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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03G
審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1130858
異議申立番号 異議2003-70931  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-10-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-11 
確定日 2006-02-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第3346416号「電子写真感光体用顔料分散液の製造方法および電子写真感光体の製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについてされた平成17年3月8日付取消決定に対し、知財高等裁判所において、上記決定を取り消す旨の判決(平成17年(行ケ)第10419号、平成17年10月27日判決言渡)があったので、更に審理の上、次のとおり決定する。 
結論 特許第3346416号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願:平成13年3月6日(2001-62328号)
平成4年7月23日に出願された特許出願(特願平4-197072 号)の一部を分割した新たな特許出願
設定登録:平成14年9月6日(特許第3346416号)
公報発行:平成14年11月18日
酒井征男より異議申立(全請求項):平成15年4月11日
坂本陽より異議申立(全請求項):平成15年5月14日
取消理由通知:平成15年10月21日
意見書、訂正請求書の提出:平成15年12月26日
異議申立人に対して審尋:平成16年8月19日
酒井征男より回答書:平成16年10月25日
坂本陽より回答書:平成16年10月26日
取消決定:平成17年3月8日

知財高等裁判所への出訴:平成17年4月15日
(平成17年(行ケ)10419号)
訂正の審判請求:平成17年7月12日(訂正2005-39122)
訂正2005-39122の審決(訂正認容):平成17年9月16日
訂正2005-39122の審決確定:平成17年9月29日
判決言渡:平成17年10月27日(結論:決定を取り消す)
異議申立人に対して審尋:平成17年11月17日
坂本陽より回答書:平成17年12月28日

第2 本件請求項に係る発明
本件特許については、上記のとおり訂正2005-39122で請求された訂正を認める審決が確定しているから、本件の請求項1ないし3に係る発明は、上記訂正の審判の請求書に添付した訂正明細書の記載からみて次のとおりのものと認める。
「【請求項1】少なくとも有機顔料粒子を分散してなる電子写真感光体用顔料分散液の製造方法において、前記有機顔料粒子がフタロシアニン系顔料粒子であり、当該有機顔料をバインダー樹脂を含有しない溶媒中で平均粒径が0.4mm〜0.8mmの球形状微粉砕媒体と共に分散処理し、分散後の平均粒径が0.1μm〜0.2μmの前記有機顔料粒子を得ることを特徴とする電子写真感光体用顔料分散液の製造方法。」(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項2】少なくとも有機顔料粒子を分散してなる電子写真感光体用顔料分散液の製造方法において、前記有機顔料粒子がフタロシアニン系顔料粒子であり、当該有機顔料をバインダー樹脂を含有しない溶媒中で平均粒径が0.4mm〜0.8mmの球形状微粉砕媒体と共に3時間から6時間分散処理し、分散後の平均粒径が0.1μm〜0.2μmの前記有機顔料粒子を得ることを特徴とする電子写真感光体用顔料分散液の製造方法。」(以下、「本件発明2」という。)
「【請求項3】請求項1または請求項2に記載された電子写真感光体用顔料分散液の製造方法によって得られた顔料分散液を用いて感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。」(以下、「本件発明3」という。)

第3 取消理由で引用された刊行物及び異議申立人提出の証拠の記載事項
1.当審における取消理由に引用した、本件出願前に頒布された刊行物である刊行物1ないし11には、次の事項が記載されている。

刊行物1(特開昭63-292148号公報、異議申立人坂本陽提出の甲第1号証)
(1a)「導電性支持体と感光層の間に下引き層を有する電子写真感光体において、・・・特徴とする電子写真感光体。」(特許請求の範囲)、
(1b)「本発明において感光層は・・・電荷発生層と電荷輸送層に機能分離した積層構造型でもよい。」(2頁左下欄6〜8行)、
(1c)「電荷発生層はスーダンレッド、ダイアンブルー、ジェナスグリーンBなどのアゾ顔料、・・・銅フタロシアニンなどのフタロシアニン顔料、・・・などの電荷発生物質をポリビニルブチラール、・・・などの結着剤樹脂に分散させて、この分散液を前述の下引き層の上に塗工することによって形成できる。」(2頁左下欄9行〜右下欄3行)、
(1d)「実施例2 電荷発生層用塗料としてα型銅フタロシアニン(東洋インキ(株)製)10部、ブチラール樹脂(商品名エスレックBM-2、積水化学(株)製)5部およびシクロヘキサノン50部を1φガラスビーズを用いたサンドミル装置で3時間分散した後、メチルエチルケトン80部を加えて調製した塗料を用いて電荷発生層を形成した他は、実施例1と同様の電子写真感光体を作成した。」(3頁右下欄下から9行〜4頁左上欄1行)
(1e)「実施例3 ・・・導電性支持体である30φのアルミニウムシリンダー上に、上記下引き層用塗料を浸漬塗布し、110℃で20分間乾燥し、膜厚1.5μの下引き層を形成した。次に、下記構造式(構造式省略)のジスアゾ顔料を10部、ブチラール樹脂(商品名エスレックBL-S、積水化学(株)製)8部およびシクロヘキサノン60部を0.5φガラスビーズを用いたサンドミル装置で5時間分散した後、テトラヒドロフラン120部を加えて分散液を調製した。この分散液を上記下引き層上に浸漬塗布し、80℃で20分間乾燥して、0.18g/m2の塗布量の電荷発生層を形成した。次に、・・・20μ厚の電荷輸送層を形成した。こうして作成した電子写真感光体をキャノン(株)製複写機FC-5に取り付けて、低温低湿下(10℃、10%RH)で連続1,000枚画像を出したところ、明部電位の上昇もなく、非常に安定した画像が得られた。」(4頁右上欄4行〜左下欄下から3行)。

刊行物2(特開昭60-260053号公報、同じく異議申立書に添付して提出した参考資料1)
(2a)「2種以上のジアミンないしはトリアミンを共存下でテトラゾ化ないしヘキサゾニウム化した後、カプラーとカップリングすることを特徴とする光導電性アゾ系顔料の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)、
(2b)「電荷発生材料のうちアゾ顔料は製造しやすく、構造的にも多くのバリエーシヨンを有するなどの利点があり、近年多数の材料が提案されているが、・・・顔料分散時に粒径が細かくならないため充分な感度がでなかつたり繰返し使用時の電位安定性に欠けるなどの欠点を有していた。 一方粒径が細くならない為に顔料の分散安定性を欠き塗膜の欠陥を生じ画像むらを生ずるといつた欠点もある。」(2頁右上欄10〜19行)、
(2c)「本発明の目的は顔料の分散安定性を改良しかかる改良により実用的な高感度特性と繰返し使用における安定な電位特性を有する電子写真感光体を提供することにある。 本発明のもう一つの別の目的は顔料の分散性の改良により感光層塗膜に欠陥のない電子写真感光体を提供することにある。」(2頁左下欄1〜7行)、
(2d)「単一のジアミンないしはトリアミンのテトラゾ化ないしヘキサゾニウム化を経由して得られた顔料は、サンドミル、ボールミル、アトライター、ロールミル等の粉砕手段を用いても粒子がなかなかくずれにくく細くならない。一方本発明の方法による顔料混合物は粒子中に2種以上の顔料がまざっている為極めて粒子がほぐれ易く、微粒化し易いことが判明した。因みに従来法による顔料の平均粒径・・・は0.4μないしはそれ以上の粗大粒子であるのに反して本発明の方法によれば0.2以下、更に良好には0.1μ以下にすることが可能となった。」(2頁右下欄7行〜3頁左上欄1行)。

刊行物3(特開平3-8433号公報、同じく参考資料2)
(3a)「電荷発生材料としての光導電体粒子の粒径は、電子写真特性に大きく影響する。すなわち、平均粒径が大きいと、電荷発生層の層厚を薄く形成できず、その中でのキャリアーの移動に時間がかかり、感度が低い。そこで、従来、所望の平均粒子径に微粒化し、分散液(通常溶剤)中の分散させるために、アトライター、ボールミル・・・などにより分散している。また、その分散に際しては、少なくとも10時間以上・・・分散機を運転していた。」(1頁右下欄13行〜2頁左上欄4行)、
(3b)「本発明者らが、平均粒径の経時変化を調べたところ、一般的な分散系の下で、分散開始から短い時点で平均粒子径が最小となる時点があり、その後粒子径は、凝集により増大したあと変化が殆ど見られない安定した領域に達することが判明した。したがって、平均粒子径がほぼ最小の時点で分散を終了すれば、微細化後の凝集を抑制でき、もって懸濁液の均一性が高まり、その結果電子写真感光体を得る場合などにおいての塗布性が良好となる。さらに本発明によれば、分散開始後わずかな時間で分散を終了させるので分散操作時間が短くなり、操作能率が高まる。しかも、・・・分散機のベッセル、ロッドやディスクなどの摩耗に伴うコンタミが少なくなる。」(2頁右上欄9行〜左下欄4行)、
(3c)「本発明では、たとえば電子写真感光体用の分散液を得るにあたり、液体中の固体粒子を微細化しながら分散し微粒子の懸濁液を得る際に、たとえば第1図に示す、分散経時に伴う平均粒子径の変化において、最低粒子径Dlと、この最低粒子径Dlを示した後平均粒子径が経時的に安定しているときの安定粒子径Daとの平均値・・・以下の時点範囲・・・で分散を終了する。」(2頁左下欄7〜15行)、
(3d)「平均粒子径の経時変化は、材料としての有機光導電物質の種類、分散機の種類または分散機の運転条件により異なるものの、通常分散開始から30〜5時間程度で最低粒子径を示す」(2頁右下欄2〜5行)
(3e)「電荷発生材料として用いる本発明に係る有機光導電体粒子としては、アゾ系顔料、アンスアンスロン系顔料、・・・フタロシアニン系顔料・・・等を用いることができる。」(3頁左上欄19行〜右上欄5行)
(3f)実施例には、有機顔料(4,10-ジブロモアンスアンスロン)とポリカーボネートをジクロロエタンを分散剤としてボールミルにより分散し、平均粒径の経時変化を測定したところ、平均粒子径が最低を示す時間は分散開始後4時間後であり、粒径は0.2μmであったこと、4時間分散懸濁液と48時間分散懸濁液を比較したところ、4時間分散懸濁液を使用した時の暗減衰は15%とかなり小さく、48時間分散懸濁液に比して良好な特性を示したこと(4頁左下欄2行〜5頁8行、第1表、第1図、第3図、第4図)。

刊行物4(特開昭61-13255号公報、同じく参考資料3)
(4a)「主カプラー中に、1種以上の異種カプラーを全カプラー量の10〜50モル%添加した混合カプラーをジアゾ成分とカップリングすることを特徴とする光導電性アゾ顔料を含有する電荷発生材料の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)、
(4b)「分散粒度の電子写真特性に与えられる影響は顕著であり、例えば実施例1で得られる顔料で、分散時間を短縮し、分散粒度を順次大きくした場合、以下に示すように分散粒度に比例して感度低下及び耐久使用前後での明部電位(VL)の変動巾が大きくなることが、はっきりと認められる。
」(2頁左下欄17行〜右下欄3行及び表)、
(4c)実施例1では、混合カプラーをジアゾ成分とカップリングしたアゾ顔料4gをTHF84gとブチラール樹脂2gを溶かした液と共にサンドミルで8時間分散し、分散後の平均粒径が0.15μの顔料分散液を得たこと、この分散液の安定性は良好で1ヶ月後の平均粒径は0.17μであったこと(7頁右上欄17行〜右下欄17)。

刊行物5(特開昭61-75359号公報、同じく参考資料4)
(5a)「アゾ顔料の合成反応の際に、基質であるアミンのアミノ基1モルに対してカプラーを1.5〜3.0倍モル使用してカップリング反応を実施することを特徴とするアゾ系顔料の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)」、
(5b)「機能分離型感光体に適応する各種の化合物および顔料も見いだされてきた。特にアゾ顔料は電荷発生物質として優れた性質をもち製造も容易である為に、その開発が盛んであり数多くの化合物が提案されている。・・・この種の感光体は、その感度が電荷発生層中に含有している電荷発生物質の粒子サイズによって影響され、粗大粒子を多量に含有している電子写真感光体は、・・・感度上の欠点を多く有しており、しかも耐久使用時の電位安定性を悪くするといった欠点を有しており、一般には約1μ以下・・・0.2μ以下の粒子サイズの電荷発生物質を用いる事が望ましい。」(2頁左上欄6行〜右上欄11行)、
(5c)実施例1には、アゾ顔料5gをシクロヘキサノン93gにブチラール樹脂2gを溶かした液に加えサンドミルで10時間分散し、平均粒径0.08μの分散液を調整したこと(7頁左下欄3行〜8頁左上欄2行)、
(5d)実施例3には、実施例1で合成したアゾ顔料を実施例1と同様に分散し、分散時間をそれぞれ1、2、4、6、8、10時間とし、分散粒子の平均粒径がそれぞれ0.53μ、0.35μ、0.20μ、0.14μ、0.08μ、0.08μの分散液を調製したこと、これらの分散液を用いて電荷発生層を形成し感光体を作成し、帯電特性と耐久特性を測定したところ、顔料粒子の平均粒径が0.02μ以下のものは、感度及び耐久時の電位変動において、優れた特性を示していたこと(9頁右下欄下から5行〜10頁右上欄2行)。

刊行物6(特開昭63-301955号公報、同じく参考資料5)
(6a)「溶剤を用いて下記一般式[1]で表される有機光導電性アゾ顔料の分散液を製造する方法において、分散の前工程として前記アゾ顔料をケトン系溶剤中で加熱処理することを特徴とする有機光導電性アゾ顔料の分散液の製造方法」(特許請求の範囲)。
(6b)「実施例1には、ジスアゾ顔料20gを、90°Cに加熱したメチルイソブチルケトン(MIBK)400mn中に入れ4時間加熱撹拌後、濾過により顔料を分離し、洗浄、濾過を繰り返し、乾燥し、固型顔料を得たこと、この固形顔料と、酢酸酪酸セルロース樹脂およびMIBKを1φガラスピーズを用いたサンドミル装置に供給して、5時間分散処理したところ、分散直後の平均粒径が0.08μmのジズアゾ顔料分散液が得られたこと(6頁左上欄1行〜右上欄6行、第2表)。

刊行物7(「塗装技術」1990年、11月号、139〜150頁、異議申立人酒井征男が提出した甲第2号証)
(7a)「1.サンドミルの機構と構造」の「(2)高速ミル」の項に、サンドミルはほとんどがこの型式であること、メディアは0.3〜4mmが使われていること(140頁左欄3〜10行)、
(7b)「2.サンドミルの分散特性」の「(1)撹拌部材の形状などによる分散効果」の項には、ディスク形状の違いによる分散効果の差について実験を行ったことが記載され、「メディアの径をφ2,1,0.5mm」としたこと(143頁左欄3〜18行)、
(7c)「(2)運転条件による分散効果
サンドミルは運転条件によって,その効果が変化することが知られており,その条件として(1)撹拌部材の運転速度 (2)メディアの充てん率 (3)メディアの大きさ (4)メディアの比重 (5)スラリーの滞留時間 (6)スラリーの濃度 などがある。」(143頁右欄13〜22行)、
(7d)「メディアの充てん率を増すと粉砕効果も比例して増加する(第21図参照)。さらに,限界粒子径も細かいほうに移行する。・・・第22図のようにメディアの径を変えた場合,処理物の径が大きい時は,φ2mmのメディアの効果が良いが,平均粒子径が1.5μ以下となるとφ0.5mmのメディアの効果が逆転し,かつ限界粒子径も細かくなる。」(143頁右欄32行〜144頁右欄4行)、
(7e)「スラリーの濃度を変えると,粉砕効果は濃度に逆比例して上昇する。特に,初期における効果が良いが,パス回数を重ねてゆくと平均粒子径はほぼ同じになる。」(146頁左欄12〜15行)、
(7f)「3.サンドミルの分散限界」の項に、「サンドミルの分散限界を調べるために・・・粉砕を重ねて,その粒子径の変化を測定した。ピンタイプの実験機を使用し,メディアはガラスビーズφ2mmとφ0.5mm・・・の条件で行った。・・・φ0.5mmのメディアの粉砕速度はφ2mmに比較し3倍ほど速くなる」(146頁右欄1〜13行)。

刊行物8(特開昭63-301953号公報、同じく甲第1号証)
(8a)「これら無機感光体の持つ欠点を克服する目的で様々な有機光導伝性化合物を主成分とする電子写真感光体の開発が近年盛んに行なわれている。・・・またビスアゾ顔料またはトリスアゾ顔料を電荷発生物質として用いた感光体として特開昭59-33445号公報・・・等がすでに公知である。さらに有機光導電性化合物はその化合物を用いた感光体の分光感度を自由に変化させることが可能である。例えばフタロシアニン化合物を用いた感光体は800nm付近まで感度を有することは数多くの文献姉達べられている所である。」(2頁左上欄14行〜右上欄11行)、
(8b)「実際に使用する塗工液は前に記載した様な各種有機光導電性化合物とバインダー(高分子樹脂など)をボ-ルミル、サンドミル、アトライターなどで分散して調製する。この分散の方法は各種有機光導電性化合物(すなわち有機顔料)によって異なるものであるが、その方法及びそれに用いる適正条件(分散時間及び分散時の破砕力等)は、実際に分散してみないと分からない点が多く、試行錯誤を繰り返さないと適正な分散条件を見出すことが難しく、多くの労力を要するのが実情である。」(2頁左下欄19行〜右下欄9行)、
(8c)「本発明者はこの有機顔料固有の値といえる分散時間とそれによって得られた分散液(すなわち塗工液)の安定性との間にある相関を見出し、本発明に到達したものである。すなわち、まずサンドミル、又は前述に記載した様な湿式分散装置を用いて平均粒子径を観測しつつ分散を行う。この時顔料の粒子径が0.5μmとなる時間をtlとし、その10倍の時間まで粒子径を観測しつつ分散を行う。この分散時間の範囲で顔料の粒子径が最小となる時間をT1とした場合、全分散時間TがTlの2倍から4倍の間で行うことによって、得られた分散液の安定性が極めて良好なものとすることができる。」(3頁右下欄2〜15行)、
(8d)実施例1には、アゾ系顔料を10重量部とのポリメタクリル酸メチル5重量部にシクロヘキサノン190重量部を加え直径1mmのガラスビーズをシクロヘキサノン1gにつき1mlの割合で投入し第1図で示された湿式サンドミル装置を用いて分散を行ったこと、分散時間と平均粒子径の変化を測定し第3図に示したこと、粒子径の測定には堀場製作所梨、超遠心式自動粒度分布測定装置(CAPA -700型)を用いたこと、0.5μmに達する分散時間は7時間であり、7〜70時間の範囲で最小粒径となる最も短い分散時間Tは50時間であること(6頁左下欄4行〜右下欄15行、第3図)。

刊行物9(特開平2-132162号公報、同じく甲第3号証)
(9a)「ボールミル、ペブルミルまたはサンドミルによる顔料の分散工程において、粒子直径200ないし500μmのジルコニア焼成ボールを用いることを特徴とする顔料のビヒクル中への分散方法。」(特許請求の範囲)。

刊行物10(「昭和62年度 電子写真学会 第59回研究討論会予稿集」179〜183頁、同じく甲第4号証)には、新規ジスアゾ顔料を用いた電子写真感光体に関し、シクロヘキサノン中での分散の変化を調べたこと、分散開始1時間後には顔料粒径は0.3μに下がるが分光吸収の長波化は全く起こらないこと(181頁)。

刊行物11(「電子写真学会誌」第28巻 第3号(1989)25〜29頁、同じく甲第5号証)には、無金属フタロシアニンとポリエステル樹脂を1:6の重量比に混合し、内径5cmのボールミルを用い分散を行ったことが示され(270頁左欄6〜13行)、半減露光量は分散時間約30時間において最小を示すこと(270頁左欄下から3行〜右欄下から3行、Fig.2)、分散,粉砕が進むに従い、粒子間距離が短くなるためにキャリア輸送能力が増大し、最大ゲインが増加していること、変化の割合はボールミル分散条件の相違により異なること(271頁左欄9〜17行)。

2.異議申立人坂本陽が異議申立書に添付して提出した、本件出願前に頒布された刊行物である参考資料6ないし8には、次の事項が記載されている。

参考資料6(「JISにもとづく標準製図法」、以下、「刊行物12」という。)には、寸法の単位について、「メートル式の単位で表す図面には、その基準寸法はミリメートルとするが、ただしミリメートルを表すmmは、記入しないでよいことになっている。」こと(61頁13〜16行)。

参考資料7(堀場遠心式自動粒度分布測定装置CAPA-500の取扱説明書以下、「刊行物13」という。)には、自動粒度分布測定装置についての説明。

参考資料8(特開平1-184031号公報、以下、「刊行物14」という。)
(14a)「顔料、染料等を微細化する有効な手段としてはベッセル内部にガラスビーズ等のメジウムを入れ回転分散手段であるディスクまたはドラムを回転させて微分散するいわゆるサンドミル分散装置を用いる方法がある。」(1頁右下欄20行〜2頁左上欄4行)、
(14b)「この様な分散装置を用いて顔料、染料等を分散することによって顔料、染料を短時間で均一な分散液とすることが可能である。特に微細な分散粒径が要求される電子写真感光体塗工液に含有される顔料、染料などの電荷・発生物質の分散に対して有効な手段となる。本発明で分散できる顔料、染料は無機物、有機物いずれでも良く、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン系顔料、・・・金属酸化物等が挙げられる。・・・これらの顔料、染料を適当な有機溶剤、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、・・・などを分散媒として被分散液に調製する。この時に結着剤として高分子物質を一緒に加えても良いし、顔料等と分散媒だけであらかじめ分散した後、結着剤を加えても良い。」(3頁右上欄5〜16行、6頁左上欄1〜8行)、
(14c)実施例10には、t型メタルフリーフタロシアニンとブチラール樹脂をシクロヘキサノンを分散媒としてガラスビーズ(東芝バロテイーニ社製GB-201M)を用い、30時間分散したこと、堀場遠心式自動粒度分布測定装置CAPA-500を使用して測定した分散上がり粒径は0.21μmであったこと(6頁右上欄7行〜7頁左上欄)。

3.異議申立人酒井征男が、平成16年10月25日付け回答書に添付して提出した、本件出願前に頒布された刊行物である、特開平3-71144号公報、以下、「刊行物15」という。)には、次の事項が記載されている。
(15a)「・・・この様な結晶型オキシチタニウムフタロシアニンは本発明の製造法による、分散媒として炭素数が5以下のアルコール類を用いて微粒化処理され、最終的にポリビニルアセタール樹脂と混合された状態で電荷発生層を塗布するための塗布液が調整される。」(3頁右下欄16行〜4頁左上欄2行)、
(15b)「オキシチタニウムフタロシアニンを微粒化処理する方法としては、公知の方法例えばボールミル、サンドグラインドミル、・・・等の方法を用いることができる。」(4頁左上欄13〜16行)、
(15c)「実施例-1 製造例で製造したオキシチタニウムフタロシアニン10重量部にメタノール200重量部を加え、サンドグラインドミルで10時間粉砕、分散処理を行った。次にポリビニルブチラール・・・5重量部の10%メタノール溶液と混合し分散液を調整した。・・・次にこの分散液をポリエステルフィルム上に蒸着したアルミニウム蒸着面の上にバーコータにより乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を設けた。」(5頁左下欄10〜右下欄4行)。

4.異議申立人坂本陽が回答書に添付して提出した、本件出願前に頒布された刊行物である、参考資料1ないし8には、次の事項が記載されている。

参考資料1(特開昭63-304265号公報、以下、「刊行物16」という。)には、電荷発生材料の分散液の製造に「1mmφガラスビーズ」を分散媒とすること(4頁左上欄6〜7行)。

参考資料2(特開平3-54265号公報、以下、「刊行物17」という。)には、オキシチタニウムフタロシアニンとポリビニルブチラール樹脂をシクロヘキサノンに添加し1mmφのガラスビーズを用いたサンドミルで分散すること(5頁右下欄9〜16行)。

参考資料3(特開平3-250060号公報、以下、「刊行物18」という。)には、オキシチタニウムフタロシアニンの水ペーストn-ヘキサンを加え、1mmφのガラスビーズとともにミリング処理したこと(段落【0023】〜【0025】)。

参考資料4(特開昭63-301955号公報)は、刊行物6と同一。
参考資料5(特開平1-184031号公報)は、刊行物7と同一。

参考資料6(特開平3-143537号公報、以下、「刊行物19」という。)、参考資料7(特開平3-143538号公報、以下、「刊行物20」という。)及び参考資料8(特開平3-157128号公報、以下、「刊行物21」という。)には、サンドミル分散装置を用いる顔料等の分散に関して、顔料、染料を適当な有機溶剤などを分散媒として被分散液に調製すること、この時に結着剤として高分子物質を一緒に加えても良いし、顔料等と分散媒だけであらかじめ分散した後、結着剤を加えても良いことが記載され、実施例1には、チタニルフタロシアニンとフェノール樹脂をジオキサンを分散媒としてガラスビーズ(東芝バロテイーニ社製GB-201M)を用い、10時間分散したこと、分散上がり平均粒径は、刊行物19では0.31μm、刊行物20では0.27μm、刊行物21では0.32μmであったこと。

第4 当審の判断
1.特許法第29条第1項及び第3項違反について
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明は、本件発明1の構成である「フタロシアニン系顔料をバインダー樹脂を含有しない溶媒中で平均粒径が0.4mm〜0.8mmの球形状微粉砕媒体と共に分散処理し、分散後の平均粒径が0.1μm〜0.2μmの有機顔料粒子を得る」ものではない点で相違する。
すなわち、刊行物1の実施例2には、フタロシアニン系顔料をバインダー樹脂を含有する溶媒中で平均粒径が1φの球形状微粉砕媒体と共に3時間分散処理することが記載されている。この球形状微粉砕媒体の大きさが直径1mmを表すことは刊行物12等の記載から明らかであるが、粒径が本件発明1の平均粒径0.4〜0.8mmのものと異なる上、分散後のフタロシアニン系顔料の平均粒径については記載されていない。
刊行物1の実施例3には、アゾ系顔料をバインダー樹脂を含有する溶媒中で平均粒径が0.5φの球形状微粉砕媒体と共に5時間分散処理することが記載されていることから、フタロシアニン系顔料においても平均粒径が0.5mmの球形状微粉砕媒体で分散させることが示唆されているということはできるが、刊行物1の実施例はいずれもバインダー樹脂を含有する溶媒中で分散するものであり、分散後の平均粒径を0.1μm〜0.2μmとすることは記載されていない。
したがって、本件発明1は刊行物1に記載された発明ではない。

また、上記相違点にかかる本件発明1の構成は、その他の刊行物にも何ら記載されていない。
すなわち、刊行物14、19、20、21には、フタロシアニン系顔料を球形状微粉砕媒体(ガラスビーズ)を有する分散装置で分散処理すること、顔料をバインダー樹脂を含有しない溶媒中で分散させてもよいことが記載されているが、実施例はいずれもバインダー樹脂を含有する溶媒中で分散するものであって、顔料分散液中の顔料の平均粒径は0.21μm以上であり、バインダー樹脂を含有しない溶媒中で平均粒径が0.4mm〜0.8mmの球形状微粉砕媒体と共に分散処理し、分散後の平均粒径を0.1〜0.2μmとすることは記載されていないし、示唆もない。
刊行物15には、フタロシアニン系顔料を、サンドグラインドミルを用い、バインダー樹脂を含有しない溶媒中で分散処理することが記載されているが、サンドグラインドミルの球形状微粉砕媒体の大きさも、分散後のフタロシアニン系顔料の平均粒径も記載されていない。
刊行物3には、顔料をバインダー樹脂を含有する溶媒中で球形状微粉砕媒体(メディア)を用い分散処理する際、短時間で平均粒径が最低となる時点があることが記載されているが、実施例に具体的に記載されているものはアンスアンスロン系顔料のみであり、フタロシアニン系顔料を、分散処理し平均粒径を0.1〜0.2μmとすることは示されていない。
刊行物11には、フタロシアニンを用いた分散感光体の帯電電位とボールミル分散時間の関係について記載されているが、球形状微粉砕媒体の大きさや分散処後の平均粒径については記載されていない。
刊行物2、4、5及び6には、アゾ系顔料について、分散処理後の平均粒径を0.2μm以下とすることが記載されているが、特定の構造のアゾ顔料を用いること或いはアゾ顔料に特定の処理をすることにより、平均粒径を小さくしようとするものであって、フタロシアニン系顔料を分散処理し、平均粒径を0.2μm以下とすることについては何ら記載されていない。
刊行物17、18には、フタロシアニン系顔料を粒径1mm(1mmφ)のガラスビーズで分散処理することが記載されているにすぎない。
その他の刊行物には、フタロシアニン系顔料の分散方法について何ら記載されていない。
そして、本件発明1は、フタロシアニン系顔料をバインダー樹脂を含有しない溶媒中で、特定の粒径の球形状微粉砕媒体を用いることにより、短時間で、分散後の平均粒径を0.1〜0.2μmの分散液を得ることができ、該分散液を使用して高感度の感光体を得ることができるという特有の作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1ないし21に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1を引用し、さらに構成を限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、刊行物1に記載された発明ではなく、また、刊行物1ないし21に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

2.特許法第36条違反について
特許査定時の明細書について、異議申立人酒井征男は、次のような不備を申立てている。
(1)本件特許明細書には、分散処理の際の運転条件については、メディアの大きさ及び分散処理時間の他には、顔料の種類と溶媒の種類及びそれらの重量比が記載されているのみであり、温度、サンドミルの型式、破砕力、分散液の量、メディアの充填率が記載されておらず、当業者が容易に実施をすることができる程度に発明の構成が記載されていない。

特許査定時の明細書について、異議申立人酒井征男は、次のような不備を申立てている。
(2)本件特許明細書には、球形状微粉砕媒体の平均粒径の測定方法が記載されておらず、本件発明が不明確である。
(3)有機顔料の平均粒径は、球形状微粉砕媒体の平均粒径や分散時間やミリングの種類だけでなく、サンドミル装置の構造によっても大きく変わるものであるところ、本件特許明細書には、このような有機顔料の平均粒径に影響を及ぼす条件が十分開示されていないから、当業者が容易に実施をすることができる程度に発明の構成が記載されていない。

上記の理由(1)、(3)について検討すると、本件発明1ないし3は、上記訂正により、「有機顔料をバインダー樹脂を含有しない溶媒中で」分散処理するものであって、「分散後の平均粒径が0.1μm〜0.2μm」であるものに限定された。そして、分散後の平均粒径が特定されていれば、その粒径になるように、球形状微粉砕媒体の量や溶媒の種類、サンドミルの構造を選択することは当業者が適宜なしうることである。
上記理由(2)について検討すると、球形状微粉砕媒体としては、一定の規格の製品が使用されており、粒径のバラツキは少ないものである。また、ガラスビーズの粒径はふるい分け法で測定することが普通であり、本件特許明細書にガラスビーズの平均粒径の測定方法が記載されていないとしても、発明の構成が不明りょうであるとはいえない。
したがって、明細書の記載が不備であるとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2006-01-20 
出願番号 特願2001-62328(P2001-62328)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G03G)
P 1 651・ 113- Y (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 磯貝 香苗  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伏見 隆夫
秋月 美紀子
登録日 2002-09-06 
登録番号 特許第3346416号(P3346416)
権利者 三菱化学株式会社
発明の名称 電子写真感光体用顔料分散液の製造方法および電子写真感光体の製造方法  
代理人 長谷川 曉司  

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