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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 B05D 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 B05D |
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管理番号 | 1130861 |
異議申立番号 | 異議2003-73794 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-12-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-26 |
確定日 | 2006-01-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3456223号「化粧シートの製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3456223号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第3456223号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成5年6月7日に出願され、平成15年8月1日にその設定登録がなされ、その後、その請求項1〜3に係る発明の特許について、特許異議申立人大日本印刷株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年11月26日に特許異議意見書が提出され、平成17年12月6日に特許権者より上申書が提出されたものである。 2.特許請求の範囲の記載 本件特許明細書の特許請求の範囲は、以下のとおりに記載されている。 「【請求項1】シートの表面に、常温で固体である電子線硬化型樹脂を含有する水性インキで印刷し、前記電子線硬化型樹脂が液状化する温度に加温した電子線硬化型塗工剤を塗布したのち、電子線照射することを特徴とする化粧シートの製造方法。 【請求項2】印刷がベタ印刷であることを特徴とする請求項1記載の化粧シートの製造方法。 【請求項3】加温したロールにより電子線硬化型塗工剤を塗布することを特徴とする請求項1記載の化粧シートの製造方法。」 3.特許異議申立てについて (3-1)特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人大日本印刷株式会社は、本件特許は、特許法第36条第4項又は第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、本件特許を取り消すべき旨主張している。 なお、本件特許に係る出願日は、平成5年6月7日であり、異議申立人の本件明細書は記載不備があり、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないという主張は適切でなく、上記のとおりの主張であると読み替えて認定した。 (3-2)当審取消理由の概要 当審において通知した、平成16年9月28日付け取消理由通知書の取消理由の概要は、本件請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第36条第4項又は第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件請求項1〜3に係る特許は取り消されるべきである、というものである。 4.当審の判断 (4-1)特許異議申立てについての判断 異議申立人の、特許法第36条第4項又は同条第5項第に規定する要件を満たしていないとする主張の概要は、次の(a)〜(d)のとおりである。 (a)本件明細書には、段落【0009】において、「常温で固体の電子線硬化型樹脂」の具体例として、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、等が記載されているが、あまりにも漠然とした記載であり、本発明の特徴点を充分に開示していない。 (b)本件発明は、「常温で固体の電子線硬化型樹脂を水性インキ中に含有する」としているが、通常、液体中に固体を含有するには、分散剤を用いるなど技術的工夫が必要であると考えるが、固体の樹脂を水性インキ中にどのように含有させるのか本件明細書に全く開示していない。 (c)本件明細書には、段落【0005】において、「水性インキに電子線硬化型樹脂を添加する方法等も考えられるが、添加しすぎると、熱乾燥ではインキが乾燥しなくなるおそれがある。」と記載しており、水性インキに添加する電子線硬化型樹脂の量は必須の事項であると考えられるが、これについて全く記載されていない。 (d)本件発明は、「常温で固体の・・・」と限定しているが、「常温」とは一体何℃〜何℃を指すのかが不明確であり、発明の外延が不明確である。 そこで、これらの主張(a)〜(d)について検討する。 (a)について 段落【0009】に例示する種類に含まれる常温で固体の具体的な電子線硬化型樹脂は、この出願前に公知又は周知(例えば、古川淳二監修、「オリゴマーハンドブック」、昭和52年3月31日、(株)化学工業日報社発行、p.252-253、特に、アロニックス M-6300、M-8030、M-8060参照)であり、また、本件実施例にも該樹脂の具体例としてイソシアヌール酸EO変性トリアクリレートが記載されている。 してみると、該公知又は周知の電子線硬化型樹脂を知る当業者において、段落【0009】の記載が本発明の特徴点を充分に開示していないということにはならない。 (b)について 固体を液体中に均一に分散させる技術として、固体の粒度や凝集性を調整しながら、固体を電気的、化学的あるいは機械的に分散させることは技術常識であるから、該技術常識の下、当業者にとって、液体中に固体を含有させる技術的工夫が全く開示されていないことにはならない。 (c)について 段落【0005】の記載は、従来技術に関する記載であり、電子線硬化型樹脂を添加しすぎると、インキが乾燥しなくなるおそれがあるという記載からみて、この電子線硬化型樹脂は常温で固体のものを意味してないことは明らかであって、ここの段落は、従来の常温で固体でない電子線硬化型樹脂は、インキの乾燥性に応じて添加量を調整する必要があることを記載したものである。 したがって、従来技術において、乾燥性に影響を与える常温で個体でない電子線硬化型樹脂の添加量が重要な要件であるとしても、常温で固体の電子線硬化型樹脂を用いる本件発明においては、その添加量は接着性等に応じて適宜に決定されるものであり、添加量までも必須であるとはいえない。 (d)について 本件明細書中に、常温について定義や説明は特に記載されていない。 しかしながら、常温は一般的な学術用語と認められ、また、日本工業規格(JIS)においても、5〜35℃の温度範囲を常温という(JIS Z8703)と定義されており、さらに、平成17年12月6日付け上申書の実験成績報告書から明らかなように、本件実施例で使用しているイソシアヌール酸EO変性トリアクリレートの融点が約51℃であることからも、前記5〜35℃の温度範囲に解すべきでないという合理的理由は存在しない。 してみると、常温の定義や説明がないことを以て、発明の外延が不明確であるとはいえない。 以上述べたことから、主張(a)〜(d)に理由はなく、そして、本件特許に係る特許出願が特許法第36条第4項又は第5項に規定する要件を満たしていないとする理由は見当たらない。 (4-2)当審取消理由についての判断 本件請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第36条第4項又は第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、という当審取消理由については、妥当とする理由が存在しない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2005-12-19 |
出願番号 | 特願平5-135853 |
審決分類 |
P
1
651・
531-
Y
(B05D)
P 1 651・ 534- Y (B05D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 村山 禎恒 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
石井 克彦 鴨野 研一 |
登録日 | 2003-08-01 |
登録番号 | 特許第3456223号(P3456223) |
権利者 | 凸版印刷株式会社 |
発明の名称 | 化粧シートの製造方法 |
代理人 | 石川 泰男 |