴とするゲームシステム。」と訂正する。

<3>.訂正事項C
特許請求の範囲の請求項7の「前記データ選択手段が、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」を、
「前記データ選択手段が、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成され、 さらには、前記競技としてゴルフが行われ、 前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、 前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、かつ前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムがさらに構成されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」と訂正し、全体を以下のように訂正する。
「コンピュータを利用して仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムに適用される記憶媒体であって、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶するとともに、前記コンピュータを、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成して所定の保存手段に保存する履歴データ作成手段、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段、および選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段としてそれぞれ機能させるプログラムを記憶し、前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、
前記データ選択手段が、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成され、 さらには、前記競技としてゴルフが行われ、前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、 前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、かつ前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択する、ように前記プログラムがさらに構成されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」と訂正する。

<4>.訂正事項D
特許請求の範囲の請求項8に「前記データ選択手段は、前記履歴データによって特定される情報によって前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを選択する、ように前記プログラムが構成されていることを特徴とする請求項7に記載の記憶媒体。」とあるのを、
「コンピュータを利用して仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムに適用される記憶媒体であって、 前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶するとともに、 前記コンピュータを、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成して所定の保存手段に保存する履歴データ作成手段、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段、および選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段としてそれぞれ機能させるプログラムを記憶し、 前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、 前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」と訂正する。

<5>.訂正事項E
明細書の段落【0006】を以下のように訂正する。
「本発明のゲームシステムは、仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置(9)の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段(10)を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムであって、前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況情報データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段(15)と、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成する履歴データ作成手段(1)と、前記履歴データを保存する履歴データ保存手段(3,13)と、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段(1)と、選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段(1,6)と、を備え、前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択することを特徴とする。」

<6>.訂正事項F
明細書の段落【0008】を以下のように訂正する。
「また、本発明の記憶媒体は、コンピュータを利用して仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置(9)の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段(10)を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムに適用される記憶媒体(15)であって、前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶するとともに、前記コンピュータを、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成して所定の保存手段(3,13)に保存する履歴データ作成手段、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段、および選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段としてそれぞれ機能させるプログラムを記憶し、前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、前記データ選択手段が、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか2つの実況データを過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成されていることを特徴とする。」

<7>.訂正事項G
明細書の段落【0012】を以下のように訂正する。
「また、本発明のゲームシステムおよび記憶媒体において、前記履歴データは、前記ゲームをプレイするユーザーの前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられてもよい。前記履歴データは、前記ゲーム空間に登場するキャラクタ(20)の前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられてもよい。」

<8>.訂正事項H
明細書の段落【0013】を以下のように訂正する。
「本発明の他のゲームシステムは、仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置(9)の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段(10)を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムであって、前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段(15)と、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成する履歴データ作成手段(1)と、前記履歴データを保存する履歴データ保存手段(3,13)と、前記競技が前記複数の特定の場面うち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段(1)と、選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段(1,16)と、を備え、前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択し、さらには、前記競技としてゴルフが行われるように前記ゲームシステムが構成され、前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ことを特徴とする。また、本発明の他の記憶媒体は、コンピュータを利用して仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置(9)の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段(10)を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムに適用される記憶媒体(15)であって、前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶するとともに、前記コンピュータを、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成して所定の保存手段(3,13)に保存する履歴データ作成手段、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段、および選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段としてそれぞれ機能させるプログラムを記憶し、前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、前記データ選択手段が、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成され、さらには、前記競技としてゴルフが行われ、前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、かつ前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムがさらに構成されていることを特徴とする。なお、本発明において、実況情報とは、ゲーム空間で行われている各種の競技の模様を、ゲーム上で仮想されたアナウンサや解説者がそのゲーム空間にいる観客やその競技をテレビ放送等を通じて視聴する者に対して解説する様子をゲームのユーザーに対して認識させるものをいい、特に実況音声とはその情報を音声で表現したものをいう。情報出力手段は映像によるもの、音声によるもののいずれも含む。」

<9>.訂正事項J
請求項1を請求項5に変更する。

<10>.訂正事項K
請求項5を請求項1に変更する。

<11>.訂正事項L
請求項8を請求項6に変更する。

<12>.訂正事項M
訂正前の請求項6を削除する。


[2].訂正要件充足性の検討
訂正事項A〜Dは、【0014】、【0019】、【0023】、【0024】記載事項に基づいて、訂正前の請求項1、5、8、及び請求項7に発明特定事項を追加するものであるから、当該訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当し、また、訂正事項E〜Lは上記訂正事項A〜Dと整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、これらは、何れも新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。さらに、訂正事項Mは、請求項の削除に該当する。

[3].まとめ
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項、第3項の規定に適合するので当該訂正を認める。

第3.特許異議申立についての判断
[1].本件の請求項1〜7に係る発明
前記「第2.訂正の適否」で示したように前記訂正が認められるものであるから、本件の請求項1〜7に係る発明(以下「本件発明1〜本件発明7」という)は、前記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載されたとおりのものである。


[2].特許法第29条第2項の規定の検討
<1>.当審で通知した取消理由に引用された、甲第4号証、検甲2号証のビデオテープに録画、録音されている、実況中継された台詞、及び打者の打撃成績を集計した集計表を各々記載した検甲第3号証の2、及び検甲第3号証の3、さらに、ゴルフゲームが周知のゲームであることを例示する為の刊行物、実願昭53-156175号(実開昭55-72994号)のマイクロフィルム、ゴルフにおける周知のデータの項目を例示する為の刊行物、実願昭57-7994号(実開昭59-112675号)のマイクロフィルムには、各々以下の事項が記載されている。
(A).甲第4号証(特開平11-144088号公報:以下「刊行物A」という)
(A-1).「【0007】 【発明が解決しようとする課題】従来の技術は、ゲームの進行状況及び操作内容のある条件に対応する音声を出力する方式であったため、条件と出力される音声が1対1の関係を持っていた。そのため、同じ条件下では毎回同じ台詞が出力されるので、単調化を避けられず、遊戯者を飽きさせる可能性があった。さらに、ゲーム中の状況説明を音声による実況で行っているゲームにおいて、実況者が同じままであると、やはり単調化は避けられなかった。
【0008】このような不都合を避けるために、本発明者らは、条件に対応した台詞の集合である箱を用意し、ランダムで台詞を抽出することで決まった状況下においても複数の言い回しを用意することができるとともに、実況者を複数選択することができるようにしたものを提案したが、台詞の下に条件が付いていたため、ソフトの作成に時間がかかるという欠点があった。」(第2頁右欄第18〜34行)
(A-2).【0098】仮に、メインCPU101は、ゲームの展開に伴ってシーン[1]を実行しているものとする。すると、メインCPU101が、シーン[1]を実行しているときに、トリガーによりシーンボックスSCN[1]が強制的に与えられる。このシーンボックスとは、そのシーンに対して使うであろう複数の条件を入れた箱のことでありゲームソフトによりシーン毎に与えられる。
【0099】そして、このとき、メインCPU101は、シーン[1]の内容を処理していて、そのシーン[1]の内容によって条件(例えば、投手が投球するシーンであれば、条件「AAAAA」が「投手の調子が悪いときの投球である」というものであったり、条件「BBBBB」は「相手チームが勝っている」というものであったり、条件「CCCCC」は「ピッチャーが投げました」というようなもの)を取得する(ST40)。
【0100】メインCPUは、取得した条件に基づいて、シーンボックスSCN[1]の内部に記述されている条件「AAAAA」、「BBBBB」、「CCCCC」について判定する(S41)。なお、条件「AAAAA」、「BBBBB」、「CCCCC」には、それぞれテキストボックスAAAAA・BX、BBBBB・BX、CCCCC・BXが対応している。ここで、テキストボックスとは、音声ファイル名が書かれた箱のことであり、音声ファイル名がテキストボックスの名前となる。なお、任意のテキストボックスという意味で、図18に示すように、テキストボックス「NNNNN・BXとした。また、このテキストボックスNNNNN・BXには、台詞番号「nn123」が記載されている。この台詞番号は、例えばアルファベット2文字「nn」の識別コードと、数字3桁の番号[123]の5文字で構成されている。
【0101】次に、このシーン[1]のときには、メインCPU101は、取得した条件が「AAAAA」だけであったので、シーンボックスSCN[1]の条件「AAAAA」、「BBBBB」、「CCCCC」の中から、条件「AAAAA」を選択する。これによりメインCPU101は、テキストボックスAAAAA・BXにジャンプする(S42)。このテキストボックスAAAA・BXには、この実施の形態では、台詞番号「aa001」、「aa002」、「aa003」、「aa004」と、このテキストボックスAAAAA・BXに含まれ台詞番号に対応する台詞とが記録されているものとする。
【0102】そして、メインCPU101は、このテキストボックスAAAAA・BXに対してランダム選択命令を与えると(S43)、台詞番号「aa04]が選択されることになる(S44)。この台詞番号「aa04」を基にこのボックス内の台詞群から「aa04」に相当する台詞をサウンドブロック12に与える。これによりスピーカ5から「aa04」に相当する台詞の音響を発生させる(S45)。
【0103】また、ゲームが展開してゆき、シーン〔2〕になり、トリガーによりシーンボックスSCN〔2〕が与えられた後の処理についても、上記と同様に処理されるものとする。
【0104】〔具体的な処理〕野球ゲームの場合を例にとり、以下、具体例を挙げつつ詳細に説明する。
【0105】図19及び図20は、テキストボックスにおける台詞番号と台詞の中身の一部を示す説明図である。台詞番号と台詞の関係としては、例えば図19に示すようにドラフト会議において「1.会議開始挨拶」、「2.くじ引き関係」等に分かれているが、これら分かれている内容を一つのテキストボックスと考え、これらがテキストボックス名となり、その中に、台詞番号と台詞とが記載されているものとする。」(第10頁左欄第24行〜同頁右欄第39行)
(A-3).してみると、刊行物Aには以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「投手が投球するシーン、ドラフト会議シーンン等、ゲームの展開に伴う複数のシーンにおいて、シーンの内容による条件、例えば、投手が投球するシーンであれば、「投手の調子が悪いときの投球である」との条件AAAAA、「相手チームが勝っている」との条件BBBBB、「ピッチャーが投げました」というような条件CCCCCの内1の条件を取得し、取得した条件が、例えば、条件AAAAAの場合、当該条件に対応するテキストボックスAAAAA・BXに存在する複数の台詞aa001〜aa004の内の1をランダム選択命令にて選択し、選択した台詞をスピーカにて実況する実況付きゲーム」

(B)検甲第3号証の2(ゲームソフト「プロ野球グレイテストナイン’97」のゲーム1の画面の実況中継の台詞を記載した資料:以下「証拠B」という)
(B-1).「(2番 ファースト 清原) 2アウト・ランナー1塁・3塁。うまく運んだ。ホームラン。ライトスタンドに飛び込む。3ランホームラン」(第3頁第4〜6行)
(B-2).「(2番 ファースト 清原) ノーアウト・ランナーありません。引っ張った。サード正面。深々と破った。長打になりそうだ。打ったランナーは2塁へ。打ったランナーは一挙に3塁へ。ホームイン。ランニングホームラン。」(第14頁第7〜10行)
(B-3).「[8打席目] (2番 ファースト 清原) 清原、今日は2ホーマーと一発屋らしい活躍です。引っ張った。左中間を深々と破りました。長打になるか。ホームイン。ランナー3塁を蹴った。1塁ランナー一気に3塁まできました。ホームイン。ランニングホームラン。」(第16頁第1〜5行)
(B-4).「(2番 ファースト 清原) 清原、今日は3本のホームランと長打力を遺憾なく発揮しています。いい当たり。深々と破った。長打になりそうだ。6打席連続ヒット。」(第17頁第5〜7行)

(C).検甲3号証の3(ゲームソフト「プロ野球グレイテストナイン’97」のゲーム1におけるジャイアンツの1番から9番までの各打者の打撃成績を集計した成績表:以下「証拠C」という)
(C-1).1番松井〜9番ヒルマンの1〜9打席迄の打席成績が一覧表に示されている。

(D).実願昭57-7994号公報(実開昭59-112675号のマイクロフィルム)(以下「刊行物D」という)
(D-1).「3.考案の詳細な説明 ゴルフ競技において、従来は単に紙製のゴルフカードに同伴競技者を含めホール毎のスコアーを手で記入し、それらの集計やホール毎の勝負も併せて手で記入していた。又通算成績については別にデーターを記録しそれを計算して進歩の度合を知る方法しかなかった。これらの作業は繁雑であること。正確性に欠けること、或は又、プレーに集中出来にくいこと等の欠点を有していた。」(第1頁第10行〜第2頁第1行)
(D-2).「本考案のゴルフカードは、競技開始前に、あらかじめ次の事項を記憶させておく。
(1)プレイヤー名
(2)プレイヤーハンディキャップ
(3)ホールハンディキャップ
(4)ホール毎の規定打数
この作業が完了すれば、あとは競技を開始し、ホール毎のスコアーをプレイヤー別に打込めば、
(1)ネットスコアー
(2)グロススコアー
(3)任意の期間におけるラウンド数と平均ストローク(トータル、ロング・ミドル・ショートホール別)
(4)ホールマッチの集計等が自動的に演算され、所定の位置に表示されるものであり、競技の勝敗やラウンドの反省、正確性、簡素化がボタン1つの操作で瞬時に計れることを特徴とするものである。」(第2頁第4行〜第3頁第2行)

(E).実願昭53-156175号公報(実開昭55-72994号のマイクロフィルム)(以下「刊行物E」という)
(E-1).「ゴルフ場を模したゲーム盤と、打ったボールの位置を示すマーカーと、各ホールにおける打数をかぞえるカウンターと、複数のゴルフのプレーを実況放送風に録音した多音溝静止型録音シートと該録音シートを再生する静止型録音シート再生装置とからなるゴルフゲーム具」(実用新案登録請求の範囲)

<2>.本件発明1と引用発明との対比判断
(1).本件発明1
本件発明1は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムにおいて、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段と、
前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成する履歴データ作成手段と、
前記履歴データを保存する履歴データ保存手段と、
前記競技が前記複数の特定の場面うち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段と、
選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段と、を備え、
前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、
前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを過去のプレイ履歴に適合した実況データとして選択する、
ことを特徴とするゲームシステム。」
(2).本件発明1と引用発明との発明特定事項の対応関係
(i).引用発明における「スピーカ」は、本件発明1における「情報出力手段」に対応する。
(ii).引用発明における「例えば、投手が投球するシーン、ドラフト会議のシーン」は、本件発明において、例えば、トーナメントが開始される場面等のような「特定の場面」に対応する。
(iii).引用発明において、「テキストボックスAAAAA・BXに複数記載されている台詞番号aa001〜aa004」は、特定の場面において実況される候補としての実況音声データであるから、本件発明における「2つ以上の実況データ」に対応する。
(iv).引用発明において、投手が投球するシーンにおける「条件AAAAA〜条件CCCCC、」、ドラフト会議における「会議開始の挨拶、くじ引き関係」は、特定の場面において実況音声データを選ぶ為の条件であるから、本件発明おいて、同様に実況音声データを選ぶための条件である、「実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件」、「特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件」等に対応する。
(v).引用発明における「ランダム選択命令」と、本件発明における「データ選択手段」とは、特定の場面において実況される実況データを予め用意してある2つ以上の実況データから1の状況データを選択する「実況データ選択・確定手段」において共通する。
(3).本件発明1と引用発明との一致点
引用発明のゲームも、仮想的なゲーム空間で行われる競技を表示装置の画面上に表示させるものであることを勘案すれば、両者は以下の点で一致する。
「仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムにおいて、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段と、

前記競技が前記複数の特定の場面うち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択する実況データ選択・確定手段と、
選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段と、を備え、
前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が設定され、
前記実況データ選択・確定手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを選択する、
ゲームシステム。」
(4).本件発明1と引用発明との相違点
実況データ選択・確定手段に関して、本件発明1は、実況データを選択する為の「条件」が「履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され」ているので、競技に関するプレイ履歴に関連づけられた情報が履歴データとして作成・記憶され、「履歴データに含まれている情報を参照して」当該条件に基づく選択がなされているのに対し、引用発明では、当該条件が「投手の調子が悪いときの投球である」、「相手チームが勝っている」、「ピッチャーが投げました」等の条件であり、当該条件が「履歴データに含まれる情報と関連付け」られているのか否か不明であり、したがって、競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報が履歴データとして作成・記憶されているか否か不明な点。
(5).相違点の検討
実況データ選択・確定の為の条件として「履歴データに含まれる情報と関連付け」ること、すなわち、履歴データ起因条件にて実況データを選択することは、証拠Bに、例えば、プレイ履歴として「ホームラン」があり、その「ホームラン」の履歴を条件として、8打席目の「今日は2ホーマーと一発屋らしい活躍です」、9打席目の「今日は3本のホームランと長打力を遺憾なく発揮しています」と、「ホームラン」に関する履歴データに基づく実況説明が行われているように、実況データを選択する為の条件として、「履歴データに含まれる情報と関連」付けることが示されている。
したがって、
引用発明における実況音声データの選択条件として、履歴データ起因条件を代替適用することは、実際の実況も過去の履歴、例えば対戦成績等に基づく実況を競技場面に応じて適宜実況していることからしても当業者が容易になし得ることであり、しかも当該適用に際しては、プレイの履歴に関するデータの作成・記憶が必要となることは、当業者にとっては当然の技術的事項である。
してみると、当該相違点は格別のものではない。
(6).まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、当業者が刊行物Aに記載された発明、及び証拠B、周知事項に基づいて容易になし得たものである。

<3>.本件発明2と引用発明との対比判断
(1).本件発明2
本件発明2は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された以下のとおりのものである。
「前記情報出力手段として音声出力装置が設けられ、前記複数の実況データとして、前記音声出力装置を通じて前記競技の模様を解説する実況音声を出力する為の複数の実況音声データが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のゲームシステム」
(2).本件発明2と引用発明との一致点・相違点の検討
本件発明2は、本件発明1の情報出力手段を、音声出力装置、及びその為のデータと限定したものであり、当該限定事項以外については前記、本件発明1の対比判断と同様であるるから、相違点として当該限定事項について検討する。
(i).相違点の検討
情報出力手段として、スピーカ、すなわち、音声出力装置としたものが引用発明に示されているから、当該限定事項は実質的に引用発明と相違しないものである。
(3).まとめ
当該限定事項に関する判断及び理由は以上のとおりであるから、本件発明2は、本件発明1と同様の理由により当業者が刊行物A、証拠Bに記載された発明、及び周知事項に基づいて容易になし得たものである。

<4>.本件発明3、及び本件発明4と引用発明との対比判断
(1).本件発明3及び4
(i).本件発明3は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載された以下のとおりのものである。
「前記履歴データが、前記ゲームをプレイするユーザーの前記競技に関するプレイ履歴に関連づけられていることを特徴とする請求項1または2に記載のゲームシステム。」
(ii).本件発明4は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項4に記載された以下のとおりのものである。
「 前記履歴データが、前記ゲーム空間に登場するキャラクタの前記競技に関するプレイ履歴に関連づけられていることを特徴とする請求項1または2に記載のゲームシステム。」
(2).本件発明3、4と引用発明との一致点、相違点
本件発明3、4は、本件発明1または2の履歴データを限定するものであり、当該限定事項以外については前記、本件発明1、または2の対比判断と同様であるるから、相違点として当該限定事項について検討する。
(3).前記相違点の検討
証拠Cに、チームを構成するキャラクタの打席成績、すなわち、キャラクタ毎のプレイ履歴が示されおり、ここでプレイ操作可能なキャラクタが1の場合は、キャラクタ履歴即ユーザー履歴となることは明らかである。
してみると、当該限定事項はユーザーが操作するプレイキャラクタが1か複数か等のゲームの態様に応じて適宜なし得る程度の事項である。
(4).まとめ
限定事項は以上のとおりであり、当該限定事項、及び本件発明1又2における対比判断事項を総合的に判断しても格別のものとは認められないから、本件発明は、当業者が刊行物Aに記載された発明、及び証拠B、証拠C、周知事項に基づいて容易になし得たものである。

<5>.本件発明5と引用発明との対比判断
(1).本件発明5
本件発明5は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項5に記載された以下のとおりのものである。
「仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムにおいて、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段と、
前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成する履歴データ作成手段と、
前記履歴データを保存する履歴データ保存手段と、
前記競技が前記複数の特定の場面うち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段と、
選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段と、を備え、
前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、
前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択し、
さらには、前記競技としてゴルフが行われるように前記ゲームシステムが構成され、前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、
前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、
前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、
ことを特徴とするゲームシステム。」
(2).発明特定事項の対応関係
本件発明5は、本件発明1におけるゲームとして、ゴルフゲームに関する事項を追加したものであるから、ゴルフゲームに関係しない発明特定事項については、本件発明5と引用発明との発明特定事項の対応関係は前記「第3.[2].<2>.(2)」と同様である。
(3).本件発明5と引用発明との一致点
引用発明のゲームも仮想的なゲーム空間で行われる競技を表示装置の画面上に表示させるものであることを勘案すれば、両者は以下の点で一致する。
「仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムにおいて、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段と、
前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択する実況データ選択・確定手段と、
選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段と、を備え、
前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が設定され、
前記実況データ選択・確定手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、実況データを選択する、ゲームシステム。」
(4).本件発明5と引用発明との相違点
実況データ選択・確定手段に関して、本件発明5は、ゲームをゴルフゲームに限定すると共に、実況データを選択・確定する為の「条件」として、「ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連」するゴルフ履歴としたものであり、したがって、過去の平均ストローク数、標準ストローク数等の履歴データ作成手段、記憶・保存する手段を備えているのに対し、引用発明では、当該条件がゴルフの履歴データに基づくものではない点
(5).相違点の検討
ゴルフにおける履歴データとして、任意の期間におけるラウンド数と平均ストローク(トータル、ロング・ミドル・ショートホール別)、ハンディキャップ、ホールハンディキャップ決定に際してに見られる如く、規定打数と平均ストローク数との差等は、刊行物Dに見られるように周知の履歴データである。
また、ゲームにおける実況データ選択・確定条件として、「履歴データに含まれる情報と関連付け」ること、すなわち、履歴データ起因条件にて実況データを選択することは、証拠Bに、プレイ履歴として「ホームラン」があり、その「ホームラン」の履歴を条件として、8打席目の「今日は2ホーマーと一発屋らしい活躍です」、9打席目の「今日は3本のホームランと長打力を遺憾なく発揮しています」と、「ホームラン」に関する履歴データに関連付けられて実況説明が行われることが示されている。
してみると、
引用発明において、ゲームをゴルフと限定することは、ゴルフゲームが刊行物Eに見られる様に周知のゲームであるから単なる設計的事項であり、しかも、当該ゴルフゲームとした引用発明における実況データ選択・確定条件として、証拠Bに示される履歴データ起因条件に代替適用することは、実際の実況も過去の履歴、例えば対戦成績等に基づく実況を競技場面に応じて適宜実況していること、及び当該条件はゲームの種類に関係するものではないことから当業者が容易になし得ることであり、当該履歴データ起因条件に関連付けられる履歴データとして、前記したようにゴルフ履歴データとして周知である、規定打数と平均ストロークとの差データを採用することは当業者が適宜採用しうる設計的事項であり、当該採用したことによる効果も予測の範囲内のことである。
さらに、条件をこのような履歴データ起因条件とする場合には、プレイの履歴に関するデータの作成・記憶が必要となることは、当業者にとっては当然の技術的事項である。
(6).まとめ
以上のとおりであるから、本件発明5は、当業者が刊行物Aに記載された発明、及び証拠B、周知事項に基づいて容易になし得たものである。

<6>.本件発明6と引用発明との対比判断
(1).本件発明6
本件発明6は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項6に記載された以下のとおりのものである。
「 コンピュータを利用して仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムに適用される記憶媒体であって、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶するとともに、
前記コンピュータを、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成して所定の保存手段に保存する履歴データ作成手段、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段、および選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段としてそれぞれ機能させるプログラムを記憶し、
前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、
前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」
(2).本件発明6と引用発明との一致点・相違点の検討
本件発明6と本件発明1とを比較すると、両者ともコンピュータを利用したゲームであり、前者は、後者のゲームシステムを記録媒体の発明に適合させる為に、後者の発明特定事項の一部を「プログラム」としたもので、その実質的な技術思想は本件発明1と同様であるから、引用発明との一致点・相違点も前記「「第3.[2].<2>.(2).本件発明1と引用発明との一致点・相違点の検討」と同様である。
(3).まとめ
本件発明6は、本件発明1と同様の理由により当業者が刊行物Aに記載された発明、及び証拠B、周知事項に基づいて容易になし得たものである。

<7>.本件発明7と引用発明との対比判断
(1).本件発明7
本件発明7は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項7に記載された以下のとおりのものである。
「コンピュータを利用して仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムに適用される記憶媒体であって、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶するとともに、前記コンピュータを、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成して所定の保存手段に保存する履歴データ作成手段、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段、および選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段としてそれぞれ機能させるプログラムを記憶し、前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、
前記データ選択手段が、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成され、
さらには、前記競技としてゴルフが行われ、前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、
前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、かつ前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムがさらに構成されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」
(2).本件発明7と引用発明との一致点・相違点の検討
本件発明7と本件発明5とを比較すると、両者ともコンピュータを利用したものであるから、その実施にソフトウエアを要することは明らかであり、前者は、後者のゲームシステムに関する発明を、実施に要するソフトウエアに関する記録媒体の発明とし、当該記録媒体の発明に適合する記載とする為に、後者の発明特定事項の一部を「プログラム」としたものである。
してみると、両者の実質的技術思想は同様であるから、引用発明との一致点、相違点、相違点の検討も前記「「第3.[2].<5>.(3)、(4)、(5)」と同様である。
(3).まとめ
本件発明7は、本件発明5と同様の理由により当業者が刊行物Aに記載された発明、及び証拠B、周知事項に基づいて容易になし得たものである。


第4.むすび
以上のとおり、本件発明1〜7は、前記刊行物Aに記載された発明、及び証拠B、証拠C、周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ゲームシステムおよびそれに使用するコンピュータ読みとり可能な記憶媒体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムにおいて、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段と、
前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成する履歴データ作成手段と、
前記履歴データを保存する履歴データ保存手段と、
前記競技が前記複数の特定の場面うち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段と、
選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段と、を備え、
前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、
前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを過去のプレイ履歴に適合した実況データとして選択する、
ことを特徴とするゲームシステム。
【請求項2】前記情報出力手段として音声出力装置が設けられ、前記複数の実況データとして、前記音声出力装置を通じて前記競技の模様を解説する実況音声を出力するための複数の実況音声データが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のゲームシステム。
【請求項3】前記履歴データが、前記ゲームをプレイするユーザーの前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のゲームシステム。
【請求項4】前記履歴データが、前記ゲーム空間に登場するキャラクタの前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のゲームシステム。
【請求項5】仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムにおいて、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段と、
前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成する履歴データ作成手段と、
前記履歴データを保存する履歴データ保存手段と、
前記競技が前記複数の特定の場面うち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段と、
選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段と、を備え、
前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、
前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択し、
さらには、前記競技としてゴルフが行われるように前記ゲームシステムが構成され、
前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、
前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、
前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、
ことを特徴とするゲームシステム。
【請求項6】コンピュータを利用して仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムに適用される記憶媒体であって、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶するとともに、
前記コンピュータを、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成して所定の保存手段に保存する履歴データ作成手段、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段、および選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段としてそれぞれ機能させるプログラムを記憶し、
前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、
前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項7】コンピュータを利用して仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムに適用される記憶媒体であって、
前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶するとともに、
前記コンピュータを、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成して所定の保存手段に保存する履歴データ作成手段、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段、および選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段としてそれぞれ機能させるプログラムを記憶し、
前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、
前記データ選択手段が、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成され、
さらには、前記競技としてゴルフが行われ、
前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、
前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、かつ前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムがさらに構成されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゲーム画面に音声等による実況情報を重ねてゲームの世界を演出するゲームシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゲームには種々のジャンルが存在するが、例えばスポーツ等の競技を題材としたゲームでは、ゲーム画面に対してアナウンサによる実況音声を重ねることによりゲームの臨場感を高める演出が従来から行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のゲームでは、競技中の各場面に1:1で対応付けて予め実況音声データを作成し、場面に応じて実況音声データを選んで音声として再生しているだけである。そのため、同一の場面では常に同一の実況音声が出力されることとなり、ゲームのユーザー(プレイヤー)が同じ場面を複数回経験しても実況音声は変わらない。一つの場面に対して複数の実況音声データを用意し、乱数等を利用して一つの実況音声データを選び出すことも行われているが、その選び方はあくまでランダムであって、ゲームの場面に応じた適切な実況音声を選び出しているとは言い難く、実況音声による演出効果が十分に活かされていない。
【0004】
そこで、本発明はゲームの場面に応じた最適な実況音声等の情報をゲームのユーザー提供することを可能とし、それにより実況音声等による演出効果を最大限に発揮させることが可能なゲームシステム、およびそれに使用する記憶媒体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0006】
本発明のゲームシステムは、仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置(9)の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段(10)を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムであって、前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況情報データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段(15)と、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成する履歴データ作成手段(1)と、前記履歴データを保存する履歴データ保存手段(3,13)と、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段(1)と、選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段(1,6)と、を備え、前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、プレイ履歴を参照して実況データを選択するので、例えばゲームのユーザーが過去に顕著な成績を収めた場面を再び迎えたときにその過去の成績を考慮した実況情報をユーザーに提供することにより、実況情報の現実感を高め、それによりゲームの興趣を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の記憶媒体は、コンピュータを利用して仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置(9)の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段(10)を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムに適用される記憶媒体(15)であって、前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶するとともに、前記コンピュータを、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成して所定の保存手段(3,13)に保存する履歴データ作成手段、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段、および選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段としてそれぞれ機能させるプログラムを記憶し、前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、前記データ選択手段が、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、前記条件が満たされる2以上の実況データを前記複数の実況データから選択し、該選択された2以上の実況データからいずれか1つの実況データを過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、記憶媒体に記録されたプログラムをコンピュータで読み取って実行することにより、当該コンピュータを上記のゲームシステムとして機能させることができる。
【0010】
本発明のゲームシステムおよび記憶媒体においては、前記情報出力手段として音声出力装置が設けられ、前記複数の実況データとして、前記音声出力装置を通じて前記競技の模様を解説する実況音声を出力するための複数の実況音声データが設けられてもよい。
【0011】
この場合には、プレイ履歴を参照して実況音声データを選択するので、例えばゲームのユーザーが過去に顕著な成績を収めた場面を再び迎えたときにその過去の成績を考慮した実況音声を出力させることにより、実況音声の現実感を高め、それによりゲームの興趣を向上させることができる。特に実況情報を音声としてユーザーに提供するので、ゲーム画面とその実況音声とによって現実の世界の競技をゲーム空間に忠実に再現してゲームの興趣を顕著に高めることができる。
【0012】
また、本発明のゲームシステムおよび記憶媒体において、前記履歴データは、前記ゲームをプレイするユーザーの前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられてもよい。前記履歴データは、前記ゲーム空間に登場するキャラクタ(20)の前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられてもよい。
【0013】
本発明の他のゲームシステムは、仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置(9)の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段(10)を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムであって、前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶する実況データ記憶手段(15)と、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成する履歴データ作成手段(1)と、前記履歴データを保存する履歴データ保存手段(3,13)と、前記競技が前記複数の特定の場面うち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段(1)と、選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段(1,6)と、を備え、前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、前記データ選択手段は、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択し、さらには、前記競技としてゴルフが行われるように前記ゲームシステムが構成され、前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ことを特徴とする。また、本発明の他の記憶媒体は、コンピュータを利用して仮想的なゲーム空間で所定の競技が行われる様子を表現した画像を表示装置(9)の画面上に表示させるとともに、前記競技の模様を解説する実況情報を所定の情報出力手段(10)を通じてゲームのユーザーに提供するゲームシステムに適用される記憶媒体(15)であって、前記競技の複数の特定の場面のそれぞれで使用する実況データの候補として、各場面に対して予め作成された複数の実況データを記憶するとともに、前記コンピュータを、前記競技に関するプレイ履歴に関連付けられた情報を履歴データとして作成して所定の保存手段(3,13)に保存する履歴データ作成手段、前記競技が前記複数の特定の場面のうち、いずれかの特定の場面を迎えたとき、前記履歴データを参照して、その特定の場面に対して用意された前記複数の実況データからその場面で使用すべき実況データを選択するデータ選択手段、および選択された実況データに対応した実況情報を前記情報出力手段を通じて前記ユーザーに提供させる情報出力制御手段としてそれぞれ機能させるプログラムを記憶し、前記複数の実況データのそれぞれには、各実況データが前記データ選択手段にて選択されるための条件が前記履歴データに含まれる情報と関連付けて設定され、前記データ選択手段が、前記特定の場面で使用すべき複数の実況データに関して設定されている条件に対応した、前記履歴データに含まれている情報を参照して、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムが構成され、さらには、前記競技としてゴルフが行われ、前記複数の実況データのそれぞれには、前記ゴルフが行われるコースの各ホールの過去の平均ストローク数からホール毎の標準ストローク数を減算した値として与えられる平均スコアに関連付けて前記条件が設定され、前記履歴データ作成手段は、前記各ホールの過去の平均ストローク数が前記情報として含まれるように前記履歴データを作成し、かつ前記データ選択手段は、各ホールのプレイにおいて、前記履歴データに前記情報として含まれる過去の平均ストローク数と前記標準ストローク数との差に基づいて前記条件を満たす実況データを選択することにより、過去のプレイ履歴に適合した実況データを選択する、ように前記プログラムがさらに構成されていることを特徴とする。なお、本発明において、実況情報とは、ゲーム空間で行われている各種の競技の模様を、ゲーム上で仮想されたアナウンサや解説者がそのゲーム空間にいる観客やその競技をテレビ放送等を通じて視聴する者に対して解説する様子をゲームのユーザーに対して認識させるものをいい、特に実況音声とはその情報を音声で表現したものをいう。情報出力手段は映像によるもの、音声によるもののいずれも含む。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明を家庭用のゴルフゲームシステムとして構成した一実施形態に係る制御系のブロック図である。家庭用ゲームシステムは、記憶媒体としてのCD-ROM15に記録されたゲーム用プログラムに従って所定のゲームを実行するものである。
【0015】
このゲームシステムは、マイクロプロセッサを主体として構成されたCPU1と、そのCPU1に対する主記憶装置としてのROM2およびRAM3と、画像処理および音声処理用のグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)4およびサウンドプロセッシングユニット(SPU)6と、それらのユニットに対するバッファ5,7と、CD-ROM読取装置8とを有している。ROM2には、ゲーム機の全体の動作制御に必要なプログラムとしてのオペレーティングシステムが書き込まれる。RAM3には記憶媒体としてのCD-ROM15から読み取ったゲーム用のプログラムやデータが必要に応じて書き込まれる。GPU4はCPU1から画像データを受け取ってフレームバッファ5上にゲーム画面を描画するとともに、その描画された画像のデータを所定のビデオ再生信号に変換して所定のタイミングでモニタ9に出力する。SPU6は、CD-ROM15から読み出されてサウンドバッファ7に記録された音声、楽音等のデータや音源データ等を再生してスピーカ10から出力させる。CD-ROM読取装置8は、CPU1からの指示に従ってCD-ROM15上に記録されたプログラムやデータを読み取り、その読み取った内容に対応した信号を出力する。モニタ9には家庭用のテレビ受像機が、スピーカ10にはそのテレビ受像機の内蔵スピーカが一般に使用される。
【0016】
さらに、CPU1にはバス14を介して通信制御デバイス11が接続され、そのデバイス11にはコントローラ12および補助記憶装置13がそれぞれ着脱自在に接続される。コントローラ12は入力装置として機能するものであり、そこにはゲームのユーザー(プレイヤー)による操作を受け付ける操作部材が設けられる。通信制御デバイス11は一定周期(例えば1/60秒)でコントローラ12の操作部材の操作状態を走査し、その走査結果に対応した信号をCPU1に出力する。CPU1はその信号に基づいてコントローラ12の操作状態を判別する。コントローラ12および補助記憶装置13は通信制御デバイス11に対して複数並列に接続可能である。
【0017】
以上の構成において、モニタ9、スピーカ10、コントローラ12、CD-ROM15および補助記憶装置13を除く他の構成要素は所定のハウジング内に一体的に収容されて、コンピュータとしてのゲーム機本体16を構成する。
【0018】
CD-ROM15には、所定のゴルフゲームを実行するためのプログラムやデータが記録されている。図2はそのゴルフゲームで使用される画面の一例を示している。このゴルフゲームは、ユーザーがコントローラ12を操作してキャラクタとしてのゴルファー20を操作することにより、画面上に表示されたコース21を現実のゴルフと同様にしてゴルファー20が攻略する手順で進められる。ゴルファー20およびコース21は複数用意されており、ゲームのユーザーはいずれかのゴルファー20を選んで所定のコースを利用したトーナメントに出場し、そこで他のゴルファーとスコアを競うことができる。CPU1はユーザーがトーナメントで残した成績をプレイ履歴データとして作成してRAM3に記憶させる。RAM3上のプレイ履歴データはコントローラ12に対する所定の保存操作により補助記憶装置13に保存される。
【0019】
図3はプレイ履歴データの一例を示している。プレイ履歴データはゴルファー21毎に作成される(図3(a))。各ゴルファーのプレイ履歴データはさらにコース毎に分けて作成され(図3(b))、各コースのデータにはそのコースのラウンド回数および1番ホールから18番ホールまでの成績に関する情報が含まれる(図3(c))。そして、各ホールの成績には、そのホールの平均ストローク数および最小ストロークに関する情報が含まれる(図3(d))。
【0020】
一方、CD-ROM15には、各コースやゴルファー20の画像をモニタ9に表示するための画像データや、トーナメント中にスピーカ10から出力させる音声のデータが記録される。
【0021】
音声データはゲームの各場面に対してそれぞれ用意されており、その一例を図4に示す。図4(a)はトーナメントが開始される場面で使用される実況音声データの一例であり、図4(b)はトーナメント中にゴルファー20が所定のコースへ移動した場面で使用される実況音声データの一例であり、図4(c)はゴルファー20がティーアップする場面で使用される実況音声データの一例である。いずれの場面に対しても複数の実況音声データが用意されており、各データは固有のファイル名を付して管理されている。各ファイルには、それが選択されるための条件が設けられており、それらの条件はファイル名と関連付けてCD-ROM15に記録される。
【0022】
図4(a)の実況音声データ群に関しては、トーナメントが開催されるコースに関するゴルファー20のラウンド回数が選択条件として設定されている。ラウンド回数は、上述したプレイ履歴データのラウンド回数に関する情報(図3(c))を参照して特定することができる。
【0023】
図4(b)の実況音声データ群に関しては、これからプレイするホールにおけるゴルファー20の平均スコアが選択条件として設定されている。平均スコアは、上述したプレイ履歴データの平均ストローク(図3(d))と、各コース毎に予め設定されている標準ストローク数との差から特定できる。標準ストローク数は、例えばコースのその他の情報(例えばコース名)とともにコース毎に固有のデータとして作成してCD-ROM15に記録される。但し、プレイ履歴データにおいて、平均ストロークに代えて平均スコア(平均ストロークから標準ストローク数を減算した値)を記憶すればプレイ履歴データのみに基づいて図4(b)の条件を満たす実況音声データを抽出することができる。
【0024】
図4(c)の実況音声データ群に関しては、これからホールにおけるゴルファー20の最高スコアが選択条件として設定されている。最高スコアは、上述したプレイ履歴データの最小ストローク(図3(d))または、最小ストロークと各コース毎の標準ストローク数との差から特定できる。周知のように、最小ストロークが1であればホールインワンであり、最小ストロークが標準ストロークよりも3打少なければアルバトロス、2打少なければイーグルである。但し、プレイ履歴データにホールインワン、アルバトロス、イーグルの経験の有無を判別するためのフラグを設定し、ゴルファー20のプレイ履歴に基づいてそのフラグの状態を変更すればプレイ履歴データのみに基づいて図4(c)の条件を満たす実況音声データを抽出することができる。
【0025】
図4の各データ群を使用すべき特定の場面までゲームが進行すると、CPU1は図5の処理を実行していずれか一つの実況音声データを選択する。この処理において、CPU1は、まずプレイ履歴データを補助記憶装置13からRAM3に読み出し(ステップS1、但しRAM3に既に読み出されているときは省略)、その読み出したプレイ履歴データのうちその特定の場面で使用すべき実況音声データ群に関して設定されている条件に対応した情報を参照して、ゴルファー20の過去のプレイ履歴に適合した実況音声データを抽出する(ステップS2)。
【0026】
図4のデータでは、条件を満たす実況音声データとして2以上の実況音声データが抽出されるので、それらの中から乱数を利用していずれか一つの実況音声データを選択する(ステップS3)。そして、選択された実況音声データをCD-ROM15から読み出してSPU6に渡すことにより、その実況音声データに対応した実況音声をスピーカ10から出力させる。
【0027】
以上の処理によれば、例えばトーナメント開始時の特定の場面において、プレイ履歴データのうちそのトーナメントが開催されるコースに関するゴルファー20のラウンド回数が参照され、例えばラウンド回数が0であればData001およびData002がステップS2で抽出される。そして、ステップS3で何れか一方のデータが選択され、ステップS4でそのデータに対応する音声として、例えばData001に対して「プレイヤーが、このコースをラウンドをするのは初めてのようです。」という実況音声がスピーカ10から出力される。
【0028】
このように、本実施形態ではゴルファー20のプレイ履歴を参照して実況音声が選択されるので、乱数のみを使用して実況音声を選択する場合と比較してゲームの場面に応じた最適な実況音声を出力することができる。これにより、実況音声によるゲームの演出効果を高め、ゲームの興趣を高めることができる。
【0029】
なお、以上の実施形態では音声を利用して実況情報をゲームのユーザーに提供したが、例えばモニタ9の画面を通じて実況情報を提供してもよい。プレイ履歴データはゲーム中に登場するキャラクタ毎に作成されてもよいし、ゲームのユーザー毎に作成されてもよい。
【0030】
本発明は、ゴルフゲームに限らず、各種のスポーツ、対戦、記録への挑戦等、実況情報の提供による演出効果が期待できる各種の競技要素を含んだゲームに広く適用可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によればプレイ履歴に関する情報を履歴データとして作成して保存し、ゲームが特定の場面を迎えたとき、その履歴データを参照して最適な実況データを選ぶようにしたので、ゲームの場面に応じた最適な実況音声等の情報をゲームのユーザーに提供することができ、それにより実況音声等による演出効果を最大限に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明が適用されたゴルフゲームシステムの制御系のブロック図。
【図2】
図1のゴルフゲームシステムにおけるショット時の表示画像例を示す図。
【図3】
図1のゴルフゲームシステムで作成されるプレイ履歴データの一例を示す図。
【図4】
図3のプレイ履歴データに基づいて選択される実況音声データの例を示す図。
【図5】
図4のプレイ履歴データから場面に応じた実況音声データを選択するために実行される実況音声選択処理の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
1 CPU
2 ROM
3 RAM
6 SPU
9 モニタ
10 スピーカ
11 通信制御デバイス
12 コントローラ
13 補助記憶装置
20 ゴルファー(キャラクタ)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-27 
出願番号 特願2000-32755(P2000-32755)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A63F)
最終処分 取消  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 渡戸 正義
塩崎 進
登録日 2001-12-28 
登録番号 特許第3265296号(P3265296)
権利者 コナミ株式会社
発明の名称 ゲームシステムおよびそれに使用するコンピュータ読みとり可能な記憶媒体  
代理人 山本 晃司  
代理人 山本 晃司  

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