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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04Q 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q |
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管理番号 | 1131740 |
審判番号 | 不服2003-3690 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-09-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-06 |
確定日 | 2006-02-16 |
事件の表示 | 特願2000- 63411「着信情報格納通知システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月14日出願公開、特開2001-251686〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年3月8日の出願であって、平成15年1月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月4日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年4月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年4月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の目的の適否について 本件手続補正の目的が特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否かを検討する。 (補正後の請求項1について) 補正後の請求項1の記載は、次のとおりのものである。 「通話を行う際に用いる通信手段である発信側の携帯電話および着信側の携帯電話と、 前記発信側の携帯電話および前記着信側の携帯電話と電波の送受信を行う基地局と、 通話路を適切に設定するための発信側の交換機および着信側の交換機と、 前記発信側の交換機および前記着信側の交換機を繋ぐネットワークと、 前記発信側の携帯電話および前記着信側の携帯電話の電話番号を記憶するための記憶手段および前記着信側の携帯電話に対して前記発信側の携帯電話の電話番号を通知するための通知手段とを有する着信情報格納通知サーバと、 前記発信側の携帯電話からのメッセージを録音するための留守番電話装置とを備え、 前記記憶手段は、前記発信側の携帯電話が、前記着信側の携帯電話に発信したにもかかわらず、前記着信側の携帯電話がサービスエリア外にいるか、前記着信側の携帯電話の電源をOFFにしているか、もしくは通話中で呼び出すことができず、前記留守番電話装置に転送される場合に、メッセージを録音したか否かにかかわらず、前記発信側の携帯電話ならびに前記着信側の携帯電話の電話番号、および着信があったときの日時を記憶し、 前記通知手段は、前記着信側の携帯電話がサービスエリア外、電源OFF、または通話中であっても、前記着信側の携帯電話に対して前記発信側の携帯電話の電話番号および着信のあった日時を送信するとともに、前記着信側の携帯電話が正常に受信できなければ前記発信側の携帯電話の電話番号および着信のあった日時を再送信することを特徴とする着信情報格納通知システム。」(以下、「補正後の請求項1に係る発明」という。) 一方、補正前の請求項1の記載は、次のとおりのものである。 「通話を行う際に用いる通信手段である発信側の携帯電話および着信側の携帯電話と、 前記発信側の携帯電話および前記着信側の携帯電話と電波の送受信を行う基地局と、 通話路を適切に設定するための発信側の交換機および着信側の交換機と、 前記発信側の交換機および前記着信側の交換機を繋ぐネットワークと、 前記発信側の携帯電話および前記着信側の携帯電話の電話番号を記憶するための記憶手段および前記着信側の携帯電話に対して前記発信側の携帯電話の電話番号を通知するための通知手段とを有する着信情報格納通知サーバとを備え、 前記記憶手段は、前記発信側の携帯電話が発信したにもかかわらず、前記着信側の携帯電話がサービスエリア外にいるか、前記着信側の携帯電話の電源をOFFにしているか、もしくは通話中で呼び出すことができない場合に、前記発信側の携帯電話ならびに前記着信側の携帯電話の電話番号、および着信があったときの日時を記憶し、 前記通知手段は、前記着信側の携帯電話がサービスエリア外、電源OFF、または通話中であっても、前記着信側の携帯電話に対して前記発信側の携帯電話の電話番号および着信のあった日時を知らせる ことを特徴とする着信情報格納通知システム。」(以下、「補正前の請求項1に係る発明」という。) さらに、補正前の請求項5の記載は、次のとおりのものである。 「前記記憶手段は、留守番電話装置にアクセスがあった場合に該当する着信情報を記憶する ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の着信情報格納通知システム。」(以下、「補正前の請求項5に係る発明」という。) 上記補正後の請求項1に係る発明において構成要件として存在する「留守番電話装置」は、上記補正前の請求項1に係る発明においては存在しない構成であり、また、上記補正前の請求項5に係る発明には、「記憶手段」の動作の限定として「留守番電話装置にアクセスがあった場合に該当する着信情報を記憶する」との記載があるが、「着信情報格納通知システム」が構成要件として「留守番電話装置」を備えるとはされていない。 さらに、補正前の請求項2〜4,6,7においても、「着信情報格納通知システム」が構成要件として「留守番電話装置」を備えるとはされていない。 よって、請求項に構成要件として「留守番電話装置」を追加する上記補正は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものとは認められず、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当するものとは認められない。 また、上記補正が、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明に該当するものとも認められない。 (2)独立特許要件について 仮に、本件手続補正の目的が特許法第17条の2第4項の規定に適合するものであるとした場合、補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 (2-1)補正後の請求項1に係る発明 補正後の請求項1に係る発明は、上記2.(1)で摘記したとおりのものである。 (2-2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-336761号公報(以下、「引用例1」という。)、及び特開平10-190847号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。 (引用例1) A.「【産業上の利用分野】本発明は、自動車・携帯電話システムやコードレス電話システム等の移動通信システムに係わり、特に移動局に対する着信通知機能を改良したシステムに関する。」(第2頁右欄第33〜36行) B.「【0008】そこで、本発明の第1の目的は、着信応答不可能な移動局に対する着信呼が発生した場合に、この着信呼の発生を上記移動局が着信可能状態に復帰した後にその使用者が認識できるようにし、これにより着信呼に対する適切な対応を可能にする移動通信システムを提供することにある。」(第3頁左欄第49行〜右欄第4行) C.「【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成するために第1の発明は、移動局に対し着信通知を行なう際に、第1の状態判定手段により当該着信先の移動局が通信可能な状態になっているか否かを判定し、着信先の移動局が通信不可能と判定された場合に、当該着信先の移動局の識別情報を記憶手段に記憶する。そして、この状態で上記着信先の移動局が通信可能な状態に復旧したか否かを第2の状態判定手段により判定し、着信先の移動局が通信可能な状態に復旧したと判定された場合に、上記記憶手段に記憶された識別番号に基づいて当該着信先の移動局に対し発信が発生した旨の情報を通知するようにしたものである。」(第3頁右欄第14〜25行) D.「【作用】この結果第1の発明によれば、着信先の移動局が例えばサービスエリア外に出ていたり電源を投入していないために着信不応答になると、この着信先の移動局の識別情報が記憶される。そして、この着信先の移動局が、その後例えばサービスエリア内に戻るかまたは電源を投入することにより着信応答が可能な状態に復帰すると、この着信先の移動局に対し、着信不応答期間中に着信呼が発生した旨が通知される。このため、着信先の移動局の使用者は、この通知により着信不応答期間中に着信呼が発生したことを知ることができ、これを受けて例えば発信元の端末の使用者に対し即時連絡をとるといった適切な対応を行なうことが可能となる。 【0018】また第1の発明では、着信先の移動局が着信応答可能な状態にあるか否かの判定および着信応答可能な状態に復帰したか否かの判定を、移動局の位置を管理する移動局位置登録情報を検索することにより行なっている。すなわち、着信処理のために管理されている既存の位置登録情報を利用することにより、移動局が着信不応答状態か否かの判定を行なっている。このため、その都度移動局に対し報知信号を送信してその応答を確かめることにより着信不応答か否かを判定するといった処理を新たに行なう必要がなく、これにより移動通信網の網制御装置の処理負担を軽減することができる。」(第4頁左欄第27〜49行) E.「【実施例】 (第1の実施例)図1は、この第1の実施例に係わる移動通信システムの概略構成図である。このシステムは、サービス総合ディジタル網(ISDN)を基にした固定通信網の接続交換機能を利用して、併せて移動通信サービスを提供するように構成したものである。 【0026】ISDN網NWは交換機10が中核をなしており、この交換機10には固定端末用の複数の回線インタフェース回路11〜1nと、移動端末用の複数の回線インタフェース回路21〜2mと、移動通信制御装置用の回線インタフェース回路30とがそれぞれ接続されている。このうち固定端末用の各回線インタフェース回路11〜1nには、それぞれ有線回線を介して固定電話機TEL1〜TELnが接続されている。回線インタフェース回路11〜1nでは、固定電話機TEL1〜TELnとの間で発着信および情報の送受信のための種々インタフェース動作が行なわれる。 ・・・(中略)・・・ 【0033】一方、移動通信サービスに係わる部分は次のように構成される。すなわち、交換機10に接続された移動端末用の複数の回線インタフェース回路21〜2mには、それぞれ基地局BS1〜BSmが接続される。これらの基地局BS1〜BSmは、移動通信サービスを提供するエリア内に適当な間隔で配設され、各々が固有の無線ゾーンZ1〜Zmを形成する。例えば、(財)電波システム開発センター(RCR)において制定された「ディジタル自動車電話システム」に関する規格、RCRSTD-27に準拠する場合、つまり800MHzの無線周波数帯で無線チャネル間隔が50KHzに設定され、TDMA(Time Division Multipriex)方式により移動局との間で通信を行なう場合には、移動局の送信出力は30mW〜3.0Wに設定されるため、一つの無線ゾーンZ1〜Zmの大きさは通し距離で数Km四方をカバーするように形成される。各移動局MSは、上記各無線ゾーンZ1〜Zmのうちいずれかの無線ゾーン内に在圏することにより通信が可能となる。 ・・・(中略)・・・ 【0036】ところで、本実施例のシステムでは、交換機10として固定網交換機が使用されているため、移動通信サービスを実行するために移動通信制御装置40が別に設けられている。図2はその概略構成を示す回路ブロック図である。 【0037】移動通信制御装置40は、装置全体のシステム制御を行なうマイクロコンピュータ(CPU)41を中核として備え、このCPU41に対しシステムバスを介してROM42と、移動局位置情報テーブル43と、ISDNインタフェース回路44と、保守端末インタフェース回路45とがそれぞれ接続されている。 【0038】ROM42には、上記CPU41が実行するプログラムおよびその実行に必要な制御データが格納されている。ISDNインタフェース回路44は、移動通信制御装置40と上記ISDN交換機10との間を有線回線を介して接続するためのインタフェース機能を有している。保守端末インタフェース回路45には、例えばパーソナルコンピュータからなる保守端末50が接続される。この保守端末50は、移動通信サービスに加入した各移動局の加入者番号などの登録を行なったり、移動通信制御装置40を介してシステムの稼働状況を監視するために使用される。移動局位置情報テーブル43には、移動通信サービスに加入した各移動局MSがどの無線ゾーンZ1〜Zmに在圏しているかを表わす位置情報が記憶される。 ・・・(中略)・・・ 【0043】以下同様に、システム内の無線ゾーンZ1〜Zm内に存在するすべての移動局MSの位置情報が移動通信制御装置40内の移動局位置情報テーブル43に記憶される。また、この位置情報の登録後に移動局MSが他の無線ゾーンに移動した場合には、基地局BSから「報知情報」メッセージが到来した時点で上記した位置登録手順が行なわれ、これにより移動局位置情報テーブル43の該当する移動局の位置情報が更新される。図8は、このようにして各移動局MSの位置情報が登録された移動局位置情報テーブル43の構成の一例を示すものである。 【0044】ところで、本実施例の移動通信制御装置40は、上記した移動局MSの発着信に伴う通常の制御手段や、位置登録制御手段等に加えて、圏外時の着信通知サービスを実行するための制御手段を新たに備えている。 【0045】この圏外着信通知制御手段は、移動局MSに対する着信が発生した場合に、この着信先の移動局MSが着信応答可能な状態か否かを移動局位置情報テーブル43の位置登録内容を基に判定し、位置登録がなされていない場合には着信応答不可能と判定して、上記着信先の移動局MSの加入者番号に対応付けて発信端末番号を記憶する。そして、この状態で上記着信先の移動局MSが着信応答可能な状態に復帰すると、この着信先の移動局MSに対し発信端末番号を通知する制御を行なうものである。」(第5頁左欄第3行〜第7頁左欄第6行) F.「【0046】次に、以上のように構成されたシステムの移動局MSに対する種々着信動作シーケンスを説明する。 ・・・(中略)・・・ 【0051】(2) 圏外状態の移動局に対し、固定電話機からの着信が発生した場合(図10参照) 待受状態において移動局MS11が、時刻t2に位置登録先の基地局BS1の無線ゾーンZ1からシステムのサービスエリア外へ移動したとする。そして、この状態で時刻t3において発信端末TEL1から上記移動局MS11宛ての「呼設定」メッセージが送られたとする。 【0052】この場合、交換機10および移動通信制御装置40は、先に図9で述べた着信シーケンスと同じシーケンスに従って、着信先の移動局MS11が位置登録されている無線ゾーンZ1を移動局位置情報テーブル43から検索し、この無線ゾーンZ1に対応する基地局BS1を介して着信先の移動局MS11へ向けて「呼設定」メッセージを送信する。 【0053】ところが、いま無線ゾーンZ1内に移動局MS11は存在しないため、移動局MS11からは「呼設定受付」メッセージが返送されない。交換機10は、上記「呼設定」メッセージの送出後、所定時間内に「呼設定受付」メッセージの返送を確認できないと、「呼設定受付」メッセージを再度送出する。そして、この「呼設定受付」メッセージの再送出に対しても「呼設定受付」メッセージの返送がなされないと、交換機10は図10に示すごとく、理由表示=無応答とした呼番号#3の「解放完了」メッセージを移動通信制御装置40へ転送する。この「解放完了」メッセージを受信すると移動通信制御装置40は、理由表示=無応答を理由表示=圏外に書き替え、この書き替え後のメッセージを呼番号#2の「解放完了」メッセージとして交換機10へ返送する。この「解放完了」メッセージを受け取ると交換機10は、呼番号#1の「解放完了」メッセージを作成してこれを発信端末TEL1へ送出する。 【0054】また上記「解放完了」メッセージを受信すると移動通信制御装置40は、着信先の移動局MS11が圏外へ移動したものと判断し、移動局位置情報テーブル43の圏外時着信発信端末番号欄に発信端末TEL1の加入者番号を記憶する。そして、以後上記移動局MS11宛ての「呼設定」メッセージが到来した場合には、当該移動局MS11へ「呼設定」メッセージを送出せずに、そのまま発信端末TEL1へ交換機10を介して「解放完了」メッセージを返送する。 【0055】(3) 圏外にいた移動局が圏内に復帰した場合(図11参照) ところで、上記のようにシステムのサービスエリア外にいた移動局MS11が、時刻t1において例えば基地局BS1の無線ゾーンZm内に戻ったとする。そうすると、先ず当該移動局MS11と移動通信制御装置40との間では上記新無線ゾーンZmの基地局BSmおよび交換機10を介して位置登録手順が実行される。 【0056】すなわち、移動局MS11は、基地局BSmから報知チャネルBCCHにより周期的に送信される「報知情報」メッセージを受信すると、このメッセージに挿入されているエリア番号を前回受信したエリア番号と比較する。そして、両エリア番号が異なる場合には、自局が新たな無線ゾーンに移動したものと判断して、例えば図6に示したように自局の端末番号要素を含む「位置登録要求」メッセージを作成し、このメッセージを共通制御チャネルCCCHを介して新ゾーンの基地局BSmへ送信する。 【0057】この「位置登録要求」メッセージは、基地局BSmで受信されるとDチャネルに乗せ変えられて交換機10へ転送される。交換機10は、位置登録手順に関連する信号メッセージを受信すると、当該信号メッセージをDチャネルを使用して回線インタフェース回路30を介して移動通信制御装置40へ転送する。 【0058】移動通信制御装置40は、「位置登録要求」メッセージが到来すると、このメッセージに含まれる移動局MS11の加入者番号(移動局番号)を、移動局位置情報テーブル43の該当領域に記憶する。そして、「位置登録受付」メッセージを生成し、このメッセージをDチャネルを使用して該当する基地局BSmへ転送する。この「位置登録受付」メッセージを受け取った基地局BSmは、この「位置登録受付」メッセージを、共通制御チャネルCCCHを介して登録要求元の移動局MS11へ通知する。かくして、移動局位置情報テーブル43における移動局MS11の登録位置が更新される。 【0059】さて、そうして移動局MS11の登録位置の更新が完了すると、移動通信制御装置40は移動局位置情報テーブル43を検索し、これにより当該移動局MS11が圏外にいる状態で着信呼が発生したか否かを判定する。そして、ここでは移動局位置情報テーブル43の圏外時着信発信端末番号欄に、上記移動局MS11に対応付けて発信端末TEL1の加入者番号が記憶されているので、この発信端末番号を含む「呼設定」メッセージを作成して、この「呼設定」メッセージを交換機10を介して基地局BSmへ送出する。上記発信端末番号は例えばユーザ・ユーザ情報領域に挿入される。基地局BSmはこの「呼設定」メッセージを無線ゾーンZm内の移動局へ向けて送信する。 【0060】移動局MS11では、上記自局宛ての「呼設定」メッセージが受信されると、この「呼設定」メッセージに含まれている発信端末番号が例えば液晶表示器(LCD)に表示される。したがって、移動局MS11の使用者は、このLCDに表示された発信端末番号を見ることにより、自身が圏外に移動している状態で発信端末TEL1から着信呼が発生したことを認識することができる。」(第7頁左欄第7行〜第8頁右欄第16行) G.「【0065】このように本実施例では、圏外に出て着信不可能な状態になっている移動局MSに対し着信呼が発生すると、移動通信制御装置40が移動局位置情報テーブル43に当該移動局MSに対応付けて発信端末番号を記憶する。そして、その後上記移動局MSが圏内に戻って通信可能な状態に復帰すると、この移動局MSに対し上記発信端末番号を含めた「呼設定」メッセージを送出して、この発信端末番号を移動局MSのLCDに表示するようにしている。 【0066】したがって本実施例によれば、通信可能状態に復帰したときに移動局MSの使用者は、上記発信端末番号の通知により着信不応答期間中に発信端末TEL1から着信呼が発生したことを知ることができ、これを受けて例えば発信端末TEL1の使用者に対し即時連絡をとるといった適切な対応を行なうことが可能となる。」(第8頁右欄第50行〜第9頁左欄第14行) H.「【0085】さらに前記各実施例では、発信端末番号または移動局番号のみを通知するようにしたが、これらの番号に代えるかまたは加えて発信端末者名あるいは移動局名を通知するようにしても良く、さらには着信呼の発生日時や伝言メッセージを記憶しておいてこれらを通知するようにしても良い。」(第10頁右欄第26〜31行) I.「【0086】また前記各実施例では、固定電話機から移動局に対する着信呼が発生した場合を例にとって説明したが、移動局から移動局へ着信呼が発生した場合にも本発明を同様に適用することができる。」(第10頁右欄第32〜35行) 上記Hの記載によれば、「発信端末番号」を通知するのみならず、「着信呼の発生日時」や「伝言メッセージ」を記憶しておいて通知することが記載されており、「伝言メッセージ」を記憶する場合は、実質的に「発信側の移動局からのメッセージを録音するための留守番電話装置」を備えているということができる。 また、上記Iの記載によれば、「固定電話機から移動局に対する着信呼が発生した場合」のみならず、「移動局から移動局へ着信呼が発生した場合」にも適用できる旨の記載がなされている。 よって、上記A〜Iの記載事項、及び関連する図面を参照すると、引用例1には、実質的に次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。) 「通話を行う際に用いる通信手段である発信側の移動局および着信側の移動局と、 前記発信側の移動局および前記着信側の移動局と電波の送受信を行う基地局と、 通話路を適切に設定するための交換機と、 前記発信側の移動局および前記着信側の移動局の電話番号を記憶するための記憶手段および前記着信側の移動局に対して前記発信側の移動局の電話番号を通知するための通知手段とを有する移動通信制御装置と、 前記発信側の移動局からのメッセージを録音するための留守番電話装置とを備え、 前記記憶手段は、前記発信側の移動局が、前記着信側の移動局に発信したにもかかわらず、前記着信側の移動局がサービスエリア外にいるために呼び出すことができない場合に、前記発信側の移動局ならびに前記着信側の移動局の電話番号、および着信呼の発生日時を記憶し、 前記通知手段は、前記着信側の移動局がサービスエリア外からサービスエリア内に復帰した場合に、前記着信側の移動局に対して前記発信側の移動局の電話番号および着信呼の発生日時を送信する、移動局に対する着信通知機能を有する移動通信システム。」 (引用例2) J.「【要約】 【課題】 移動機の利用者が電話をしなくてもメッセージがあるか否かを速やかに知ることができる留守番電話システムを提供する。 【解決手段】 移動機3に宛てた伝言メッセージが録音されると、録音時から所定時間が経過した時に移動機3が通話エリア内にあるか否か、移動機3の電源がオンか否かを判断し、移動機3が通話エリア内にあって電源がオンであると判断されると移動機3を呼び出して回線を接続し、移動機3に伝言メッセージがあること等を送信する。また、移動機3と回線が接続されない場合は、所定時間が経過した後に、移動機3を再度呼び出して回線の接続を試みる。」(第1頁左下欄第2〜14行) K.「【発明の属する技術分野】この発明は、移動機等の移動体通信に適用される留守番電話システム、詳しくは、移動機の受信不能時等に移動機へのメッセージを録音し、メッセージあるいはメッセージが録音されたことを移動機に報知する留守番電話システムに関する。」(第2頁左欄第13〜17行) L.「【0012】留守電情報判定回路13は、移動機3に宛てた伝言メッセージが録音されているか否かを判定し、その判定結果をメモリ16に出力する。回線接続判定回路14は、移動機3が通話中か否かを判定し、その判定結果をメモリ16に出力する。再発呼判定回路15は、メモリ16の記憶データを周期的に読み出して記憶データに基づき移動機3を呼び出し、伝言メッセージが録音されていることあるいは伝言メッセージ自体を送信する(録音報知)。また、この再発呼判定回路15は、カウンタを内蔵し、設定された呼出回数に対して何回の呼出を行ったかを計数して計数結果をメモリ16に出力する。」(第3頁左欄第11〜22行) M.「【0017】上述したように、この実施の形態にあっては、移動機3に宛てた録音メッセージがある場合、移動機3が通話エリア内にあり、かつ、移動機3の電源がオンであると、移動機3に録音メッセージがあることの報知あるいは録音メッセージ自体の報知を行う。このため、移動機3の利用者は事業者に電話をしなくても伝言メッセージを知ることができ、また、録音された後に一定の時間が経過すると知ることができる。そして、移動機3が呼出に応答できなかった場合でも、所定の時間が経過すると、再呼出が行われるため、確実に知ることができる。」(第3頁右欄第10〜20行) N.「【発明の効果】以上説明したように、この発明にかかる留守番電話システムによれば、移動機に宛てた伝言メッセージが録音されると、移動機と回線を接続可能か否かを判定し、移動機と回線が接続可能な場合に移動機を呼び出して伝言メッセージがあることあるいは伝言メッセージ自体を送信するため、移動機の利用者は電話をかけることなく伝言メッセージを速やかに知ることができる。特に、上述した各実施の形態においては、移動機が何らかの事情で応答できない場合でも所定の時間が経過すると再呼出が行われて送信が繰り返し試みられるため、伝言メッセージを確実に知ることができる。」(第3頁右欄第49行〜第4頁左欄第9行) 上記J〜Nの記載事項、及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の発明」という。) 「移動機の受信不能時等に移動機へのメッセージを録音し、録音したメッセージあるいはメッセージが録音されたことを移動機に報知する留守番電話システムにおいて、移動機に対して録音メッセージがあることあるいは録音メッセージ自体の送信を行うために移動機と回線を接続しようとしても移動機と回線が接続されない場合には、所定時間が経過した後に、移動機を再度呼び出して回線の接続及び送信を試みるようにすること。」 (2-3)対比 補正後の請求項1に係る発明と引用例1記載の発明とを対比すると、まず、引用例1記載の発明における「移動局」、「移動通信制御装置」、「着信呼の発生日時」、「移動局に対する着信通知機能を有する移動通信システム」は、それぞれ、補正後の請求項1に係る発明における「携帯電話」、「着信情報格納通知サーバ」、「着信のあった日時」、「着信情報格納通知システム」に相当する。 また、補正後の請求項1に係る発明において、着信側の携帯電話を呼び出すことができない場合として挙げられている「サービスエリア外にいること」、「電源をOFFにしていること」、「通話中であること」のうち、「サービスエリア外にいること」は、引用例1記載の発明と共通する。 さらに、補正後の請求項1に係る発明も、引用例1記載の発明も、その送信の態様が異なるものの、着信側の携帯電話(移動局)に対して発信側の携帯電話(移動局)の電話番号および着信のあった日時(着信呼の発生日時)を送信するものであることには変わりない。 よって、補正後の請求項1に係る発明と引用例1記載の発明とは、ともに、 「通話を行う際に用いる通信手段である発信側の携帯電話および着信側の携帯電話と、 前記発信側の携帯電話および前記着信側の携帯電話と電波の送受信を行う基地局と、 通話路を適切に設定するための交換機と、 前記発信側の携帯電話および前記着信側の携帯電話の電話番号を記憶するための記憶手段および前記着信側の携帯電話に対して前記発信側の携帯電話の電話番号を通知するための通知手段とを有する着信情報格納通知サーバと、 前記発信側の携帯電話からのメッセージを録音するための留守番電話装置とを備え、 前記記憶手段は、前記発信側の携帯電話が、前記着信側の携帯電話に発信したにもかかわらず、前記着信側の携帯電話がサービスエリア外にいるために呼び出すことができない場合に、前記発信側の携帯電話ならびに前記着信側の携帯電話の電話番号、および着信があったときの日時を記憶し、 前記通知手段は、前記着信側の携帯電話に対して前記発信側の携帯電話の電話番号および着信のあった日時を送信する着信情報格納通知システム。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:補正後の請求項1に係る発明は、発信側、着信側それぞれの交換機、及びそれらを繋ぐネットワークを有するものであるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。 相違点2:「発信側の携帯電話が着信側の携帯電話に発信したにもかかわらず呼び出すことができない場合」として、補正後の請求項1に係る発明においては、「着信側の携帯電話がサービスエリア外にいるか、着信側の携帯電話の電源をOFFにしているか、もしくは通話中」であることが挙げられているのに対し、引用例1記載の発明においては、「着信側の移動局がサービスエリア外にいる」ことしか挙げられていない点。 相違点3:「発信側の携帯電話ならびに着信側の携帯電話の電話番号、および着信があったときの日時を記憶」するにあたり、補正後の請求項1に係る発明においては、「着信側の携帯電話を呼び出すことができず、留守番電話装置に転送される場合に、メッセージを録音したか否かにかかわらず」記憶動作が行われるとされているのに対し、引用例1記載の発明においては、そのようなものであるのかどうかが明らかでない点。 相違点4:「通知手段」が、補正後の請求項1に係る発明においては、「着信側の携帯電話がサービスエリア外、電源OFF、または通話中であっても、前記着信側の携帯電話に対して発信側の携帯電話の電話番号および着信のあった日時を送信するとともに、前記着信側の携帯電話が正常に受信できなければ前記発信側の携帯電話の電話番号および着信のあった日時を再送信する」ものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、「着信側の移動局がサービスエリア外からサービスエリア内に復帰した場合に、前記着信側の移動局に対して発信側の移動局の電話番号および着信呼の発生日時を送信する」ものである点。 (2-4)判断 そこで、上記相違点について検討する。 (相違点1について) 移動通信システムを、発信側、着信側それぞれの交換機、及びそれらを繋ぐネットワークを有するような構成とすることは、例えば、特開平10-4587号公報に見られるような周知の技術にすぎない。 よって、引用例1記載の発明のシステムを、発信側、着信側それぞれの交換機、及びそれらを繋ぐネットワークを有するような構成とすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。 (相違点2について) 「発信側の携帯電話が着信側の携帯電話に発信したにもかかわらず呼び出すことができない場合」として、「着信側の携帯電話がサービスエリア外にいる」ことの他に「着信側の携帯電話の電源をOFFにしている」ことや「通話中」であることも挙げられるということは、当業者にとって明らかである。 そして、補正後の請求項1に係る発明は、特に「呼び出すことができない場合」の原因別に対処の仕方を異ならせているものでもないので、「発信側の携帯電話が着信側の携帯電話に発信したにもかかわらず呼び出すことができない場合」として、「着信側の携帯電話がサービスエリア外にいる」ことの他に「着信側の携帯電話の電源をOFFにしている」ことや「通話中」であることを挙げた点が格別なこととは認められない。 (相違点3について) 留守番電話サービスを有する移動通信システムにおいて、移動機の受信不能時に移動機へのメッセージを録音するようにすること、すなわち、着信側の携帯電話(移動機)を呼び出すことができない場合に留守番電話装置に転送され、発信側の携帯電話(移動機)からのメッセージを録音するようにすることは、引用例2にも見られるように、ごく普通のことにすぎない。 ここで、メッセージを実際に録音するか否かは、発信側の携帯電話(移動機)の使用者の意志によって、任意に選択できる事項にすぎない。 そして、引用例1の上記Hの記載に、「・・・伝言メッセージを記憶しておいてこれらを通知するようにしても良い。」とあるように、「伝言メッセージを記憶」するシステム、すなわち留守番電話サービスを有するシステムであろうがなかろうが引用例1記載の発明において「発信側の移動局ならびに前記着信側の移動局の電話番号、および着信呼の発生日時を記憶」する動作は行われるのであるから、留守番電話サービスを有する構成において、発信側の携帯電話(移動機)の使用者の意志によってメッセージを録音したか否かにかかわらず、上記「発信側の移動局ならびに前記着信側の移動局の電話番号、および着信呼の発生日時を記憶」する動作を行うようにすることも、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。 (相違点4について) 留守番電話サービスを有する移動通信システムにおいて、「移動機に対して録音メッセージがあることあるいは録音メッセージ自体の送信を行うために移動機と回線を接続しようとしても移動機と回線が接続されない場合には、所定時間が経過した後に、移動機を再度呼び出して回線の接続及び送信を試みるようにすること」は、上記引用例2記載の発明に見られるような技術事項にすぎない。 上記引用例2記載の発明においては、「録音メッセージがあることあるいは録音メッセージ自体の送信」を、移動機と回線が接続されない場合に所定時間経過後に再度行うように試みるものであるが、「録音メッセージがあることあるいは録音メッセージ自体」という情報も、引用例1記載の発明における「発信側の移動局の電話番号および呼の発生日時」という情報も、いずれも着信側にとって受けられない着信があったことを知ることができる情報であるという点においては共通するものであるから、引用例1記載の発明に対して引用例2記載の発明の技術を適用することにより、着信側の移動局がサービスエリア外、電源OFF、または通話中等であって回線が接続できないような場合であるか否かにかかわらず、前記着信側の移動局に対して発信側の移動局の電話番号および着信のあった日時の送信を行い、実際には回線が接続できなくて前記着信側の移動局が正常に受信できないような場合に、前記発信側の移動局の電話番号および着信のあった日時を再送信するようにすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。 また、補正後の請求項1に係る発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2に記載の発明及び上記周知の技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、補正後の請求項1に係る発明は、引用例1,2に記載の発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものである。 (3)むすび 上記(1)、(2)で検討したとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項あるいは第5項で準用する同法第126条第4項の規定のいずれかに違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成15年4月4日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年11月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの、すなわち上記2.(1)で「補正前の請求項1に係る発明」として摘記したとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2及びその記載事項は、上記2.(2-2)に記載したとおりである。 (3)対比 本願発明は、上記2.(2)で検討した補正後の請求項1に係る発明において、構成要件として「発信側の携帯電話からのメッセージを録音するための留守番電話装置」を削除し、「発信側の携帯電話ならびに着信側の携帯電話の電話番号、および着信があったときの日時を記憶」するときの条件から「留守番電話装置に転送される場合に、メッセージを録音したか否かにかかわらず」を削除するとともに、「通知手段」の動作から「着信側の携帯電話が正常に受信できなければ発信側の携帯電話の電話番号および着信のあった日時を再送信すること」を削除するものである。 そうすると、本願発明に対して構成要件、条件、動作を付加したものに相当する補正後の請求項1に係る発明が、上記2.(2-4)に記載したとおり、引用例1,2に記載の発明及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様に、引用例1,2に記載の発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび したがって、本願発明は、引用例1,2に記載の発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-12-15 |
結審通知日 | 2005-12-20 |
審決日 | 2006-01-05 |
出願番号 | 特願2000-63411(P2000-63411) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04Q)
P 1 8・ 575- Z (H04Q) P 1 8・ 572- Z (H04Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大日方 和幸、山本 春樹 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
長島 孝志 彦田 克文 |
発明の名称 | 着信情報格納通知システム |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 工藤 雅司 |