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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1131724
審判番号 不服2003-23162  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-27 
確定日 2006-02-17 
事件の表示 平成 8年特許願第255043号「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月24日出願公開、特開平10-107030〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯
本願は、平成8年9月26日の出願であって、平成15年10月16日に拒絶査定がなされ、これに対して同年11月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後当審において、平成17年9月6日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内である同年11月11日に意見書が提出されたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「(a)バインダーを形成しうる化合物で表面処理された固体粒子が分散媒中に分散してなる分散液(I)を、前記分散媒よりも比重が大きく、しかも前記分散媒と相溶しない液(II)上に展開し、
(b)前記分散液(I)から前記分散媒を除去して前記液(II)上に前記固体粒子を配列させて粒子層を形成し、
(c)前記粒子層を半導体基板の凹凸面上に移して該凹凸面上に粒子層を形成し、
(d)前記基板の凸部に形成された粒子層を除去し、凹凸面を平坦化した後、
(e)前記平坦化面の上に予め形成されたシリカ系被膜を転写することで絶縁層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。」

3.刊行物記載の発明
刊行物1
本願出願日前に頒布された特開平8-57295号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図1とともに、以下の事項が記載されている。
「【請求項2】 バインダーを形成しうる化合物で表面処理された固体粒子が分散媒中に分散してなる分散液(I)を、前記分散媒よりも比重が大きく、しかも前記分散媒と相溶しない液(II)上に展開し、次いで前記分散液(I)から前記分散媒を除去して前記液(II)上に前記固体粒子を配列させて粒子層を形成し、前記粒子層を基材凹凸面上に転写した後、基材の凸部に形成された粒子層を除去する工程を経て基材凹部に粒子層を形成することにより基材凹凸面を平坦化することを特徴とする基材凹凸面の平坦化方法。」(特許請求の範囲請求項2)
「【0039】
【実施例1】市販のオルガノシリカゾル(触媒化成工業(株)製、商品名;オスカル、平均粒径300nm、濃度10重量%、溶媒エタノール)100gにポリシラザン(東燃(株)製、商品名;PHPS、濃度10重量%、溶媒キシレン)20gを添加し、50℃で5時間シリカ粒子の表面処理を行った。次いで液中の溶媒をMIBKで置換して20重量%のシリカ粒子分散液を調製した。引上げ装置とその上に載置されたガラス基板とを水槽内部の水中に浸した。この水面上に上記20重量%シリカ粒子分散液を1g滴下して2分間放置した。この間にMIBKが揮発し、水面上にシリカ単粒子層が形成された。その後、静かに引上げ装置でガラス基板を引き上げてガラス基板上にシリカ単粒子層を転写し、この粒子層付ガラス基板を300℃で30分間焼成した。」(0039段落)
「【0059】
【実施例7】市販のオルガノシリカゾル(触媒化成工業(株)製、商品名;オスカル、平均粒径300nm、濃度10重量%、溶媒エタノール)100gにポリシラザン(東燃(株)製、商品名;PHPS、濃度10重量%、溶媒キシレン)20gを添加し、50℃で5時間シリカ粒子の表面処理を行った。次いで液中の溶媒をMIBKで置換して20重量%のシリカ粒子分散液を調製した。基材として0.6μの配線段差がモデル的に形成された半導体装置を用い、実施例1と同様にして300℃で30分間焼成する工程を経てシリカ単粒子層付半導体装置を得た。
【0060】この粒子層付半導体装置を研磨装置にセットし、配線上のシリカ粒子を選択的に研磨除去した後、シリカ系層間絶縁膜および上層配線を形成した。このようにして形成された多層配線構造物の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、上記シリカ系層間絶縁膜は優れた平坦性を示した。」(0059段落及び0060段落)

ここで、「この粒子層付半導体装置を研磨装置にセットし、配線上のシリカ粒子を選択的に研磨除去した後、シリカ系層間絶縁膜および上層配線を形成した。」(0060段落)において、「シリカ系層間絶縁膜および上層配線」は、「配線上のシリカ粒子を選択的に研磨除去した」表面即ち、「配線段差」が「形成された半導体装置」の凹凸面を平坦化した「シリカ単粒子層付半導体装置」の表面(上面)に形成されることは当業者に明らかである。

よって、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「バインダーを形成しうる化合物で表面処理された固体粒子が分散媒中に分散してなる分散液(I)を、前記分散媒よりも比重が大きく、しかも前記分散媒と相溶しない液(II)上に展開し、
次いで前記分散液(I)から前記分散媒を除去して前記液(II)上に前記固体粒子を配列させて粒子層を形成し、
前記粒子層を配線段差が形成された半導体装置からなる基材凹凸面上に転写した後、
基材の凸部に形成された粒子層を選択的に除去する工程を経て基材凹部に粒子層を形成することにより基材凹凸面を平坦化し、
平坦化した前記凹凸面上にシリカ系層間絶縁膜を形成する半導体装置の製造方法。」

刊行物2
本願出願日前に頒布された特開平8-125016号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図1、図2とともに、以下の事項が記載されている。
【特許請求の範囲】
「【請求項1】 基板上に形成された金属配線上に絶縁層を形成する工程と、
予め用意した耐熱性高分子フィルムの表面に絶縁膜を形成する工程と、
該絶縁膜を形成した耐熱性高分子フィルムを、その絶縁膜側が前記基板上に形成された絶縁層に密着するようにして該基板上に当接させ、その状態で前記耐熱性高分子フィルムを灰化除去する工程とを備えてなることを特徴とする半導体装置の製造方法。」(特許請求の範囲請求項1)
「【0008】
【実施例】以下、本発明の半導体装置の製造方法を図面を参照して詳しく説明する。 図1および図2は本発明の一実施例を説明するための図である。まず、図1(a)に示すようにシリコン基板10上に、半導体素子の各構成要素(図示略)を周知の手段によって形成するとともに、その上にリンシリケートガラス(PSG)やホウ素リンシリケートガラス(BPSG)、ノンドープトシリケートガラス(NSG)等の層間絶縁膜11を形成し、さらにリフロー処理を施すことなどによってこれの表面を平坦化する。次に、この層間絶縁膜11の上にTi、TiN、AlCu等の積層構造で構成して第1層金属配線層を形成し、さらにこれをパターニングして第1層金属配線12…を形成する。なお、基板10上において、例えばスクライブラインなどのようにその表層部が広い面積で第1層金属配線12…の高さに比べ低くなっている部位には、ダミーを形成して他の部位に高さを合わせておく。次いで、これら層間絶縁膜11および第1層金属配線12…の上に、CVD法やプラズマCVD法等によって図1(b)に示すようにSiO2 からなる絶縁層13を形成する。
【0009】また、前記工程とは別に、例えば図2に示すようにシリコンウエハー14とほぼ同形の耐熱性高分子フィルム15を予め用意しておき、これの一方の面上にスパッタ法やCVD法、プラズマCVD法等によってSiO2 からなる絶縁膜16を形成する。耐熱性高分子フィルム15としては、ポリイミド樹脂やポリカーボネイト樹脂からなり、厚さ数μmから数百μm程度に調整されたフィルムが好適に用いられる。」(0008段落〜0009段落)
「【0011】次いで、絶縁膜16を形成した耐熱性高分子フィルム15を、その絶縁膜16が前記第1層金属配線12…の上の絶縁層13上に密着するようにして基板10上に当接させ、例えば大気圧を越える加圧下にて300℃以上で熱処理し、図1(b)に示すように絶縁層13と絶縁膜16とを接着する。」(0011段落)
「【0013】その後、この耐熱性高分子フィルム15、絶縁膜16を接着した基板10を酸素、あるいはオゾンの雰囲気下でプラズマ処理し、高分子フィルム15を灰化除去する。」(0013段落)
「【0015】このような半導体装置の製造方法にあっては、前述した簡略な処理によって該第1層金属配線12、12上の絶縁層13の上に絶縁膜16を接着するので、該金属配線12、12間の間隔が狭い場合にもその上の絶縁層13上に絶縁膜16を平坦に設けることができ、したがって加工性に優れ、かつ金属配線12…上の絶縁層(絶縁膜16)の平坦化も容易に行うことができるものとなる。」(0015段落)
「【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明の半導体装置の製造方法は、絶縁膜を形成した耐熱性高分子フィルムを、その絶縁膜側が基板上に形成された絶縁層に密着するようにして該基板上に当接させ、その状態で前記耐熱性高分子フィルムを灰化除去する方法であるから、基板上に形成した金属配線間の間隔が狭い場合にも、その上の絶縁層上に絶縁膜を平坦に設けることができ、したがって加工性に優れたものとなり、金属配線上の絶縁層の平坦化をも容易に行うことができ、これにより製造コストの低減化を図ることができる。」(0019段落)

4.対比・判断
刊行物発明において、粒子層を凹凸面上に転写することは、言い換えると、粒子層を凹凸面上に移して形成することであるから、刊行物発明の、「前記粒子層」を「基材凹凸面上に転写」することは、本願発明の、「前記粒子層」を「凹凸面上に移して該凹凸面上に粒子層を形成」することに相当する。
刊行物発明の「配線段差が形成された半導体装置」の表面は、配線および「配線段差」により凹凸面となっていることは明らかであり、「配線段差が形成された半導体装置」が「基材」として用いられているから、刊行物発明の、「配線段差が形成された半導体装置からなる基材凹凸面」は、本願発明の、「半導体基板の凹凸面」に相当する。
刊行物発明の、「基材の凸部に形成された粒子層を選択的に除去する工程を経て基材凹部に粒子層を形成することにより基材凹凸面を平坦化」する工程の、「粒子層を選択的に除去する工程」により、基材の凹部に形成された粒子層が残り、「基材の凸部に形成された粒子層」が選択的に除去され、結果として、基材の凹凸面が平坦化されることは明らかであるから、刊行物発明の「基材の凸部に形成された粒子層を選択的に除去する工程を経て基材凹部に粒子層を形成することにより基材凹凸面を平坦化」する工程は、本願発明の、「前記基板の凸部に形成された粒子層を除去し、凹凸面を平坦化」する工程に相当する。

また、刊行物発明の、「シリカ系層間絶縁膜」及び「平坦化した前記凹凸面上」は、本件発明の、「シリカ系被膜」からなる「絶縁層」及び「前記平坦化面の上」に相当する。

よって、両者は、
「(a)バインダーを形成しうる化合物で表面処理された固体粒子が分散媒中に分散してなる分散液(I)を、前記分散媒よりも比重が大きく、しかも前記分散媒と相溶しない液(II)上に展開し、
(b)前記分散液(I)から前記分散媒を除去して前記液(II)上に前記固体粒子を配列させて粒子層を形成し、
(c)前記粒子層を半導体基板の凹凸面上に移して該凹凸面上に粒子層を形成し、
(d)前記基板の凸部に形成された粒子層を除去し、凹凸面を平坦化した後、
(e)前記平坦化面の上にシリカ系被膜で絶縁層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点
本願発明においては、「前記平坦化面の上に予め形成されたシリカ系被膜を転写することで絶縁層を形成する」のに対して、
刊行物発明においては、「平坦化した前記凹凸面上にシリカ系被膜からなる絶縁層を形成する」ものの、具体的な形成方法が明らかでない点。

以下、相違点について検討する。
刊行物2には、「基板上に形成された金属配線上に絶縁層を形成する工程と、予め用意した耐熱性高分子フィルムの表面に絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜を形成した耐熱性高分子フィルムを、その絶縁膜側が前記基板上に形成された絶縁層に密着するようにして該基板上に当接させ、その状態で前記耐熱性高分子フィルムを灰化除去する工程とを備えてなることを特徴とする半導体装置の製造方法。」(特許請求の範囲請求項1)、「前記工程とは別に、例えば図2に示すようにシリコンウエハー14とほぼ同形の耐熱性高分子フィルム15を予め用意しておき、これの一方の面上にスパッタ法やCVD法、プラズマCVD法等によってSiO2 からなる絶縁膜16を形成する。」(0009段落)、「このような半導体装置の製造方法にあっては、前述した簡略な処理によって該第1層金属配線12、12上の絶縁層13の上に絶縁膜16を接着するので、該金属配線12、12間の間隔が狭い場合にもその上の絶縁層13上に絶縁膜16を平坦に設けることができ、したがって加工性に優れ、かつ金属配線12…上の絶縁層(絶縁膜16)の平坦化も容易に行うことができるものとなる。」(0015段落)、および、「以上説明したように本発明の半導体装置の製造方法は、絶縁膜を形成した耐熱性高分子フィルムを、その絶縁膜側が基板上に形成された絶縁層に密着するようにして該基板上に当接させ、その状態で前記耐熱性高分子フィルムを灰化除去する方法であるから、基板上に形成した金属配線間の間隔が狭い場合にも、その上の絶縁層上に絶縁膜を平坦に設けることができ、したがって加工性に優れたものとなり、金属配線上の絶縁層の平坦化をも容易に行うことができ、これにより製造コストの低減化を図ることができる。」(0019段落)ことが記載されており、
また、基板上に形成された金属配線上の絶縁層に密着形成された絶縁膜が平坦であることは当業者にとって明らかであるから、刊行物2には、「基板上に形成された金属配線上に絶縁層を形成する工程と、予め用意した耐熱性高分子フィルムの表面にSiO2から成る絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜を形成した耐熱性高分子フィルムを、その絶縁膜側が前記基板上に形成された絶縁層に密着するようにして該基板上に当接させ、その状態で前記耐熱性高分子フィルムを灰化除去する工程とを備え、前記絶縁層上に平坦化されたSiO2から成る絶縁膜を形成してなることを特徴とする半導体装置の製造方法。」が記載されている。

ここで、刊行物発明において、「平坦化した前記凹凸面上にシリカ系被膜からなる絶縁層を形成する」際に、「シリカ系被膜からなる絶縁層を形成する」ために、刊行物2に記載される、「予め用意した耐熱性高分子フィルムの表面にSiO2から成る絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜を形成した耐熱性高分子フィルムを、その絶縁膜側が前記基板上に形成された絶縁層に密着するようにして該基板上に当接させ、その状態で前記耐熱性高分子フィルムを灰化除去する工程」を備えた絶縁層形成技術を用い、言い換えると、「平坦化した前記凹凸面上」に、「予め用意した耐熱性高分子フィルムの表面にSiO2から成る絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜を形成した耐熱性高分子フィルムを、その絶縁膜側が前記基板上に形成された絶縁層に密着するようにして該基板上に当接させ、その状態で前記耐熱性高分子フィルムを灰化除去する工程」を用いることにより、「耐熱性高分子フィルムの表面」に予め形成された「SiO2から成る絶縁膜」を「平坦化した前記凹凸面上」に密着させた状態で「耐熱性高分子フィルム」を除去し、結果として、「SiO2から成る絶縁膜」を「耐熱性高分子フィルム」の表面から、「平坦化した前記凹凸面上」に移し替えるとともに、「平坦化した前記凹凸面上」に「SiO2から成る絶縁膜」を平坦に形成することは、当業者が適宜なしえたものである。また、「SiO2から成る絶縁膜」が、シリカ系被膜であることは、当業者にとって明らかである。
さらに、「SiO2から成る絶縁膜」を「耐熱性高分子フィルム」の表面から「平坦化した前記凹凸面上」に移し替えることは、言い換えると、「SiO2から成る絶縁膜」を「耐熱性高分子フィルム」の表面から「平坦化した前記凹凸面上」に転写することである。
したがって、刊行物発明に、刊行物2に記載された技術的手段を用いることにより、本願発明の如く、「前記平坦化面の上に予め形成されたシリカ系被膜を転写することで絶縁層を形成する」ことは、当業者が何ら困難性なくなしえたものである。

よって、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-15 
結審通知日 2005-12-21 
審決日 2006-01-05 
出願番号 特願平8-255043
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 恭一  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 松本 邦夫
今井 拓也
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 鈴木 俊一郎  

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