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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27N
管理番号 1131639
審判番号 不服2002-2122  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-03 
確定日 2006-02-15 
事件の表示 特願2000-136652「シュレッダ-により裁断した故紙を利用する紙成形品およびその乾式製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月21日出願公開、特開2001-225304〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成12年5月10日(優先日は、平成11年12月6日。)に出願された特許出願であって、原審において平成13年4月9日付で拒絶理由を通知したところ、平成13年6月13日付の意見書と共に明細書を補正する同日付の手続補正書が提出され、前記拒絶理由による平成13年11月21日付の拒絶査定に対し、拒絶査定不服審判の請求が平成14年1月3日になされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年6月13日付の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「シュレッダ-により裁断したテープ状の故紙を利用する紙成形品の乾式製造方法において、シュレッダ-により裁断したテープ状の故紙群に接着剤を供給して攪拌する工程と、前記の故紙群の上下に柔軟性を備えた通気性を有するシ-トを供給する工程と、上型と下型からなる成形型を備えたプレス機を設け、前記の通気性を有するシ-トを上下方向として前記の故紙群をプレス機へ搬入して加熱させ、前記の成形型によりプレス成形を行うと共に、前記の通気性を有するシ-トを前記の故紙群に接着させ、上型と下型のプレス状態が解除されたときに、上方の前記の通気性を有するシ-トを介して前記の故紙群中に含有している水分を水蒸気化させて前記の故紙群外へ排出させ、テープ状の故紙群の交錯によって発生する大小のスリット状の溝を覆い、その表面を平滑にすることにより一次成型品を得る工程、一次成形品の上方の前記の通気性を有するシ-トの外側に被覆シ-トを接着させる工程、とからなることを特徴とするシュレッダ-により裁断されたテープ状の故紙を利用する紙成形品の乾式製造方法。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-201807号公報(以下、「引用例1」という。)には、「故紙を利用した紙成形品その製造方法並びに成形型」に関し、図面と共に、以下の記載がある。
(イ)「【請求項4】成形用凹部を備えた下型と、下型の成形用凹部に対応させた位置に成形用凸部を備えるとともに、下型の成形用凹部に対応しない位置に成形用凹部を備えた上型からなる成形型を設け、下型側に軟質の被覆シートを敷設し、軟質の被覆シート上に故紙を細かく裁断した故紙片群を供給し、その故紙片群上に軟質の被覆シートを載置させ、成形型により故紙片群を加熱圧搾することを特徴とする故紙を利用した紙成形品の製造方法。」
(ロ)「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、故紙を利用した紙成形品、その製造方法並びに成形型に属する。とりわけ、電子機器、民生機器のほか、各種の製品や果物などの包装容器や緩衝材の成形品、その製造方法並びに成形型に属する。この発明において故紙とは、使用済の新聞紙、雑誌、段ボール等の紙、板紙、裁断くずのほか、製紙工程で生ずる破紙、損紙、断ち落としまたは使用済みの廃紙を意味する。」
(ハ)「【0021】そこで、前記した緩衝材18を製造する具体的方法を説明する。まず、緩衝材18の硬質凸部12の形状に倣った成形用凹部20を備えた下型22と、下型22の成形用凹部20に対応させた成形用凸部24および下型22の成形用凹部20に対応しない位置に成形用凹部26を備えた上型28からなる成形型30を設ける。なお、成形用凹部20、成形用凸部24および成形用凹部26をそれぞれ下型22と上型28に反対に設けてもよい。【0022】そして、下型22と上型28からなる成形型30によって故紙片16群を加熱圧搾させて成形することにより、下型22の成形用凹部20に位置する故紙片16群は、上型28の成形用凸部24による加圧によって圧縮されるから、成形用凹部20に位置する故紙片16群だけが他の部分に比較して硬く圧縮して成形されることにより、嵩密度の高い硬質凸部12が一側に成形される。」
(ニ)「【0026】そこで、下型22側に軟質の被覆シート32を敷設する。この軟質の被覆シート32は、後述する故紙片16群を成形したときに故紙片16群が散ら張るのを防ぐ被覆材である。しかし、単に故紙片16群を被覆するに止まることなく、形成型30による成形時に成形型30に馴染み易い材質のものが望まれるから、柔軟な紙例えば薄葉紙、衛生紙、化粧紙、ナプキン紙、タオル紙などの紙類や不織布や柔軟な布地などが適当である。軟質の被覆シート32は成形時に下型22側のみならず、上型28側にも使用されるが、両者は共通のものでよい。【0027】故紙片16群は、新聞、雑誌、段ボール、種類を問わない損紙のほか紙くずなど一般的に故紙と称されているものを図示を省略した破砕機により2〜5mm程度の大きさに細かく裁断させた故紙片16群を得る。もっとも、故紙片16の大きさはいわゆる紙粉の概念に属するものでなければよく、前記した大きさに制限する趣旨ではなく好ましい例であり、用途により多少の大きさの相違は予定される。」
(ホ)「【0031】更に、牛乳パックの例に見られるように、印刷処理やワックス加工、ポリエチレン加工などが施された製品の故紙を利用する場合、これらを裁断して得られる故紙片16群には、加熱することにより溶融する合成樹脂類の細片が混在しているから、これらの細片は加熱圧搾時に溶融して接着材の役割を奏することになる。【0032】したがって、故紙片16群に積極的に接着材を添加しないものの、故紙片16群が前記した接着材の役割をする細片によって互いに接着することにより嵩密度の高い成形品を得ることができ、嵩密度の高い成形品は被包装物の種類の変化に対応することができる。」
これらの記載によれば、引用例1には、
「成形用凹部を備えた下型22と、下型の成形用凹部に対応させた位置に成形用凸部を備えるとともに、下型の成形用凹部に対応しない位置に成形用凹部を備えた上型28からなる成形型30を設け、下型側に薄葉紙、衛生紙、化粧紙、ナプキン紙、タオル紙などの紙類や不織布や柔軟な布地などの軟質の被覆シート32を敷設し、軟質の被覆シート32上に印刷処理やワックス加工、ポリエチレン加工などが施された製品の故紙を細かく裁断した故紙片16群を供給し、その故紙片16群上に軟質の被覆シート32を載置させ、成形型30により故紙片16群を加熱圧搾することを特徴とする故紙を利用した紙成形品の製造方法。」の発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-220709号公報(以下,「引用例2」という。)には、「古紙ボード」に関して、図面と共に、以下の記載がある。
(ヘ)「【請求項1】古紙を水を用いず乾式で解繊して得られる古紙パルプ繊維と、熱可塑性樹脂の繊維とを、乾式で混合し、得られた繊維集合体を用いて乾式でウェブを形成し、該ウェブを熱可塑性樹脂の繊維の融点以上に加熱し、圧着成型することにより、該熱可塑性樹脂の繊維の一部又は全部を融解して古紙パルプ繊維同士を結合させた古紙ボードにおいて、前記ウェブの片面もしくは両面に加熱圧着成型された保護層を有することを特徴とする古紙ボード。」
(ト)「【0012】… これらの古紙パルプ繊維と熱可塑性樹脂繊維は、ウェブに形成される前に、まず乾式でエアーを用いる撹拌、機械的な攪拌等により均一に混合されて繊維集合体とされ、次いでこの均一に混合された古紙パルプ繊維と熱可塑性樹脂の繊維との繊維集合体は、移動する無端ベルト状の搬送用支持体上に集積して、ウェブに形成された後、加熱装置へ移送され、熱可塑性樹脂が溶融する温度以上に加熱され、その間に、新たに接着剤を用いることなくウェブの片面もしくは両面に保護層としてのシート状物を積層し、最終的に加圧処理装置へ移送され、そこで加圧され古紙ボードとされる。別の方法としては、前記ウェブが加熱装置へ移送される前に、ウェブの片面に或いは両面に、新たに接着剤を用いることなく、シート状物を積層し、次いで加熱加圧装置に移送し、加熱と加圧が施されて古紙ボードとされてもよい。」
(チ)「【0014】前記ウェブの片面もしくは両面にシート状物を積層する場合、ウェブに含有される熱可塑性樹脂の繊維は加熱装置において前記樹脂の融点以上に加熱、溶融軟化させ、古紙パルプ繊維同士或いは古紙パルプ繊維と熱可塑性樹脂繊維との結合を行わせる必要があるため、ウェブはスルードライヤーや加熱炉のような熱風が循環している加熱装置の中を、通気性を有する搬送用支持体上に乗せて移送、通過させられる。又は、この時該ウェブの上下或いは両面から通気性を有する搬送用支持体で挟んだ状態で加熱装置の中へ移送し、通過させられてもよい。このため、古紙ボードの表面を保護するために、本発明で用いられるシート状物は、不織布のように通気性の良いものはウェブが加熱装置に移送される前に、ウェブの表面に積層されて加熱装置に移送され、ウェブとシート状物が同時に加熱される。…」

4.対比
引用例1発明において、下型22と上型28からなる成形型30により故紙片16群を加熱圧搾することから、引用例1発明は、上型と下型からなる成形型を備えたプレス機を設けるという工程を実質的に備えるものと認められる。また、引用例1発明における「軟質の被覆シート32」の具体例と、本願発明における「通気性を有するシート」の具体例は、共に、「薄葉紙、衛生紙、化粧紙、ナプキン紙、タオル紙などの紙類や不織布や柔軟な布地など」であると示されるように、両者の具体例として、全くの同一物が列挙されていることから、引用例1発明における「軟質の被覆シート32」は、本願発明における「通気性を有するシート」に相当するといえる。そうしてみると、引用例1発明における「軟質の被覆シート」は柔軟性を備えると共に、通気性を有するものであり、当然に、水分を通過させることができるものであるから、シートの持つ通気性とプレス機による加熱圧搾作用との協働により、圧搾が解かれた際には、故紙群中に含有している水分を水蒸気化させるという作用効果が、引用例1発明においても、当然に奏せられるものと認められる。また、引用例1発明の全工程を総合してみれば、この製造方法が乾式であることは明らかである。さらに、引用例1発明と本願発明は、通気性を有するシ-トを上下方向として故紙群をプレス機へ配置する点において、共通する。

そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、両者は、
「裁断した故紙を利用する紙成形品の乾式製造方法において、上型と下型からなる成形型を備えたプレス機を設け、通気性を有するシ-トを上下方向として裁断した故紙群をプレス機へ配置して加熱させ、前記の成形型によりプレス成形を行うと共に、前記の通気性を有するシ-トを前記の故紙群に接着させ、上型と下型のプレス状態が解除されたときに、上方の前記の通気性を有するシ-トを介して前記の故紙群中に含有している水分を水蒸気化させて前記の故紙群外へ排出させ成型品を得る裁断された故紙を利用する紙成形品の乾式製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]本願発明では、シュレッダ-により裁断したテープ状の故紙を利用しているのに対して、引用例1発明では、単に、裁断した故紙を利用するとしているだけで、故紙がシュレッダーにより裁断したものであるとの限定がされていない点。

[相違点2]本願発明では、故紙群に接着剤を供給して攪拌するのに対して、引用例1発明では、積極的には接着剤を添加しない点。

[相違点3]通気性を有するシ-トを上下方向として裁断した故紙群をプレス機へ配置する工程が、本願発明では、故紙群の上下に柔軟性を備えた通気性を有するシ-トを供給する工程と、上型と下型からなる成形型を備えたプレス機を設け、前記の通気性を有するシ-トを上下方向として前記の故紙群をプレス機へ搬入する工程から成るのに対して、引用例1発明では、成形型の下型側に通気性を有するシートを敷設する工程と、通気性を有するシート上に裁断した故紙片群を供給する工程と、その故紙片群上に通気性を有するシートを載置させる工程から成る点。

[相違点4]本願発明では、通気性を有するシ-トを前記の故紙群に接着させることで、テープ状の故紙群の交錯によって発生する大小のスリット状の溝を覆い、その表面を平滑にするのに対して、引用例1には、そのような記載はなく、引用例1発明がそのような構成を有するか否か明らかでない点。
[相違点5]本願発明では、上方の通気性を有するシートの外側に被覆シートを接着する工程を具備するのに対して、引用例1発明が、そのような工程を具備しない点。

5.判断
[相違点1]について
紙形成品の乾式製造方法において、シュレッダ-により裁断したテープ状の故紙を利用することは、本件の審判請求人(以下、単に「請求人」という。)自身が出願した特願平8-115464号の特許出願の内容を公開した公報である特開平9-272162号公報にも記載されるよう、本願出願前には、請求人自身も十分に認識していた周知技術である。
したがって、引用例1発明に該周知技術を適用して、「裁断した故紙」として「シュレッダ-により裁断したテープ状の故紙」を利用することは、当業者であれば適宜になし得ることである。

[相違点2]について
故紙片や木片等から成型品を製造するにあたって接着剤を供給することは、例えば、特開平9-220709号公報(段落【0005】【0006】の従来例参照)や、実願昭55-110817号(実開昭57-34425号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムにみられるように周知技術であり、また、引用例1に「印刷処理やワックス加工、ポリエチレン加工などが施された製品の故紙を利用する場合、これらを裁断して得られる故紙片16群には、加熱することにより溶融する合成樹脂類の細片が混在しているから、これらの細片は加熱圧搾時に溶融して接着材の役割を奏することになる。…したがって、故紙片16群に積極的に接着材を添加しないものの…」と記載されていることを参酌してみても、用いる故紙群だけでは接着力が十分でない場合であれば、接着剤を添加することは、当業者が抱く自然な発想であるといえる。
そうしてみると、相違点2に係る本願発明の構成は、引用例1発明に周知技術を適用して、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

[相違点3]について
引用例2には、古紙パルプ繊維と熱可塑性樹脂繊維から形成されたウェブの上下或いは両面から通気性を有する搬送用支持体で挟んだ状態で加熱装置の中へ移送され、熱可塑性樹脂が溶融する温度以上に加熱され、ウェブの片面もしくは両面に保護層としてのシート状物を積層し、最終的に加圧処理装置へ移送され、そこで加圧され古紙ボードとされる旨、記載されており、故紙群の上下に柔軟性を備えた通気性を有するシ-トを供給し、上型と下型からなる成形型を備えたプレス機を設け、前記の通気性を有するシ-トを上下方向として前記の故紙群をプレス機へ搬入することと実質的に同じ内容が示されている。しかも、引用例1発明と引用例2に記載された発明は、何れも、故紙(古紙)を用いた紙形成品の製造に関する技術という同一の技術分野に属するものである。
したがって、相違点3に係る本願発明の構成は、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用して、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

[相違点4]について
シュレッダ-により裁断したテープ状の故紙を利用することについては、既に検討したとおり、当業者であれば適宜になし得ることである。そして、通気性を有するシ-トを上下方向として裁断した故紙群をプレス機へ配置して加熱させる引用例1発明において、当該シュレッダ-により裁断したテープ状の故紙を用いた際には、当然の結果として、テープ状の故紙群の交錯によって発生する大小のスリット状の溝が覆われ、その表面が平滑にされるという作用効果が奏せられるものと認められる。
そうしてみると、相違点4に係る本願発明の構成は、引用例1発明に、相違点1につき説示したところの周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

[相違点5]について
故紙片や木片等から成型品を製造する際、表面に被覆シートを接着することは、例えば、特開昭60-176756号公報や、特開平10-138210号公報にみられるように周知技術であるから、引用例1発明に周知技術を付加して、所望の強度や外観等を得るべく、表面を被覆するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
なお、この点に関し、請求人は、請求の理由において、特開昭60-176756号公報や、特開平10-138210号公報には、繊維の交錯によって発生する大小のスリット上の溝を覆い、その表面を平滑にした上で、被覆シートを貼り付けるようにしたことについては何ら記載されていないから、表面に被覆シートを接着することが周知技術であったとして、これを引用例1発明に適用したとしても本願発明の構成は得られない旨、主張しているが、表面の平滑化という作用効果に寄与する主体は、既に述べたように、通気性を有するシートであるから、引用例1発明において、当該作用効果は既に達成されているのであって、その後、表面をさらに被覆シートで覆うか否かは、求められる強度や外観等の条件に応じて、適宜決定することができる性質のものであるから、上記請求人の主張は妥当ではなく、これを採用することはできない。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1発明、引用例2に記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例1発明、引用例2に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-25 
結審通知日 2005-12-06 
審決日 2005-12-19 
出願番号 特願2000-136652(P2000-136652)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B27N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋月 美紀子長井 啓子  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 柴田 和雄
佐藤 昭喜
発明の名称 シュレッダ-により裁断した故紙を利用する紙成形品およびその乾式製造方法  
代理人 村山 信義  

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